「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2009年11月23日

ベルファストでカーボム&ファーマナで銃撃戦

「われわれは絶対に負けない」ってのは、サッカーで言ってる分には十分に楽しいのだが(ただしこの件、結論は「アイルランド フランスとの再試合開催を断念」)、パラミリタリー活動の方でも「絶対に負けない」が動いていて、まったくシャレになっていない。

UKとアイルランドの各メディアが報じているが、北アイルランドの西の端の方(アイルランド共和国とのボーダーの近く)では武装組織が警察官を銃撃し警察側もこれに応戦という事態があり、またベルファストでは、400ポンドのカーボムがpolicing board (公安委員会に相当するが、ボードのメンバーは地方議会議員や自治議会議員を含む) の本部の敷地内で一部爆発した。

アイリッシュ・タイムズのトップページで記事が並んでいたのでそれをキャプチャ。画像内の見出しクリックで記事に飛びます。



警官銃撃があったGarrisonという村の場所を地図で確認。



黄色地の点線が北アイルランドとアイルランド共和国のボーダー。西側(左側)が共和国、東側(右側)が北アイルランド。

記事:

ベルファストの地域メディア(ユニオニスト系だが)、Newsletter:
Dissidents blamed for terror attacks
Published Date: 22 November 2009
http://www.newsletter.co.uk/news/Dissidents-blamed-for-terror-attacks.5846889.jp

大意(誰かのコメントなどもおおよその内容で、逐語訳ではありません):
昨夜から今朝方にかけて、2件のテロ攻撃が発生、いずれも非主流派リパブリカンの犯行と考えられている。

アイルランド共和国とのボーダーに近いファーマナ州ガリソンでは、警察に対し銃撃があった。警察はこれに応戦した。負傷者は出ていない。この件に関連して、これまで4人の男が身柄を拘束されている。

また、ベルファスト中心部にあるPolicing Boardの本部建物の外では車が爆発した。この車は400ポンドの爆発物(ボム)を積載していたといい、爆発したのはその爆発物の一部。爆発による影響を受けたのは爆発物を搭載していた車だけで、負傷者は出ていない。

この車は保安用のフェンスを突破して突っ込んできた。停車後、2人の男が現場から走って逃げた。

また、ベルファストのニュー・ロッジ地区で放火され焼け焦げた車が発見され、警察が詳しく調べている。

ベルファスト(のPolicing Board)での事件について、北アイルランド警察(PSNI)のマット・バゴット総監は非難の声明を出した。

また、ガリソンでの警官銃撃事件については、SDLP所属の自治議会議員トミー・ギャラガー(ギャラハー)が実行犯を厳しく非難し、「誰も怪我がなかったのは何よりだった」と述べた。「このような人々が歪んだ主義主張でこのようなことをファーマナで行なっていることに、地域全体として強い憤りを覚える。この地域では彼らに対する支持はない」。


ニュー・ロッジについては下記などを参照。Google Street Viewで検索すれば街の様子も具体的にわかる。
http://en.wikipedia.org/wiki/New_Lodge,_Belfast

ちょこちょこ見てたら有名なミュラルを見つけた。道の両側。


Policing Boardは公式サイトに住所が書かれている(この通りにはGSVは入っていないが)。都心部というか、湾岸地域だ。車が放火されていたNew Lodgeからは1キロも離れていない。

AFPがいい記事を出している。(ただし細かいところで誤認があるようだ。「警察のヘッドクオーター」がやられたことになっている。実際にはやられたのは警察署ではなくPolice Boardの本部だ。)

Failed N.Ireland car bombing highlights terror threat
(AFP)
http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5hFLS-JlmkhWM5zGZmryR-vvMOaVQ

大意:
ベルファストのPolice Boardの建物を狙った車爆弾は、爆発物としては広範な範囲を破壊するよう設計されていた、と警察が語った。400ポンド(約180キロ)の爆発物を積んだ車は、土曜日の夜7時ごろ、建物の前のバリアを突き破って激突し、部分的に爆発した。現場からは男2人が走って逃走した。その1時間ほどあとに、車の中で小さな爆発が起きた。爆弾予告などはなかった。

また、アイルランド共和国とのボーダーに接する村では、武装組織と警察とが互いに発砲しあう事態となった。武装組織が少なくとも1発、警察が2発を発砲したと警察は発表した。この事件で北アイルランドで3人が、アイルランド共和国で1人が逮捕された。

これらの攻撃は、北アイルランドの和平プロセスにとって微妙なタイミングで発生した。

自治政府で権限を分担しているプロテスタント政党とカトリック政党は【注:この区分けは原文ママ。正確には「ユニオニスト政党とナショナリスト政党」】、警察と司法の権限が英国から自治政府に移譲される時期を巡って対立している。【注:北アイルランドは2002年に「ストーモントゲイト」で自治が停止され英国の直轄統治となり、2007年に自治復活、ただし警察と司法だけは英国直轄のまま現在に至る。この権限の移譲については、DUPとシン・フェインがずっと対立したままで、現在の何も動きのない膠着状態は、もう13ヶ月は続いていると思う。←あんまり詳しく見てないから、期間などは不正確かも。】

今月、武装組織の活動の監視を行なう機関(注:IMCのこと)は、和平プロセスに反対する非主流派武装組織の活動は、この6年間で最も活発になっていると述べている。

土曜日のカーボムを受けて、PSNIのバゴット総監は、「非常に深刻な状況にある。警察は多くのリソースを割いて捜査を行ない、攻撃を未然に防ごうとしている」と述べた。


このAFP記事の末尾に、最近の「でっかいカーボム」の類が列挙されている。
Previously, on September 8, army experts defused a 600-pound (270-kilo) roadside bomb near the Irish border, averting what police called a potential "devastating" explosion.

