「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2009年03月06日

スーダン政府、人道支援活動のNGOの登録を抹消。

スーダン政府が、ダルフールなどで人道支援活動を行なってきたNGO、10団体の登録を抹消したとの報道があった。

Sudanese president expels aid agencies
http://www.guardian.co.uk/world/2009/mar/05/sudan-aid-agencies-expelled

[Bashir] said the humanitarian organisations were being expelled for "activities that act in contradiction to all regulation and laws". The organisations affected include Oxfam, Save the Children and the International Rescue Committee.

大統領は、人道組織は「あらゆる規則と法律に反した行動」を取っていることで追放される、と述べた。影響を受ける組織には、Oxfam, Save the Children, IRCなどがある。


……何かあったときに最後まで残っているものと認識しているNGOが、いきなりこの段階で追放……orz

このほか、こちらのブログさんで知ったのだけれども:
Ban urges Sudan's cooperation, but is vague on arrest - Summary
http://www.earthtimes.org/articles/show/258486,ban-urges-sudans-cooperation-but-is-vague-on-arrest--summary.html
The UN headquarters in New York said Khartoum had revoked on Wednesday the legal registrations of between six and 10 humanitarian groups operating in Darfur. They included Oxfam, Solidarite of France and Mercy Corps.


ということは、Oxfam, Save the Children, the International Rescue Committee, Solidarite of France, Mercy Corps... それから、NYTのクリストフの4日付Op-Edに、the Dutch section of Doctors Without Borders (Medecins Sans Frontieres) が追放されたとある。(ICCがあるハーグはオランダだからだろう。さすがにMSF全体を締め出す段階ではないのか。)それから、同じくクリストフの5日付ブログに、上記のほかCAREの名前が……。BBC記事も見てみたが、ここにない名前はない。

と思ったら、ついさっきアップされたVOAの記事にリストが出ている。
http://www.voanews.com/english/2009-03-05-voa55.cfm
The list of aid groups ordered out include Action Contre La Faim (ACF), Care International, CHF International, International Rescue Committee, Mercy Corps, both the French and Dutch branches of Doctors without Borders, the Norwegian Refugee Council, Oxfam, PADCO, Solidarités, and both the British and U.S. branches of Save the Children.


Action Contre La Faimは、英語にすればAction Against Hungerで、フランス系。
http://en.wikipedia.org/wiki/Action_Against_Hunger

Care Internationalは、何かあっても最後までいるNGOのひとつだと思う。本部は米国。
http://en.wikipedia.org/wiki/Care_International

International Rescue Committeeも米国系。
http://en.wikipedia.org/wiki/International_Rescue_Committee

CHF Internationalは……知りませんでした。米国系。
http://en.wikipedia.org/wiki/CHF_International

Mercy Corpsは、カンボジア内戦にルーツのあるNGOで、これも本部は米国。
http://en.wikipedia.org/wiki/Mercy_Corps

Doctors without Borders (Medecins Sans Frontieres) は「国境なき医師団」。説明不要でしょう。元々はフランス。今回はオランダとフランスのMSFが追放。
http://en.wikipedia.org/wiki/Doctors_without_Borders

Norwegian Refugee Councilは、そのまま、ノルウェーに本部のある組織。第二次大戦中の難民支援がルーツ。
http://en.wikipedia.org/wiki/Norwegian_Refugee_Council

Oxfamは英国。第二次大戦中に連合軍の包囲で危機に陥ったギリシアを支援するために活動を開始した組織。
http://en.wikipedia.org/wiki/Oxfam

PADCOは……なんだろう。知りません。これか。
http://www.unodc.org/ngo/showSingleDetailed.do?req_org_uid=16063
北米で、NGO working on Drugsで……ちょっと時間かかりそうなので先へ。(薬物依存はダルフールにはあんまり関係ないと思うんだけど。)

Solidaritésはフランス。
http://www.solidarites.org/defaulteng.htm

Save the Childrenは元々は英国。
http://en.wikipedia.org/wiki/Save_the_Children

……ん? 11ある? 新たにリストに加わった組織があるのかもしれない。

以下、NGOの声明(簡単に見つかったもの)。

Oxfam:
Sudan aid crisis: Oxfam GB pulls back international staff to Khartoum while it appeals decision to revoke registration
5 March 2009
http://www.oxfam.org/en/pressroom/pressrelease/2009-03-05/sudan-aid-crisis-oxfam-gb-pulls-back-international-staff-khartoum

