「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2010年08月23日

セックスと嘘と…ウィキリークス

日本時間で8月21日の夕方から夜にかけて、「Wikileaks創設者のジュリアン・アサンジにスウェーデンで逮捕状」というニュースが流れた。そして早くも何時間か後、日本で日付が変わってしばらくしてから「スウェーデン当局は逮捕状を取り下げ」というニュースが流れた。

この何時間かの間のことを、WikileaksによるTweetsを中心にまとめた(ただし前半は、先月末から今月これまでのWikileaksのtweetsを並べてあるし、最後の方には取り下げ後のtweetsを付け加えてある):
「スウェーデン当局が Wikileaks の創設者に逮捕状→スウェーデン当局が撤回」の混沌
http://togetter.com/li/43791


ジュリアン・アサンジに対する逮捕状の「容疑」は性暴力だった。一般的に、「性」をめぐるスキャンダルは、誰かを貶めようとする場合の "smear campaign" でよく使われる(例えば、北アイルランドでロイヤリストに爆殺されたナショナリストの女性弁護士は「身持ちの悪い女だった」、「クライアントと寝ていた」といったスキャンダルを流された)。これは、「根本的に人としてどうよ」という印象を世間に抱かせるための作戦だ。アサンジに対する今回のこれもおそらくそういう背景があってのものではないか、というのが多くの人の直感するところだと思う。私もそうだ。

※そういうのとは別に、誰かの身柄を押さえようとする場合にも「色仕掛け」がよく使われる(例えば、イスラエルの核開発を英サンデー・タイムズに暴露したモルデハイ・バヌヌさんはある女性にロンドンからローマへ誘い出され、イスラエルの情報組織に誘拐され、薬を打たれ、イスラエルへ連れ戻された)。

今回の「スキャンダル」を最初にWikileaks側が語ったときのTweet:


「私たちは『汚い手』に気をつけておけと言われていた。その最初のがこれだ」というような内容のtweetにURLが添えられている。

ここで紹介されているURLは、スウェーデンのタブロイドの報道をGoogle Translateで英訳したページのもの。翻訳の質としては、英文として読んで内容が完璧にわかる程度の精度(英語とスウェーデン語は近い言語だし、精度はよい)。機械翻訳のせいなのか元々そうなのか、スウェーデン語の知識のない私には判断できないが、この英文によれば、このタブロイドは「逮捕された」と報じているらしい。

※なお、このエントリのタイトルの元ネタは:
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で、奇妙なことに、全世界的に、メディアが「ソースはスウェーデンのタブロイド紙」&「検察当局は…報道内容を大筋で認めた」的な報道をしている。文書での確認も、警察もしくは検察の公式の発表を待つこともせずに。

その一例が、産経新聞の8月21日22時45分の記事:



産経のこの記事から拝借するが、アサンジへの容疑は「若い女性」に対する「暴行」の容疑と、「別の女性」に対する「いたずら」の2件だ。それぞれ英語では、rapeとmolestationという。

で、重大性でいうとrape>molestationであり、報道記事の見出しやそれを伝言するTwitter上の発言などでは「ウィキリークスのアサンジにレイプの容疑がかけられている」というように、rapeだけがクローズアップされていた。そのことはいろいろなTweetsをまとめたものでもご確認いただけると思うし、たまたまタブを閉じずにいたのでキャプチャ画像を取ることができたガーディアンの最初の報道(その後、同じURLで内容が書き換えられている)でも "accused of rape" という見出しになっている。(右図参照。クリックで原寸大の全体のキャプチャが表示されます。)

Rapeという語については特に説明不要だと思うが、ある行為が法的にそう呼べるものであるかどうか(「強姦罪を構成する」かどうか)はそんなに単純に判断できるとは限らない。そして、誰かが「強姦罪で告発された」ということを報じる場合などは、告発状の存在が前提になる。しかし、今回のジュリアン・アサンジに対する告発では告発状の存在はうかがえず、ただタブロイド紙がそういう報道をし、ほかのマスコミの人たちなどが当局に取材をして、「検察当局は…報道内容を大筋で認めた」という言質を取った段階で一斉に「ジュリアン・アサンジが強姦罪で告発され、逮捕状が出ている」と報じたらしい。

おかしいでしょ。

で、報道ってのは報道機関によって時差があるので(記者が記事を書く速度、デスクがそれを出すことを許可するスピード、サイトの更新のタイミング、などなど)、最初に上記にキャプチャしたガーディアンの記事を見てからしばらく、「何これ、わけわかめ〜(死語)」と思いつつ、警察の記者会見などもっと確実な確定情報が出るまでは何となく横目で見ていよう、と思ってる何時間かの間に、「撤回」って流れてきて、ますますわけわかんないということに。

