kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2009年01月26日

「イギリスの崩壊」という文字列をクリックしたら、タイムズのぐだぐだな記事を熟読するはめになった。

はてなブックマークのホットエントリトップページの「人気エントリー」)に

イギリスの崩壊

などという文字列があったので、
Albaではロバート・バーンズ生誕250年で沸き返り
Eireではあの人が「ユナイテッド・アイルランド」を語る
という状況の中、「ついに連合王国の解体か」と、
東京のこの乾燥した空気の中、
さらにドライアイになる気配を感じつつ、
たぶんおそるおそるクリックしてみたら……

はいはい、多極化多極化。
http://tanakanews.com/090124UK.htm

……かなり紛らわしいです、たぶん。



この記事、前半はウールワース破綻から一層ひどいことになっている英経済の現状のまとめとしてかなり有益だと感じましたが、田中さんの言う「多極化」は私には意味がわからないし、結びがなぜ「MI6」に行っちゃうのかさっぱりわからないし、そもそもMI6がそんなに強大な権限・権力を持っているわけでもないと思うし、第一、ブレアとブッシュの「特別な関係」の時代にブレアにクギさしてたのは外務省筋だし(でもブレアは強行突破した)、うむー、です。(あ、MI6は外務省です。あと、「SIS」って書かないとフレデリック・フォーサイス先生に怒られます。)

それと、文中で次のようなのがあるのだけど:
ユーロ圏では、スペイン、イタリア、アイルランド、ギリシャなどが金融救済策として財政赤字を急拡大しており、ギリシャやアイルランドはユーロ離脱を迫られるかもしれない。ユーロから追放された国は経済破綻するので、それに比べるとユーロに入っていない英国の方が危機は軽度だと、英タイムズ紙が指摘している。(It's a bitter chill but Britain is not Iceland)


これ、22日のタイムズのBusiness Editorのコラムで(だから「タイムズ紙が指摘している」という書き方は、書き方としては妥当):
http://business.timesonline.co.uk/tol/business/columnists/article5563166.ece

該当箇所は:
So wide are these differentials that Jean-Claude Trichet, the president of the European Central Bank, was forced to rebuff questions in the European Parliament that some countries might be tempted to quit the euro.

For Ireland or Greece, the risks involved in quitting the club look much greater in the present circumstances than staying in, not least because abandoning euros would be treated by bond investors as a default. The real risk for Ireland, which is now guaranteeing bank debt several times the size of its economy, is that investors cease to buy Irish government bonds and that issuance becomes prohibitively expensive. What would then happen? Presumably, European governments would do anything to prevent a fellow member state from going bust and the ultimate embarrassment of an IMF bailout.

Britain does not have that alternative to the IMF, but it is hard to believe that we will need it. The hard to believe does happen a lot these days, though.

「ユーロに入っていない英国の方が危機は軽度」なんて書いてないんですけど。

まず、タイムズが書いているのは、EU議会で「この調子ではユーロ離脱したい国が出るんじゃないか」という疑問が出ていて、ECBのトリシェがそれに反論せざるをえなくなった、ということであって、「ギリシャやアイルランドはユーロ離脱を迫られるかもしれない」とはタイムズは書いていません。むしろ逆で、タイムズの経済部エディターは、「アイルランドとギリシャは、ユーロを離脱する場合、ユーロに留まるよりも大きなリスクを負うことになるだろう」と書いています。田中さんは上に引用した部分の直後に、「私はタイムズの説とは異なり、いったんユーロに加盟した国が、ユーロ圏から追放される可能性は低いと考えている」と書いておられますが、「タイムズの説とは異な」ってなんかいません。同じです。遠回しだからわかりづらいだけで、「アイルランドやギリシャは、ユーロ離脱のリスクは取らない(し、EUもそうはさせない)」とはっきり書いてあります。

具体的に記述を見てみると、タイムズは、「ユーロ離脱は国債に投資する立場から見れば事実上のデフォルトになる、ということだけでなく、もっと深刻な問題として、アイルランドの場合は経済規模の数倍の銀行の債務を保証しているわけで、そんな状態では誰も国債を買わなくなる、ということにある」といった書き方をし、「EUではユーロ加盟国に破産→IMF救済といった道をたどらせることは絶対にしないだろう」と書いています。

