「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2009年03月26日

Do You Remember Rock 'N' Roll Radio? --- Last.fm が実質有料化

freelast.png←画像クリックでLast.fm内のBring back the free last.fmグループに飛びます。議論の共通語は英語です。なお、当ブログ関連記事はタグ「last.fm」で一覧できます。

※3月31日、アップデートあり。併せてお読みください。
http://nofrills.seesaa.net/article/116511853.html


それを聞いて、まっさきに頭に浮かんだのは、非常に真剣に考えてたくさん考えた挙句、どういうわけか気付けば「お笑い」に行ってしまう(そしてそれを大真面目にやる)という、あまりに「らしい」英国産ボードゲームの、FAQのこれである(右図参照)―― THAT'S RACIST. ;)

ボードゲームのFAQは、「(英国からの)欧州への送料が、アメリカへの送料より高いのはどうしてですか。差別です」という文言だが、私はこれを思い出しながら、Last.fm有料化の報に、「米英独以外は課金されるというのはどうしてですか。差別です」と反応してニヤニヤしている。(げに恐ろしき、英国脳の恐怖。)

Last.fm Radio Announcement
Tuesday, 24 March 2009
http://blog.last.fm/2009/03/24/lastfm-radio-announcement

この曖昧な記事タイトルのブログ記事で、Last.fmのスタッフさんは、次のように説明している。
Today we're announcing an upcoming change to the way Last.fm Radio works in some parts of the world. In the United States, United Kingdom and Germany, nothing will change.

In all other countries, listening to Last.fm Radio will soon require a subscription of €3.00 per month. There will be a 30 track free trial, ... Everything else on Last.fm (scrobbling, recommendations, charts, biographies, events, videos etc.) will remain free in all countries, like it is now.


someの使い方とかがカチンとくるのだが(このポストに対するコメント欄を少し見れば、カチンと来ているどころか激怒している人がかなり多いことが確認できる)、要するに、米、英、独以外ではLast.fm Radio(ストリーミング)が、月3ユーロの定額課金制になる、という告知だ。無料お試しは30曲限り。

※「ラジオ」が有料になるということであり、単独の曲を曲情報のページにあるプレイヤーで再生すること(オンデマンドの曲再生)に関しては、無料ユーザーも変更なしです(30秒プレビューも、フルトラック再生も、フルトラック再生の上限回数も)。←少し曖昧に読めるかもと思ったので、以上、追記します。

一方で、ストリーミング以外(スクロブリング=自分が音楽再生ソフトで聞いた曲の記録、レコメン、チャート、バンド情報、イベント情報、ビデオなど)は、全世界でこれまで通り無料で提供される、ということをスタッフさんは強調して書いている。

で、だから? 聞ける音楽が中心になければ、そんなの色あせる。第一、Last.fmは、スクロブリングで集めたデータを分析して金に換えていたのだし(むろん、クレジットクランチでそれがもはや厳しい状態ということは推測できるが。ところでその件で1ヶ月前におかしな話があった)、チャートはユーザーがどう行動したかということだけだし、バンド情報のwikiとかは、ユーザーが作ったコンテンツだ。Last.fmの利用は無料だったが、参加者だって本当に「タダ」で音楽聞いてただけってわけじゃない。(私もwikiはけっこう書いたりしてる。)それに、「ラジオ」は本来無料で、そこで曲を耳にした人がその音楽を買う、というふうに動いているものじゃなかったか?

怒涛の勢いで「反対」や「抗議」の声が寄せられているコメント欄でのスタッフさんたちの返答を見ると、要するに、米、英、独(キーとなるエリア)では広告で費用を捻出できるが(ユーザーは広告という形で費用を負担するか、有料で広告なしのプレミアム・サービスを利用する)、それ以外ではそうではないので(というか、広告の最適化にかける予算がないのだろう)ユーザーに課金する、ということらしい。つまり、ストリーミング/ネットラジオとしては、英、米、独以外では広告つきで無料というベーシック・サービスがなくなる、ということだ。(米はPandoraなり何なり好きにしてくれって感じだが、英独とそのほかEU諸国とで、同じサービスに対する課金が異なるのはまずいのではないかと思うが。)

ただの有料化なら、はいそうですか、カタログの内容を充実させてからどうぞ、って思ったりもするけどね。ワーナー系レーベルの楽曲が一括削除されたのは、どーなってんの? とかあるし。しかし、これまでグローバルに提供されてきた無料サービスは英米独だけで使えるものとし、継続したければ月額3ユーロです、コーヒー代程度ですよ、さあどしどしサブスクライブしてください、という内容の今回のこれには、何とも言いがたいものがある。

