結論的には、これは「いくら時間があっても足りません」って感じ。本や年表の類でしか知らなかった街が、壁画データベースのようなものとは違って「街」というコンテクストの中で、また、flickrのような個人投稿の写真サイトとは違って「街路」という流れの中で見える。私はベルファストは行ったことがないので、当然、ロンドンとは違って「懐かしがる」感覚はまったくないのだけれど、ロンドンとはまるで違う「コンテクスト」の存在がすごすぎ。
まず、Googleの顔認識技術の性能がいかんなく発揮されたベルファストでの一枚は、Sluggerのコメント欄に投稿されていたURLを見ると、誰かが通報したらしく、画像が消されてしまっている。(→このほか、通報で早速消された画像についてはBBC記事参照。日本でのサービス・インよりさらに混乱してるかもしれない。)
これのひとつ手前のカットは残っているが、それも壁画に描かれている人物の顔が見えない(木があるので)。
※広く知られていることなのでわざわざ書く意味もないと思うのですが、この絵が描かれている建物はシン・フェインの拠点です。
ここまで来ると、陰謀論思考で意味などないところに意味を見出したくもなってくるが(ボビー・サンズはある種のタブーだから)、実際に「意味」などないのだということは、次の例で証明されるだろうと思う。
リンク先で、画面右上にある「ユーザーの写真」を見ていただきたいのだが、これは2002年に亡くなったクイーン・マザー(エリザベス2世のお母さん)を讃える壁画で、ロイヤリスト地域のシャンキル・ロードにある。この壁画も、サンズ壁画と同じように、顔が認識されて「プライバシーが保護」されてしまっている。
ボビー・サンズはIRAの闘士で「テロリスト」だから顔が消されたのだろう、と考えたくなった人がいたとしても、「でもクイーンマザーも消されてますけど」という事例を見れば、単に顔認識技術が笑える結果を出しているだけだということで納得するだろう。
それから、Falls Rdにあるパット・フィヌケンの壁画は、コマによってぼかしが入っているのと入っていないのとがある。(ついでに言えば、車がいたりいなかったりするのだが。)
下記の「西ベルファストの観光」というテーマの看板も、カットによってぼかされていたりそうでなかったりいろいろだ。
※描かれているもので私にわかるのは、リパブリカンの壁画、教会など昔の建築物やモニュメント、Divis Flatsなど近代の建築物、スポーツ。右上の子供たちのは何だろう、教育のことかな(特にアイルランド語)。あとはまったくわからないけど、いずれにせよ、絵が部分的に誤認識されていたりする。
一方で、どう見ても「顔」なのに「プライバシー保護」されていない壁画もある。様式化されているから、人間には「顔」に見えても機械にはそうではないのかもしれない。
※この壁画はいかにも「リパブリカン」な壁画。下に並んでいる4つの紋章はアイルランドの4州の紋章で、左からマンスター、コナハト、レンスター、アルスター。標語はアイルランド語なので私には自力ではわからないが、Eirí amach na Cáscaは英語でいうThe Easter Risingのことで、壁画で人物の横に描かれているのはGPOだ。壁画に埋め込まれているのは、処刑された人々の名が刻まれたものだろう。
それから、私にはテーマがわからない壁画。死者/犠牲者の顔を並べたものであることは確かだけれども、わからない……。
と思って、このサイドストリートの方に行ってみたら、1981年ハンストと……何だろう、人数が多いのだが、ここでもまた、お1人だけ「プライバシー保護」されている。
同じ壁画を引いて見ると、左のほうにアルファベット・スープ。
※RSYMというのは、IRSPのユース、つまりINLA。
このサイドストリートをもっと進むと、また別な壁画が出てきて:
こんなふうになった後に、住宅街へと続いてゆく。
別な通りには、かなり上手い壁画が。これも顔認識はされてないっぽい。
という具合に、西ベルファストを、Google Street Viewを使って散策してみましたよ、というお話でした。
おまけ (1): フォールズ・ロード名物のアルファベット・スープ(笑)。
IRA, Celtic, Eirigi, INLAなど。
おまけ (2): 営業している様子のない美容院のシャッターには、"GAZA BLEEDS, THE WORLD FIDDLES" の文字。
ベルファストの撮影は2008年3月から4月くらいに行なわれていたようで(別な通りで、「道路工事のため4月何日から数週間、通行止めになります」という表示が写りこんでいた)、最後のガザについてのメッセージは、2008年12月のあのとんでもない攻撃についてのものではないと思います。(アイリッシュ・リパブリカンは歴史的にPLOとの連帯があるので、ガザ封鎖開始後のいずれかの時期に書かれたのだと思います。)
ベルファスト散策はまだ続けるつもり。エントリにするかどうかはわかんないけど。
Sandy Rowのジョージ・ベストもプライバシー保護されてた!
同じくSandy Rowで、何かの旗ではこんなことが!
※この記事は
2009年03月21日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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