Aid worker diary
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/7802295.stm
彼の日記は、「イスラミック・リリーフ」のサイトにもアップされています(文面は基本的にBBC掲載のものと同じ)。
http://www.islamic-relief.com/Emergencies-And-Appeals/emergency.aspx?emID=47
一読して、これまでで最も淡々とした日記だと思ったのですが、これまでで最も重い内容の日記でもあると思います。
ガザ:1月30日
支援ワーカーとして、よい方向への変化を促すことと人々を支援することは非常に重要なことです。それが、私たちの仕事の根幹をなしています。
「イスラミック・リリーフ」は人々が命をつなぐために必要としている基本的な品物を配達してきました。食料や薬、毛布などです。人々は私たちが届ける食料の箱などを受け取ると、嬉しい、ありがとうと言いますが、私たちにはその人たちの家族や友人を生き返らせることはできません。それができればどんなによいかと思いますが。
ジャバリヤ難民キャンプで同僚たちと一緒に支援物資を配っているときのことです。私はモニールさんという人に会いました。モニールさんは、食料と台所用品セット、衛生キットと毛布の入った箱を受け取るための列に並んでいました。彼は耳が聞こえません。家は破壊されてしまったそうです。彼に残されたのは、今着ている衣類だけ。自分がどういう状況にあるかを私に説明しようとして、モニールさんは泣いていました。
ガザではほとんどの人たちが、少なくとも、言葉で苦しみを言い表すことができます。しかしモニールさんにはそれはできない。モニールさんは、この1ヶ月で私が会った非常に大勢の人たちと同様に、私にとってずっと忘れられないほどの印象を残しました。彼と別れるときはたいへん心が重かったです。この人はどうやって喪失を乗り越えるのだろう、どうやって人生を立て直すのだろう、と考えて。
それから、イスラミック・リリーフが支援している親を亡くした子供たちの1人、14歳のサナが、家を破壊されたということを今日知らされました。サナと話をしましたが、彼女がどれほど絶望しているかがはっきりわかりました。先日までのガザ地区への軍事侵攻の間に、彼女はお父さんと弟を含む家族3人を失いました。その前から彼女の一家は貧しかったのですが、今は家までも失って、赤貧にあえいでいます。
サナとそのお母さんの心をよぎるのは何でしょうか。そして、サナ母子と同じような境遇にある人たちの心をよぎるのは。この人たちは、最愛の家族を失って、さらに家までもなくしてしまっているのです。将来はもっと違うものになるよと、あなたたちには未来があるじゃないか、と言ったところで、そうだねと思ってもらうにはどうしたらいいのでしょう。これこそが、ガザ地区での最大の課題のひとつです。人々に、この先は状況が変わっていくと思ってもらうことが。
2002年にエルサレムを訪れていたシェリー・ブレア(トニー・ブレア夫人)が、自爆攻撃の直後に、"As long as young people feel they have no hope but to blow themselves up, we're never going to make progress, are we?" (自爆するより希望がないと若い人たちが感じている限りは、前進できないのではないですか)と述べたのが大きな怒りを買ったことがあります。
http://en.wikipedia.org/wiki/Cherie_Blair#Controversies
シェリー・ブレアの発言は場所とタイミングが悪かったのかもしれないけれど、言っている内容は、広く共有されている普遍的な問題意識ではないかと思います。
「人々の直近のニーズを満たす」という支援活動の現場から、常に「支給される物資」に頼るほかはないというひどい立場にある人々と毎日直接会って話をする中で、ハテムさんは先日の日記でも、「希望」という必要不可欠なものについて述べていました。
ガザ:1月28日
Esaのような子供に、君には未来がある、君は重要なひとりだ、ガザはまた、希望と幸福の場所になる、ということを世界が示すことは、決定的に重要です。
http://nofrills.seesaa.net/article/113381515.html
※この記事は
2009年02月01日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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