Last.fmには、これまでも、有料ユーザーしか使えないストリーミングがあった。例えば、自分がそれまでに聞いた曲(ライブラリー)の中で一部だけを選んで聴くサーヴィス (loved track radio, playlist) は、無料ユーザーは使えなかった。(これだって、一定の曲数がないと再生不能なのだが……「ラジオ」という体裁を保つために、一定の曲数からランダムに選曲、巻き戻しや早送りなし、一時停止なし、というものだし。)

しかしそれでも、ライブラリー全体のランダム再生とか、「お隣さん Neighbours」ラジオとか、「レコメン recommendation」ラジオとか、あるいはアーティストごとのラジオ (similar artists)、グループのラジオ (group radio)、タグごとのラジオ (tag radio) といったものは無料ユーザーでも利用できた。(それどころか、アカウントを持ってなくても使えていたはずだ。)

今回の発表は、それらがまとめて有料化される(ただし英米独の3ヶ国ではこれまで通り無料でもOK)という内容だ。支払いは現状PayPalのみ(つまりクレジットカードがないとダメ)。ストリーム機能が使えなくなってしまっては、Last.fmを使う意味が大幅に減少するという人が多いのではないかと思う。つまり、実質的には、Last.fmを使いたければ月に3ユーロをPayPalで支払ってください、という話だ。

有料化についての一方的な告知のブログのコメント欄を見ると、「モールディヴ在住の学生です。クレジットカードは持っていません。周囲は違法DLしていますが、自分は違法はいやだったのでlast.fmを使ってきました。もうそれもできなくなります」とか、「コロンビア在住です。ここでの3ユーロの課金は、英国での12ポンドの課金に相当します」とか、「コロンビアでは3ユーロあれば3食食べられます」とか、「アルゼンチンでは給料が月に230ユーロくらいですが」とか、「南米ではクレジットカードなんて持ってる人はほとんどいませんけど」とかいったコメントがある。これらのコメントは英語で書かれていて、英語話者という枠組でもこれだけの感情的反発がある、ということだ。(一方で「コーヒー買うのと同じ金額じゃん、何ガタガタぬかしてんの」というカナダからのコメントも。たぶん同じカナダからの「国境の一歩向こうでは無料なのに、払ってられるか、ばかばかしい」という投稿へのレスだと思うけど。)

で、blog.last.fmのスタッフさんの投稿は、「プレスリリース」みたいな内容で、全然具体的ではなくて(これは前にサイトのデザインをリニューアルしたときにも言われていたけど、ユーザーに対して説明するときっていうのは、外向きの「マーケティング」の言語で語ってる場合じゃないと思う)、具体的なことは、ブログの本文の投稿の末尾に「他の言語への翻訳はこちらからどうぞ」的にリンクされているページを見ないとわからない。しかもそのリンク先、翻訳文を見るには、いつも通りにページ右肩で言語切り替えをしなければならない。(文中に各言語へのリンクくらい入れればいいのに。)
http://www.last.fm/about/subscriptionradio

※日本語:
http://www.lastfm.jp/about/subscriptionradio?setlang=jp

ここを見てようやく、「有料化」がいつから始まるのかを把握したのだが(ブログには書かれていない)、3月30日からだそうだ。ブログの投稿は24日。「(事実上の)サービス全面有料化」という大きなことをするのに、告知から実施日まで数日というのは本当に信じがたい。

個人的には、Last.fm radioのあの音質にカネを払う気にはなれないのでサブスクライブはしない(そのカネを4か月分貯めてCDを1枚買うほうが有益だ)。Last.fmのラジオは、流しておくためとか(そして耳にした曲がいいなと思ったらLove trackのボタンを押してメモっておけるのは便利だった)、楽曲のサンプラーとしてはいいけど、ちゃんと聴きたいものはCDを買うか、200kbps超のmp3で買うかしないとちょっと無理(そういうところもまさに「ラジオ」で楽しかったんだけどね)。BBCのラジオの音楽番組より、好きな感じで絞込みができる結果になっていたのが楽しかったのだが、自分の中ではサービス終了ということで、今までありがとう、という感じだ。ユーザーがつけたタグでタグ・ラジオってのの初期から聴いてきたけど、誰かがいたずらで無茶苦茶なタグをつけたものをいちいちbanしたり(70's punkのタグで聴いてたらモー娘。がかかったりしたことあったしね)、いい思い出だ。

