「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2009年04月10日

ガーディアンで、マーク・ティッチナーによって言及されているのは……

ロンドンのイーストエンドにあるコンテンポラリー・アートのWhitechapel Art Galleryの拡張(隣接する元図書館の建物を吸収する形のもの)工事が完了し、この4月5日に再オープンした。

これを記念して、ガーディアンのArt and Designのコーナーで、コンテンポラリー・アートの作家を編集長とする企画、Whitechapel Takeoverを6日から開催中だ。(以前も、音楽のコーナーが「Squarepusher責任編集」になったり、つい先日はJohn Parish and P J Harveyが同様のことをやってたりしていたけれども、今回のアート&デザインでもそれと同じ。)

Whitechapel Takeoverでの「ゲスト編集長」は、6日はthe Chapman brothers, 7日がYinka Shonibare, 8日がFiona Bannerときて、9日がMark Titchnerだ。

Mark Titchnerは1973年生まれで、2006年のターナー賞でノミネートされている。テクスト/文字と「イメージ」の関係という領域でいろいろとやっている人で、完全に「スローガン」化して「意味」を失ってしまった言葉に、ヴィジュアルで新たな「意味」を与える、という印象があるのだが、あまりクソマジメな感じはしない。
http://en.wikipedia.org/wiki/Mark_Titchner
http://www.tate.org.uk/britain/turnerprize/2006/marktitchner.htm

tate.orgのほうにはエンベッドでインタビュー映像が埋め込まれていて、音楽はFugaziとNapalm Deathが使われているのだが、実際この人、かなり音楽好きだ。ガーディアンを「乗っ取った」記事でも、アート&デザイン面なのに、音楽の話しかしていない。

Whitechapel takeover: Mark Titchner's top 10 songs about liberty
Mark Titchner
guardian.co.uk, Thursday 9 April 2009 00.05 BST
http://www.guardian.co.uk/artanddesign/2009/apr/08/whitechapel-gallery-mark-titchner

ティッチナーが選んだ「自由をめぐる10曲」は、1曲目はいきなりFugaziの "The Kill" で、「自由」についてはもちろんDischord Recordsの話と、歌詞の内容(薬物注射で死刑にされる人の言葉)。いきなり気合入るよ。(この曲はCDも入手可能だと思うけど、DRM-Freeのmp3がemusic.comでDLできます。Fugaziはライヴ音源ならArchive.orgにあります。)

2曲目はCrassの "Yes Sir I Will" で、私などはCDでリリースされて手に入りやすくなってからやっとインサートとにらめっこして歌詞を知った(読んだ)クチです。(聞き取れませんでした。)

ここでにやにやしっぱなしになったところで、3曲目がGodspeed You! Black Emperor, "Blaise Bailey Finnegan III", 「ブレイズ・ベイリー」はアイアン・メイデンのヴォーカルで(綴り違うけど)、曲の中で読まれる詩はメイデンのVirusの歌詞だとか、このシングルをリリースしたカナダのインディレーベル、Constellation Recordsは、制作から流通に至るまでインディペンデントの方法を貫いていて大資本チェーン店には出していない、とかいったことが書かれていて、このページは「アート&デザイン」ではないのか感満載。(この曲もemusic.comにあります。GY!BEはライヴ音源はArchive.orgにあります。)

続いてヒップホップ、ブラックメタル、西海岸パンク、クラウトロック……と続くので、各自記事を見てニヤニヤしてください。(私のBlip.fmにもメモってあります。)

で、ニヤニヤしながら9曲目まで読み終わって、10曲目に目をやると:

10) Farewell by Boris (from Pink, 2006)


うひゃーーーー。Borisきたーーー。

ティッチナーが何を書いているかというと:
And so, to finish. Although part of me would like to choose something like the vile, catharsis of Cut Hands Has The Solution by Whitehouse (2003), let us finish with something unmistakably joyous. Japanese trio Boris have a prodigious catalogue of releases that ranges from hi-energy garage rock to lo-frequency drone. They have collaborated over the last few years with artists such as Merzbow, Sunn o))) and Ghost's Michio Kurihara. They also seem to be continually on tour. A Japanese journalist flicking through CDs in my studio translated the Japanese title of this song as "Like an explosion but bigger". When the album was given its American release, the title became Farewell. The original title seems, to me, perfectly evocative of a song that is the audio equivalent of staring at the sun. It makes me smile and forget myself every time I hear it, and if you like this song, you might also want to check out the excellent You Were Holding an Umbrella from last year's Smile. Farewell!

