No 10 official quits over e-mails
Page last updated at 21:02 GMT, Saturday, 11 April 2009 22:02 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/politics/7995044.stm
辞職したのはDamian McBrideという人で、元々は税関や財務省で仕事をしていた役人。サラ・ブラウン(ゴードンの妻)についてポジティヴなイメージを与える方向のキャンペーンをやってたのもこの人。ちょっとしか読んでないけど、プロフィールはこの記事が詳しい。労働党内が「ブレア派」と「ブラウン派」でぎくしゃくしていたときにもごにょごにょしていたらしい。
で、これ、本格的にどうでもいい話だからスルーしようと思ってたんだけど、報道記事を読んでいたら一応メモくらいは、という気になってきた。あまりにも呆れかえったので。
なお、記事があまりに多くて情報があちこちに断片として散らばっている状態なので、細かいことは私も知らない。それを調べようというほどの興味もないので(基本的に、起きたことがあまりにくだらなさすぎる)、細部については、報道機関が一応ウラ取って書いている記事を探してご確認いただきたい。
ゴードン・ブラウンの側近であるデミアン・マクブライドは、ダウニングストリート10番地(首相官邸)のメールアドレスを使って、保守党に対するsmear campaignについて打ち合わせをしていた。打ち合わせの相手はデレク・ドレイパー (Derek Draper) という人。
1967年生まれのドレイパーは、1997年のブレア政権発足後の「労働党の若きブレーンたち」のひとりで(直接的にはピーター・マンデルソンの内輪、つまり「スピンドクター」そのもの)、ブレア政権下では労働党の「モダナイザー」路線のPR担当として活動し、現在はLabour Listというウェブサイトの管理人。
このLabour Listは、ずうずうしくも "Labour's biggest independent grassroots e-network" (労働党の草の根支援ネットワーク)と名乗っているが、党がバックアップしているものの何がindependentなのか、私にはさっぱりわからない。また、ドレイパー自身かなりうさんくさい人物で、どのくらいうさんくさいかは、ドレイパー自身と同じくらいうさんくさい英語版ウィキペディアを見ればだいたいわかると思う。ソースがない部分もあるし、あることないこと書かれているかもしれないが、ドレイパー自身があることないこと書いてるんだから別に気にする必要もなかろう。(え?)(注:私には「マンデルソンの下で修行」というだけで「こいつ、うさんくせぇ」と決め付ける傾向があります。)
で、デミアン・マクブライドが首相官邸のメールアカウントを使って、デレク・ドレイパーと一緒に選挙前のキャンペーンを練っていたときに、互いに「こんなのどうよ」と書き送ったメールが、なぜか、Guido Fawkes' blogの手に……「はははは、よりによってここに渡ったのかよ!」というのが第一印象。
Guido Fawkes' blogは英国の政治系ブログの老舗で、「反ニューレイバー」の超有名ブログのひとつだ。(そこらへんの話は12日付のオブザーヴァー記事などにわりと詳しい。)中の人はロンドン生まれのアイルランド人(カトリックだから「ガイ・フォークス」らしいのだが、王室に対するプロットはないはず)。ただ、「ブロガー」として有名になった彼は「ごく普通の一般人」ではない。それなりに名のある筋金入りの保守党活動家で(5年も前からブログをやっているが、身分を明かしたのはわりと最近)、労働党としては絶対に尻尾をつかませてはならない相手。何しろ、反アパルトヘイト運動出身のピーター・ヘインという大物がこのブログに刺されてるんだから。
なのに、よりによってこいつに尻尾をつかまれるなんて、バカなんじゃないの。Guido Fawkes' blogがどうやってそれを手に入れたのかはわからないけれど(「ハッキングされた」とかいう反応がないところを見ると、何か裏がありそうだけど)、あのブログがこれをつかんだということがわかったときのゴードン・ブラウンの反応は「あちゃー」だったのではないかと思われる。
で、マクブライドとドレイパーのメールの中身だが、これはサンデー・タイムズに詳しく出ているのを見た。(たまたま見たのがサンデー・タイムズだったのと、ここであえてサンデー・タイムズというのと両面で。)もっと詳しいのが見たい人はサンデー・タイムズの数時間後に出たオブザーヴァー記事へどうぞ。
April 12, 2009
Revealed: e-mails that toppled key Brown aide
Isabel Oakeshott, Deputy Political Editor
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/politics/article6078529.ece
記事では具体的な点は抽象化されているが、それでもあまりにもくだらなくて下品で、それでいて常套手段で、そしてつい最近も聞いたことがあるような……。
The e-mails, seen by The Sunday Times, expose how Gordon Brown's head of strategy and planning [= McBride] wrote to a Labour spin doctor [= Draper] proposing a campaign of unfounded personal slurs against senior Tories. The smears, many of a sexual nature, were planned as part of a strategy to "destabilise" the opposition in the run-up to the general election.
