kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2010年01月10日

ロビンソン・スキャンダルの基本的な背景

この件についてのエントリは
「アイリス・ロビンソン」のタグで一覧できます。



AFP BBで下記の記事で、「ミセス・ロビンソン」のスキャンダルのことが伝えられているのだが:



この記事はおそらく(←私自身まだ100パーセントの確信に至っていない段階。失礼な話だけど、裏を取る手間がかかりすぎるのでご容赦)、日本語記事原稿作成者の予備知識不足に基づく勝手な判断を「事実」として伝えているようだ。(AFP BBは、AFPの英文の記事を「翻訳」するのではなく、内容を日本語でまとめて独自の記事にしている。元となる英文記事は複数の場合もある。)特に下記のくだり。
アイリスさんは、男性にカフェの開業資金として5万ポンド(約740万円)を援助したが、その元手となった不動産関連の収入を申告していなかったことも明るみになっていた。政界を揺るがす騒動に発展し、党内からも首相の辞任を迫る声が出ている。

確認できる範囲で、土曜日(現地)までの時点で「党内から辞任の声」が上がっていたのはアイリス・ロビンソンに対してである。

【追記@19:30すぎ】【さらに追記@23時すぎ】
上記の「党内からも首相の辞任を迫る声」は、AFPの「誤報」ないし「勇み足」ということで確定してよいようです。上記AFP BB記事の元となったAFP記事が書かれた時点(土曜日)では、BBCやベルファスト・テレグラフで「事実」として報道されていた内容は、「DUPは(少なくとも形式的には)ピーター・ロビンソン首相支持で一致」でした(やや含みはあったけれども……このエントリの下の方を参照)。わかりやすい例として、下記Channel Fourの報道に埋め込まれているEamon Mallieによるピーター・ロビンソンへのインタビューを参照。
http://www.channel4.com/news/articles/politics/domestic_politics/dup+dropps+iris+robinson/3494737

「ロビンソンはそう考えている Peter Robinson believes (thinks) that ... 」の形式ながら、DUP党内にロビンソン降ろしの動きはないと述べています。AFPのような、北アイルランドから離れたメディアが、北アイルランドのベテラン・ジャーナリストであるEamon Mallieより早く「党内で辞任を求める声」の存在をつかめるとは考えられません。

一方、上記のAFP BBが基づいている可能性のあるAFPの記事には下記がありますが(ただしパブリッシュされた時間が微妙。日本語記事のほうが早いかもしれず、日本語記事のほうが早ければこの英文記事を基にした可能性はない):

Disgraced wife of N.Ireland first minister to resign: party
http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5hL6GHwWG17ELyw1IaWLGIEBMVwrw
Peter Robinson has insisted he knew nothing of his wife's financial dealings and has vowed to clear his name, but he is facing growing calls to resign or consider his future amid deep disquiet within the DUP.


deep disquiet within the DUP(DUP党内には根深い不穏さがある)の内容は、この記事では具体的にはなっていません。DUPの政治家の誰かがロビンソンに辞するよう求めているということも書かれていません。

ただし記事の下の方で、DUPと深いつながりのあるフリー・プレスビテリアン教会(DUP創設者であるイアン・ペイズリーが創設した新興の教会で、プレスビテリアン教会そのものとは違う)の宗教指導者が「ピーター・ロビンソンのポジションは維持されえないと考えられる」と述べた、というくだりはありますが、これは「DUP党内から首相に辞任要求」というには、少し距離があります。


なお、現時点(日曜日の夜、日本時間)ではDUPの関係者(上記と同一人物、フリー・プレスビテリアン教会の宗教指導者)からロビンソンに対し、「少なくとも一時的に退いてはどうか」という声が出ています(これは明らかに、遠回しな辞任勧告です)。ただしこれは「DUP所属の政治家」の意見ではなく、「DUP所属の政治家の相談役となっている宗教家」の意見です。
http://www.rte.ie/news/2010/0110/robinsonp.html
【追記ここまで】

