「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2009年03月20日

Google Street Viewが英国でも開始。まずはロンドンを少し見てみた。

いやあ、Googleのテクノロジーってほんとうにスゴいですね。「人間の顔」は自動識別して、個人が特定できないようにボカシを入れてくれるんですよ、こんなふうに(←お茶ふき警報発令中)。ちなみに、プライバシーへの配慮がまったくない状態の同じ場所の写真はこちらで

……というわけで、Google Street View (GSV) がUKでも始まった。まずは下記の25都市からのスタートだ。
UK cities covered so far

Aberdeen, Belfast, Birmingham, Bristol, Cambridge, Cardiff, Coventry, Derby, Dundee, Edinburgh, Glasgow, Leeds, Liverpool, London, Manchester, Newcastle, Norwich, Nottingham, Oxford, Scunthorpe, Sheffield, Southampton, Swansea and York.

(from the Daily Telegraph)


まさかベルファストが最初のリリースに入っているとは思わなかったが、ベルファストが加わったことで、4ネイションそれぞれ必ず1都市は入っている状態となっている。(微妙に主張が強いな。)

Belfastなんか見始めた日には日が暮れてしまうし(壁画ツアーができる)、OxfordとかCambridgeとかを見るとすごく楽しいのだろうけれど(美麗なので)、とりあえずはロンドンを見てみた。

お約束で:

撮影時に天気がよかったんですねー、的な一枚。

King's Cross駅前交差点:

こちらは天気はイマイチ。

で、Google社では、人間の顔や車のナンバープレートは自動認識してぼかす技術を導入していて、それについてGoogle UKの中の人は「99.9パーセント成功、ただしうまく行かなかったケースもある」と言っているのだけど:
Google has developed sophisticated technology to automatically blur human faces and car number plates to guarantee privacy. ...

"We have got 99.9% of it right," Parsons said. "But sometimes it does not work completely."

(from the Guardian)


キングズ・クロス周辺を10分くらい、適当にうろうろしてみただけで、自宅の前に立っている男性の顔が識別できたり、あと上記のキンクロ駅前のショットで、トラックのメーカー名はぼかしが入っているのにナンバープレートは入っていなかったり、という2件の漏れがあった(どちらも報告済み。ナンバープレートは何件か報告した)。

かと思えば、実際の人間ではありえないほどの大きさの、壁画のボビー・サンズの顔がぼかされているし……まったく、「顔認識テクノロジー」もなかなか難しいものですわね、と気を取り直してお茶をいただく。

そして、お茶をいただきながら、デイリー・テレグラフの「GSVの変な写真」のページを見ると、国会議事堂前のブライアンさんの座り込みのプラカードの「イラク戦争の犠牲者」の数字がぼかされているので、またお茶をふく。そこまでして隠蔽したいか!(笑)(←「隠蔽」云々はもちろん冗談です。)

で、ロンドンはGoogleがストリート・ビューのカメラ(→コヴェントリーで、撮影の車同士が出会った瞬間が可笑しい)で乗り込んでこなくても、英国政府が設置したCCTVがそこらじゅうにあるわけで、例のBanksyの名作、One Nation Under CCTVまでGSVに撮影されているという高度なお笑いの状態になっているのだが、それでも「プライバシー論争」は起きている。政府のCCTVがないような、ほんとに住宅街でしかない道もGSVには撮影されていて、「自宅前のゴミ箱からゴミがはみ出している」みたいなのも全世界に発信されてしまっている。しかも、GSVのページでは「番地+通りの名」が、大まかとはいえ表示される。

でも、東京のストリートビューを見たときほどの「覗き見」感はない。というのは、通り(公道)に面した家屋を「無理やり覗き込んでいる」感じはしないからだ。

東京の住宅街の場合、身長2メートル(比喩的に)の人でもなければ普通には見えないような目線で撮影されていたことに、私も困惑を覚えた。他人の家の塀によじ登って、無理やり覗き込んでいる目線。

しかしロンドンでは、たぶん撮影のカメラの高さは同じなのだろうが、そういう感覚はない。なぜかというと、あちらの一般的な家(特にテラストハウスの住宅街)の前の塀は、東京の住宅街の塀のように「通りからの視界を遮る」ことを目的としたものではなく単に「境界線を示す」程度のもので、地面から数十センチの高さでしかなく、身長2メートルでなくても普通に通りを歩くだけで、「公道から家の中が見える状態」だからだ。

