「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2010年03月04日

NIで「司法大臣」になりそうな政治家が「ブラディ・サンデーのインクワイアリは無駄 pointless」との見解

「プロテスタント」か「カトリック」かが「ユニオニスト」か「ナショナリスト」かをそのまま表しているかのような北アイルランドの政治事情のなかで、アライアンス党 (Alliance) といえば唯一、そういったセクタリアニズムとは関係のないところにいて、なおかつそれなりの勢力(自治議会での議席数)を有している政党だ。政治思想的にはリベラリズム(というかLiberal Democracy)で、仮にこの政党の活動域が北アイルランドじゃなくても「中道」に位置する。
http://en.wikipedia.org/wiki/Alliance_Party_of_Northern_Ireland

2001年からこの政党の党首を務めているデイヴィッド・フォードは、(先日大もめにもめて「エクストリーム議論」状態となった)「司法・警察権限の自治政府への移譲」がなされたときには北アイルランド自治政府の「司法大臣」に就任することになるのではないかといわれてきた政治家だ(アライアンスが「オレンジでも緑でもない」からだが)。NI自治議会の中継を見ている人には、「ストーモントの議場の中で唯一聞き取りに苦労しないアクセントで喋ってくれる政治家」としておなじみだろう。(親は北アイルランドの人とウェールズの人だが、本人はイングランド南東部育ち。)「濃いキャラ」(宗教指導者だのヤングアース論者だのIRAだの……)による濃い話ばっかりで、議長が何度も "order, order" と言わねばならないようなときにも、ひとりで涼しい顔をしてしゅっと喋っているような印象が私にも強くある。
http://en.wikipedia.org/wiki/David_Ford

そのフォード党首が、「ブラディ・サンデーのインクワイアリは無駄 pointless」との見解を示していたことが明らかにされた。昨年11月に、英Liberal Democratsへのメールでそういうことを書いていたとのこと。

SluggerのエントリにBBC記事リンクあり。Sluggerのエントリのタイトルが、フォードの書いた文言そのもののようだ。

"Saville is pointless (so is any question on it)"
http://sluggerotoole.com/index.php/weblog/comments/saville-is-pointless-so-is-any-question-on-it/

デリー・ジャーナル(ブラディ・サンデー事件の現場となったデリーの、カトリック・コミュニティの間で読まれる地域紙):

Ford under fire over Bloody Sunday comments
Published Date: 04 March 2010
http://www.derryjournal.com/journal/Ford-under-fire-over-Bloody.6123075.jp

ただしデリー・ジャーナルの記事は、急いでタイプして急いで出したものなのかもしれないが、ブラディ・サンデーが起きた年が間違って記述されていたり(正しくは1972年)、写真キャプションの「フォード」の綴りが変だったり(正しくはFord)、ちょっとトホホな感じだ。



しかしこれを上回るトホホが、「ぐろーにあど」ことガーディアン(ウェブ版のトップページの編集担当)。



誰がMP(英国下院議員)ですって?

デイヴィッド・フォードはMLA(北アイルランド自治議会議員)ではあるけれども、MPではない。ていうかアライアンスは英下院に議席の持てるような党ではない。

ともあれ、ガーディアンのこの記事はヘンリー・マクドナルドが書いていて、私が見た中で最も具体的でわかりやすい。

Bloody Sunday inquiry pointless, says Northern Ireland politician
http://www.guardian.co.uk/uk/2010/mar/04/bloody-sunday-inquiry-northern-ireland

David Ford today defended previous remarks to the Liberal Democrats that the Saville inquiry was "pointless".

The Alliance party leader said he did not think justice was served by spending the bulk of £200m on lawyers' fees.


そうなんだよね。あの長い歳月と巨額の費用の末にようやく、当初予定より何年も遅れてようやく、数千ページ単位での報告書がまとめられたというのに、英総選挙日程との兼ね合いでまた公表が先送りにされる見込みでね……って、最後の、「総選挙日程との兼ね合いで」云々は、フォードがメールを書いたという昨年11月の時点ではまだ出てなかった話か。昨年9月に「ページ数が膨大なので印刷に時間がかかり、年内無理」っていうことが公表されたあとの段階。

……でもフォードがpointlessと言っているのはそういうことじゃないよね。文面が "Saville is pointless", adding in brackets and "so is any question on it" なんだから。

BBC記事から:
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/8548288.stm
At Northern Ireland Question time that week, 4 November, the Liberal Democrat spokesman Alistair Carmichael did ask questions along those lines.

There were five questions on the Saville Inquiry from other MPs.


というわけで、この週の英国下院(アライアンスはLibDemと提携関係みたいな感じの間柄)でのNIに関する質疑応答のやり取りを見てみないと、フォードが具体的に何について "pointless" などというきつい言葉を使っているのかがわからないのだが、それは明日になればBBCなりデリー・ジャーナルなりがやってくれてるだろうと期待して、私は寝る。Sluggerのコメント欄を見てたら心底悲しくなってきたので。

事件後30年近く経ってからサヴィル・インクワイアリが行なわれたのは、1972年1月30日に英軍によって射殺され、死体となった後にポケットにボムを仕込まれて、英軍による「連中は我々を攻撃しようとしていたので防御のため撃った」という説明を成り立たせるのに利用された犠牲者たちの家族にとって、英軍の説明は虚偽であり、彼らは本当に武器など持っていなかったということを、「民間」レベルの「主張」ではなく、「公的」に、「記録」させることがマストだからだ。それに巨額の費用がかかったのは、事件直後の英軍による虚偽の説明を受け入れ、そのまま30年近くも放置してきた英国のせい。



遺族の怒りの声。2008年のNI映画祭で見たマーゴ・ハーキン監督のドキュメンタリー作品、『デリー・ダイアリー』でも触れられていた、遺族の間での「何の為に」という葛藤が根底にある。
Liam Wray, whose brother Jim was killed, said he would not meet the Alliance leader.

He added: "Let me tell Mr Ford that although I am not a great advocate of the inquiry, it certainly was not pointless - it certainly scored points.

"This inquiry exposed quite clearly the fraudulent forensics that damned my brother's and others' reputations."

David Ford to meet Bloody Sunday families
Page last updated at 12:29 GMT, Thursday, 4 March 2010
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/8548714.stm

※この記事は

2010年03月04日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 23:00 | TrackBack(1) | todays news from uk/northern ireland | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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ストーモントでのNI自治政府司法大臣指名、今中継が始まりました→デイヴィッド・フォードが指名され、終了。
Excerpt: 今日、38年ぶりに、警察と司法の権限がロンドンからベルファストに移されます。 ストーモントでのNI自治政府司法大臣指名、まさに今中継が始まりました@12日21:45日本時間。 http://news..
Weblog: tnfuk [today's news from uk+]
Tracked: 2010-04-12 22:52

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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