参考のために日本語化(Oxfamとは関係ない立場で日本語化しています。本家Oxfamで日本語化されたら消します)。
オックスファム・グレートブリテン(以下オックスファムGB)は、一時的に、(スーダンから見た)外国人スタッフをハルツームに、スーダン人スタッフの一部はダルフールの州都に移動させ、同時に、この国で活動を行なうための登録を抹消することをスーダン政府が決定したことに対し、異議申し立てを行なっています。

オックスファムGBは、ノートパソコンや通信機器を政府に手渡さなければなりませんでした、これにより、ダルフール全域、およびハルツーム州、スーダン東部で60万人を対象として行なわれている支援活動をオックスファムが行なう能力に悪影響が出ることになります。

オックスファムGBは、衛生状態のよい水の供給などの支援プログラムは、地域コミュニティとオックスファムで訓練を受けたボランティアの人々によって、何週間かは継続できると見積もっています。しかし、政府に対する異議申し立てが通らなかったら、支援活動は終了しなければならないことになります。

ダルフールにおけるオックスファムGBの活動は、オックスファムとしては世界最大の緊急プログラムです。1983年からスーダン北部で行なわれており、現在は450人のスタッフを抱えていますが、その9割はスーダン人です。オックスファムは独立の立場で公平なNGOで、国際刑事裁判所(ICC)とはいかなる関係も一切ありません。オックスファムにはICCの活動についての意見はありません。オックスファムが取り組んでいるのはただひとつ、スーダンの人道・開発のニーズを満たすことだけです。


ソリダリテ:
SUDAN: SOLIDARITES is a victim of an expulsion order from the Sudanese authorities, causing the interruption of vital humanitarian aid for the population in Darfur.
5 March 2009
http://www.solidarites.org/news/Communiques.htm#050309

参考のために日本語化(条件は同上。公式な翻訳ではありません)。
3月4日水曜日、ソリダリテはスーダン当局により、追放の連絡を受けました。ソリダリテの事務所は閉鎖され、銀行口座も封じられ、機材すべて(車両、コンピュータ、掘削機械など)は押収されました。

この決定によって、ソリダリテのほか10の国際NGOが影響を受けています。これらの組織をあわせると、ダルフール地方での人道支援の7割(つまり、 150万人に対する救援)になります。これら組織の追放は、国際支援に頼って命をつないでいるこれらの人々に重大な影響を及ぼすことになります。

ダルフールのソリダリテの支援チーム(外国人42人、スーダン人320人)は、ハルツーム、ニアラ、Muhadjeria, Seleah, Shaeria, Kutrum, Nertiti, Golo, El DaeinとAdilaの拠点から、30万人を対象に、水と下水、食料品、生活必需品を供給しています。ソリダリテが配給した食料は、1年で480,507食で、合計で8663トンになります。

ソリダリテはその原則をはっきりと強調しています。特に、人々の人道的ニーズによってのみ公平に食糧支援をし、同時に組織の独立性を保つ、ということです。そして、私たちは国際刑事裁判所とはいかなる仕事上のつながりもありません。スーダンのメディアはそう主張していますが。

最後に、私たちはスーダン当局に対し、スーダンにおけるソリダリテの支援チームのメンバー(外国人であれスーダン人であれ)の安全を保証するよう求めます。また、スーダン当局に対し、危機にさらされている人々のために不可欠な人道支援の継続を可能にするために、決定を見直すよう求めます。


これは本当に心配だ。ガザでUNRWAが攻撃されたときは腰が抜けたが、これは眉間に皺がくっきりと、という感じ。

例えば食料とか薬といったものについて言うと、国連の人道支援を実際に人々に配っているのがこれらのNGOだ。ガザでは大元の国連機関の倉庫がイスラエル軍によって爆撃されたが、それでも支援物資を必要としている人々に届けようと奮闘していたのがハテム・シュラブさんが属しているイスラミック・リリーフ・ワールドワイドのようなNGOで、スーダンの今回の決定は、そういう実際に物資を運ぶ人々の活動を停止させるというものだ。(ガザとスーダンの状況を並べて書くことでどっちがどう、という意図はないのでその点はご了解ください。単に時期的に近い例としてすぐに思い浮かぶもの、ということです。)

ああ、やっぱりそうだ。現地の記者によるタイムズの記事。しかも追放された組織数がさらに増えている。

March 6, 2009
A million face starvation as Sudan shuts down
Rob Crilly at the Al Salaam camp, North Darfur
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/africa/article5854944.ece

Aid officials warn that a humanitarian emergency is in danger of becoming a disaster. The move has put the supply of food to 1.1 million people in doubt, as the UN's World Food Programme scrambles to find lorries to deliver sacks of grain. It had been using four of the expelled charities to get food to people in need. Outside the hospital - run by the International Rescue Committee until it was ordered out – a mother brushed flies from the face of her daughter. "My baby is sick," Fatima Abdulrahmen said. "She has a fever and I brought her here and now I don't know what to do. Who will help me now?"

