「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2010年10月02日

プライバシーを覗き見され自殺した大学生の件についての英語報道を読む (1)

■関連記事■
(アセクシュアルではない)人のセックスを笑うな。マジで。
http://nofrills.seesaa.net/article/164364308.html

デイヴ・ナヴァロ、「同性愛、両性愛、トランスジェンダーの10代の人たちへ」
http://nofrills.seesaa.net/article/164369620.html



Rutgers大学の学生がハドソン川に投身自殺し、彼のルームメイトとその友人が起訴されている件での英語の報道(多くは、Togetterでまとめた英語のtweetsからたどれる)について、少し書いておく。

まず、英語の報道が出た段階から少しわかりづらかったのだが、木曜から金曜にかけてのこの報道は、ルームメイトとその友人が起訴されたことを受けてのもの(罪状認否前)であり、書かれていることの多くは、基本的に、検察の主張していることの受け売りである。これらが事実として確定するのはこれからだし、それ以前に起訴されている本人たちがこれを認めるかどうかという問題もある。

ただし、ルームメイトのTwitterのログのように、現段階で誰でも事実と確認できるものもある。それらから判断するに、彼は「男が相手 with a dude」ということを面白がった上で盗撮映像をウェブに流すと告知しているので、いくら推定無罪の原則があるとはいえ、まったくの濡れ衣とは考えられない。

それを前提に報道記事を見る。

私が事件を知ったのは英BBCだ。「外国での出来事」を短く伝える形式の報道記事。22日に橋のところに財布を残して姿を消していたラトガース大の学生タイラー・クレメンティさん(その後遺体で発見)が男性とセックスする様子をウェブカメラでとらえ、オンラインに生中継で流したルームメイトのDharun Raviとその友人のMolly Weiが起訴された、ということを伝え、Dharun RaviのTwitterのログを掲載し、ゲイ・ライツの組織のコメントを記事の末尾に置いているが、タイラー自身については、ご遺族の弁護士のコメント(「立派な若者で才能ある音楽家だった」)を短く引用している以外には、特に説明はしていない。
http://www.bbc.co.uk/news/world-us-canada-11446034

この淡々とした記事だけでも、事件の内容のひどさは伝わってくる。相手につばを吐きかけるような憎悪ではなく、含み笑いの好奇心というものが「憎悪」として機能し、人を死なせる方向に作用したのだから。

BBCの次に見たのが英ガーディアンだが、これは随分とトーンが違っている。まず記事の見出しで、「ネットでゲイだとばらされた学生」と言っている。しかし記事本文には、タイラー・クレメンティがセクシャリティを隠していたかオープンにしていたかは書かれていない。

Tyler Clementi, student outed as gay on internet, jumps to his death
http://www.guardian.co.uk/world/2010/sep/30/tyler-clementi-gay-student-suicide

最初の方で「18歳の少年がFBに『ジョージ・ワシントン橋から飛び降ります。ごめん』とのメッセージを残して飛び降り自殺をした。遺体がハドソン川から引き上げられると同時に、やはり18歳の同じ大学の学生が、彼のプライバシーを侵害したとして起訴された」という書き出しがややドラマチックに綴られ、起訴されたRaviとWeiが何をしたかについて、検察側の説明を基に「ほぼ確定している事実」の文体で書かれている。

これによると、19日にウェブカムでタイラーの相手が男性であることを確認したRaviはTwitterで「あいつ、男とヤってる」ということを書き込み、その2日後にまた「部屋を使わせてほしい」と言われたときに「iChatで中継します」とTwitterで告知(ここまではログという証拠あり)、そして盗撮された被害者のタイラーは翌日、「その絶望を誰にも語らず、またフェイスブックに残したコメント以外にはその決意について何の手がかりも残さず」に、「大学からジョージ・ワシントン橋まで1時間車を走らせた。そして車を降りて、財布や携帯電話を道の脇に置き、死のジャンプをした」。

そして、彼の死は(事実として)「ゲイ・バッシング」によるものだという印象を与える記述と、大学の学長による「RaviとWeiが本当にそのようなことをしたのであれば、大学のスタンダードに著しく抵触する」とのコメントをはさんで、自殺したタイラーは「シャイでおとなしい学生だった」という知人たち (acquaintances) の言葉を、カッコつきの引用ではなく地の文で書いている。彼は大学生活がスタートしてまだ3週間で、学生の間で知り合いも少なかったとか、ヴァイオリンが上手で地元のオーケストラでは前列で弾いていたとかいった情報も与えられるが、一読して印象に残るのは、「物静かで控え目な、クラシック音楽の好きな18歳の“文化系の”少年」というイメージだ。記事に添えられた写真は、高校のオーケストラでバイオリンを演奏するタイラーの姿。