ニュースのペースが速すぎて、しかもノイズが多すぎて(政治家からブロガーまで、発言者が多い上にワイドショーねたなので)誰が何を言っているのか私には把握しきれていないのだが、ピーター・ロビンソンに対する辞任要求の声もあるにはあるにせよ、それらの要求はDUPの中のものではない(党内でそんな動きが既に出てたら「アイリスのお相手はイケメン」とかいうネタでげらげら笑っている場合ではない)。自治政府内ではそういった要求が生じていると解釈される動きが日本時間の今日午前にはっきりしたが(シン・フェインが自治議会に動議を出す)、シン・フェインはDUPとはまったく別の政党だ。

事実関係が多少ややこしく、AFP BBの記事を書いた人がよくわかっていなかったのかもしれないが、ロビンソン夫妻は2人ともDUP所属の「英国会議員」で「北アイルランド自治議会議員」も兼職しており(こういう兼職は英国では違法ではなく、北アイルランドでは当たり前。ただし今後見直される)、日本の報道の文章の書き方の慣例上、アイリス・ロビンソンは「さん」づけではなく「議員」づけをすべき人物である。(「アイリス・ロビンソン北アイルランド自治議会議員・英国下院議員 Iris Robinson MLA, MP」となる。)

で、アイリスの夫のピーター・ロビンソンはDUP所属の「英国会議員」で「北アイルランド自治議会議員」である上に、DUP党首であり、DUPは北アイルランド自治議会 (the Northern Ireland Assembly) の第一党なので、北アイルランド自治政府 (the Northern Ireland Exective) の「首相 First Minister」を務めている。(北アイルランドの自治政府は最大政党が組閣するのではなく、議会に議席を有する各政党に議席に応じて閣僚のポストが配分されるpower-sharingのかたちである。)

つまり:
夫・ピーター=英国下院議員、北アイルランド自治議会議員、北アイルランド自治政府首相
妻・アイリス=英国下院議員、北アイルランド自治議会議員

そして、二人の所属政党は、アイリスの党籍を剥奪し、アイリスに対してこの「議員」のポストを即座に辞するように要求した。これは確かだ。9日付ノベルファスト・テレグラフより(ここにあるのと同じ「党関係者」の発言がBBCなど他のメディアでも伝えられている。AFP BBの日本語記事の末尾にもある)。

Her membership has been terminated and she will leave Westminster and her MLA's position in Stormont as early as next week because of the shame over her financial dealings with a toy boy lover.

A party source said: "The next few days is absolutely critical for the party.

"We wanted to show people we were acting decisively.

"There was no question about it, she had to go and go now.

"There was absolutely no sympathy for the position she found herself in."

The source said party officers would meet as early as Monday to decide who would replace Mrs Robinson as MLA in the Northern Ireland Assembly.

Read more: http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/local-national/iris-robinson-thrown-out-of-dup-after-kirk-mccambley-revelations-14629489.html#ixzz0cCY6VOTH


しかしながら実際には、党が要求するまでもなく、アイリス・ロビンソンは既に「議員を辞めることにした」と宣言している。それが今から10日ほど前の12月末のことだ(この時点では、1月第2週のBBCの番組で何が明らかにされるかがロビンソン夫妻にはわかっていた。夫妻はBBCに対する放送差し止めの手続には失敗したのだろう)。ただしこの時点では「いつ辞める」ということは明確にしていなかった。

2009年12月29日 アイリス・ロビンソンが政界引退
http://nofrills.seesaa.net/article/136894645.html

今回、スキャンダルの中身が具体的に明らかにされたあとでDUPが彼女に対して求めたのは「あとでではなく即時、議員辞職せよ」ということだ。アイリスはそうするしかない立場に立たされている。

