【追記】現場の様子。居合わせた人たちが撮影した映像を編集したものだと思う。人々がみな助け合ってる。
24日にドイツのDuisburg(デュースブルク)でのイベント、「ラヴパレード」で発生した大混雑に起因する事故は、発生から一夜明け、状況をはっきりさせる報道が増えてきた。一方で、日本時間の25日朝の時点で18人だった死者数は、夕方には19人に増えた。負傷者は当初伝えられていた「数十人 dozens」とか「100人」という数値を大きく上回る342人であることが、日本での朝から夕方までの間の時間帯に明らかになった。
そして日本時間の25日夜8時前、イベントのオーガナイザーがLoveParadeの終了を宣言していることが報じられた。Google Newsのアラート経由、デイリー・テレグラフ(日曜だからサンデー・テレグラフか)の記事より:
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/europe/germany/7909015/Love-Parade-cancelled-permanently-as-police-investigate-causes-of-crush-that-killed-19.html
The organiser of the Love Parade says the yearly techno music festival will never be held again after 19 people were killed and 342 were injured in a panicked crush in an entrance tunnel. ...
"The Love Parade was always a peaceful event and a happy party" but would forever be overshadowed by the tragedy, Rainer Schaller said. "It's over for the Love Parade."
会場入り口のトンネルでパニックが発生し人々が将棋倒しになった結果19人が死亡、342人が負傷という事態が発生したのを受けて、Love Paradeのオーガナイザーが、毎年開催されてきたこのフェスは今後二度と開催されることはないと述べた。……
Rainer Shallerは、「Love Paradeは常に平和的なイベントで、楽しいパーティだった」が、今回の大惨事の影を拭い去ることはできない、と述べた。「Love Paradeはこれで終了です」
※BBCに記者会見の映像がある(ドイツ語に英語の同時通訳)。Rainer Shallerさんは、ドイツ語ウィキペディアを見ると、McFit社(2006年にラヴパレードが再開されて以降のスポンサー)の社長という立場でラヴパレードのオーガナイザーとして会見を開いているようだ。(つまり、ラヴパレードはもはや音楽畑の人がオーガナイザーとして語るようなものではなくなっていた、ということでもある。)
このテレグラフ記事には、25日(日曜日)に現地の警察・行政が行なった記者会見の内容などもまとめられている。
これを読みながら思い出されたのは、9年前の明石花火大会歩道橋事故だ。大規模な花火大会が行われていた海岸へ行く通路の「駅南側の歩道橋において、駅方面からの見物客と会場方面からの見物客とが合流する南端で1m²あたり13人から15人という異常な混雑となったことから「群衆雪崩」が発生。死者11名(内訳:10歳未満9名・70歳以上2名)と重軽傷者247名を出す大惨事となった」という事故だ。
検索したら、当時の神戸新聞の記事を読むことができた。
http://www.kobe-np.co.jp/backnumber/asagiri/010722ke15390.html
海岸へ唯一の通路 過去にも大混雑
2001/07/22
真夏の花火見物が暗転した将棋倒し事故。多数の死傷者が出た背景は何なのか。約二年前にできた現場の陸橋は、上部は開いているものの、幅約六メートルの通路の両側は上部まで側面が囲う形。現場からの一一〇番の一報情報では「気分が悪くなった」「酸欠症状」という内容も目立つ。構造上の問題を指摘する声もある。
「酸欠症状」という情報は、一一〇番による一報だけでなく、負傷者らが運び込まれた明石市内の病院の診断でも目立った。
……
同陸橋は、円筒状になっており、両側が強化ガラスに覆われ、中空部の一部だけが開いている。ほぼ密閉された空間となっており、混雑した場合、通気性が極めて悪い構造になっていたという指摘もある。
今回のラヴパレードでの事故は、トンネルの中で起きたという(ただし日曜日の警察の会見では、「トンネル内では死者は出ていない」とのこと。当初報道ではトンネル内がパニックとなったとのことだったが、亡くなった方は階段や壁際にいたとのこと)。
このトンネルは2車線に歩道というあまり広くない道幅で、側面や天井は密閉されていて、天井は低い(ドイツのメディアが掲載している写真を参照)。明石の歩道橋よりさらに空気の流れのない空間。これでは仮に風が強かったとしても、トンネル内部は通気性などまったくなかっただろう。よく晴れた暑い夏の日、立錐の余地もなく道幅一杯に人がすし詰めになって誰も身動きが取れない状態で、通気性などないトンネルでどういうことが発生したか、想像するだけで怖くなる。2001年7月の明石の海岸の花火大会で亡くなったのはお子さんとご高齢の方だったが、今回あのトンネルでの事故で亡くなった19人(うち16人は身元判明)は、20代はじめから40歳だとテレグラフの記事にある。
Detlef von Schmeling, the police chief in Duisburg, said that 16 of the 19 people killed have been identified so far. He said they include an Australian, an Italian, a Chinese citizen and a person from Holland.
