ロビンソン・スキャンダルについてのエントリは
「アイリス・ロビンソン」のタグで一覧できます。
「アイリス・ロビンソン」のタグで一覧できます。
1990年代、北アイルランドはアクション映画か、ポリティカル・サスペンスのような感じだった。メロドラマがあるとすれば、ふたつのコミュニティの「対立」を背景とした「ロミオとジュリエット」的なものだっただろう。(そういう小説が実際あるけど。)
2000年代、北アイルランドは深慮遠謀の政界ドラマか、ポリティカル・サスペンスか、ギャング映画のような感じだった。メロドラマがあるとすれば、心を閉ざした「元テロリスト」に恋をした女性の話だっただろう。
そして2010年代、北アイルランドのメロドラマは、80年代のアメリカの連続ドラマ(『ダラス』とか)の王道のようなものになりそうだ。現時点ではニュースに出てこないけど本家から分かれた一派もいて(TUVだが)、まさに「権力闘争と家族の愛憎劇」が展開……されることなど別に期待してないのだが。
何があったかというと……
先日、深刻な欝を理由として、政界引退を表明したアイリス・ロビンソンが、今度は自殺未遂の経験があることを明かした。彼女には長年連れ添った夫(ピーター・ロビンソンDUP党首、北アイルランド自治政府ファーストミニスター)があるが、他の男性と関係を持ってしまい、そのことで悩んで自殺をはかったという。詳細はアイリス・ロビンソン本人のステートメントを参照(ただし、これ読むのはある種の人々にとってはかなりきついと思う)。
(ついでに前提を書き添えておくと、アイリス・ロビンソンはボーンアゲインでエヴァンジェリカルなクリスチャンである。ロビンソン夫妻が属するDUPという政党自体がファンダメンタリストの信仰と政治思想をブレンドしてまとまっているような政党である。なお、一連の騒動から1年半以上が経過しているようだが、彼女は今は「神からゆるしを得た」と認識しているとのこと。)
オレンジ側のDUPのロビンソン党首にこのスキャンダルがあれば、緑側のシン・フェインのアダムズ党首にも、「弟が実の娘を性的に虐待したとの疑惑で裁判所に呼び出されているが、シカトぶっこいて南に逃げている」というスキャンダルがある。
アダムズの場合、さらに、その弟にそういう「疑惑」があることを知っていながら(姪から打ち明けられていた)、弟を党から追放せずにいたというスキャンダルがあり、それについても具体的な証拠をあげつつ調査報道がなされ、それに対してまたわけのわからん(整合性がないのですぐに嘘だとばれる)言い訳をして、冬休みに入ってしまった状態。(シン・フェイン……というかIRAは国家の警察を拒否し、コミュニティ内の犯罪はIRAが裁き、制裁を加えるということでやってきたので、アダムズの弟にペドフィリアの疑惑があるときに、たとえそれが立証されていない「疑惑」であったとしても、そのまま党の上層部においておくという判断は、ありえないほどの二重基準。)
そんなこんなで、大きな政治の舞台では、緑とオレンジとの間で2年くらいずっと同じ問題(警察・司法の権限のNI自治政府への移譲)が片付かずにいるときに、緑側で「アダムズ家の弟の幼児虐待疑惑」が持ち上がり、オレンジ側で「アイリスの政界引退」が宣言され、次週をお楽しみに……となったところで、緑側で「実は父が実子を虐待していた」と告白するという展開があり、オレンジ側で「アイリスの苦悩」がつまびらかにされ……という感じ……だけならば、展開として単純でありえなさすぎて逆にありそうなメロドラマなのだけど、さらに、実はオレンジ側には資金疑惑があり、BBCはじっくり時間をかけてその調査を行なっていたらしい。
で、ジャーナリストが資金疑惑をいろいろと調べているときに、自治政府のトップ(それも思想的にガチ保守、「家族の価値」とかが第一という思想の人)がテレビカメラの前で「家内の浮気と自殺未遂」を明かすというようなことになったようで、うーん、どうなんでしょう。資金疑惑なんていう退屈な話題より、いわば「政界のおしどり夫婦」の妻であるアイリス・ロビンソン(ファンダメンタリストでガチ保守で舌禍の人だけど、美人は美人)の不倫と自殺未遂のほうが、人々の興味は引くだろうけども。
いずれにせよ、アイリスの浮気と自殺未遂について、BBC News NIのトップページが、こんな特別なレイアウト(下記キャプチャ)で報じているのは異常。他に重要なニュースがないわけでもないし(UDAの件がある)、UDAの件がトップにあったときでさえこのレイアウトではなかったし、そもそもこんなニュースで写真をこんなふうに使う意味がわからん。
