「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2009年05月09日

IMCの第21次報告書 (the 21st Report)、「ロイヤリスト」という観点から

The Independent Monitoring Commission (IMC) の第21次の報告書、リパブリカンについては先に書いたが、今度はロイヤリストについて。
http://www.independentmonitoringcommission.org/publications.cfm?id=71

BBC newsの下記の記事も、見出しこそ「非主流派リパブリカン」だが、記事の中身はロイヤリストについてもかなりしっかり書いてある。

Dissidents 'pose serious threat'
Page last updated at 11:08 GMT, Thursday, 7 May 2009 12:08 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/8037878.stm

それと、ベルテレさんの下記記事。これはベルテレさんじゃないと書けない記事。

IMC: loyalist leaders want to give up guns
By Brian Rowan
Friday, 8 May 2009
http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/politics/imc-loyalist-leaders-want-to-give-up-guns-14296245.html

IMCの報告書の発表時記者会見でのLord Alderdiceとの質疑応答と、Brian Rowanの分析記事のダブルヘッダーです。Brian Rowanはこの分野でベテランのジャーナリスト。

さて、報告書のPDFの12ページ、2.31からあとがロイヤリスト組織についての現状分析で、取り上げられているのはLVF, UDA, UVF――なのだが、UDAが2つに分けられている。これは第20次報告書から始まったことで、わかりやすくいうならば「UDAが分派した」ということと考えてよいと思う。(わかりやすくする分、不正確になります。たぶん。)

まずLVFについては、政治的意図のある組織としては認められない(ただの犯罪集団)という分析はずっと変わらず。当てられているのも1パラグラフだけで、「まあ一応言及だけはしておくか」という扱いだ。10年前は最も凶悪な政治暴力集団だったのだが。

UDAは、mainstream UDAと、South East Antrim UDAとに分けられている。3月のRIRAおよびCIRAによる2件の攻撃事件のあとにUDAベルファストの大物(ものすごいコワモテ)が、BBCのインタビューで「分裂」ということの危険性に触れていたが(これはリパブリカン側にも同じ懸念がずっとあって、そしてリパブリカンは実際に分派してああいうことになっている)、このIMC報告書でもかなりの文字数を使ってそのあたりのことを分析・説明している。

PDFの13ページ、2.32からがmainstreamのUDAについての部分だ。2007年11月にUDAの中枢部は、武装を解き、政治的な道に専念するという方針をとることに決定したのだが、これが「現場の声」でなかなか進まずにいる状況が説明されている。まさに映画『眠れる野獣』だ。(ちなみに、『眠れる野獣』の脚本家はロイヤリストのコミュニティの人で、内容があまりにリアルなので、作品を作ったあとが大変だったとか。)あれは90年代末の状況を描いていたが、本質的な部分ではあまり違いはなかろう。司令部は組織の規模の縮小と、メンバーによる犯罪行為の件数低減のための働きかけを行なっており(どうやってるのかはわからないが、そこまで追求はしない)、いくらかは成功している。また、コミュニティ内での紛争は何としても避けるという決意がある。それでもUDAメンバーの一部は重大な犯罪行為をおこなっており(麻薬密売や売春組織運営)、ロイヤリストによる襲撃の件数は大幅に減っているが、襲撃を行なっているのはたいがいはUDAメンバーであるとIMCは認識している。

2.33から後は、2.32の具体的な説明。メインストリームUDAとSouth East AntrimのUDAとの衝突は、この報告書が対象とする期間(つまり2008年9月から2009年2月)においては、件数としては減少している。UDAは政治的な道をとるようになっており、何かあった場合も組織で解決するのではなく警察に通報するように推奨されている。しかしながら司令部ではコントロールできない地域ではそういう変化にノーの声もあり、全体的には進展状況はあまりよくない。