Mr Von Schmeling said their ages ranged from just over 20 to 40.
*Emphasis added.
テレグラフの記事には、ドイツのメディアは、そこ(=フェス会場)には少なくとも140万人がいたと報じているが(これは多分主催者が発表した推定の数値だと思う)、警察はそれをコンファームしていない、とある。
で、事故発生直後は英語の報道でも少し曖昧だったのだが、会場に入るルートは事故が起きたトンネルしかなかったとのこと。だからおおぜいの人がトンネルに向かったのは当然のことだ。そしてトンネルに着いてみればあの混雑っぷりで、列の先頭が少しずつでも動いているのならまだしも、そうではなかった(会場に人を入れないようにしていた)。トンネルの中で「埒が明かないから引き返そう」と思ったとしても、自分の後ろにも既に人々が詰まっている状態では引き返すこともできない。
その点について、記事は詳しく報じている――夕方5時ごろ、混雑しすぎのため、フェス会場に入るトンネルの出口(の先にある門のようなものだと思うが)は、警官(なのかよくわからないが原文ではofficer)によって閉鎖された。混乱した事態になったのはその後だった。警察は来場者に対し引き返すよう拡声器で指示していたというが、トンネルは、出口の側は封鎖されているのに入り口は開いたままで、続々と人がやってきていた。
Witnesses said officers in Duisburg, a city near Duesseldorf in western Germany, closed the end of the tunnel emptying onto the festival grounds after they become overcrowded around 5 p.m. They told revelers over loudspeakers to turn around and walk back in the other direction. But the entrance to the tunnel did not appear to have been closed and people continued piling in, sparking a panic and then a deadly crush.
これは今後の調査で立証されなければならないが、この通りだとしたら、完全に当局のポカだろう。何万人単位で人が集まるイベントで、狭い空間で、出口封鎖して入り口開けたままにしておくなどということは考えられない。しかもラヴパレードは「何万人単位」どころではない。何十万人単位で人が来ている。
それに、写真を見るとやはり、会場の入り口で指示されたから引き返す、とかいうことのできる状況ではない。とにかく一面の人、人、人、まったく誰も身動きが取れない。たぶん、来る人の数が多すぎて、会場への入り口が閉鎖されてそんなに時間が経たないうちにこんなふうにいっぱいになってしまったのだろうけれど、こんなふうになる前に、警察が状況を適切に見極めて人の流れを作ることができていたら……と思う。
テレグラフの記事にはこのあと、現場にいた人の証言が紹介され、その後、事故当時の状況についての記述がある(更なるパニックを恐れてフェスを中止することはしなかったとか、人が多すぎて救急隊員が現場に行くのもスムーズには進まなかったとか、一時は携帯電話が繋がらない状態になっていたとか)。
あと、子供がラヴパレードに来ているので心配になった親たちが車で現場にやってきたとか(混乱に拍車がかかるだけだという了解がないというより、ラヴパレードの規模がわかってなかったんじゃないかと思う)、救急ヘリが出動しても着陸できるスペースがなくて重傷者を搬送するのに手間取ったとか、明らかに、こういう大規模なイベントを開催できる下地がある都市ではなかった感じがする。
Love Paradeの創始者のDJ、Dr. Motteは、会場のプランについて「会場に入るにはトンネルを経由した道しかないなんて、それだけでも大惨事につながることだ」と批判、「たいへんに悲しく思っている」とコメントしている。
また、メルケル首相をはじめ政治指導者たちもコメントを出し、若さとラヴ&ピースを祝うイベントがこのような痛ましい事故の場となったことについてのショックを表明した。
追記予定。→エントリの一番上に映像を追記。エントリの途中にIrish Timesの記事の内容を追記。
※この記事は
2010年07月25日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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