The people who should be helping – the staff of 13 international charities including Oxfam, Médicins sans Frontières and Care – were boarding flights to the capital, Khartoum.

支援当局者は、人道上の緊急事態が大惨事になる危険があると警告している。NGO追放で、110万人に対する食糧供給がどうなるかわからなくなっている。国連の世界食糧計画は、穀物の入った袋を運搬するトラックを見つけようと必死になっている。WFPはこれまで、食料を必要としている人々に届けるために、追放されたNGOのうち4組織を使ってきたのだ。病院の――退去命令までIRCが運営してきた病院だが――建物の外では、ある母親が娘の顔からハエを追い払っている。「私の子は病気なんです」と(その母親)ファティマ・アブドゥルラーメンは言う。「熱があるんです。だから連れてきたのですが、どうしたらいいんでしょう。誰が助けてくれるのでしょう」

こういうときに助けてくれていた人々は――Oxfam, MSF, Careといった13の国際組織のスタッフは――首都ハルツームへ向かう飛行機に搭乗していた。


同じ記事のもう少し後ろの部分:
In El Fasher, capital of North Darfur, government officials began the process of seizing millions of pounds in assets belonging to the charities. Men with dark glasses and clipboards arrived at the Oxfam office to begin itemising equipment. They left with laptops, desktop computers and satellite phones, choking off communication. There was a similar scene at the French agency Action Contre La Faim. "We are due to start distributing food to the camps in a fortnight," one worker said. "Who else is going to do this and stop people starving? Words cannot describe what is happening."

北ダルフールの首都、El Fasherでは、政府職員がこれらNGOの資産の数百万ポンドという金を押収する手続に着手していた。黒いサングラスをかけてクリップボードを持った男たちがOxfam事務所に到着し、物品リストを作ろうとしていた。男たちはノートパソコン、デスクトップパソコン、衛星電話を持っていってしまい、Oxfamの通信はできなくなった。同様の状況がフランスのACFでも起きていた。「向こう2週間のうちにキャンプに食料を届け始めようとしていたのですが」とあるワーカーは言う。「(私たちができないときに)他に誰がこれをしてくれるんでしょう、じゃないと人々は飢えてしまいます。今おきていることについて、言葉で説明するのは無理です」

Charities reported that their bank accounts were being frozen. Doctors with Médicins sans Frontières were trying to contain two deadly outbreaks of meningitis before being expelled. Their clinics have closed.

NGOは、銀行口座が凍結されていると述べている。MSFの医師たちは、追放される前に、髄膜炎のアウトブレイク2件を阻止しようとしていた。彼らの診療所は閉鎖されている。

In Abu Shouk, home to about 50,000 people, men dressed in dusty jalabayas were hammering at a water pump. This should be the work of water and sanitation engineers from Oxfam. "We don't know how to fix it," said one man wielding a foot-long spanner, "but we are thirsty."
5万人ほどが暮らすAbu Shoulでは、汚れたジャラバヤを来た男たちが、水のポンプをハンマーで叩いていた。これはOxfamの上下水道技師の仕事のはずだ。「修理方法なんかわかりませんけど」と、1人の男が長さ1フィートのスパナを振りながら言った。「でも喉が渇いているんですよ」


つまり、汲み上げポンプを動かして水を出せる技師が退去させられてしまったので、村の人たちが仕方なくポンプを壊して水を出しているのだ。何という……。

ガーディアンもこの件についての記事があるけど、ナイロビからになってる。
http://www.guardian.co.uk/world/2009/mar/05/sudan-aid-purge-darfur-khartoum

追放された組織の数は13でタイムズと同じ。記事の内容は、さすがに現地からのタイムズのほうが具体性に富んでいる。スーダンの動向が気になる人はしばらくタイムズを見ておくのがいいかも。BBCはいろいろと微妙な様子(この情勢下では英国営はあんまり、かも)。タイムズの記者さんが、国外退去にならないように祈る。

※この記事は

2009年03月06日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 10:00 | TrackBack(1) | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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[つぶやき]ダルフール〜国境なき医師団など有力NGOの追放により国内避難民250万人に影響
Excerpt: スーダンウォッチは、3月5日現在スーダン政府により登録取消・関係者の国外追放の命令をうけた13のNGOのリストを掲載している。 Sudan Watch: More than 2.5 million ..
Weblog: + C amp 4 +
Tracked: 2009-03-06 17:30

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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