「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2011年01月24日

悪魔の毒毒ブラックジョーク〜「IRAはネタにされてない」なんて、寝言ですわよ!

※追記(24日午後7時過ぎ)
こんなダサいことは書きたくないのですが、コンテクストが読めない/コンテクストを読まないで、私がここに書いていないことを勝手に読み取って/自身の考えを一方的に転写して読み込んでそれを言語化し、「nofrillsの考え」としてよそに広める、ということが起きているようなので、ぶざまですが明示しておきます。

私が以下を書いたのは、あの番組はあのままでよいと述べるためではありません。(あの番組については別のエントリに書いていても、ここには書いていませんが……。)

文中に明示したように、(あの番組についてあれこれ話されている場で)「IRAは茶化されなかった」、「イスラム・ネタなどやれば殺される」といった虚偽の断定をいくつも見かけたので、それらに対し、実例を示すことによって「それらは存在する」ことを証明するためです。

追記ここまで。




「英国のジョークのセンス」について、私は「歩いている人を見れば何かネタを見つけて笑うし、自転車に乗ってる人を見れば車輪が外れることを想定して笑う」などと、非常に暴力的で失礼な一般化を行なっているんですが(オムニバス映画『パリ・ジュテーム』でペール・ラシェーズ墓地のセグメントで主人公だった「ジョークの通じない英国人男」の悲哀を参照)、実際、あの人たちの「ジョーク」から逃れられるものは何もありません。

むろん、テレビなどに乗らない「ジョーク」もたくさんあります。テレビに出るのは選り抜きというか、プロのお仕事です。その中にも、「ただ乱暴だったり汚いだけだったりするのになぜか野郎ウケはする笑い」(たぶん「たいくかい系」のノリ)、「単なる下ネタ」、「知性の働きの感じられない下品な言葉」などもありますが、そのときだけの流行で終わらない(=ソフト化されて何年も廃盤にならないような)「ジョーク」の多くは、「知的」(言語で考える、という過程を経ているもの)で、なおかつ「社会風刺」や「皮肉 sarcasm」がベースというものが多いと思います。

で、ジョークにされる「ネタ」は「世の中の全て」なのですが、なぜか、「タブー」がある、ということになっているようです。「それを笑いものにすることなど、天使も踏むを恐れるところ……」とばかりに。

むろん、イギリス人も人間なので、「攻撃的ジョークの対象とすることを遠慮する」こともあります。誰かが亡くなった直後とか、だれがどう見ても深刻すぎるだろという事態とか。でも、個人的に「自分(自分たち)はそのネタはやらない」という場合はもちろんあるでしょうが、「どのネタは社会的にタブー」ということは、あまりないのではないかと思います。

「続きを読む」の下に実例を紹介します。トピックは「IRA」(アラン・パートリッジ)、「イスラム過激派」(映画Four Lions)、「ユダヤ人」(モンティ・パイソン)。

なお、エントリのタイトルは思いつき。深い意味はありません。

悪魔の毒々モンスター 東京へ行く [DVD] / ロン・ファジオ, 桂木麻也子, ジョン・アルタムーラ, 安岡力也, 関根勤 (出演); マイケル・ハーツ, ロイド・カウフマン (監督)


※英国でコメディアンしてるイラン系の人で有名な男性は(複数名、うち1人は本当に可笑しい)知ってますが、女性もいるんですかね。

■IRA、およびアイルランド

Alan Partridge insults the Irish


「アラン・パートリッジ」は架空のニュース司会者です。この男、「ええとこのぼんぼん」で鼻持ちならない「イギリス人」で、常に上から目線。ぺらぺらとよくしゃべるのだが、中身がなく、軽薄で無知。モンティ・パイソンで「ティミー・ウィリアムズ」というキャラがいますが(エリック・アイドルが演じる)、その系統です。(日本にもあるか……「ギョーカイくん」キャラ。「デーハーなツーシャー着て、シータクから降りてきた」みたいなのじゃなくて、「敏腕プロデューサー」的なキャラ。)
http://en.wikipedia.org/wiki/Alan_Partridge

