BBCは、「日曜日も保守党とLib Demsの協議は継続される」という内容の報道(つまり「連立合意には至っておらず、決裂はしていない」):

BBC NEWS | UK via kwout
ガーディアン/オブザーヴァーは、何か揺さぶりをかけようとしているのか、保守党の「反EU」の方針を明示した文書(予想以上の内容)がリークされたというスクープ記事(Lib DemsはEUとの関係強化を主張していて、保守党とはまったく逆)を、フォトグラファーの腕がよすぎるだろうという見事な写真とともにトップページに掲載:
ニュース記事として2番目の扱いである「保守党がキャメロンを批判」みたいな内容のヘッドラインは、英史上最低最悪の支持率(あのイーデンより低かったらしい)の首相を相手に勝利宣言を出せない程度の結果だったことで、キャメロンに批判が集まっているという内容。他のメディアでも同様の記事がありました。実際の投票行動には結びつかなかった「クレッグマニア」とか「Lib Dem旋風」は言い訳には使えないし、どう切り抜けるのかな。党内保守派(というか強硬派)に譲る部分が出てくるかも。
タイムズ/サンデータイムズは、ガーディアン/オブザーヴァーと同じく昨日のVE Day記念式典で撮影された3人の顔の写真を使っているが、写真はクレッグにピントが合っていて、記事は「有権者はブラウンに退陣を要求」と、何かちぐはぐな感じ。ただし社説(The Sunday Times名義のCOMMENTの記事)は、A Tory-Lib Dem pact is best for Britain(保守党とLibDemが手を結ぶのが英国にとって最良)。
BBCで延々とストリームされていた選挙開票特番でも、保守党のお偉いさんたちから、「大丈夫、保守党は単独で政権立てるべき」論と「Lib Demsと連立して政権の安定を確保すべき」論の両方が出ていることが紹介されていた。前者は、今日のオブザーヴァーに文書がリークされていたウィリアム・ヘイグ(多分外相になる)らの意見、後者は、議員を引退してからめったにインタビューなどに応じなくなっているジョン・メイジャー元首相が久々に応じたBBCのインタビューなど。恐らく保守党内が、後者の意見を主軸に、前者の意見を部分的に取り入れてまとめられているのだろう。
ヘイグやハワードみたいなガチガチの保守党筋とLib Demsは水と油に近いように見えるかもしれないが、Lib Demsの中もいろいろ流派みたいなのはありそうではある。
(2006年にチャールズ・ケネディがアルコール依存の問題で退いた後の党首選挙で、明らかに当選しそうだったやり手のリベラルが「タブロイド紙によるセクシュアリティの暴露」という最悪にくだらないことをやられた挙句、LibDem内保守派のおじいさんが党首になったのだが、ケネディの下での明確に反戦リベラルだったLib Demsを支持していた人たちは、この党首選でかなり手を引いたか、距離を置くようになったんじゃなかったっけか……。その後の2007年に、非常にリベラルなニック・クレッグが党首になって今に至るのだが。)
なお、Lib Demsは自由党と、1980年ごろにすごい急進的な方面に行った労働党を離党した穏健な社会民主主義者の政党SDPが連合することによって1988年に成立した。「自由党」は世界史をやった人なら誰でも知ってると思うが、貿易について自由主義か保護主義かで分かれた二大政党制だった19世紀英国議会の自由貿易陣営(ホイッグ)。20世紀に入るとそういう対立軸がどうでもよくなってきて、代わりに資本家の利益か労働者の利益かの二大政党制の時代(保守党対労働党)になって、自由党は埋没していったのだけれども、元々「反保守党」であることは絶対的なもので、労働党との連合は想定しやすいのだけれども、保守党とのそれは想定しづらい。
で、根本的な部分で保守党の主義主張とLib Demsのそれとはまったく逆だったりするのだが、この13年間の労働党の「ビッグ・ブラザー」的な方向への踏み込みのあまりの深さ(労働党に「テロ対策」をやらせたら保守党よりずっと深かった……1980年代にロンドンをボムっていたIRAについて「自由」を語っていた連中が次々と、ビッグ・ブラザー的な法律を作った)ゆえに、保守党内であまりイデオロギー主導ではなく宗教右派でもない人たちのほうが、相対的に、Lib Demsに近くなっていることは確かにありそうな感じ。
そのへんの話はBBCにいろいろと出ている記事が一番詳しくて的確なのではないかと思います。上のほうに貼ったキャプチャ画像内の見出しをクリックで記事が読めますのでどうぞ。
※この記事は
2010年05月09日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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