2.35で武装解除についての詳細が述べられているが(先行きは不安だ、という感じ)、これはつい先日、4月末だったかな、UDAの政治部門であるUPRGの代表団(すでにアイルランド共和国政府とは「友好」関係にある)が――つまり「プロテスタント」の彼らが、カトリックの聖職者のまとめ役と直接会談したりしていて、具体的進展というものがある程度は形になってきているようだから、今はこの2.35の記述をつぶさに見る必要はなかろう。次のIMC Reportを待つしかない。なお、彼らロイヤリストの武装解除期限は延長に延長という感じ。今は2010年2月までということになっているらしいが(延長延長で私もわけわかってません)、この5月に入って「この8月に動き出さないとこちらとしても対応しますよ」という宣言が、英国政府のNI担当大臣から出されたばかりで、そろそろ動くのではないかという雰囲気ではある。

2.36は活動の現状。人員募集活動は一部継続されているが、それほど組織的なものとは見受けられないらしい。だが、活動を停止することになっている組織が今になって新人を入れてどうするんだという疑問は当然あって、また武器の入手の活動も確認されている。その点については、IMCは、個人ベースでそういう活動をしている者がいるとの認識(ギャングだから)。また、組織内部での懲罰行動もある(麻薬に関連したとされる者をUDAメンバーが攻撃している)。

2.37は「UDAメンバーによる犯罪」の詳細。Tigers Bay地域やArdoyne地域などでのセクタリアン・アタック、パラミリタリー・スタイルでの襲撃、麻薬密売、恐喝、うさんくさいタバコの密輸販売、など。なお、映画『眠れる野獣』では、「麻薬密売人はコミュニティを破壊するので組織が徹底的に傷めつける」ということは、「上からの命令」で下の実動ユニットがしぶしぶやらされていたこと。こういう活動自体が「パラミリタリー」で、そこには政治的にどういう主義主張だとかいうのは関係ない(IRAもやっている)。

2.38はUDA司令部が「政治的な道」という理念は持っていても、実際にどういうことを達成したいのかがよくわからんという話で、これはUDA名義の声明文とかを見てもいつも感じるというか、何年前からの話だという。そもそもUDAの声明文は文法の間違いとかがあるし論旨もまるで一貫していないので(「書く」ことの訓練を受けたことのない人の書くもの、という感じ)、読解ができないことが多い。司令部の中でも意見は一致していないので先が見えないとか、次の報告書の対象期間である6ヶ月間(2009年2月から8月)に武器放棄がより差し迫った課題となるとかいうことも書かれていて、IMCがすごいプレッシャーかけてるなあという印象。

次のセクション、2.40が、UDA - South East Antrim Groupについて。プレスかけるかける。書かれている内容はメインストリームUDAとほとんど同じ、「武装組織としてはたいした活動は認められないが、犯罪がひどい」とかいったことに加え:
We note the establishment of the South and East Antrim Community Federation, which is directing its efforts towards community development and the enhancement of skills, particularly among former combatants, and we record the declared intention to phase out the membership of the South East Antrim UDA group over the next eighteen months to two years. This is a significant commitment, albeit on a longer timescale than would be desirable. We believe that the decommissioning of weapons is firmly on the group's radar screen, notwithstanding the feelings of some members about the recent dissident republican murders. We will continue to assess progress by results.

この「コミュニティ・フェデレーション」なる名称の、何をやるのかよくわからないグループについては、BBCなどでも記事になっているし(ただし背景解説がないので非常にわかりづらい)、それこそSluggerのコメ欄でも見れば頻出なのだが、この記述は抽象的だけれどもかなりわかりやすい。結局、「居場所」をなくすことになる武装組織のメンバーの新たな受け皿が必要、ということで、名称には特に意味はない(単に「それらしい」だけで)。

次のセクションはUVFについてで、これは大筋ではUDAと同じ感じ、ただしUDAのように「指導部でさえも一枚岩ではない」といった状況にはなく、意思統一がはかれているという説明になっている。

とりあえず、以上。

※リパブリカンについては:
http://nofrills.seesaa.net/article/118942471.html

※この記事は

2009年05月09日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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