まず、警官射殺についてのベルテレの記事にあってこれはいいと思ったので(こんな単純なことも自分では思いつかなくなっている……orz)、一帯の地図をGoogle mapから。地名などはこれを参照しながらどうぞ。
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警官が射殺されたクレイガヴォン (Craigavon) は、Lough Neagh(湖)の南側(下)、「M1」とある道路のもう少し南です。
その少し東に、ラーガン (Lurgan) という町があります。ここでもちょっとあったそうです。Slugger O'Tooleの記事のコメント欄(ちょっとこの重苦しさは読むのがつらい)で、「ラーガナイト」さん(ラーガン住民という意味)が非常に生々しい投稿をしているので、それもご参照ください。
というかこのSlugger O'Tooleの記事によると、初期報道では月曜の夜に警官が殺されたのはラーガンだという話だったようです。実際にはそのすぐ西のクレイガヴォンだったのですが、同時多発的にいろいろ起きていたらしく。
また、スラオさんによると、Lough Neaghの西方のクックスタウン (Cookstown) でも警官との対峙があったようです。
なお、土曜日に軍基地が襲われたのは、Lough Neaghのすぐ東北にあるアントリム (Antrim) です。
こんな具合の月曜日の夜の概況をまとめているのがガーディアン記事 (by Henry McDonald and Owen Bowcott):Ulster violence escalates as policeman is shot dead
http://www.guardian.co.uk/uk/2009/mar/10/police-officer-killed-northern-ireland
さっきのエントリのときに見た時点ではどの記事にもなかった詳細が、少しずつ明らかになりつつある段階の記事です。(BBCは同じURLで上書きをするのでよくわからなくなるため、ガーディアンを参照します。)
まず、アーマー州北部クレイガヴォンのLismore地区で(ベルファストの南西26マイル)で、午後10時前に警官が頭に被弾、死亡。この警官は、北アイルランド警察がRUCからPSNIになって(2001年)以降、最初の犠牲者。現場付近には軍のヘリと武装警察が出て道路を封鎖。
その2時間ほどあと、火曜日午前12:20ごろに、クレイガヴォン郊外部で1台の黒い乗用車に銃撃 (a black car had been raked with gunfire)。ウラが取れていないながら、この車は警察に追われて追突されていた (rammed) という話もあり。推測ですが、誰かが自分の使っている車を証拠隠滅のために炎上させようとして、銃弾を浴びせたということではないかと思います。
クレイガヴォンで殺された警官は、まだ氏名などは明かされていない段階ですが、記者には警察に入ってから20年以上経っているベテランだと伝えられているようです。ということは北アイルランド紛争の時期からの警官です。
この警官は、Drumbeg estateで疑わしい行動が確認されたとのことで現場にパトロールに赴いた警官のひとりだそうです。この「疑わしい行動 (suspicious activity)」というのは具体的には語られていません。PSNI(北アイルランド警察)のトップ、サー・ヒュー・オードの記者会見によると、「地域の人が助けを求める電話をしてきたので、警察が出動し、警官が撃たれた」ということです。サー・ヒューはこの記者会見でかなり激しい言葉を使っているのですが、挑発が意図なのか何なのか……。
それから、クレイガヴォンの事件については、地域の(北アイルランドの)報道では、ガンマンは住宅からロングレンジで警官を撃ったとのこと(うは……)。未確認ながら、死亡した警官のほかに一人の警官が重傷を負ったとの報道もあり。
昨年だったかな、クレイガヴォンではなかったと思うけれども、「カトリック」のエステートでいろいろなトラブルがある(「ご近所トラブル」の類ではなく)ということでBBCの人があちこちを回るという映像レポートを見たことがあります(→たぶんこれ。BBCのPanorama)。でもそれについて何かを書けるほど、私はそれについて知らないので、代わりに、昨年夏に自治議会議員がボコられた件についてのエントリから。アーマー州のことではありませんが。
2008年08月01日 バリミナ、NI自治議会議員への襲撃【メモ】
http://nofrills.seesaa.net/article/103972112.html
襲撃されたDaithi McKayさんは、2007年ストーモント選挙で最年少で当選した人で、2007年選挙の時点で25歳。
水曜日にバリミナの団地に住むコミュニティ・ワーカーを訪ねたあと、インターンメントの記念行事(たぶん8月9日)のボンファイアをめぐって地域の若いリパブリカンと口論となり、ボコられたらしい。
コミュニティ・ワーカーはBBCの取材には応じたが名前などは出さないよう要請しており、襲撃後は団地から引っ越すことを考えている、と語っている。彼の話では、20人ほどの若者が集まっていた。「20人が900世帯のコミュニティを思うがままにできるなんて」。
BBC 記事には暴行の現場をとらえた映像を含むニュースクリップがエンベッドされている。映像では暴行しているのは1人だが(たぶん10代後半)、暴行を受けるマッケイ議員と若者の間に50代か60代の男性が割って入ろうとしてもお構いなしで殴る蹴る。音声によると、コミュニティ・ワーカーは36年間ここに暮らしていて活発に活動している。