閑話休題。

で、rapeのほかに容疑として挙げられているmolestationだが、これはほとんど「通例」と言ってもいいくらい多くの場合に「年少者に対する性的な意味を持つ行為」(日本語でいう「いたずら」。産経の木村記者の訳語選択に見られるように)を言う。実際にはこれはmolestationの語義のごく一部なのだが、非常に多くのケースにおいて "child molestation" という使われ方をしているので(ソース)、「年少者(子供)に対する」という意味合いがついてしまった語だ。(実際には、対象の年齢に関わらず、抵抗できない状況下にある相手が望まない性的な身体接触をはかることを言うようだが……たとえば日本語でいう「痴漢行為」もそうだし、「強制わいせつ」と訳している例もある<alcの英辞郎で確認。)

だから、今回「ジュリアン・アサンジにmolestationの容疑がかかった」(それが事実であるとは断定できない)ときに――というか、charged with rape, molestationと報じられたときに――、「あいつはやはり変態野郎だったか!」的な印象付けの力はかなりあったのではないかと思う。何しろアサンジは自分自身についてあまり語らない。(その彼がいろいろ語っている2010年7月のTED TALKS: 青木靖さん日本語訳はとてもおもしろい。)

この「秘密主義」は、誰かについて判断する時に「一緒に酒を飲みたいかどうか」しか基準にしたがらないようないわゆる「レッドネック」系の自称「アメリカの保守」なみなさん――wikileaksがやってきたことのほんの一部に過ぎないのだけれども、「アメリカ」に関係する重大なリークについて「そんなことまでばらしたらタリバン/アルカイダ/現地人どもを怒らせ、アメリカの兵士を危険にさらす」と怒る人々(ウィキリークスがあろうがなかろうが、現地の人々は直接、ファーストハンドで米軍兵士の行動を見て米軍の「誤爆」を経験しているのだが、そんな想像力もないらしい。おめでたいアホだね)――にとってはえらくマイナスに見えるだろう。

そこにもってきて、charged with rape, molestationである。うひょー。

……という反応を予期しての「ダーティ・トリック」だったのだろうと思う。「ダーティ・トリック」だったとすれば。

しかし、本気で陥れようとしていたのなら、上述したような「元々Wikileaksをよく思っていない人たち」に「奴ならやりかねん」と思わせるだけでは意味がない。Wikileaksを支持している人や、Wikileaksの活動を肯定的に見ている人たちに「幻滅した」、「もう支持しない」と思わせなければならない。

何も確証はないのだが、今回の件にはそういう感じはしない。

で、スウェーデンの当局が逮捕状を取り下げたのは、最初に申し立てを受理した検察官は「強姦」の事実があると考えたが、翌日、首席検察官が検討したら強姦罪を構成するような事実はなかったと判断したからだそうだ。そしてなお、もうひとつの容疑――つまりmolestation(性的虐待、痴漢、強制わいせつ)の容疑は残っているが、この場合はたとえその事実があったとしても逮捕には相当しないので、捜査は続けられるにしても、逮捕状の取り下げという判断は変わらないのだという。ただしそのことは、大手メディアでは重要視されている雰囲気はない。

※なお、23日にスウェーデン入りし、取材したジャーナリストのtweetsによると、強姦容疑を認めるという判断を取り下げたスウェーデン検察いわく、「証拠を検討したが、強姦の疑いはない。申し立て自体に信憑性がないというわけではない。ただ法的に強姦を構成しない」とのこと。
http://bit.ly/98ORqQ
http://bit.ly/buymuJ

※一方でジュリアン・アサンジ自身は最初から「根拠のない話」と疑惑を全否定している。

なんかわけのわかんない話であることは確かで、そう思ってる間にスウェーデンから「レイプされたと申し立てた女性はアサンジに思いを……」という主旨の説明が届いたりして、もう本当に何がなにやら。この説明によると、アサンジを告発した女性はアサンジの講演会を手配するなどしていた政党、キリスト教社会民主党の人で、……うーん、そのあとは簡単に伝聞できる感じではないので(別筋で裏が取れないとなんとも。それに検察のコメントと矛盾していると思う)、興味のある方は英文でお読みください。

なお、最初に報道したスウェーデンのタブロイド, Expressenは、Wikipediaの英語版で "centre-right" と説明されていますが、それはつまり「政治スタンスが右翼の新聞」ということです(「センターライト」と言われる新聞にはほかにエルサレム・ポストとか英デイリー・メイルとか)。
http://en.wikipedia.org/wiki/Expressen



※書きかけかも






※この記事は

2010年08月23日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 23:56 | TrackBack(0) | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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