「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2009年01月28日

【ガザ情勢】27日、ハンユニスのあたりで衝突発生

27日夜(日本時間)、「ガザ地区国境で『2人死亡』」との記事がBBC Newsのトップ記事扱いで出ていた。そのときに記事本文からコピペして、はてブのコメント欄に放り込んだもの:
The Israeli military would not confirm the casualties until next of kin had been informed, but said a mine had been detonated in the path of a patrol. No Palestinian militant group has said it carried out the attack.

つまり、イスラエル軍は近親者に知らせるまでは死傷者についてはノーコメントとしながら、軍のパトロールの通り道で "mine" が爆発した、と説明。一方パレスチナ側からはどの武装組織もその "mine" について自分たちのものだという声明を出していない。

そのBBC記事は既に同じURLで上書きアップデートされ、上記の部分は次のように書き換えられている。
One Israeli officer was badly wounded in the explosion and the other soldiers were lightly wounded, an army spokesman said.

No Palestinian militant group has said it carried out the attack.


いずれにせよこの段階では、mine とか explosion といった抽象的な表現が使われていたのだが、この報道の後、次の段階に入ったときの記事では:

Israel launches attacks in Gaza
Page last updated at 23:02 GMT, Tuesday, 27 January 2009
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/7853803.stm
※これも、最初に出てから段階的にアップデートされています。記事の分量が増えて、映像の埋め込みがプラスされているのは確認しました。

An Israeli soldier on patrol in a vehicle was killed by an explosive device deliberately planted on Israel's side of the border near the Kissufim crossing, prompting troops to open fire into Gaza.

つまり、「意図的に設置された爆発物」という断定的な表現になっている。実はこの箇所は私が最初に見たときは bomb と書かれていたのだが、このbomb (as in "car bomb", "coffee jar bomb", etc) はIED (improvised explosive device) の同義語だ。

BBCが「爆発物」と断言した根拠は、エンベッドされている映像にあった。4コマをキャプチャ:



ニュース用に編集されたこの映像は、イスラエル軍のヘリが空を飛びながら何かを発射している光景から始まる。BBC記者は「先日の攻撃停止以来最大規模の攻撃が行なわれています」といったこと。

キャプチャの2コマ目(@開始から20秒)は、画面左上にBBCが元々入手したときから入っていたと思われるRamattan(パレスチナの独立系通信社で、PAから締め付けられていたりする。英語版サイトもある)のロゴがあるが、これはRamattanに届けられた映像で、武装勢力が撮影したものだという(BBCのエンベッド映像では、Ramattanのロゴの上にinsurgent videoと出てくる)。

この武装勢力の映像では、道路を走行する車がある地点に差し掛かった瞬間に爆発が起きる(キャプチャの3コマ目)が、その爆発が画面の中央に来るようにカメラが構えられている。(イラクなどについて何度か見た「武装勢力の宣伝用の映像」もこうだった。でもアルカイダ系は爆発すると神を讃える言葉を叫んでいたが、これはそういう言葉はないので、「イスラム原理主義」のプロパガンダという印象は私は受けないけど。単に「抵抗」のプロパガンダには見える。Provisional IRAとかReal IRAとかにもこういうのはある。)

4コマ目は爆発の数分後の映像で、右下に煙が上がっているのは画面手前から(武装勢力が)グレナードを発射した瞬間。映像ではその前に銃撃の音がしている。

で、ここまできっちりとカメラをセットして撮影しているのだから、誰かが意図的に仕掛けた爆発物であることは疑いの余地はないのだが、そうであるなら、ふつうに考えれば「われわれがやったのである」的なステートメントがどこかから出るはずだが、そこがよくわからない。BBCの最新の記事ではそのステートメントが出ているとも出ていないとも書いていないし、前の記事では「どの武装勢力からもステートメントは出ていない」とあった。

【追記@29日午後】
「われわれがやった」というステートメント(犯行声明)が出ているようです。タイムズの記事から。
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/middle_east/article5604208.ece
Adding to the complexity of the problem, the attack on the patrol was claimed by a group declaring links to al-Qaeda and calling itself the Jihad and Tawhid Brigades.

