「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2009年02月27日

65daysofstaticがフェス出演をキャンセルした理由

4月にライヴアルバム&DVDの発売を控えているシェフィールドのバンド、65daysofstaticが、20日付で、ヘッドライナーとして出演を予定していたバーロウ・イン・ファーネス(イングランド北西部の海沿いの町)での「ファンデルワールス・フェスティバル II」(VAN DER WAALS II) への出演中止の告知文を、バンドのサイトとバンドのMySpaceのブログにアップした。

フェスは2月28日に行なわれるもので、直前になって出演キャンセルという事態になったことについて、バンドは何度か「お詫び」の言葉を書きながら、次のように説明している。(以下、MySpaceに投稿されたものを定本とする。)

出演を取りやめたのは、このフェスティバルが最近になって、世界第三位の兵器製造会社、BAEシステムズの後援を受けることにしたためです。出演を決定した時にはこの話はありませんでしたし、フェスのプロモーターは、残念ながら、この期に及んで状況を変えることはできないとのことです。BAEシステムズは兵器の会社です。人を殺すためのものを製造しています。こちらとしては、そのような会社との関係を持つことはできません。
http://www.baesystems.com/ProductsServices/index.html


……何と言うか、その、えっと、あのBAEシステムズが、音楽フェスのスポンサー? (@_@)

当該のフェスのサイト(といってもMySpaceだけど)にある2008年の写真を見る限り、商業的なフェスではなく、限りなく「手作り」感のあふれる、いわば学園祭のような印象を受けるイベントだ。絵画と音楽のコラボレーションという主旨であるらしく、美術大学の学園祭のような雰囲気。

そんなところにBAEシステムズが、ということにくらくらせざるをえない。BAEシステムズがスポンサーとして文化活動にカネを出している例は、戦史的な意味合いの大きな資料保存か何かの分野では聞いたことがあるが、このような音楽フェスで、しかも単に傾向として、タイムズやテレグラフを読んでそうな人たちというよりは、明確に「反戦」な立場の人たち――arms trade fairに反対、というような人たち――の間でより多く聞かれていそうなタイプの音楽で、というのは、「衝撃的」というだけでは言葉が足らない。

出演キャンセルの告知文で、バンドは続けて、次のように書いている。
告知が直前になってしまいましたが、(出演中止は)簡単に決めたことではありません。そうすることが必要だと思ったからこその決定です。はっきりさせておきたいのですが、こちらとして問題なのはBAEシステムズであって、フェスの主催者や貢献者が問題なのではありません。65dosとしては数ヶ月ぶりのライヴで、そのための準備もしてきたし楽しみにもしていただけに、今回出演したいという気持ちになれないことが残念です。

小規模でインディペンデントなフェスティバルをやることがどれほど難しいかということはわかっています。お金がたくさんかかりますから。もしも政府がBAEのような企業のポケットに入れるお金がもっと少なくて、芸術系の活動への資金にもっとお金を出していてくれれば、(フェスの)プロモーターは、やかましくてエクスペリメンタルな音楽を好む人たちからの支持を得ることは有益だろうなどと考えている兵器商人の広報部のことなど笑い飛ばせているでしょう。


……という具合に、「BAEシステムズが後援するフェス」になってしまったことが問題なのだと明確に説明している。

ではなぜBAEシステムズがこのフェスを後援することになったのか。それは、「ノイジーでエクスペリメンタルな音楽が好きな人たちからの支持を得る」とかいう、ジョークなのか何なのか少しわかりづらい「意見」(と思われるもの)しか書かれていないし、フェスのサイト(MySpaceだが)にも特に書かれていなさそうだ。

そこでふと思い出したのだが(遅い)、バーロウ・イン・ファーネスは軍港で、BAEの工場がある、いわば「企業城下町」じゃなかったっけ……ウィキペディア英語版で「バーロウ・イン・ファーネス」のEconomyの項を見ると、ある程度の詳細はわかるが、港のところに原子力潜水艦を建造する工場があって、地域の雇用の少なからぬ部分がBAEに依存している。

ということは、あくまでも推測だけど、金融危機後のあの情勢でスポンサーが見つからなかった小規模フェスが、BAEという企業の「地域への貢献」の資金提供の対象となった、ということじゃなかろうか。