記事の結びは、「10代の子供たちのやりそうないたずら pranks」はソーシャルメディアと繋がったときに、昔では考えられないほど大きなダメージを与えることになる、という、セクシャリティやホモフォビアとは直接関係のない、「子供の残酷さ」や「いじめ」をめぐる一般的な記述だが、上のほうに書いてあることの余韻が強く残る中ではpranksという中立的な語はあまりはっきり見えない。

そして記事を読み終わる頃には「痛ましい話だ」、「かわいそうに」という印象が先に立っている。見出しにあった「ネットでゲイだとばらされた」(つまり「実生活ではゲイであることを明かしていなかった」)のが事実なのかどうかについては、もはや読み手は深く考えていないだろう。

一方で、テイラー・クレメンティの自殺を「外国での痛ましい出来事」として伝える英国のメディアには欠落している視点を持っているのが、米国のメディアだ。

まずテイラーの遺体が発見されたニューヨーク(川の向かい側)のNYTの29日付の記事:
Private Moment Made Public, Then a Fatal Jump
http://www.nytimes.com/2010/09/30/nyregion/30suicide.html

まず見出しで「ゲイだとばらされた」ではなく、より広く「プライベートを公にされた」ことを重大視している。

そして、冒頭数段落での盗撮の経緯の説明のあと、米国での文脈が示される。
The Sept. 22 death, details of which the authorities disclosed on Wednesday, was the latest by a young American that followed the online posting of hurtful material. ...

トラウマになる映像などがオンラインに投稿されたあとで若者が命を絶つ事例がアメリカでは相次いでいる。水曜日(29日)に当局が詳細を明かした9月22日の死はその最新のものだ。

Togetterでのまとめに含めてあるが、米国では「ゲイ」でいじめられた10代の男子が自殺するというケースが立て続けに起きている。3週間の間に5人、この1週間だけで3人(この記事に羅列されているが、Raymond Chase (19), Tyler Clementi (18), Billy Lucas (15), Asher Brown (13), Seth Walsh (13)と、年齢を見るだけでも痛ましい)というのは異常事態だ(その前の8月にも、TwitterでゲイであることをオープンにしていたLadyGaGaファンの15歳男子が自殺している)。自身同性のパートナーを有するTVプレゼンターのエレン・デジェネレスは、テイラーの死の詳細が報道されたことを受けてのテレビ番組でのメッセージで「こんなふうにして一つの命が失われることは悲劇です。しかし4つの命が失われれば、それは危機です」と述べ、彼女のほかにも著名人の発言が為されている。

そろそろ明確なメッセージを出さないと、子供たちがどんどん死んでいく、という危機感を大人たちが持っているのだろう。

これとは別の文脈として、タイラーの自殺に関連して学生2人が起訴されたのは、皮肉にも、ラトガース大がネットの使い方に特に重点を置いた「思いやり促進運動」みたいな2カ年計画のキャンペーンを開始した日だった、ということがある。それについても記述がある。
... The news came on the same day that Rutgers kicked off a two-year, campuswide project to teach the importance of civility, with special attention to the use and abuse of new technology.


NYTの記事は、そういったことも提示しつつ、さっき見た英ガーディアンの記事と同じように、死んでしまったテイラーの人となりを語りつつ話を進めていく。高校時代のオーケストラの芸術監督は「人柄がよく、音楽家としての将来性もあった」と述べる。学友たちは「彼は人付き合いの盛んなほうではなかった」と言い、同じ寮で彼と同じ1年生の学生は「スクール・カウンセラーがテイラー・クレメンティと面識のある人は手をあげてくださいといったとき、50人中3人しか手をあげなかった」と述べる。

そして記事の地の文で、彼の性的指向については「はっきりしていない It is unclear what Mr. Clementi's sexual orientation was」と書き、一方で盗撮を行なったルームメイトは、彼がゲイだと確信していたと書く。こういう「中立」ぶった記述にはいらいらさせられるが、この時点ではNYTはタイラーがゲイだと確認も確信もできていないのだろう。

上で言及した「同じ寮の学生」の話では、Raviは「最初は別に見るつもりはなかったがWeiの部屋でパソコンを操作してたら見えてしまった」的な説明をしていたそうだ(「作為」はなかったんです、ということか)。しかし彼は、それでもタイラーが男性と関係していることは寮全体でゴシップとして広まったと述べている。

こういった記述の中に、ゲイ団体の人による「ヘイトクライムである」とか「他人の人生を破壊することを面白がっている連中がいることに憤りを覚える」といったステートメントが差し込まれている。

この記事が書かれた時点では、発見された遺体はテイラーだとはまだ確認されていなかった。記事は大学のプロジェクトのこととか、RaviとWeiの起訴のことを書きつつ、最後はクレメンティの死の数時間前に一緒にベルリオーズやベートーベンを練習したオーケストラのメンバーの「特に変わった様子はなかった」というコメントで結んでいる。