英語では、自称「ジハード・アンド・タウヒード」。アルカイダとの関係を自称しているということは、原文(アラビア語)の段階からこの語順の組織名であるとしても、「タウヒード・ワ・ジハード」(2006年に殺されたアル・ムサブ・アル=ザルカウィをリーダーとしていた武装集団。活動域はイラク、特にアンバール州や、バグダード、およびその北)を意識・連想させます。(なお、「タウヒード」とか「ジハード」といったことばの「意味」は、組織のやっていることと直接関係させるべきではないと思います。彼らが宗教を利用して武装活動を正当化している以上は。)

パレスチナという文脈でいうと、「タウヒード・アンド・ジハード」というグループ名は、BBCのアラン・ジョンストン記者拉致・拘束事件のときにも出てきました。ハマスが動いた後にジョンストン記者が無事に解放される前に、「記者は殺した」とう偽の声明を出したグループ (On Sunday, the previously unheard of Tawhid and Jihad brigades claimed it had executed Mr Johnston.) です。

「タウヒード・アンド・ジハード」と「ジハード・アンド・タウヒード」が同一のグループなのかどうかは、もう少し調べてみないと、私にはわかりません。調べたらたぶん別のエントリを立てます。
【追記ここまで】

イスラエル軍の兵士1人を殺し、3人を負傷させたIEDが仕掛けられていたのは、ガザ地区内陸側の長い辺のちょうど真ん中あたりにあるKissufim検問所の近くの、ボーダーのイスラエル側だという。

映像はこのあと、負傷したIDF兵士が救急車に運び入れられる光景を撮影した部分を挟んで、エフード・バラク国防相の記者会見。「今日のようなことが起きた場合には必ず反応する。ハマスやその同盟者に好きなようにはさせない」ということを、Googleとかhpのロゴのついた会見用のボード(何の会見だという感じがしますが、ガザ紛争とは別のトピックでの会見の最中にこの攻撃に言及したのかもしれないし、よくわかりません)の前で語る。



それから、BBC記者が路上で「このすぐ先でIDFヘリによる攻撃がおこなれています。この停戦がいかにもろいものであるか、改めて思い起こさせられます」と述べた部分を挟んで (no man's land!) 、ハマスのスポークスマンの会見の映像に移るのだが、その前に「これってイスマイル・ハニヤだよなあ……」という人をはじめ何人もの人たちが集まっている場面が挿入されていて、BBCの記者が「外交努力が始まろうとしています」といったことを述べている。んー、よくわからない。

ハマス側は、「あちらが悪い」ということを述べている、ということしかBBCは説明していない(スポークスマンはアラビア語でしゃべっている)から、詳しいことは私にはわからない。

映像はこの後、ガザ地区南部でオートバイに乗っていたミリタントをIDFが攻撃したというくだり(壊れたバイクとその周りに集まった人々)をはさんで、病院で遺体を埋葬する準備をしている光景。「イスラエルの作戦で、パレスチナ人の農夫も殺されました」というアナウンサーの声の向こうですすり泣きが聞こえ、ご家族か親族の男性が泣いているところ。

そして最後は、
Whoever is to blame, people here have suffered so much torment recent weeks. They are desparate for the killing to stop.

「誰が悪いのであれ、ここの人々はこの何週間もたいそうつらい経験をしてきました。彼らは、殺戮は終わってほしいとひたすらに願っています」

最後に記者の名前を言うのだけれど聞き取れない。「なんとかリーン・マックブなんとか」さん。記事にはAleem Maqboolという名前があり、Journalistedでもその名前の記者がガザから伝えていることが確認できるので、その人だろう。ああ、2008年11月に封鎖がきつくなって、燃料がガザ地区に入れない状態になっていて、記者も入れない、国連も入れなかったと伝えた人だ。記事をブクマしてた
There have been severe restrictions at Israel's border crossings with Gaza for some time, but they were tightened further in the summer of 2007 as a means of putting pressure on Hamas...