スタッフのブログのコメント欄は、1300件を超えるコメントがついていて、とてもではないが目を通せないほどになっている。しかし見た範囲でいうと、最も多いのが「全員に平等に課金するか、全員に無料で提供するかのどちらかにしろ (Charge everyone or no-one)。英米独3ヶ国の人だけ無料提供ありというのはおかしい」という内容で、中には真剣に「差別だ」と怒っている人もいる。怒りがエスカレートして「ちょっとちょっと、落ち着いて、誰もそんなことは言ってないよ」と言いたくなるようなコメントもある。英国から「このような差別待遇を平然とする企業とは縁を切る」という投稿もある。

でも一番響くのは、「昔のLast.fmって、『音楽』がすべてだったよね」という投稿。だから私も利用してきたのだけれど、どうも最近、そういうところが失われてきて、ユーザーとして関わっていて音楽以外のところで苦々しい気分になることが多くなったと思う。

それと、Creative Commonsのライセンスで無料で音源を出しているレーベルやバンドのいくつかが、既に、Last.fmから楽曲を削除し始めているらしい。"Free" というコンセプトの根幹が崩れたことでの離脱だ。



エントリタイトルに使ったRamonesの曲は30秒プレビューしかないみたい。
http://www.last.fm/music/Ramones/_/Do+You+Remember+Rock+%27N%27+Roll+Radio%3F

じゃあこれで。
http://www.last.fm/music/The+Velvet+Underground/Loaded/Rock+and+Roll

Every time she puts on a radio
There was nothin' goin' down at all,
Not at all
Then one fine mornin' she puts on a New York station
You know, she don't believe what she heard at all
She started shakin' to that fine fine music
You know her life was saved by rock 'n' roll
Despite all the amputations you know you could just go out
And dance to the rock 'n' roll station


なお、実質有料化の件は、「無料で音楽」のデータベース的なものを作っているフランスの人が、「残念なことに、Last.fmはもうfreeではなくなってしまった」と書き添えたPMで教えてくれた。彼に感謝する。

とりあえず私は、30日にscrobblingを停止する。金額の問題ではない。1ヶ月前に、scrobblingのデータを商売のために使っていると書いたのと同じスタッフさんが、今回「scrobblingは無料のままです」と書いている厚顔無恥っぷり(あるいはただのナイーヴさ)に呆れたからだ。この調子でころころ規約変更されたらつきあっていられないし、ましてや金など払えない。その分をemusic.comに上乗せして、多くの曲をDLしたほうがずっと気分がよい。

そもそも、ブログで告知することじゃないだろ、ってのがあるし。ユーザーにメールで告知しろよという。どうして運営からではなく、別のユーザーさんからのPMで知らされなきゃならんの、課金サービスへの移行という話を。

有料化に抗議するグループも既に立ち上がっているとのこと。
http://www.last.fm/group/FREE+IS+FREE



Last.fmのサイトで所属しているグループのラジオを聞き納める作業(?)に着手しているが、バッファリングでぶつぶつ切れていて聞けたものではない。(有料ユーザーはそういう面でも優遇されるという説明がサイトのどこかにあったが。)このタイミングでぶつぶつ切れるストリーミングを聞かされると、本気で腹立つ。

インターネット・ラジオのリスト:
http://en.wikipedia.org/wiki/Category:Internet_radio
※まずそれぞれの項目のページに飛んで、それぞれのサービスのサイトに行ってください(ページ末尾にリンクされているはず)。

Creative Commonsなので、規模の大小を問わず、「商業的」なものは聞けないけど:
http://www.jamendo.com/en/



追記@27日:
アカウントを消したいけどAudio Scrobbleのデータを消したくない場合、http://lastgraph3.aeracode.org/ にlast.fmのユーザーネームを投げるといいことがあります。(Free is Free Groupのディスカッション・ボードから。この投稿の後に、スタッフさんが、「最近プレイした曲のページから手作業で保存すれば」というレスをしていて、何かほんとに「えー」という感じ。第一、Audio Scrobbleのデータのエクスポートがすぐにできるようにしてほしいって何年前からの話だっけ、という。)

あと、有料化についてLast.fmからのメールがあった方もおられるようです。私のところには来てませんでした(スパムフォルダも今週の分は全部チェックしたけどなかった)。Private message受信のお知らせは何通かあったけど、運営からのメールはありませんでした。何らかの具合で受信できなかったのかも、と思います。いずれにせよ、これほど大きな変更について、ユーザー全員に十分な予告期間をもって告知するということができないのはあまりにひどいし(しかも、昨年夏のリニューアルのときにそれでものすごい苦情が殺到したはず。学べよと思うけどね、ほんとに)、使い続けたいと思えなくなったことに変わりはないです。このブログのサイドバーからもバナーを外します。
タグ:last.fm 音楽

※この記事は

2009年03月26日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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