kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2009年05月27日

北アイルランド、セクタリアン暴力で男性死亡(ロイヤリストの暴力)

※このエントリは、書きかけの状態なのですが、事態がリアルタイムで進展しているので、とりあえずは書きかけできりのよいところでアップすることにします。最新記事ははてブにメモってあります。5月26日以降。
http://b.hatena.ne.jp/nofrills/




スコットランドのプレミアリーグ (Scottish Premier League: SPL)、今年はレンジャーズがリーグを制し、「セルティックの逆転ならず」ということで日本でも報道されています。1998-99シーズンに現体制になったSPLはセルティックとレンジャーズの二強が、まるで二大政党制の政権交替のように1位と2位になっているのですが(一度だけ、この2チーム以外のチームが2位になったことがある)、SPLになる前から、「スコットランドのサッカー」といえばグラスゴーをホームとするこの2チームがトップであり、両チームの関係は、単なる「スポーツのライバルチーム」の関係ではなく、宗派間対立が深く関わっているものだということは、以前に書きました。そして、「レンジャーズか、セルティックか」という二項対立は、そのまま北アイルランドの「プロテスタント(ユニオニスト/ロイヤリスト)か、カトリック(ナショナリスト/リパブリカン)か」という二項対立に重なる、ということも。

■過去記事:
2008年09月17日 グラスゴー、Old Firmの「お歌」の応酬について――背景は北アイルランド紛争です。
http://nofrills.seesaa.net/article/106686530.html

この2年くらい、レンジャーズはサポの一部のセクタリアニズム丸出しの行為が問題となっているというニュースが続いていて、そういう中でのリーグ優勝なので、セクタリアニズムではなく単に地元のサッカーチームとしてサポしてるみなさんは、すごく喜んでおられるだろうと思っていたのですが、非常に悪いニュースが、北アイルランドから。

「非常に悪い」っていうか、最悪です。これ以上悪いニュースは考えられない。

「レンジャーズ・サポ」という名目の集団によって、人が殺されました。

3月に英軍基地襲撃、警官銃撃という2つの事件があって世界中で報道されましたが(日本語でも報道があったくらいで)、このニュースは、紛争後の北アイルランドにとって、あの2つの事件と同じくらいの意味を持つものです。つまり、3月の事件は「非主流派のリパブリカン」(「非主流派」とは、「主流派」の力が及ばないところでパラミリタリー活動をしている人たちのことを言う)によるものだったのですが、この事件は、現状、どう考えても、「非主流派のロイヤリスト」というものの存在を示すものです。

北アイルランド紛争が1960年代に始まったとき、このような「ロイヤリストによるナショナリストへの襲撃」がそもそもの発端にありました(その「襲撃」の口実もあったのですが、それは突き詰めていくと「鶏と卵」になるので、1968年10月5日のデリーと、1969年1月1日のベルファスト・デリー大行進などを思い浮かべてください)。

今は、これに対する「報復」がないように祈ることしかできません。

以下、詳細。ただし以下を書いたあとにいろいろ記事が出ています。それらははてブでチェックしてください。
http://b.hatena.ne.jp/nofrills/

第一報:
Father killed by 'sectarian mob'
Page last updated at 17:55 GMT, Monday, 25 May 2009 18:55 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/foyle_and_west/8067198.stm

Dad died saving man from mob
By Deborah McAleese and Lesley-Anne Henry
http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/local-national/dad-died-saving-man-from-mob-14313527.html

事件があったのはロンドンデリー州のコールレーン (Coleraine, County Londonderry)。アイルランド島の一番北、バン川河口に近い町で、「ジャイアンツ・コーズウェイ」にも近く、紀元前7000年ごろの人間の住居跡が発掘されたりと、「歴史とロマンあふれる地」というキャッチフレーズがしっくりくるような感じです。(岩系+海の風景が好きな方はこのあたりの海岸をバスで巡った方の紀行もぜひ。)
http://en.wikipedia.org/wiki/Coleraine

2001年のセンサス(国勢調査)によると、全人口は約24,000人で、プロテスタントが73.5パーセント、カトリックが22.7パーセント。著名人としては、俳優のジェイムズ・ネスビット(『ブラディ・サンデー』のアイヴァン・クーパー議員役)がこの町の出身ですが、ネスビットはプロテスタントのバックグラウンドの人です(でも、先日BBCで放映されたFive Minutes of Heavenでは、「プロテスタントのテロリストに目の前で兄を殺されたことで人生が滅茶苦茶になったカトリックの男性」を演じていました。このドラマでは「プロテスタントのテロリスト」を演じたのが実際にはカトリックのバックグラウンドのリーアム・ニーソンでした)。And So I Watch You From Afarも元々はこの町のあたりの出身(活動拠点はベルファスト)。
http://en.wikipedia.org/wiki/Coleraine#2001_Census