彼らがボンファイアに反対しているのは、若いのが「紛争」を口実にボンファイアをおこない、それにかこつけて集まってはいろいろと暴れるから、のようだ。
ともあれ、月曜日に警官が殺された現場について、ガーディアン記事には、昨年警察の強制捜索が行なわれ暴力的な事態となったことがある、と説明がある。このときは警察の車に銃弾が打ち込まれ、警官にペトロル・ボム(火炎瓶)が投げられた。
この暴動か……10月23日にブクマしてあるんだけど。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/7687092.stm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/7683871.stm
話を元に戻して月曜日の夜。警察が出動したのは午後9:45ごろ。一般市民からの要請があった(コミュニティワーカーかな)。警察スポークスマンの話では、「警察の車2台が到着、警官2人は車から降りた。彼らを狙って銃弾が発せられたようである。1人が被弾し、その負傷が原因でその後死亡した」。(Sluggerのコメント欄にある報告によると、搬送先の病院で死亡とBBCが報じていたとのこと。)
あと、BBCの記事には政治家のコメントが山のように盛り込まれています。
このクレイガヴォンの件とは別に、ラーガンでは、警察署の近くにサスペクト・ディバイスがあると電話で警告があり、またクックスタウンのシン・フェイン事務所でパイプボムが見つかったとのことで、警察が捜査中。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/7933409.stm
BBCのこの記事では書かれていないのですが、Sluggerにはラーガンでカーチェイスがあったと報告されています(このページのコメント欄8件目)。ガーディアン記事にある「クレイガヴォン郊外部で1台の黒い乗用車に銃撃」の件での「警察に追われて衝突」というインシデントはおそらくこれでしょう。
報告者は「うちのフラットの外でカーチェイスがあって、車が(警察の)ランドローバーに突っ込んだ。1人逮捕された様子だが、見た感じは14歳くらいだ」といったことを投稿しています。あとは……おいおいマジかよという内容です。警官が撃たれた現場から1マイルくらいのところだとか、自分を追い抜いていった車は壊れていて大きな音を立てていたとか。
このラーガンという場所は「北アイルランド紛争」を語るときによく出てくる地名のひとつで(もちろん、「ベルファスト」や「デリー」ほどではないけれども)、ローズマリー・ネルソンが暮らしていたのも爆殺されたのもここだし、軍ががちがちに固めていたという1998年の報道もあるような場所で、ローズマリー・ネルソンの葬儀の後の大暴動の写真は、David McKittrickとDavid McVeaの本の表紙にもなっているし……という町。
Making Sense of the Troubles David McKittrick Penguin Books Ltd 2001-11-29 by G-Tools |
※この本、解説としてはとてもよい本なのですが、脚注がないので資料性が……。
そのラーガンについて、最新のガーディアン記事から:
Bored teenagers blamed as lurid graffiti makes comeback after attack at barracks
Owen Bowcott
The Guardian, Tuesday 10 March 2009
http://www.guardian.co.uk/uk/2009/mar/10/barracks-attack-graffiti
On the Kilwilkie estate in Lurgan, often identified as a stronghold of dissident activity, the walls were thickly decorated with RIRA (Real IRA) slogans. Older Provisional IRA symbols had been defaced.
"Sinn Féin sell out" had been painted on a wall overlooking wasteland by opponents of the peace process. Black stencilled patterns on several gable ends are emblazoned with small CIRA (Continuity IRA) logos on top of a balaclava-clad figure clutching a rifle.
But on the streets of the estate residents offered little sympathy for such anti-ceasefire groups. It was more often disdain. ...
つまり、壁にはRIRAとかCIRAのグラフィティがあるけれども、人々の間では共感はほとんどない、ということです。そういうのを書いているのは、やることのない若いのだ、ということです。
※この記事は
2009年03月10日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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