「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=


2010年09月06日

常岡さん解放を受けて、少し調べもの(誰が彼を拘束していたのかについての報道)

アフガニスタンで身柄が無事解放されたことが5日に報じられた常岡浩介さんが、6日に早速、ドバイからtweetしている。



この「挨拶」の投稿の後、常岡さんは早速、「クンドゥズで一体何があったのか」についてのtweetをしている。いくつかにわけて投稿されたそれらが1ページにまとめられているのがこちら:

解放された常岡さんが犯人像を語る
http://togetter.com/li/47923


ご本人の言葉すべてを必ず読んでいただきたいのだが、少し抜粋:
いくつかのメディアで、「タリバンが誘拐」と、出ているのをみました。犯人はタリバンではありません。クンドゥズのラティブ司令官とタハールのワリーという、現地の腐敗した軍閥集団です。……

「アフガン当局がタリバンと断定」してるので、日本メディアもそのまま書いてるケースが多いみたいです。軍閥ラティブはカルザイの顧問サバアウン大臣の、ヒズビ・イスラミ内の部下に当たり、カブールに事務所も持って、政府の人間として堂々と暮らしている人物なので、アフガン当局は事実を発表するはずはないと思います。……


……

ぼくを拘束していた部隊は、4月中はタハール州とクンドゥズ州でタリバンと交戦を繰り返していました。オマル師の命令系統に入っていない「ローカルタリバン」は存在しますが、タリバンを敵視して殺し合うタリバンはいません。彼らはタリバンではない。

4月上旬にカルザイがクンドゥズを訪れ、地元住民にタリバンを攻撃する米軍との合同作戦の説明を行ったときは、部隊は私の見張りを残して全員、この集会に出かけていました。そして、米軍との合同作戦に参加して、タリバンを攻撃したのです。このとき彼らは政府軍の一部として作戦行動をしていました。


ということで、このエントリでは報道を見直してみる。

まず日本語の報道。オンラインでいくつかざっと目を通したところ、最も詳細な記事が朝日新聞だった。

アフガンで不明の常岡さん、武装勢力から5カ月ぶり保護
2010年9月6日0時48分
http://www.asahi.com/international/update/0905/TKY201009050147.html
魚拓

以下、少し抜粋。強調は引用者による。
 アフガニスタン北部で3月末から行方不明になり、反政府武装勢力タリバーンの地方組織に拘束されたとみられていたフリージャーナリスト、常岡浩介(つねおか・こうすけ)さん(41)が4日、現地の日本大使館に保護された。日本外務省が5日夜、発表した。……

 ……(解放までの流れと解放時の様子)……大使館は、日本政府は犯人側へ身代金などは支払っていないとしている。

 また、カブールを訪問中だった鈴木宗男衆院外務委員長は5日午後に大使館で常岡さんと面会した。鈴木氏のブログによると、……誘拐したのは、タリバーンではなく、別の武装勢力ヒズベ・イスラミ(イスラム党)だと説明したという。

 常岡さんが解放直前の3日に書いたと見られるインターネット上の簡易投稿サイト「ツイッター」への書き込みでは、拘束している司令官の名が書かれていたが、この司令官はタリバーン、ヒズベ・イスラミ双方に関係しているとされる。

 一方、アフガン北部クンドゥズ州の知事は5日、常岡さんはタジキスタンとの国境に近い同州北東部のアルチ地区で解放されたと明らかにした。知事によると、犯行グループはアフガン政府や日本大使館に身代金を要求していたが、実際に支払われたかどうかは不明だという。

 アフガンでは今週、ラマダン(断食月)が明けるが、拘束中の様子を知るタリバーンの北部地域の幹部の1人は5日、朝日新聞に対し、「日本人ジャーナリストはしっかりと断食をした。そうしたことがラマダン明けの祝祭前の解放につながった」と話し、常岡さんがイスラム教徒であることが共感を得たとした。一方で、「(解放に関し)取引はあった」と語り、身代金など当局側と何らかの取引があったことを示唆した。