Last Tuesday, more than four months into a ceasefire, Israeli troops entered the Gaza Strip. Palestinian militants said they regarded it as an "Israeli aggression" and responded by firing dozens of rockets and mortar shells towards Israeli border towns.

No Israelis have been injured, but the Ministry of Defence took the decision to close most of Gaza's crossings in response.


この映像が埋め込まれている記事の概略。思考回路がぐちゃぐちゃなので、わけわかんない箇所もあるかも。太字強調は引用者による:
パレスチナのミリタントがイスラエル兵士1人を殺害し、イスラエルはガザ地区に対し空爆を行ない、戦車を送り込んだ。

パレスチナからの情報によると、ガザ地区南部のハンユニス近郊で戦闘があった。イスラエル軍は数時間後に国境のイスラエル側に退いた。

イスラエルとハマスが双方とも停戦(攻撃行為の停止)を宣言して、イスラエルのハマスに対する攻撃が終了して以降、最悪の暴力となった。

イスラエルはまた、支援物資の運搬車列がガザ地区に入ることを阻止してもいる。 (Israel is also preventing aid convoys from entering the Gaza Strip.)

キスフィム検問所の近くのイスラエル側で、仕掛けられていた爆発物が爆発し、車両でパトロールをしていたイスラエル兵士1人が死亡した。またこれにより軍が(国境を超えて)ガザへと発砲を開始した。この爆発と銃撃戦、グレナードの爆発は、はミリタントによって撮影されている。3人のIDF兵士がこの攻撃で負傷した。また、イスラエル軍の反撃(発砲)により、パレスチナ人の農夫1人が死亡したとパレスチナ当局者は述べている。

キスフィム検問所の南にあるハンユニスでは激しい戦闘があったと報告されている。多くの人が自宅を出て避難した。パレスチナ当局によると、イスラエルの戦車20台と軍用ブルドーザー7台がパレスチナ側に侵入した。

また、ハンユニスでは空爆で2人が負傷したという。病院当局者の話では、ひとりはバイクに乗っていたハマスのPopular Resistance Committeeのメンバーで、もうひとりはたまたま通りがかった人である。

これは、ハマスに対する攻撃が終わってから初のイスラエルの空爆である。ガザ地区内に対する砲撃や海からの攻撃は、停戦が宣言されてからも続いていた。

イスラエルは、パトロールに対する(IEDの)攻撃があったことを理由としてガザ地区との国境の検問所を封鎖し、このためガザ地区への支援物資の流入がストップしている。

ガザにいるBBCのアリーム・マクブール(映像で解説している記者さん)によると、今日の戦闘は先日までのものと比較すれば激しいものではないが、長期的な停戦合意 (truce agreement) ができるまでは、この程度の暴力は戻ってくる可能性があるのだということを思い起こさせるものだ、と言う。

今日の戦闘は、米国のジョージ・ミッチェル中東特使がより持続性の高い停戦 (truce) の可能性を探るために現地に到着しようというときに発生した。ミッチェル特使はエジプトの政府関係者と会談し、その後エルサレムとラマラ(=ファタハがいる)に向かう。

ワシントンでは、ヒラリー・クリントン国務長官が、米国は「イスラエルの自衛の権利」を支持すると述べた。

「(イスラエルの)市街地にますます近づいているロケット砲の雨あられ (rocket barrages) は、そのままにしておくことはできない」と、長官は就任後最初の記者会見で述べた。(以下略)


お茶ふいた。"The rocket barrages" って、ハマスってものすごく組織化された武装集団なんですね。っていうか、あれがbarragesなら、イスラエルの近代的な軍隊が空・陸・海から行なっている攻撃は何だろう。super-barragesかな。

あ、あと下記もメモ。また探すことになりそうだから。
Israel said its objective to stop militant rocket fire into Israel had been fulfilled.