Three days later, a car was damaged in an explosion carried out by dissident Republicans outside the home of a police officer's parents, while a pipe bomb was made safe near the officer's sister's house.

On October 16, the partner of a Northern Ireland police officer was slightly injured when a bomb exploded under her car in Belfast. Six days later, an explosive device went off inside a British army reserve barracks.

つまり9月8日に600ポンドの爆発物が発見され(→9月9日「北アイルランド、ものすごい量の爆発物が発見される」)、その3日後には、ある警官の両親の自宅がパイプボムで襲撃されかかり(パイプボムでの警官襲撃は私は記事を見かけてもメモっていないと思う)、10月16日には東ベルファストで警官のガールフレンドの車に爆発物が仕掛けられていたのが爆発(→10月16日「東ベルファストで爆発」)、その6日後には、英軍予備役(原文ママ。実際にはTAだったのだが)の兵舎で爆発(→10月23日「ベルファスト、英軍基地で爆発」)。ここには書かれてないけど、カトリックの警官に脅迫とかいうのはかなり多いらしい(いちいち報道されないが)。

で、AFPのこの「まとめ」だって全然網羅的ではなく、今回カーボムの標的になったPolicing Boardのサイトにはこんな記事が出ている。

Board condemns device find in Armagh
Fri 20 Nov 2009
http://www.nipolicingboard.org.uk/article/?id=10178

11月19日の早朝、アーマーで爆発物が発見されたとのこと。

それはこれだ。

Defused mortar bomb 'designed to kill police officers'
Page last updated at 19:17 GMT, Thursday, 19 November 2009
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/8367718.stm

Man is arrested over mortar find
Page last updated at 09:54 GMT, Friday, 20 November 2009
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/8370066.stm

Police release man without charge
Page last updated at 10:01 GMT, Saturday, 21 November 2009
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/8371918.stm

で、このときに見つかったのってこれ↓ですから。ガチすぎ。
http://en.wikipedia.org/wiki/Barrack_buster

ここらへんのことを、元BBCで現ベルテレのBrian Rowanは次のようにまとめている。

Brian Rowan: Dissidents adopting IRA tactics
Friday, 20 November 2009
http://www.belfasttelegraph.co.uk/opinion/brian-rowan-dissidents-adopting-ira-tactics-14570128.html

大意:
アーマーで迫撃砲が見つかった事件でまたもや非主流派リパブリカンがかつてのIRAの戦術と武器を採用しているということが示された。

かつてIRAは迫撃砲を何パターンも独自に開発した。そのひとつがMark 16である。治安機関の装甲車両を破壊する目的で設計された、水平発射の兵器だ。アーマーで見つかったのはこれの非主流派バージョンである。つくりを見ると、警察の車両を攻撃する計画だったと考えられる。

ある人物の話によると、「殺傷力のあるそれ(迫撃砲)を作るために十分な部品が」あるのだという。この迫撃砲は高性能爆薬は使わない。路肩に設置し、ワイヤーで起爆する仕組みだ。

フォーキル(Forkill)で最近見つかったのも路肩爆弾だったが、アーマーのとはタイプが異なっていた。フォーキルの場合、地域で泥棒が発生し、駆けつけた警察を標的とする計画だった。

最近のIMCの報告書では、非主流派の活動がこれまでになく活発になっていること、またかつてProvisional IRAのメンバーだった者たちが、非主流派に技術などを提供していると考えられることが指摘されていた。ただしどのような支援が与えられているかは具体的には語られていない。それでも、非主流派に(外部から)支援が与えられているという想定は、特に爆弾製造の分野においての支援があるということは、頭の痛い問題であり、非主流派の脅威を増すものである。

警察を標的とすることで、非主流派の各組織は、政治的プロセス、和平プロセスを不安定化させようとしている。ストーモントの自治議会(&自治政府)では、警察と司法の権限の移譲のタイミングをめぐってにらみ合いが続いている。警察の規模、特にフルタイムのリザーヴの警官の将来をめぐって、言い争いが続いている。(注:フルタイムのリザーヴは全面的に廃止される方向にあることが、警視総監の口から明言されたが、DUPなどユニオニスト勢力はこれに猛反発している。)

非主流派は、和平プロセスが困難な状況にあることを把握している。そして、非主流派への支持が大きな地域では、政治が機能していないのだ、アダムズとマクギネスの(主流派の)戦略は失敗したのだという主張がなされている。


最後の、「アダムズとマクギネスの戦略は失敗だ」という短い記述は、実際非常に奥が深いもので、ガチのReal IRAの闘士(最近入った若いのではなく、1997年から1998年にかけてPIRAから離反した世代の人たち)から見れば「アダムズとマクギネスは口先で統一アイルランドを約束しておきながら、パワー・シェアリングという中途半端な行政府の一角を占めることで満足している。南北のボーダーは解消されるどころか確定してしまった。こんなことのために、我々は戦ってきたのではない」ということになっている。例えば、先日逮捕されてすぐに釈放されたマリアン・プライスの過去のインタビューでも、そういう見解は語られている。

去年までは「非主流派が暴れてるったって規模は200人程度でしょ、何もできないよ」という感じだったのだけれども、今年の3月の2件の襲撃事件以降は、非主流派がここまで「進展」してきた和平プロセスを転覆させる可能性も少しは考えておかなければ、という方向で基本的な考え方がシフトしている。

※この記事は

2009年11月23日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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