特に何か書かれた文書が見つかるわけではなく、推測するしかないのだが(そして、こういう推測というのはあまり意味があるものではないのだが)、そういうことを考えるととても複雑な気がしてくる。

65dosの告知文では、BAEシステムズについて、次のように述べられている。
昨年のBAEシステムズの収益は94パーセント増で17億5000ポンドでした。これはイラクおよびアフガニスタンでの戦争のための費用が増加したためです。イラクでは100万人かそれ以上の人々が殺された可能性があります(2006年の「ランセット」の研究を参照)。100万人です。これが、彼らの収益を倍増させたのです。


65dosがリンクしているテレグラフの記事から:
http://www.telegraph.co.uk/finance/4695447/BAE-profits-surge-on-Iran-and-Afghan-conflicts.html
Revenue rose 18pc to £18.5bn as BAE reaped the benefits of US purchases including Armor Holdings, the largest producer of protection for Humvee troop transports, and United Defense Industries, maker of the Bradley Fighting Vehicle. Earnings at the American units were also boosted by a stronger dollar.


65dosの告知文は、このほかに、2008年12月に開始されたイスラエル軍によるガザ攻撃で使用されたF-16の部品をBAEが製造していることにも言及し、「音楽とはあまり関係のないことだけれども、良心に従って、これだけは妥協できない」ということを説明している。そして最後に「バーロウには改めてライヴしに行きます」ということが書かれている。詳細は原文を読んでいただきたい。

65dosのサイトでもMySpaceのブログでも、寄せられているコメントはほとんどすべて、バンドのこの決定を支持する内容のものだ。

07年のライヴの映像:
65daysofstatic - "I swallowed hard, like I understood" at The Phoenix in Exeter, 17 May 2007
http://www.youtube.com/watch?v=rrcvloErs04


告知文で紹介されている本:
As Used on the Famous Nelson MandelaAs Used on the Famous Nelson Mandela
Mark Thomas


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by G-Tools

http://en.wikipedia.org/wiki/Mark_Thomas

65daysofstaticのCD(上のライヴ映像の曲が入っているアルバム):
The Destruction of Small Ideas
The Destruction of Small Ideas
65daysofstatic

関連商品
The Fall of Math One Time for All Time Hole
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曲名リスト
1. When We Were Younger & Better
2. Failsafe
3. Don't Go Down to Sorrow
4. Wax Futures
5. These Things You Can't Unlearn
6. Lyonesse
7. Music Is Music as Devices Are Kisses of Everything
8. Distant & Mechanised Glow of Eastern European Dance Parties
9. Little Victories
10. Primer
11. White Peak/Dark Peak
12. Conspiracy of Seeds


このアルバムはすごく好きです。

http://en.wikipedia.org/wiki/65daysofstatic
バンド名の由来についての部分:
Other theories include that the band took their name from the CIA's 1954 Guatemalan coup d'état during which the CIA put a white book instrument to use according to which 65 days of disabling the communication systems of a nation while spreading propaganda is enough to overthrow a country, or, as put forward by New Statesman, that the name was derived from psychological experiments conducted in the 1950s to 1960s, in which it was found that exposure to 65 days of white noise (or static) would render the listener insane.

【大意】(映画から取ったとの説明もあるが、その映画は実在が確認されておらず)他の説にいわく、バンド名はCIAのグアテマラのクーデター(1954年)から取ったともいう。この期間中に、CIAは、一国の通信システムを65日間にわたって機能停止にし、その間に国家転覆に十分なほどプロパガンダが行き渡るようにした。またNew Statesmanによる別の説では、バンド名は1950年代から60年代に行なわれた心理実験に由来しているという。その実験では、65日間ホワイトノイズ(つまり「スタティック」)にさらされた場合、人は狂気に至るということが発見された。


4月にリリースされるライヴアルバム&DVD, "ESCAPE FROM NEW YORK" の予告編:

NYCTrailer2 from 65dayosfstatic on Vimeo.

65daysofstatic MySpace:
http://www.myspace.com/65propaganda

※この記事は

2009年02月27日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