「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2011年03月17日

"Whatcha Gonna Do About It" を聞きながら、Don't Panic! と口に出してタオルを握り締める。

先ほど、@AlWahyさん(モハメドさん)がツイートしていた、「国際赤十字委員会から、日本への支援の呼びかけ」を語った詐欺メールのキャプチャ。モハメドさんは「日本の今回の震災での詐欺メールは初めて受け取った」と言っている。



なお、モハメドさんはロンドンを拠点とする在外リビア人で先日紹介した請願文を書いた人。そしてリビアは、今まさに、非常に厳しい状況だ。
#libjp 国際赤十字は、スタッフを全員、ベンガジから引き上げた。RT @SkyNewsBreak: International Red Cross says it has now withdrawn all staff from Benghazi, Libya
posted at 02:38:27, 17 March


さて。

17日午前2時ごろ、日本国政府の英語での広報担当Noriyuki SHIKATA氏のツイート:


そして3時間半ほど後、5時半ごろの英国の外務省のツイート:


(色々と省略)

フランスから遅れること2日かな、英国もですか。

一応、「停電や流通の遮断、物資不足などでいろいろ混乱がありうるので」という理由になっているけれど、要は、「もう少し様子を見ようと思ってるうちに機会を逃すかもしれません。東京は大都市で人口が多いし、みなが一度に動いたり、交通が混乱したりしたら動き取れません。それにいずれ出国するつもりなら、飛行機の座席も確保できる間にしておかないとまずいですよ。早めに行動してください」と呼びかけていると解釈すべきだろう、どう控え目に見ても。

あと、あんまり目立たないけどアイルランド共和国の対応もね。本質的に同じなんだけど、元ケルトの虎のほうが二枚舌大帝国よりわかりやすい。
http://www.rte.ie/news/2011/0316/japan_dfa.html
The Department of Foreign Affairs is advising Irish nationals against all non-essential travel to Japan.

The department is also asking those Irish citizens in the northeast of Japan and the Tokyo region to decide whether they need to remain in those areas given the developing situation.

This is particularly the case for people with small children, it said.


さて、この「退避を検討してください」の前の段階だが、16日夜、Twitterで複数のアカウントから、英国大使館による「日本の原発についてのお知らせ」がRTで回ってきた。

日本で起きている重大な事態について、日本の当局(首相官邸、保安院、東電)の発表より外国の大使館のブリーフィングについての情報のほうがRTで目立っていたという不思議な現象……。ま、その背景には、単に、日本の当局の説明はテレビ見ればわかるが、英大使館のはネットで積極的に情報を取りに行かないとない(情報を取りに行って見つけたら「あったー」と書き込みたくなる)、という事情があり、同時にまた、フランスがえらい騒ぎをしてくれている中、「一方英国は…」的なヴァリューがあった、ということだと思う。

ともあれ、私のところにRTで回ってきたものには2通りあった。

1つは下記のブログのURLを含むもの。(これと同じ文面のコピペで別のURLのものもいくつかあった。)
http://ameblo.jp/settemari/entry-10832461375.html

もう1つは@torii_hさんのいくつかのツイートだった。

いずれも、内容は非常に似通っていて、見ただけで同一ソースを別の人が日本語化していると判断ができる。双方ともソースの表示あり。しかし、ソースを確認しようとするとこれがFacebookにログインしないと見られない。

自分的には、「FBログイン必須」の時点で「有用性は半減」という基準があるのだが、単に普段FBを身内用に使ってる人が、震災なのでたまたま公益性の高いことを書いているだけだろうと合理的に判断できるから、まあそれはいい。

ともあれ、FBアカウント持ってないと見られないけど、日本語圏でがんがん回覧されている情報のソースは、FBのPaul Atkinsonさんのページだ。

Japan Nuclear Update - British Embassy
2011年3月15日 18:55 Paul Atkinsonさん作成
http://www.facebook.com/notes/paul-atkinson/japan-nuclear-update-british-embassy/10150111611771235
I have just returned from a conference call held at the British Embassy in Tokyo. The call was concerning the nuclear issue in Japan. The chief spokesman was Sir. John Beddington, Chief Scientific Adviser to the UK Government, and he was joined by a number of qualified nuclear experts based in the UK. Their assessment of the current situation in Japan is as follows:

つまり、「東京にある英国大使館で行なわれたコンファレンス(記者会見だと思うが)に行った人が、自分が聞いたことをまとめてウェブにアップしてくれている」。

逆に言えば、「一次ソース」そのものではない。

実際にどのような文言が用いられたのかを検証する必要がある場合などは、引用符で明示されている発言の書き取りを除いては、まったくソースにならない。

でも、内容面ではソースにならないわけではない。「英国大使館のブリーフィングでは、大筋、このようなことが語られていた」という事実を示すには十分であろう。その意味で非常に参考になるし、メモしてアップしてくれたポールさんには感謝したい。

※なお、フィルムメーカーの想田和弘さんが確認してくださったのですが、ポールさんは:
英国大使館の原発状況アセスメント。発信元のPaul Atkinsonは在日英国商業会議所の副所長であるため、このコンファレンスに出席したそうです(本人から直接確認しました)。僕はここまで楽観的でいいのかどうかは分かりません。http://bit.ly/hno4GN
http://twitter.com/KazuhiroSoda/status/48189864906207233


一方で、日本語圏で出回っているのはこれの「翻訳」である。

2011-03-16 18:22:42
【FBより転載】日本の原発についてのお知らせ;英国大使館
http://ameblo.jp/settemari/entry-10832461375.html
Facebookの文章の転載です。
=======================

日本の原発についてのお知らせ;英国大使館
by Tom Vincent on Wednesday, March 16, 2011 at 2:46pm
元: Paul Atkinson 2011年3月15日6時55分
http://www.facebook.com/notes/paul-atkinson/japan-nuclear-update-british-embassy/10150111611771235

さきほど東京の英国大使館の会見から戻ってきました。日本の原発の現状についてでした。英国政府主席科学顧問(Chief Scientific Adviser)ジョン・ベディントン (Sir John Beddington)が代弁者をつとめ、数名の原子力発電の専門家も同席しました。日本の現状について、彼らの状況判断は下記の通り:

アメブロのこのURLからは、FacebookのどのURLの転載なのかがわからない。(うっかりミスだろうが、URL添えないとチェンメ化するよ。)

訳者としてクレジットされているTom Vincentさんの名前からFBのページのトップまでは行けたが、FBをほとんど使ってない上に新しいインターフェースがわかりづらくてFBのどのURLにあるのかは確認できなかった。
http://www.facebook.com/tompvincent

訳者のトムさんのサイトのURLは下記。(瀬戸内の伝統工芸・物産についての英語のサイト。時間があるときにじっくり拝読したい。)
http://www.loopto.com/

で、アメブロからTwitterに流れてきた文書の転載元のURLを確認するのは時間がないので諦めて、書かれていることの検討に入る。

……なんて悠長なことはやっていられないので、1箇所だけ、非常に気になったところ。というか、ツイートか何かで「ここに注目」というような誘導があったので最初にチェックしたのだが(私は最初に訳文を見て、それから原文を見た←これ些細なことだけどバイアス排除の情報として重要なので書いておきます)。

原文(ポールさん)※タイポと思われるものも原文ママ、単なるコピペ。
This is a very different situation from Chernobyl, where the reactor went into meltdown and the encasement, which exploded, was left to burn for weeks without any control. Even with Chernobyl, an exclusion zone of 30 km would have been adequate to protect human health. The problem was that most people became sick from eating contaminated food, crops, milk and water in the region for years afterward, as no attempt was made to measure radioactivity levels in the food supply at that time or warn people of the dangers. The secrecy over the Chernobyl explosion is in contrast to the very public coverage of the Fukushima crisis.


訳文(トムさん)
チェルノブイリとは全く別な状況です。チェルノブイリの場合、原子炉が完全メルトダウンし、手を付けずに何週間も燃え続けた。チェルノブイリでさえ、50キロに避難ゾーンがもしできたら、十分に人の健康を守ることはできたでしょう。チェルノブイリの場合、事件から何年も後まで現地の食料や水に含まれた放射能は一切モニタリングされなかったと、危険性についての情報も全く知らせなかったせい、汚された食品、麦、牛乳や水などを食べ続けた現地の人々が病気になった。事実は隠されたチェルノブイリの事件とくらべ、今回の非常に開かれた福島の事件もその意味でも大きく異なるでしょう。

引っかかったのは「今回の非常に開かれた福島の事件」だ。

ちなみに私が見たもうひとつの日本語ソース、Twitterの @torii_h さんはこの箇所について:
事実が隠蔽された同事故に比べて情報が公開されている福島の事故は対照的である。
https://twitter.com/torii_h/status/47939233037553664