そのパートリッジが、アイルランド国営放送RTEのプロデューサーと打ち合わせる、というので、世間話的に「アイルランドについて」話すのですが、その内容が、英国人(Brits)のアイルランドへの無知と偏見丸出し。打ち合わせ本題に入れば入ったで、「アイリッシュ」の訛りをまねてみたり、固定観念でべったりの妄想をしてみたり(黒ベレーにサングラス、黒いセーターに武器=IRA)――この「セクシーダンス」は彼の抑圧されたリビドーの「お約束」なのですが――、そして最後には、メシ食いながら「で、飢饉では何人死んだんだっけ?」(19世紀半ばの the Great Famine のこと)。

これ、制作は1997年です(ソースは下記)。当時、北アイルランド紛争はまだ終わってません。
http://www.imdb.com/title/tt0609605/quotes

さらにこんなのも。よくやるよな(笑)。
http://en.wikipedia.org/wiki/Alan_Partridge
He has commented on the troubles in Northern Ireland stating that he believes both Gerry Adams and Martin McGuiness to be very clever men, though that he does not trust either of them as he believes Adams looks like a deputy headmaster and McGuiness looks like a clown without make-up. He has admiration for former Prime Minister Margaret Thatcher and believes she was betrayed by her own party when she was forced out of Downing Street. Alan once caused a security alert at Choristers Country Club by booking a room under the name "The Real IRA".


で、こんなアランがおもしろいかどうか、という話題がYahooにあるのを見たので貼っておきます。
http://uk.answers.yahoo.com/question/index?qid=20091128122617AA2xR4X

台本はby Steve Coogan and Armando Iannucci, クーガンは、アラン・パートリッジの「中の人」ですが、出自はマンチェスターのアイリッシュで、だからこそできた、というのはあるかもしれないけど、1996年にはIRAは(アイリッシュでリパブリカン・シンパという人が多い町のひとつである)マンチェスターをボムって200人怪我させているわけで、「アイリッシュだから」というのはほとんど関係ないと思われます。

同じスティーヴ・クーガンでもっと前の番組、The Day Today:


これが何のパロディなのかは、"gerry adams voice ban" で検索してお調べください。私は椅子から落ちて頭を打ったので少し休みますwww

アラン・パートリッジが出てくるシリーズは、BBCの番組です(番組は何度か名前が変わっていますが、パートリッジは定番の「人気キャラ」、「クーガンの当たり役」です)。

■イスラム過激派

「イスラム過激派なんかネタにしたら、殺される」とかいうでたらめも見かけたのですが、観測範囲が違うのでしょう。最もメインストリームなのは、おそらく、ガーディアンで大々的に宣伝されてた映画、Four Lions(つい先日もこの映画について言及したのだが)。これはテレビではなく劇場映画です。作者はクリス・モリスで、これがデビュー作。
http://www.imdb.com/title/tt1341167/

物語は……ええと、自爆志願の英国人たちのずっこけ珍道中(これは英国社会・文化を見る上で極めて重要なポイントなのですが、パキスタン系だろうと白人だろうと「英国人」です。その上にすべての言論状況がある)。私も全編はまだ見ていないので詳細は把握していませんが、すごいドタバタです。

予告編:

YouTubeプレイヤーの静止画像になってて最初の「ずっこけ予告ビデオ」のところでshake my headしているイケメンは、マイケル・ウィンターボトムの『グアンタナモ』で主役だったリズ・アハメドです。

クリップ:


爆弾を作るために使う大量の薬品を、1ヶ所で調達したら怪しまれるから別々の店で調達しなければならないのに、帽子にひげの男は1ヶ所で調達してきた、とさらっと言う。ボス格の男が「何てことをしてくれたんだ」と怒る……というシーンなのだけど、ひげの男が珍妙な言い訳を次から次へと繰り出すので……はははははは、「だって連中はテロリストじゃないか!」。何度見ても可笑しい。

あと、演劇でJihad! The Musicalという作品。2007年にエジンバラのフリンジで上演。
http://en.wikipedia.org/wiki/Jihad!_The_Musical

ちなみに、ロンドン地下鉄&バスの同時多発爆破テロが2005年7月7日、別のセルによる計画発覚と、そのメンバーと誤認されたブラジル人電気技師(もちろん、まったく無関係)が警察対テロ部隊に組み伏せられた上で頭に何発も銃弾を撃ちこまれ殺された事件が同年7月21日。