「北アイルランド紛争」においては、直接的な暴力の影響はさほど受けなかったそうです。だからだと思いますが、紛争について書かれた手持ちの書籍では、この町についてはほとんど何もわからない。しかしこの数年、つまり「紛争」が「終わった」後になって、ロイヤリスト組織UDA(→UPDATE: 「UDAを名乗る集団」ということのようです。いずれにせよロイヤリスト)が伸長してきたのだそうです(ソースはSlugger O'Tooleの住民のコメント。こういうときのSluggerのコメント欄は、「信頼できるソース」だと思います。嘘を書いていたら必ずツッコミが入るので)。

BBCとBel Telの報道によると、事件があったのは24日(日曜日)の夜、SPLの結果が出たあとのこと。コールレーンで数十人規模の大暴れが発生し、49歳で左官業のケヴィン・マクデイドさんが殴る蹴るの暴行を受けて死亡。ケヴィンさんの妻のイヴリンさんも殴られるなどして頭に怪我。別の通りでは、46歳の男性が暴行を受けて病院に搬送。現場にいた人たちによると、彼らを襲った「モブ mob」は、「自家製の武器 home-made weapons」を持っていた、とのこと。

自分たちのサポしているチームが数年ぶりに優勝したから集まって大騒ぎ、というのは全然ふつうです。でもそこに、home-made weapons――おそらく鉄パイプの類だろうと思いますが、何であれ――の余地があるということが、この集まりが純粋な「優勝祝いの集まり」ではなかった、ということを示唆しています。

警察はこれらのモブについて、「セクタリアン」という言葉を使っています。
The 49-year-old father-of-four who died during post-football match violence in Coleraine was "brutally beaten by a sectarian mob", the police have said.

...

Detective Chief Inspector Frankie Taylor said their main line of inquiry was a "sectarian motive".

http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/foyle_and_west/8067198.stm


英国政府のミニスター(閣外大臣)でもあるポール・ゴギンス議員も、「セクタリアニズム」という言葉を使っていますので、これはもう確定でしょう。
"I would appeal to the community for calm - sectarianism has no place in Northern Ireland and those who carried out this vicious murder have no place in society," he said.

ibid.


シン・フェインのマーティン・マクギネスはもう少し踏み込んだ発言。(これはこの人じゃないと言えんわ。)
The deputy first minister, Martin McGuinness, said a "sizeable group of loyalists" were responsible for the killing and the assault.

"They decided it was a good idea to attack a Catholic area," he said.

ibid.


この地域選出の英国会議員であるDUPのグレゴリー・キャンベルは、BBCは "also condemned the murder" とか書いてますけど、「殺害」を非難しているだけで、「セクタリアニズム」はスルーしてるみたいです。

SDLPの自治議会議員、ジョン・ダラットも、BBCの記事にある文では「セクタリアニズム」への言及があったのかどうか不明。
"This man was doing nothing more than going down to check on his sons and lost his life when this lynching mob from a different part of the town came along and rendered their form of justice.

"It's certainly lawlessness and it needs to addressed. ...

ibid.


UUP所属のデイヴィッド・マクラーティ自治議会議員は、「きつい言葉を使うのはいかがなものか」という内容の発言。「確かにセクタリアニズムはないわけではないが、大半は隣人と平和に暮らしている」って、おまえは何を言っているんだという。その「大半」以外の「エレメント」が暴れているときに。
Ulster Unionist assembly member David McClarty said it was too early to say who was involved.

"We are in a situation here where we have to moderate our language and not go throwing blame where no proof has been given as to who was responsible for this incident.

"There is an element of sectarianism in the area but the vast majority of people in the Killowen/Heights area of Coleraine want to live in peace and harmony with their next door neighbours," he said.

Ibid.


コールレーンのロイヤリスト・モブの活動は、以前から問題になっているものです。ロイヤリストの側では、ディシデント・リパブリカンとは違って武装闘争が可能なような本格的に物騒なもの(肥料爆弾とか)の話は出ないから英メディアに出ることはほとんどないのだけれど、地域のメディアにコールレーンのThe Heightsという地域での暴力について北アイルランド警察が事態を重く見ているという昨年8月の記事があります。8月といえばナショナリストのコミュニティにとっては「インターンメント導入」の月であり、それを振り返るための集まりが行なわれたときに、鉄パイプなどを持ったロイヤリストが襲撃、何人かが入院する事態に。
Concerns came to the fore in the early hours of Friday morning when what is thought to have been a group of loyalists set fire to the anniversary of internment bonfire at Hillcrest Drive.