というわけで最後。自分の中では、Whitehouseの "Cut Hands Has The Solution" (2003) のまがまがしいカタルシスのようなものを選びたい気持ちもなくはないのだが、ここはひとつ、誰がどう見ても喜びに満ちたもので締めくくろう。日本の三人組、Borisのこれまでのリリースといえば、かっ飛ばす感じのガレージ・ロックから低周波ドローンに至るまで、ものすごく幅広い。彼らはこの数年で、 MerzbowやSunn O))), GhostのMichio Kuriharaといったアーティストたちとコラボしていて、常にツアーに出ているようにすら見える。で、うちのスタジオにあったCDをあれこれ見ていた日本人のジャーナリストが、この曲の日本語のタイトルを「爆発のようなものだけどもっと大きい (like an explosion but bigger)」と翻訳してくれた。だがこのアルバムの米国盤が出たときには、タイトルは "Farewell" になっていた。原題は、僕には、太陽を眺めている状態を音で体感させてくれるような曲をまさに思わせるものだったのだが。この曲は微笑みを誘うし、耳にするたびに我を忘れさせてくれる。この曲が好きな人なら、昨年出たアルバム、Smileの "You Were Holding an Umbrella" もぜひぜひチェックしてみてください。ではさらば (Farewell)!


……あたしの仕事がかなり直接的に言及されている!(10年前からBorisのUS盤の歌詞&タイトル英訳をやってます。)

説明すると、"Farewell" は、原題(日本盤)では「決別」で、「決別」をFarewellと訳したのは私です(正確に言えば、バンド側から言葉の背後のコンセプトを聞いて、この訳語をバンド側に提案した。バンドの決定でじゃあそれで行こうってことになった)。……ていうか「決別」が "like an explosion but bigger" というのがむしろ謎なんですけど (^^;) 、こういうlost in translationは興味深いです。機会があったら(ないと思うけど)ティッチナーに直接、どういう文脈で「決別」=「爆発のようなものだけどもっと大きい」が出てきたのか、確認してみたい。「決別」は、常用漢字的にOKなら「訣別」とすべきもので、「訣」にも「別」にもexplosionの意味はないし、おそらくは「イメージ」ではないかと思うけど……。(「訣」は中国でもbid farewellの意味だそうです。こんなことでもないと調べなかっただろうな、これ。)

対照表代わりに、JP盤とUS盤:
PINK
BORIS
PINK
曲名リスト
1. 決別
2. PINK
3. スクリーンの女
4. 別になんでもない
5. ブラックアウト
6. Electric
7. 偽ブレッド
8. ぬるい炎
9. 6を3つ
10. My Machine
11. 俺を捨てたところ

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Pink
Boris
Pink
曲名リスト
1. Farewell
2. Pink
3. Woman on the Screen
4. Nothing Special
5. Blackout
6. Electric
7. Pseudo-Bread
8. Afterburner
9. Six, Three Times
10. My Machine
11. Just Abandoned My-Self

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"You Were Holding an Umbrella" は、単に「君は傘をさしていた」の直訳なんだけど、直訳でいいかどうかも作業のうちで、これはぐるっと回って直訳を使おうということになったんだったと思う。

Smileも対照表。これは曲順が違うしミックスも違うから「対照」になってないんだけど(US盤がバンドのセルフ・プロデュース、日本盤は石原洋さんのプロデュース):
Smile
BORIS
Smile
曲名リスト
1. メッセージ
2. BUZZ-IN
3. 放て!
4. 花・太陽・雨(PYGカヴァー曲)
5. となりのサターン
6. 枯れ果てた先
7. 君は傘をさしていた
8. 「 」

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Smile
Boris
Smile
曲名リスト
1. Flower Sun Rain
2. Buzz-In
3. Laser Beam
4. Statement
5. My Neighbor Satan
6. Ka Re Ha Te Ta Sa Ki -- No Ones Grieve
7. You Were Holding an Umbrella

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Boris:
http://www.inoxia-rec.com/boris/
http://www.myspace.com/borisdronevil
タグ:音楽 art

※この記事は

2009年04月10日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