……と見ていたら、ウィキペディアに「ジハード・サタイア Jihad satire」なる項目が……まだブラッシュアップ前のようです。このテーマで研究してる学生さんの論文要旨、という感じ。
http://en.wikipedia.org/wiki/Jihad_satire

スタンダップ・コメディならそれこそ山のようにネタにされてると思います。以前、「いかにも労働者階級のおっさん」のネタでやってたスタンダップ・コメディアン(性差別、人種差別など丸出し)の訃報のときに、紹介されてたビデオにあったのは覚えているのですが、下品すぎてついていけなかったので探しません。

■ユダヤ人

そのまんまです。モンティ・パイソンのシーズン2のエピソード6(スクリプト)。



これは最悪。本当に悪趣味。最初、観客は、シルエット状態の左側の男(グレイアム・チャップマン)の奇矯な鼻に爆笑するのですが、「ひょっとしてこれは……」と思うわけです。観客がそう思っているのを裏切るかのように、右側の男(マイケル・ペイリン)が「スキン・スペシャリストです」と紹介する。この「スキン」は、彼のメッセージとしては「皮膚」なのですが(皮膚科医)、左の男の鼻の形状から連想される語の意味としては「コンドーム」にもなりうる(ダブル・ミーニング)。

ここで観客は「きゃー、下ネタ!きゃー」と笑いつつ、内心「よかった、『アレ』のネタじゃないんだ」とほっとします。

その語、2人の珍妙なやり取りがあって、そこは単純に言語的に笑っていられる。「レイモンド・ラグジュアリー・ヨットさんです」、「わたしの名前はそれではなーい!」……ここは安心していられるのだけど問題はその後。

インタビュアーが「こんなアホとインタビューとか、やってられないのでここで終了」と言った瞬間、インタビュイー(ヨットと書いてマングローブと読む人)がこう言う。映像の0:30のところ。
Ah, anti-semitism!

やっぱり「アレ」でした、というお知らせ。「おまえら、ここまで笑って見てただろ? それ、『アレ』なんだぜ」というパイソンズのにやにや笑い。

これは、顔が笑ったまま固まります。20世紀半ば以降、「ユダヤ人のめんどくさいところ」といえばとにかくこれ。「オレを悪くいうのか!」ではなく「ユダヤ人を差別するのか!」。

このネタでのお笑いは、探せばけっこういろいろあると思います。ジューイッシュの人たちの「自虐」が多いかも。

(日本では「ユダヤ人といえばホロコースト」=「ホロコーストをネタにしない」=「ユダヤ・ネタはない」という認識なのかもしれないけど、ホロコーストは確かにものすごく大きなことではあるのだけど、それが全てではない。「アイルランド」にとって「ジャガイモ飢饉」が全てではないのと同じように。)

それから、これは非常に有名な例で、「ミスター・ヒルター」の「あの野郎、今度口滑らしたらランプシェードにしてやる!!」(単に「命はないものと思え」ではなく)。下記の4:00から4:05あたり。



これは、あげつらわれているのは「ナチス・ドイツ」ですが(凶暴性)、「ネタにされている」のはホロコーストです。ねじくれています。

■おわりに

そろそろ私の頭がおかしくなってきたので、最後にすこしまともなものを見て、終わりにします。(今、Little Britain……セクシャル・マイノリティねた……とかは無理な感じなので。)



Goodness Gracious Me! は、制作・キャスト全員がインディアン・ブリティッシュで、「インド系コミュニティあるある」ネタを面白おかしく描いた傑作コメディ。白人との関係(男女の恋愛関係だったり、ご近所づきあいだったり、保守的なパパとママに白人の彼を紹介する息子だったり)のネタ、「インド人らしさ」のネタなどがあって、上のクリップは、何か偉大なものは全てインドのものにしてしまう「インド人らしさ」のネタ(「サッカーは中国発祥」みたいなものです)。

これもBBCです。放送翌日「昨日、見た? おもしろかったね」と話題になるような番組の一つでした。




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For English-speaking readers:
Here I try to debunk the wide-spread myths that there's no IRA/militant Islamist/Jew-baiting jokes in the UK. There's no other intention. Absolutely not. Who says I really dig the "Irish" clip? Never. It's offensive. As a Japanese, I have to find it offensive. At least the HQs in Tokyo told me to.

※この記事は

2011年01月24日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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