「情報が公開されている福島の事故」とある。トムさんと基本同じだ。

福島第一原発について、「非常に開かれている」、「情報が公開されている」などという声は、(私の接する範囲は狭いが)英語圏からまったく聞いた記憶がない。

Twitterで英語情報のハッシュタグを見たり、BBCやアルジャジーラのニュースを聞いていたりなどしているのだが、この点について聞こえてきてるのは何よりもまず「情報が少ない」(これは日本語圏でも同じ)、「なぜ肝心なことは何も言わないのか」の声だ(これも同じ)。

(英語圏でも一部SNS/CGMで「秘匿している」という声もあったが、たどっていったら元は英語圏在住日本人英語話者で原発アラーミスト&メディア不信&ケムトレイルがなんとかetc系だったのでノイズとして切り捨て。)

というか、the very public coverage of the Fukushima crisisに「情報が公開されている」という含みがあるかどうか。そもそもcoverageって、「当事者以外によって話題にされること」じゃないのか、当事者が公開する・しないに関わらず。



ちなみに、私が直訳すると:
The secrecy over the Chernobyl explosion is in contrast to the very public coverage of the Fukushima crisis.

チェルノブイリの爆発をめぐる秘密主義は、福島の危機の非常におおっぴらな報道とは対照的である。

ちなみに、チェルノブイリのことをご存じない世代の方に簡単に説明しておくと(「簡単に」するので正確性は期待するな)、当時のソ連政府というのは報道というものは自分たちを讃える(そしてなおかつ「西側」をけなす)ためにあると位置付けていて、自分たちのところでは決して悪いことは起きないことになっていた。そういう「物語」を生産するためのマシーンが「プラウダ(真実)」などの報道機関だった。今でいうと北朝鮮(やジンバブエやリビアなど)のやり方だ、というとわかりやすいかもしれない。

数年前、北朝鮮の、確か鉄道で事故があったときに、北朝鮮の国営メディアのアナウンサーさんが結局のところは「将軍様のすばらしい手腕で無事解決しました」といった、水戸黄門の脚本のようなところに話を落としこんでいたと思うが、そういう感じ。

原子炉が爆発したことがわかったのは、実際の爆発からしばらく後のことで、そのときには既に放射性物質は大拡散、住民たちは何も知らされていなかったので普通に生活してて汚染した空気吸いまくり、汚染した水のみまくり、などなどで、そのことから深刻な健康被害(特に甲状腺ガンの多発)という結果を生じさせた。人災の最たるものだ。

参考までにウィキペディアから。爆発があったのは「1986年4月26日1時23分」のこと:
事故当時、爆発した4号炉は操業休止中であり、原子炉が止まった場合を想定した実験を行っていた。この実験中に制御不能に陥り、炉心が融解、爆発したとされる。爆発により、原子炉内の放射性物質が大気中に大量に(推定10t前後)放出された。……

当初、ソ連政府は住民のパニックや機密漏洩を恐れ、この事故を公表しなかった。また、付近住民の避難措置なども取られなかったため、彼らは甚大な量の放射線をまともに浴びることになった。しかし、翌4月27日にスウェーデンのフォルスマルク原子力発電所にてこの事故が原因の放射性物質が検出され、4月28日、ソ連も事故の公表に踏み切った。……

この「チェルノブイリの隠蔽」と比較されている時点で、ブラックジョークでなければ何なのか、という話だということは、もちろん前提だ。

で、最初にこの「事実が隠蔽されたチェルノブイリと、情報が公開されている福島の事故は対照的」とかいう日本語のツイートがRTで私のところまで流れてきたとき、私はてっきり英国のコメディアンがブラックジョークをかましているのを訳出した人がいるのだと思った。

ところがそうじゃなかったわけだ。

椅子から落ちるとかそんなレベルじゃないのね。

で、同じのが別の人たちからも回ってきていて、上に書いたように元をたどってみたわけだが、英国の科学者が大使館でブリーフィングをしたもののメモだということが把握できた時点で、まあ(どこの誰が書いたメモなのかわからんようなものを広める前に)誰でもすることだと思うが、英国大使館のサイトにそのブリーフィングの詳細がないかどうかを見に行ったわけだ。検索バーに「英国大使館」と打ち込んでね。

※書きかけ

※この記事は

2011年03月17日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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