つまり、マクブライドとドレイパーは、保守党の上層部について根も葉もない個人攻撃(性的なものが多数)を加えて、総選挙前に保守党を「不安定化」させようという戦略を計画していた。
そして、記事の後続部分にあるのだが、労働党のこのsmear campaignのターゲットは、デイヴィッド・キャメロン党首、ジョージ・オズボーン(シャドウ・キャビネットの財務大臣、1971年生まれという若さ。大学生の時に「アシッドハウスからレイヴ」という世代)とこのほか3人の下院議員。オズボーンに対しては「ドラッグをきめて売春婦とやっている」(これは今回が初めてではない)、「夫人の精神状態が悪いようだ」という噂をまき、キャメロンについては「恥ずかしい病気」について明かすようせまる、というもの。またある議員については、パートナーに便宜を図ろうとしているとして議会で追求するつもりだったらしい。
オブザーバー記事によると、マクブライドがこのくだらないメールを送信した20分後に、ドレイパーから「すばらしい、タイミングや技術面のことなど具体的な検討に入ります」という返信があった。その後、マクブライドの返信で、オズボーンが学生時代に妙なことをしていた(保守党の南アのアパルトヘイト政権支持に関連して)ときの証拠写真があるらしいという噂を流してはどうか、など。
これが、全部、本当に「根も葉もない」のかは私は知らないけれども、このやりとりの当人(ドレイパーとマクブライド)が、「いろいろとアイディアを出していただけ」で、書いたことは「中学生レベルで不適切だった」、「本気でやるつもりではなく、雑談していただけだ」みたいな弁明をしているので、少なくとも、書いた当人に何らかの根拠があったわけではないということだ。
マクブライドとドレイパーは、このキャンペーンを、ドレイパーが管理している「独立した草の根支援サイト(自称)」にリンクさせる新規サイト(RedRagという名称を検討中)で展開するつもりだったらしい。
政治の世界で、でっちあげたゴシップで相手を陥れるとかいうのはそう珍しいものではないかもしれないけれども、それが「民主主義」を冒涜し破壊しているということに気付いていてしかるべき立場の人たち(イラク戦争を推進した労働党の中の人たち)が、率先してこのダーティー・トリックスを使っているのだから、頭が痛い。
で、メモの内容があまりに低レベルなので、労働党内部からも「彼にはわが党に関わっていただきたくない」と言われ、マクブライドはあっさり辞職した。
なお、マクブライドからドレイパーにメールが送信されたのは1月13日(このときに、他の労働党の活動家にもCCされていたらしいが)。
その1ヵ月半ほど後の2月25日、彼らの「中学生レベル」のネタ合わせでネタにされたデイヴィッド・キャメロンの息子で、脳障害をもっていた6歳のアイヴァン・キャメロンが亡くなった(合掌)。デイヴィッドは、保守党の党首という激務のかたわら、アイヴァンが具合が悪くなって入院すれば病院の床で一夜を明かすなどしていた、ということがBBCでオズボーンの口から語られ(→探したよ)、英国のメディアは短い生涯を終えたアイヴァンへの哀悼の言葉と、この若くつやつやしたお肌のいいとこのぼんぼんの保守党党首の別の面(といっても伝統的保守党の価値観で言語化されキャッチフレーズ化されると「家族の価値」なのだが)を描写する言葉であふれた。「彼はあのようなことを体験しているから医療の問題をファーストハンドで知っている」というのは、次の選挙で保守党の強みになるだろう(なぜなら、労働党は崩壊するNHSをどうすることもできていないから)、という分析は、アイヴァンの訃報記事と同時にあちこちに出ていた。
今回のマクブライドとドレイパーのプロットについて、保守党は徹底追及の構えだ。
http://www.guardian.co.uk/politics/2009/apr/12/labour-conservatives-smear-emails
保守党は、党として、ネット対策というかネット戦略を真剣にやってきた。そのひとつがConservativeHomeという「保守党サポの広場」のようなプラットフォームで保守党執行部への圧力団体としての活動もある。
ドレイパーのLabourListはこれにそっくりの労働党支持者のプラットフォームだが、長期政権の与党というものの慢性的なものだろうけれども、労働党の指導部を賞賛することしかしていないので(でもブレア政権でのトニー・ブレア崇拝は異常だったよね)、これならガーディアンのなんとかトインビーっていう女の人が書いてるものと、フェビアン協会の中の人が書いてるものを読んでればいいんじゃないのか(読まないけど)という感じで、一度見てみたことがあるだけだ。
New Statesmanも完全に終わったし(そもそも記事がオンラインで読めない)、読むものがないなあ。ラスキでも読むか。もうプロジェクト・グーテンベルクに入ってるから。
※この記事は
2009年04月13日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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