アイリスの件がなくても、「今日のトップニュースはUDAの武装解除だろうJK」というときに、アイルランド島とブリテン島はものすごい荒天でテレビのトップニュースは「天気」、ウェブサイトでも下の方(上のキャプチャでロビンソン夫妻の写真の左下)に追いやられていて、IRAのときはあんなに「ヒストリック」だの何だのと騒ぎになり、UVFのときもあんなに「残虐非道なテロ組織の終わり」で大きく特集していたのに。UDAだってもっと大きく扱ってあげてよ。
というか、UDAにはまだ片付いてない問題があるんだけどね(分派したイースト・アントリムが完全武装解除に応じていない)。
追記:
北アイルランドの人たちのFlickrの写真を見ていたらこんなのがって:
http://www.flickr.com/photos/alaninbelfast/3971244948/
http://www.flickr.com/photos/23386031@N00/392081599/
「ベルファストの本屋にいったら、Peter Robinson: Playing with Fire, The New Inspector Banks Novel という本があったが、あのピーター・ロビンソンじゃないよね」という写真。
そのピーター・ロビンソンさんは「バンクス警部」もののシリーズを書いているカナダのミステリー作家さんだそうだが、上でベルファストの書店に並べられていた『火遊び』に続く(間に何作かあるかもしれんが別にいいよね)彼の最新作が:
お茶ふいた。
追記:
ベルテレさんがあまりに容赦ないので泣けてきた。

Belfast, Northern Ireland, UK, World, News, Business, Entertainment | BelfastTelegraph.co.uk via kwout
私はアイリス・ロビンソンは全然好きではないが、病人にこの仕打ちはないと、素で思う。
なお、ロビンソン夫妻の資金疑惑と今回の不倫スキャンダル露呈の関係については、タイムズが記事にしている。
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/uk/article6979128.ece
でもちょっと、アイリスが本当に欝なのなら、メディアのこの騒ぎっぷりは彼女のために本当によくないよね……。気の毒だ。
再度の追記:
アイリスといえばホモフォビックな言動で知られるが、今回の不倫騒動について「背後にゲイ・アクティヴィストが」説があるらしい。詳細下記(さほど「詳細」でもないけど)。
http://sluggerotoole.com/index.php/weblog/comments/iris-pursued-by-gay-activist/
個人的には、陰謀論はいくらでも可能だよねという感じがするけど。(アイリスが何をいおうが、NIで「同性結婚」に非常に近いシヴィル・パートナーシップの制度があることはゆるぎないのだし、ホモフォビックな暴力は政治家の発言があろうがなかろうが、だし……とかいうとまた「あなたは差別を許容している」とかって糾弾されるかな。「法の下の平等」と「ホモフォビア」とは別の話ですので、そこよろしくね。それと私はアイリス・ロビンソンのあの発言は、ファンダメンタリストが言いそうなことだとしか思っていない。)
で、上記の投稿をSlugger O'Tooleにしたミック・フィールティさんはBBCの番組でDUPのジュニア・ミニスター(ジェフリー・ドナルドソン)と話をしたらしい。詳細こちら(というか、どういう「噂」が出回っているかについての概略だけど。)
※この記事は
2010年01月07日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
【todays news from uk/northern irelandの最新記事】
- 【訃報】ボビー・ストーリー
- 【訃報】シェイマス・マロン
- 北アイルランド自治議会・政府(ストーモント)、3年ぶりに再起動
- 北アイルランド紛争の死者が1人、増えた。(デリーの暴動でジャーナリスト死亡)
- 今週(2019年3月3〜9日)の北アイルランドからのニュース (2): ブラディ..
- 今週(2019年3月3〜9日)の北アイルランドからのニュース (1): ディシデ..
- 「国家テロ」の真相に光は当てられるのか――パット・フィヌケン殺害事件に関し、英最..
- 北アイルランド、デリーで自動車爆弾が爆発した。The New IRAと見られる。..
- 「そしてわたしは何も言わなかった。この人にどう反応したらよいのかわからなかったか..
- 「新しくなったアイルランドへようこそ」(教皇のアイルランド訪問)
