そして翌日(9月30日)のNYTの記事は更なる調べものを行なった上で書かれたもの。書きだしはやや下世話な覗き見趣味的な感触すらある。
Before a Suicide, Hints in Online Musings
http://www.nytimes.com/2010/10/01/nyregion/01suicide.html

「そのゲイのチャット・サイトに書き込んでいる若い男性はどうしたらいいのか悩んでいた。ルームメイトが別室からウェブカムを使って、彼が同性の友人とキスをしているのを覗き見していたことを突き止めたのだ。大学に申し立てをすべきなのか。でもそんなことをしても、もっと悪いルームメイトをあてがわれるかもしれない。それとも、ルームメイトと直接対決か……しかし9月21日、最終的に彼は、『時々えっと思うこともあるけど、ルームメイトとしては悪くない』との結論に至った」と書き出されているこの記事では、前日の段階では「ゲイなのかどうかはっきりしない」とされていたタイラーが、ゲイのサイトを利用していたことが確認されている。確認の過程はNJ.comの記事にも書かれているが、ある掲示板で相談していたユーザーの相談内容と年齢が一致していたことから検証され、そのユーザーがタイラーだと特定された。

記事にはそのサイト名が掲示されているので見てみた。彼が投稿していたのは会員登録してなくても閲覧はできる(投稿はできない)ウェブフォーラムで、英語圏でよく見るタイプのものだ。サイトのトップページは「18+」の表示が出るし、サイトのコンテンツはゲイ・ポルノと思われるが、フォーラムでは雑談あり、相談あり、芸能ゴシップあり、出会い系ありという感じでいろいろな話題が取り上げられている。

問題の投稿を含むスレッドは裁判での証拠として使えるようにという理由でロックされ保全されている。

スレ立てはSeptember 21st, 2010, 07:22 AMのタイムスタンプで、概ね次のような内容だ――「先日ルームメイトに部屋を使わせてもらえないかと頼んだら快諾してくれたのだが、今日ルームメイトのTwitterを見たらそのことがtweetされてて(それだけでもふざけるなと思うけど)、そのうえ別の部屋からウェブカムを遠隔操作でONにして、こっちの様子を見てたことがわかった。カメラの角度から見られてたことは確実。これからどうしたらいいんだろう」。ここまでは冷静な文章で、この先が "..." が多くなって、話も覚束ない調子になる。「次からはカメラの向きは変える。でも、ほんとムカついてて(こんなことがあればムカつくのも当然ですよね?)、、、できれば奴がひどい目にあえばいいのにと……でも奴は優等生で」といった調子で話がぐるぐる回っている。

この投稿の30分後には「学校によって対応はいろいろ違うからなあ」、「カメラ仕掛けられてたのはどういう部屋なの? 共有の居間の場合は……」という親切なレスがつく。その30分後にはタイラーが「居間じゃなくて居室が2人部屋なんです」と答える。その1時間後にはまた別の人からレスがつく……というふうに、いい感じで相談が進んでいる。タイラーが盗撮の詳しい状況を報告すると、「ああ、それは法的責任が問える事案だと思うから、こういう証拠を押さえて、学生課に相談するのがいいよ」と親身なレスがつく。タイラーは誰かと話ができて落ち着いた様子で、「相談に行ってきました。証拠を担当者にメールしました」といった報告をしている。

それが最後だ。スレを立ててから大体23時間後。応答には何の気配もない。

その後は、スレは回答者同士の論争となり(ありがち)、スレ主は戻ってこない状態で、数日後に「どうなった?」という投稿がなされるがそのときはもうタイラーは旅立った後で、彼の自殺が報じられた後にこの掲示板のユーザーが「まさか……偶然の一致と思いたい」といったことを次々と書き込んだ状態でロックされている。

というわけで、タイラーは完全にひとりで、本当に誰にも相談できなかったわけではなく、オンラインで相談する場は知っていたし、相談もできていた。

この掲示板での相談でタイラーは、ルームメイトが「おい見ろよ、こいつ、男とヤってやんの」言っているんじゃないかと語り (And so I feel like it was 'look at what a fag my roommate is') 、Twitterでのルームメイトへの反応が「よく一緒にいられるな」、「お前までやられちゃったりして」など心無い言葉であることを述べ、ルームメイトと一緒になって騒いでいる人たちにとっては自分が男性と関係していることがスキャンダルで、でもルームメイトの盗撮はスキャンダルではないというのか、と怒り……

かわいそうに。

掲示板で質問してレスがついたとおりの法的手続き(プライバシー侵害での裁判)が行なわれているのに。

NYTのこの記事の2ページ目は、加害者2人についての説明だ。日本の事件報道と非常によく似ていて、地元に記者が行っては印象を聞いて回っている。RaviもWeiも、どちらも「まさかそんなことをするとは」といわれる優等生。「彼(彼女)にはゲイの友人もいますよ」という感じだ。

※ちょっと休む。

※この記事は

2010年10月02日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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