イスラエルは、ミリタントのロケット攻撃を止めるという目的は達成された、と述べている。


一方で、ラファのトンネルも攻撃されている。

Israeli jets 'hit Gaza tunnels'
Page last updated at 01:10 GMT, Wednesday, 28 January 2009
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/7855086.stm
Israeli jets have pounded targets along the Gaza Strip's southern border with Egypt, local residents say.
イスラエルの戦闘機がガザ地区南部のエジプトとの国境沿いを空爆した。住民たちがそう述べた。

The missiles reportedly struck tunnels Israel says are used by the Islamist group Hamas to smuggle weapons.
ミサイルはトンネルを攻撃したと言われる。イスラエルは、トンネルはハマスが武器の密輸に使っているとしている。

Residents in the border town of Rafah fled in panic. The Israeli military has so far made no comment on the reports.
国境の街ラファの住民たちはパニック状態で二手が。イスラエル軍はこれまでのところ、これらの報告についてノーコメントである。

It was the second air-strike since Israel and Hamas declared ceasefires on 17 and 18 January to end Israel's three-week offensive on Gaza.
これは、1月17日と18日にイスラエルとハマスが停戦を宣言してから2度目の空爆である。

...

Wednesday morning's strike came a day after an Israeli military vehicle patrolling the Gaza frontier was hit by a roadside bomb, killing one soldier and wounding three others.
水曜朝の(トンネルへの)攻撃は、パトロール中のイスラエル軍の車両がロードサイド・ボムにやられ、兵士1人が死亡、3人が負傷した翌日に行なわれた。

Israeli troops entered Gaza backed by helicopters in response and one Palestinian was killed, medics said.
その(ボムへの)反応としてイスラエル軍はヘリの援護を受けてガザ地区に入った。これによりパレスチナ人1人が死亡したと医療関係者は述べている。(※って、映像あるじゃん。使ってるじゃん、BBCで。)

Israeli Prime Minister Ehud Olmert said that offensive was merely an initial reaction and that Israel's full response was still to come, Israel's Haaretz newspaper reported on its website.
イスラエルのオルメルト首相は、この攻撃は単に初期反応に過ぎず、イスラエルからの全面的な反応はまだこれからだとの得た、とハアレツがウェブ版で報じた。

...


............orz

これは、ミッチェル特使が中東にいる間は自重する、という意味だ。たぶん。

あと、stated aim/goalが、何か増えてね?
One of Israel's stated goals was to halt the smuggling of weapons - including rockets that were being fired against Israeli towns - into the coastal enclave through the network of tunnels.

「ロケット攻撃を止めること」というstated aimは達成された、というのが軍からの公式な発表で、で、「密輸を止めること」って言ってたっけ?

イスラエルは言ってなくてもやるし、やったことをやったと言わないので、私が勝手にわけがわからなくなっているだけだと思うけど。

ヒラリー・クリントンが「自衛権ですのよ」と言っているし(この人が「紛争」というものをどの程度把握できるのか、大統領候補選挙のときの「あたくしがいたからこそNI和平が実現できた」という誇大妄想もたいがいにしておけという発言ゆえに、私はとても大きな疑問を抱いている。ビル・クリントンはNI和平プロセスには大きな貢献をしているけれど)、イスラエルがのらりくらりと牛歩戦術している間にミッチェル特使が米国に戻ったら、その瞬間にまた、12月27日のような大攻撃が開始されるかもしれない、といういやな予感も。

............orz

※この記事は

2009年01月28日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 14:00 | TrackBack(0) | i dont think im a pacifist/words at war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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