といっても家の中が丸見えの状態だというわけではなく、ほとんどの家では、通りに面した部屋の窓は常にレースのカーテンがかけられている。東京の住宅街のGSVの居心地の悪さは、譬えて言えば、そのレースのカーテンの向こうを見ているような感じだろうか。

それと、ロンドンは住宅街でもバスが走っていることが多く(それほど道路幅が広くなくても)、GSVのカメラの目線はシングルデッカーのバス(2階建てでないもの)に乗車しているときの目線とあまり変わらず、何と言うか、とても見覚えのある風景になっている。

と、言葉で説明するより画像で。ロンドン北部でバスが通っているという表示のある通りを適当に見てみたところ。歩道を歩いている人の背の高さを基準にすれば、家々の塀の高さがだいたいわかる。画像の右手にあるボックスみたいなのはバス停。



バスレーンになっている地点で、Googleのカメラの車が通りの真ん中を通っているせいもあるが、住宅街で住宅を写しているのに、違和感はないと思う。

※ただ、表示の際のズーム機能で、カーテンをしていない2階の窓から家の中が見えてしまうことはあるかもしれない(私が見てみたものはいずれも、カーテンがかかっているか、窓ガラスの反射で中は見えないかだったが)。

予想していた通りなのだけども、こういうのを見ると、東京のGSVについての違和感をロンドンの人に説明するとしたら、けっこう難しいなあと思う。

あと、住宅街ではなくもっと大きな通りでは、私にはまったく違和感がない(それは東京でも同じで、バス通りの写真は、人の顔とか車のナンバープレートのような要素を除けば、違和感はなかった)。なおロンドンでは、普段の生活でダブルデッカーのバスの2階に乗れば、GSVよりもっと高い目線になる。

……みたいなことは拙著にも書いたか。

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なお、今公開されている25都市で撮影が行なわれたのは、2008年夏だと考えられる(木々の様子、人々の服装、町の看板などから)。ガーディアンの記事やその他のメディアの記事で、「Woolworthsが営業してる」といちいち書かれているのが、なんともビター・スウィートな感じだ。でもWoolworthsの全店舗閉鎖という大きな出来事を挟んでいるだけに、「GSVはタイムカプセル」感が高まっているかもしれない。

「ああ、2008年ですね」って写真:

この道は、私がハックニーに滞在していたときに日常的に通っていた道。私がいたときは空き地か廃屋だった地点だが、GSV撮影時には、集合住宅として開発されていて、2008年内に完成する予定だという看板が立っていた。シティまで歩いて20分もかからない地域だから、住宅の需要は(2008年の時点では)たっぷりあっただろう。というか2000年には「ここには新たな集合住宅ができることになっている」という話になっていた(近所のおばさんからそう聞いた)のが、2008年までかかったのか、という気がする。

それから、「Woolworthsがまだある」という件で、ハックニーの店舗を見てみた。Mare Streetの、鉄道の高架の脇だ:

あったあった。

「Woolworthsの向かいの店はまだあるかな」と思ったら:

ベンディ・バス、ひどく邪魔。(^^;)

ここをもう少し南に行くと、Hackney Empireというヴィクトリアン・ゴシックの劇場があるのだが:

進めるのが青い店の前までで、Empire(画面一番左の建物。方角表示のすぐ脇)の前まで行けない…… (^^;) 赤い店(Empire Supermarket)では通りすがりにトマトか何か買ったことあるな。

同じエリアのランドマーク:

このあたりは、19世紀後半のイーストエンドの救貧活動の時期に建設された建物がいろいろあって(確か自治体の保存地域指定になっているはず)、これもそのひとつ、赤十字の施設。

ここから南を見ると:

ここで先に行けなくなるけど、通りの名前を入力すれば行ける。(こういうところの使い方がよくわからんです。)

ハックニーめぐりをしたい方は、St Augustine's Towerからどうぞ。このあたりは、昔hamletだったのだなあというのが見ればわかる街で、すごく好きでした。ここだけロンドンではなくどこかの地方都市のようで。鉄道の高架の南はそうでもないし、ここからもっと北に行くとまた再開発(19世紀)地帯だったのだけど、このあたりだけは「13世紀」の面影があります(教会の塔も元々は13世紀。現存の建物自体は16世紀だけど、ロンドンのシティは1666年の大火で丸焼けになってしまっていて、17世紀前のものはほとんど残っていないから、シティからバスで10分もかからないここでこういうものが見られるのは、かなり「hidden London」的な感じだったり)。


大きな地図で見る

※次の投稿では、拙著に書いた別の地域をGSVで見てみる予定。

※この記事は

2009年03月20日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