6日夜(日本時間)、BBC Newsのサイトでもイングランド地方選挙の結果がすべて出ました。地方選挙は国政選挙とは争点も違うし、今回の選挙が行なわれた地域は、イングランドでも元々保守党が強い場所なのですが、それにしても。
6日の明け方にわかっていた分の結果:
6日夜の結果(最終結果):
労働党が過半数を持っていた4つのカウンシルすべてが保守党に取られ、労働党が押さえているカウンシルがゼロになっていますが、選挙結果そのものより労働党内のあれこれ(「造反組」の動きが非常にきなくさいということを、ほかならぬガーディアンが伝えています)のほうがニューズヴァリューは大きいみたいです。週明けに次の動きがありそうだとか。
私がサイトを見たタイミングもありますが、BBC NewsのUK Newsのページでも、「地方選挙で労働党大敗」はことさら目立つ扱いにはなっていません。
BBC News: UK のキャプチャ画像:
6日はたまたま「D-Day(ノルマンディー上陸作戦)から65年」で、フランスで盛大な式典が催されているので、その記事がトップ(英国からはブラウン首相とチャールズ皇太子がフランスを訪問し式典に参列)、2番目の扱いの記事は「労働党の党内情勢」、3番目の扱いの記事は政治とは関係のないトピック(新型インフルエンザで重態の妊婦が29週でに出産)。
地方選挙の結果は、右側に表が表示されていて、記事はその表のすぐ下にあるOther Top Storiesのところ、「保守党勝利」の見出し。
Tories triumph in local elections
Page last updated at 08:42 GMT, Saturday, 6 June 2009 09:42 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/politics/8081729.stm
保守党だけでなく、労働党、LibDemの大政党の結果についてのまとめ&党の幹部のコメントのまとめの記事です。
記事の一番上に、強風のためか、珍しく髪の乱れたデイヴィッド・キャメロンが、「労働党の地盤」を崩した今回の地方選の結果を受けて「どこであろうと保守党は勝てる」と語り、「それでも議員の経費問題で大政党はすべて揺れているわけですが」といった記者の質問に「それでもわが党は強い」(←大胆にまとめてみました)と答えている動画がエンベッドされています。
労働党からは、ハリエット・ハーマン(選挙対策責任者らしい)へのスタジオでのインタビューですが、「負け」は重く受け止めているものの、「与党は常に批判されるのです」&「(元々保守党が強い地域での選挙ですから)選挙運動をあまりしていなかったので」というラインでしょうか……。昨年の補選で同じ言い訳してたけど、労働党は政権維持しか考えてなくて保守党しか見ていないということがわかるだけですね。
LibDemsのニック・クレッグは慎重になっていて、話がくどい。端的にまとめれば、「都市で労働党に勝てるようになったと思ったら、かつてはLibDemsが強かった田園地帯で保守党にやられてます」という内容。
記事の本文から「小政党」についての部分:
Meanwhile, the Green Party have won 16 seats while UKIP picked up six, including three in Staffordshire.
The British National Party have won three seats - in Lancashire, Leicestershire and Hertfordshire.
The English Democrats, who campaign for an English Parliament, have also had a win in Doncaster, where their candidate Peter Davies was elected mayor. The Tory and Labour candidates were knocked out in the first round.
グリーンズが前回比+6で16議席(彼らのような政党は地域密着の政策を掲げれば地方議会選挙では強いのはもともとだし、今回は「大政党にNO」のムードが高かったのが大きいのだろうと思います)、UKIP(反EU、反移民、リバタリアン系の「ミドルクラスのBNP」)が議席ゼロから6議席獲得、BNPは議席ゼロから3議席獲得、イングリッシュ・デモクラッツ(「イングランドにもスコットランドやウェールズと同じく議会を」というのが最も大きな主張のナショナリスト政党)がドンカスターの市長に当選し、この市長選挙では「大政党」の候補者は見向きもされなかった、と。
労働党の中の人たちはわかってないみたいだけど、「労働党」が人々の信頼を失ったのは最近のことではありません。2003年のイラク戦争の開戦に際する嘘と歪曲は、1999年コソヴォとは違い、国際法についてあんまり考えてない人でも明らかに「問題」だと受け止めた。でも2005年の総選挙では労働党が勝った。それが現在の労働党の勘違いのルーツかもしれません。
2005年の総選挙で保守党を食い止めたのは、「ニューリーダー」(笑)のブレアへの支持のほかに、「それでも、保守党は何をやるかわからない」という不信があったことが一因だったんですが(2005年総選挙では保守党は「移民制限はレイシズムではありません」というスローガンを掲げて、全国的にお茶をふかせた。背後にお茶の消費の底上げを狙うお茶業界の陰謀……)、今や「UKIPだのBNPだのに人々が喜んで投票している」という事実があるわけで(議席数が相対的に少ないからといって、安心できるものではない)、しかし労働党の中の人たちはそういうところを見ていそうにない。
労働党、というか内務省がどんどん強硬になって、デモ弾圧やら移民抑制やらの政策を実行し始めた現在、そういう「社会」的な面では「労働党でも保守党でも同じじゃん」ということになっている以上(むしろ「保守党のほうがまとも」という意見に説得力があるくらいになっている)、労働党としては「経済」とか「議員のモラル」とかに頼るしかないのにいずれもダメ。「経済」に関しては、誰だってどうにも対応しきれない状況であるとか、野党はいいですよ、経済政策についてはガタガタ言われることはないからとか言い、「議員のモラル」に関しては、みんな叩けばホコリが出るのに保守党系の新聞がうちばかり攻撃してくるとかなんとか……。
2005年以降、英国では総選挙は行なわれていません。でも首相はブレアからブラウンに変わり、ブラウンは昨日、選挙結果が出たあとに内閣改造を行なって、つまり今の内閣は選挙で選ばれたものではない。(英国は日本ですか?みたいな。)週明けにはそこらへんの声が大きくなるかもしれないですね。
※この記事は
2009年06月06日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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