kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2010年03月26日

インディペンデント売却――彼は「元KGB」である以上に、「アンナ・ポリトコフスカヤが記事を書いてた新聞の社主」なんだけどね。

「そういうことになるのではないか」という報道が最初にあってから1年以上経過していると思うが、今回いろいろな条件の折り合いがつき、公正取引委員会からもOKが出て、英国の全国紙、The Independent(およびその日曜版)が、アイルランド共和国のメディア富豪の会社から、ロシアのメディア富豪の設立する会社に、名目上の価格である£1で売却との確定報道が来た。(ちなみに£1っていうと、ニューズエイジェントとかで新聞を1部買うときの価格。)

The Independent bought by Lebedev for £1
Page last updated at 17:42 GMT, Thursday, 25 March 2010
http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/8587469.stm

日本語でも報道が出ている。朝日新聞記事:

元KGB富豪 英高級紙を1ポンドで買収
2010年3月26日1時6分
http://www.asahi.com/international/update/0326/TKY201003250573.html
 英国の高級日刊紙「インディペンデント」と系列の日曜紙「インディペンデント・オン・サンデー」が25日、旧ソ連国家保安委員会(KGB)のスパイだったロシアの富豪、アレクサンドル・レベジェフ氏に買収されることになった。

……

 レベジェフ氏は2009年1月にも、ロンドンの夕刊紙「イブニング・スタンダード」を1ポンドで買収した。(橋本聡)


Alexander Lebedevについて、「元KGB」と強調するのは、タイムズなどでもやっていることだが、非常に頭の悪いことだと思う。1959年生まれ(ソ連崩壊のときは30歳になるかならないか程度)の彼は、元々は経済学でアカデミックな方面に行こうとしていた人で、KGBとその後継機関のThe Foreign Intelligence Service (SVR: FSBではない) で仕事をしていたときには経済アタシェとしてロンドンにいて、ロシアからの資本流出の対策などをしていたらしい。1992年に退職して実業界に入り、最初に買った瀕死の銀行が大化け。以後、実業家として成功して、アエロフロートの株の30パーセントを保有し、金融、航空機製造、エネルギー産業などでも押さえるところを押さえてて超リッチ。2003年から2007年まではロシアの国会議員をつとめ、2008年にはミハイル・ゴルバチョフとともに新党the Independent Democratic Party of Russiaを立ち上げた。
http://en.wikipedia.org/wiki/Alexander_Lebedev

また彼は、ゴルバチョフと共同で、ノヴァヤ・ガゼータという新聞の株式の49パーセントを持っている(1993年創刊時にゴルバチョフがノーベル平和賞の賞金で支援しているそうだ)。この新聞は、2006年に殺害されたアンナ・ポリトコスフカヤが、特にチェチェン戦争に関連してロシア軍・治安当局による人権侵害を追及する記事を書いていたことで広く知られているはずだ。
http://en.wikipedia.org/wiki/Novaya_Gazeta

レベデフ(レベジェフ)によるイヴニング・スタンダードの買収については、過去記事(下記)を参照。

2009年01月22日 イヴニング・スタンダードが「外資」系になることが決定。
http://nofrills.seesaa.net/article/112990964.html

イヴニング・スタンダードは、買収されてから8ヶ月ほど後の2009年10月に無料化された。

2009年10月03日 イヴニング・スタンダードが無料化。
http://nofrills.seesaa.net/article/129375966.html

さて、今回その「ロシア富豪」がお買い上げになったThe Independent (およびその日曜版)、これは1986年にブリテンで立ち上げられた新聞である。紙名の通り、「(保守党と労働党という大きな構図から)独立した」立場から発言し報道を行なうというスタンスだが、2000年代、イラク戦争以降は総選挙でLibDems支持を打ち出すなどしている。

「独立」路線を高らかにうたったインディペンデントは、創刊直後(サッチャー政権下で、大袈裟に言えば「新自由主義支持か乱暴なストライキ支持か」みたいな二項対立の時代)は勢いがよかったものの90年代には既に頭打ちのような感じになり、アイルランドのメディア富豪のオライリー家が100パーセントの株式を持っているIndependent News & Mediaというメディア企業が、90年代半ばから段階的にこの新聞の支配を強めた。その後INMのもとでいろいろがんばってはみたが、結局、根本的な問題解決には至らず、部数が伸びないまま赤字を出し続ける「グループのお荷物」的な存在に。
http://en.wikipedia.org/wiki/The_Independent

なお、このエントリの冒頭で参照した朝日の記事には、「不況で18万部まで減り」と書かれているが、インディの部数という問題に限っては「不況」(たぶんリーマンショックの余波のことだろう)は関係ない。それと、「18万部」って日本の感覚では「少なっ!」というところだろうけれど、英国では部数最大のテレグラフだって70万部くらいだ(詳細後述)。こういう数字を感覚的な感じで投げておく記事の書き方は、なんだかなーと思う。

閑話休題。ガーディアンのメディア欄の記事から、部数についてのところ。
http://www.guardian.co.uk/media/2010/mar/05/lebedev-buys-independent-newspapers
The paper's circulation peaked at 400,000 in 1989 and the Independent on Sunday launched in 1990.

But in February its headline circulation had fallen to 183,547 copies, with full-rate sales accounting for just under 50% of the total. Circulation was down 10.88% year on year.