 ……(常岡さんについて&さらわれたときのことについて)……

 その後、タリバーンの北部地域の報道担当者が「日本人ジャーナリストを拘束している」と本紙を含む複数メディアに語ったことなどから、常岡さんはタリバーンの地方組織に誘拐・拘束された可能性が強まった。アフガン当局が断続的に武装勢力側と解放交渉を行ってきたとみられる。

 常岡さんが行方不明になったアフガン北部は近年、タリバーンの勢力が強まっており、政府軍や北大西洋条約機構(NATO)主導の国際治安支援部隊との戦闘も激化、治安は不安定化している。(山尾有紀恵、イスラマバード=五十嵐誠)


この記事の要点を箇条書きにしよう。

【誘拐・拘束したのは誰か】
1-1: 常岡さんを拘束していたのはタリバンの地方組織とみられていた(OR みられている)。
1-2: しかし、鈴木宗男議員のブログ(9月5日)には「常岡さんを誘拐したのはビズビ・イスラミ(イスラム党)という軍閥の一つであるとのことだ」とある。
1-3: 拘束している司令官(常岡さんの3日のtweetにある「ラティブ司令官 commander lativ」)は、タリバーン、ヒズベ・イスラミ双方に関係しているとされる。(※誰がそう言っているのかが不明)
1-4: 一方で、4月始めに連絡の取れなくなった常岡さんの所在の確認が進められていたころに、タリバンの北部地域の報道担当者が「日本人ジャーナリストを拘束している」と朝日新聞を含む複数メディアに語った。(※これが元で、英語でも日本語でも「どうやらタリバンらしい」、「タリバンを名乗る者の犯行のようだ」という調子の報道になった。)

【身柄解放の理由・身代金】
2-1: タリバン北部地域の幹部の1人は、常岡さん(ムスリム)がしっかりラマダンの断食をしたことなどが、ラマダン明けのお祝い前の身柄解放に繋がったと述べている。
2-2: 日本大使館の話では、日本政府から犯人側への身代金の支払いはなかった。
2-3: 常岡さんが拘束されていたクンドゥズ州の知事は、犯人側からアフガン政府や日本大使館に身代金の要求があったことをコンファームしている。
2-4: しかしクンドゥズ州の知事は、身代金が実際に支払われたかどうかは不明という。
2-5: 一方、タリバン北部地域の幹部の1人は、身代金など当局側と何らかの取引があったことを示唆している。

出てくる人が多い。(^^;)

・常岡さん本人
・鈴木宗男議員
・日本大使館(=日本の外務省)
……ここまでは説明不要。

・「ラティブ司令官 commander lativ」……軍閥ヒズベ・イスラミの人(たぶん偉い人)。朝日新聞記事には、この人はタリバンにも関係していると書かれているが、詳細不明。

・「タリバンの北部地域の報道担当者」(1-4)……誘拐されて日も浅い頃に、複数メディアに対し、「日本人ジャーナリストを拘束している」と述べた人。

・「タリバン北部地域の幹部の1人」(2-1, 2-5)……解放にあたって、常岡さんがしっかり断食していたことなどがプラスに作用した、ということを語り、同時に身代金など何らかの取引の存在を示唆もした人物。上の「報道担当者」と別人なのかどうかは記事からははっきりしない。

・クンドゥズ州の知事(2-3)……犯人側からの身代金要求があったことは事実だが、支払いがあったかどうかは不明、と述べている。

……で、この「クンドゥズ州の知事」なのだが、ロイター通信の記事では朝日新聞とは別なことを言っている。(え)

Afghan governor says kidnapped Japan journalist freed
By Mohammad Hamed
KUNDUZ, Afghanistan | Sun Sep 5, 2010 5:47am EDT
http://www.reuters.com/article/idUSTRE6840BI20100905

(Reuters) - A Japanese journalist kidnapped in Afghanistan in April has been freed, according to an Afghan provincial official who said on Sunday the journalist had been abducted by the Taliban.