Tension mounted over the weekend and this spilled over into violence in the early hours of Saturday morning.

A PSNI spokesperson said on Monday: "Police arrested four people and seized a number of offensive weapons including irons bars, wooden batons and sticks following disturbances at a bonfire site in the Heights area of Coleraine on Friday night and Saturday morning.

"Six people received treatment for injuries received and two of them remain in hospital, one with serious head and leg injuries."


さて、マクデイドさんが暴行を受けて亡くなったあとのベルテレさん記事:
http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/local-national/dad-died-saving-man-from-mob-14313527.html

亡くなった――いや、「殺された」――マクデイドさんは、別の人がぼこぼこに殴られているのを助けようと家から飛び出していって、22歳の息子さんの目の前で撲殺された(目撃者の話では、襲撃者は被害者の頭を蹴ったり踏みつけたりした)そうです。何てこと……。

息子さんは「父はよく知られ、人々から愛されていた。人を傷つけたこともなかった」と語り、両親を殴った連中について「thugs and animals」という言葉で非難し、「逮捕され法の裁きを受けてもらいたいと思います」と述べています。

シン・フェインのビリー・レオナード地方議会議員は、この襲撃について、「むき出しのセクタリアンな憎悪 raw sectarian hatred」によるものと述べています。

ビリー・レオナードは、ちょっと検索してみてびっくりしたんですが、バックグラウンドが「ガチのリパブリカン」ではありません。反対。元RUC(リザーヴだけど)でSDLPにいたプロテスタント(lay preacherをしていた)。いや、SDLPなら「ユナイテッド・アイルランド主義のプロテスタント」はさほど珍しいとは思わないのですが、シン・フェインか……。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/3410121.stm

そういう人の言葉としての「むき出しのセクタリアンな憎悪 raw sectarian hatred」は、「カトリックのバックグラウンドを有するガチのリパブリカン」が同じことを言ったときよりも、重く響きます。

「北アイルランド紛争」を「過去のもの」とする作業が、政治家たちの動きとして現実的になってからすでに11年以上が経過しています。そして、議事堂やらなにやらでの「政治」を超えた範囲で、社会そのものがその作業を(ゆっくりとしたものであっても)進めているときに、「セクタリアニズム」自体が消えているわけではないのだということがときどき見せ付けられるのです。2006年のマイケル・マカルヴィーン襲撃殺害事件など。



UPDATE:
9人逮捕されたそうです。

Nine held after killing of Catholic in Northern Ireland
By Lesley-Anne Henry
http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/local-national/nine-held-after-killing-of-catholic-in-northern-ireland-14313852.html

※ここまで書いた段階でアップ。このあとさらに進展があるのですが、あまりの内容にいろいろとついていけないものがあるので、少し落ち着いてから別のエントリを起こします。

このエントリに書いていない内容としては、まず、襲撃が発生したエリアにアイリッシュ・トリコロールが掲げられていて、ロイヤリストがそれを外した、ということが事件の前にあった、という話。これは極めて不吉で、ただの「あの頃はよかった」という根拠のない憧れでやってる若いのが、当時の「儀式」を真似ただけだとは思うんですが……でも「調子こいて」で流すには、事態はあまりに深刻です。

それと、殺されたマクデイドさんとは別に襲撃された男性が、「ロイヤリスト・モブ」の標的だったという話(これは推測)もありました。

また、ケヴィン・マクデイドさんはカトリックですが、妻のイヴリンさんはプロテスタント。

ご夫婦には22歳の息子さんがいらっしゃるので(ほかに3人の子供あり)、少なくともこの22年間は結婚していらしたのですが、ということは北アイルランド紛争の最中から、カトリックとプロテスタントの夫婦として暮らしてきた、ということになります。それでずっとコールレーンのそのエリアに住んでいたのなら、そのエリアは、「紛争」のセクタリアニズムとある程度距離を置いた雰囲気だったと言ってよいと思います。バリミナとかラーガンとかとは違います。

なのに、「紛争」はとっくに終わったはずの2009年に、ケヴィンさんはセクタリアン暴力で殺された。

何ということが……。

※この記事は

2009年05月27日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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