この記事には、インディペンデント(というかINM)とトリニティ・ミラー社(タブロイドのデイリー・ミラー)、またデイリー・メイルとの契約のことなど(前者は印刷工場、後者はオフィス)、INMとインディを取り巻くビジネス上の事情が書かれている。

ガーディアンの記事はとても詳しいのだけれども若干わかりづらい。下記ロイターの記事もあわせて参照すると、全体像がはっきりする。
http://www.reuters.com/article/idUSLDE62O1QP20100325
Closing down the Independent would have cost INM some 30 million pounds, much of it in punitive payments for the early termination of a printing contract with British newspaper group Trinity Mirror ...

...

Lebedev, an ex-KGB agent who bought the London Evening Standard last year, said he was committed to investing in the two titles, which will be owned by Independent Print Limited, a company controlled by his family. He will pay 1 pound to INM.

He also said that he and ex-Soviet leader Mikhail Gorbachev planned to establish a not-for-profit media foundation that would finance global media projects for newspapers including Novaya Gazeta, a pro-democracy Russian newspaper they co-own. ...

……なんか、すごいことが書いてありますね。さらっと。

なお、レベジェフ父子は既にゴードン・ブラウン首相とは話をしているようで(たぶん公正取引委員会的なこと)、そのときに、「インディペンデントはイヴニング・スタンダードのように無料化はしない」という方針を伝えてあるとのこと。

経営方針というかポリシー的なことは、イヴニング・スタンダードの記事が詳しいのでそれを。

Lebedev family buys Independent in deal to secure paper's future
http://www.thisislondon.co.uk/standard/article-23819111-evening-standard-owner-alexander-lebedev-buys-independent.do
Alexander Lebedev said: "I invest in institutions which contribute to democracy and transparency and, at the heart of that, are newspapers which report independently and campaign for the truth to be revealed.

"I am a supporter of in-depth investigative reporting and campaigns which promote transparency and seek to fight international corruption. These are things The Independent has always done well and will, I hope, continue to do."


※私の大きな関心事である「今後、ベルファスト・テレグラフのサイトでロバート・フィスクやドナルド・マッキンタイアの記事を読むことができるのかどうか」は現時点では不明。



英国には全国紙でタブロイドではないまともな新聞(いわゆるquality paper, 「高級紙」)は4紙ある。The Times(ルパート・マードック組)、The Daily Telegraph(保守党と退役軍人と高齢者がお得意さん)、The Guardian(労働党というかフェビアン協会お抱え)とThe Independentだ。

英国は人口は日本のおよそ半分だが、全国紙の部数はその基準では考えられないくらいに小さい。日本では新聞の部数といえば「数百万部」だが、英国ではクオリティ・ペーパーは「数十万部」である(タブロイドは「数百万部」だと思う)。Newspaper Marketing Agencyの資料によると、01 Feb 10 - 28 Feb 10の数値は、部数最大のテレグラフが685,177部、タイムズが505,062部、ガーディアンが284,514部、インディペンデントは183,547部。販売店での価格はいずれも£1.00(平日)だ。

http://www.inmplc.com/group-websitesインディペンデントを保有していたINMは、本社はダブリン。アイルランド共和国の全国紙アイリッシュ・インディペンデント(Home Ruleのころから続いている新聞で、英国のインディペンデントとは無関係)を中心とするメディア・グループで、アイルランド島とブリテン島(右図キャプチャ via kwout 参照……文字は小さくて読めないかもしれませんが)のほか、オセアニア、南アフリカでいくつものタイトルを抱えている。1973年にこのメディア企業を買った実業家のTony O'Reilly(ハインツの会長だった)は、先日ついにガラス工場が閉鎖されたウォーターフォード・ウェジウッドでも巨額の損失を被っていた。ウィキペディアにForbesのソースつきで記載されているのだが、ウォーターフォード破綻とINMの株価下落で大打撃を受けた彼は、Forbesの世界の富豪リストから脱落してしまったとのこと。

なお、このエントリの冒頭で参照した朝日記事には「インディペンデントは、ファッションなど都会的なセンスの紙面が売り物」とあるが、それは正直「?」だ。ひょっとしたらThe (RED) Independentのときにジョルジオ・アルマーニが出てきたとかいうことを言っているのかもしれないが、インディがセンスのよさで定評があるということを聞いた記憶は、私はまったくない。(UKで「都会的センス」の新聞っていうならガーディアンだよなあ。ガラモンのイタリック+ヘルベチカの旧ロゴも、今の新フォントのロゴもかっこいいし、昔から写真の使い方も含めた紙面デザインがスタイリッシュだった。)インディといえば、1990年ごろに「英語でのライティングのお手本となる新聞としてはインディペンデントだ」ということを、私よりずっと英語ができる知人の英語の先生からうかがったことをはっきりと覚えている。(「ガーディアンの難解な文章」をサカナにお茶してたときだったかな。)



なお、何度も書いていることだが、インディペンデントは北アイルランドに関しては「反IRA」のバイアスが強すぎて、ほとんど信頼できない(それがあまりにひどいので、私はこの新聞は基本的に見ないことにしている)。ただし今回オライリー家を離れるとのことで、アイリッシュ・インディペンデントとも切れるのだから、多少の変化はあるかもしれない。でも北アイルランドについての報道に今以上に力を入れることはないだろうけど。
タグ:メディア

※この記事は

2010年03月26日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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