Kosuke Tsuneoka, a 41-year-old freelance journalist, was at Japan's embassy in the Afghan capital, Kabul, Kyodo news agency reported earlier on Sunday, quoting Japanese government sources.

Tsuneoka, who has been in Afghanistan since mid-March, went missing in the northern city of Kunduz near the border with Tajikistan.

【要旨】日曜日、アフガニスタンの州(県)の関係者によると、4月にアフガニスタンで誘拐された日本人ジャーナリスト、常岡浩介さん(41歳)が解放された。この州関係者は、常岡さんはタリバンによって誘拐されていたと述べた。共同通信によると、常岡さんはカブールの日本大使館に保護されていると日本政府筋は述べている。常岡さんは3月半ばにアフガン入りし、北部、タジキスタンとの国境に近いクンドゥズ市で消息を絶った。

Mohammad Omar, the governor of Kunduz province, said Tsuneoka was freed on Saturday in the Dasht-e Archi district of Kunduz.

"Based on security forces reports, he was freed yesterday. He was released most probably in return for payment of money," Omar told Reuters. He gave no further details.

クンドゥズ州知事のモハマド・オマルは、常岡さんは土曜日に、クンドゥズのダシュテアルチ地区で解放された、と述べた。「治安当局の報告によると、常岡さんは昨日解放された。彼の解放は十中八九、金銭の支払いとの引き換えだろう」。知事はそれ以上の詳細は語らなかった。

The Taliban, fighting an increasingly bloody insurgency against the Afghan government and foreign forces, said at the time Tsuneoka went missing that they had abducted him.

The Islamist group could not be reached for comment on Sunday.

タリバンの反政府活動はだんだん激化しているが、常岡さんが行方不明になった時点では、タリバンは「自分たちが常岡さんを誘拐した」と語っていた。しかし日曜日、タリバンには連絡がつかず、コメントが取れなかった。

(後略)

※「後略」した部分には、外国人を標的とした「誘拐ビジネス」でタリバンや犯罪組織が資金を得ている、といった説明がある。

上記のように、「クンドゥズ州の知事」は、朝日では「身代金の支払いがあったかどうかは不明」と言っている。でもロイターでは「十中八九支払いがあった」と言っている。

(@_@)????? 「クンドゥズ州の知事」は1人しかいないのに、こんな重要なことでまるっきり食い違っているって、何で? ていうかもーなんなのこのひとはー、と思って検索バーに名前を打ち込んでみたら、出てきたわよ。

http://en.wikipedia.org/wiki/Mohammad_Omar_%28Afghan_governor%29

2004年からクンドゥズ州知事。その前は、一つ南にあるバグランの知事(2001年から03年)。民族的にはAndar Pashtunで、カブールの総合技術大学でエンジニアリングを学んだ。1991年から92年にTaloqan市長を務め、内戦時には(短期間だが)Islamic Dawah Organisation of Afghanistan(米国やパキスタン、サウジの支援を得て、ソ連と戦った武装勢力のひとつ。タリバン支配下では、北部同盟の構成組織の一つになった)のメンバーとなり、タリバン政権崩壊後ほどなく、バグラン州知事に任命された。現在はAfghan Mellat党(アフガン社会民主党)のメンバーである。(なお、ウィキペディア英語版によると、この党は「社民党」といっても、パシュトゥン・ナショナリズムの政党だとのこと。)

それと、日曜日に「常岡さんが解放された」と流した「州の関係者an Afghan provincial official」が、「彼を誘拐していたのはタリバンですよ」と述べているという件。

うむー。

調べられたのは現状ここまで。メモっておかないとわけわかんなくなるのでメモっておきました。




※この記事は

2010年09月06日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 19:01 | TrackBack(0) | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

……全文を読む
▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼















×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。