このことの意味合いは、DUPの党首が夫のピーターであるという事実を考えると、「夫ですら彼女をかばおうとしない」ということで、ワイドショー的に考えると、北アイルランドの「ファースト・カップル(首相夫妻)」の離婚が決定的になったということだ。(ただしこれは私としてもまったく関心の対象外でどうでもいいし、報道記事もこの点に特に注目しているものはないと思う。夫婦の問題は北アイルランド政治にも英国政治にも影響しないし。。。ただしアイリスが辞めたあとのDUPの議席がどうなるのかは要注目だけど。)

で、夫のピーター・ロビンソンに対してのDUPからの要求だが、DUP党内のロビンソンとは異なる派閥(みたいなのがあるとすれば)に属しているらしい議員(グレゴリー・キャンベルMLA, MP)から「1週間の時間を与えることが必要だ」というコメントは出ている(下記)。ピーター・ロビンソンの進退問題について、それ以上の動きは、確認できる範囲ではない。

Robinson 'should be given a week' - Gregory Campbell
Page last updated at 23:19 GMT, Friday, 8 January 2010
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/8449689.stm

このスキャンダルの報道が始まってから、DUPの政治家のコメントは実はほとんど報道されていない。普通に考えれば、緘口令が敷かれているのだろう。ときどき何か聞こえてきてもA DUP sourceという匿名でのコメントで、匿名であってもピーター・ロビンソンに対して厳しい内容のものはなかった。これはSlugger O'Tooleでも確認できると思う。グレゴリー・キャンベルの発言が、名前を出してDUPの政治家が発言した唯一のものだと思う。

キャンベルの「1週間くらいは時間を」という発言を、遠回しな「退陣要求」と解釈することももちろん可能だし、実際そうなのだろうと私も思うけれども、その方向に動く前としては、what's nextの話がないのがおかしい。

このエントリの上のほうで触れたEamon Mallieのコメントで「イアン・ペイズリー父子の失脚」について述べた箇所があったが、ペイズリー父子が不動産スキャンダル(後に息子について法的な責任なしという結論が出たはず)で党の執行部から退いたときには、「後釜はピーター・ロビンソン」という雰囲気が、誰にも感じられるような形で、漂っていた。(ロビンソンのほかにも、ジェフリー・ドナルドソンら何人か有力な人がいたはずだが、もうあらかじめロビンソンということになっているという感じだった。まあ、キャリアから見れば何もおかしくなかったのだが。)今回はそういうのがない。

それより、もうあと(英語圏では)「数週間」で数えられるくらいで英国の総選挙が行なわれることになっていて、今度は労働党政権ということはまずないだろうというときに、労働党政権が作った「北アイルランド和平」の枠組の最後の仕上げのところで1年以上膠着状態の続くまま、ピーター・ロビンソンに退陣されると大変なことになるのだが……という懸念は英国政府からはっきりと示されている。

Woodward warns Robinson crisis must not derail assembly
Page last updated at 18:12 GMT, Saturday, 9 January 2010
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/8450292.stm

ただ、こうなる前にOperation Save Peterが発動しなかったことは注目すべきで(ここらへん、ネタ元はSlugger O'TooleとBBC NIの政治担当記者のコラム)――というのは、グッドフライデー合意後の一度失敗した自治政府を延命しようとするときに、当時の自治政府首相、UUPのDavid Trimbleを辞職させないために英国政府も含め関係者ががんばったのだが、今回はそういう動きが一切確認されていない――、実際、この状況なら「妻に浮気され、妻に自殺未遂をされたが、business as usualで仕事を淡々とこなしていた冷静沈着で健気なリーダー」としてピーターを守る方向で動いてもいいはずなのだ。しかし今の段階では、ベルファスト・テレグラフを含め、メディアの見出しを見ていても、そういう気配はまったく感じられない。

既婚者のアイリスのお相手が未成年という、まさにスキャンダラスな事実が発覚する2日くらい前までは、ワイドショー的には「奥さんがあれじゃあ、旦那さんが気の毒よね」といった同情の対象としてのピーター・ロビンソンを演出する流れがあったことは確かなのだが、それがぴたりと止まってしまっている。


※書きかけ

※この記事は

2010年01月10日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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