田中さんの考えがタイムズとは異なる点があるとすれば、田中さんの文で上に引用したのの少しあとの「加盟国がユーロ圏から追放されない前提で考えると、同じく金融危機や不動産急落に見舞われても、ユーロ圏に入っているスペイン、アイルランド、ギリシャなどの方が、ユーロ非加盟の英国やアイスランドよりも有利になる」の部分。タイムズは「英国とユーロ」については語ってないからよくわかんないんですが、ユーロ非加盟という点ではアイスランドも英国も同じなのに、タイムズは「アイスランドは破綻したがわが国は大丈夫」と、たぶんよくわからない根拠で書いているだけです。

で、タイムズのこのコラムに書かれている「英国は大丈夫」ということの根拠がよくわからないというのはほんとで――このコラム自体がたぶんジム・ロジャーズの例の「英国終了のお知らせ。ポンド破綻しますから売ったほうがいいですよ、みなさん」という煽りに対する反応で(コラムの上のほうに「シティは大変だろうが、ドイツの自動車産業だって大変だ」とか、それって比較になってないじゃんということが書かれてるし、冷静に書かれたコラムとは思えない。タイムズの経済コラムっていつもこういう感じだと思うけど)――、ともあれ、「英国が大丈夫」とタイムズが書いている根拠は、ウェブページでRelated Linksの隣にあるパラグラフ:
By international standards, Britain's government debt is not that high compared with the size of the economy, although the picture does change if all corporate and household debts are included.

Standard & Poor's recently reaffirmed Britain's triple A credit rating, just as it was downgrading Spain. And after the mauling the rating agencies have received, they are not in the business of giving anyone the benefit of the doubt.

つまり、「国際水準で見れば、英国の政府債務は経済規模に比較すれば高い割合だとは言えないし(でも企業や一般家庭の債務を入れたらそういうことも言っていられないんだけどね)(<おいおい)、S&Pの格付けもAAAのまま維持されるし(でもスペインは格下げされたけどね!)」。(……目の前でどんどん経済が縮んでいるのに、強気ですね。さくっと思い出せるだけでも、ウールワース廃業、ウェジウッド破綻、元ヴァージン・メガストア破綻、マークス&スペンサー店舗閉鎖、そのほかいろいろな小売業が破綻または縮小、イヴニング・スタンダードまで£1で売られて外資になった、という状況なのに。)

そして、この次にタイムズの人は、「国債のことなら、もっと危ない国があるでしょ、ユーロ圏で周縁的な国とか」と強引なパスを出し、「ユーロ圏で信用にたるのはドイツだけって話もあります」と展開して(サルコジが頭から火をふきそう)、そこで例えばという形でギリシャに言及されている。なんというアクロバット。

で、要するにこのコラム、私は読んでたら何の話をしているのかさっぱりわからなくなったのですが(「英国経済終了のお知らせ」に対して、「ドイツはいいけど、ギリシャが危ない」ってレスしても意味がないじゃん)。「ギリシャやアイルランドがユーロ離脱する可能性はない」ということを遠回しに書いていながら、「もし離脱したらIMF救済ですね」と書いて、そして最後のパラグラフで「英国にはIMFの代替(つまり、ユーロというセイフティーネット、だよね)はないのだが、わが国にそんなものが必要だとは思えない」と結んでいて、いやだからその根拠は、という。保守党の党首が「このままではIMF、1976年の再来」と言いだす(そしてケネス・クラークが「言いすぎ」とたしなめる)状況で、ただ単に「わが国にそのようなものは必要ではない」と書いても、弱すぎる。

つまり私が何が言いたいのかというと、このコラムは「タイムズが指摘した」と書けるようなものではないのではないか、ということです。

ジム・ロジャースのあれは、実際に心理的パニックを引き起こしているのだなあ、ということはこのコラムからはっきりわかるんですけど。

なお、このコラムでは、「英国がポンドに加盟する可能性」とかいうことは一言も書かれていません。

ちなみに、田中さんが「金融危機が始まるまで、英経済は15年以上の成長を持続し、英国では『国権を剥奪されるユーロに入る必要なんかない』という論調が強かった」と書いておられるのはたぶん正しいです。でもそのあとの、内容的に要約すると、「英国は米国とイスラエルと一緒に世界を支配するために、ユーロという多極主義の選択肢を捨てた」という部分は、前提からして独特のドライブがかかりすぎです。というか、「経済が好調なのに独自通貨を捨てる必要なんかないじゃんという意見が強かったのでユーロに加盟しなかった」という話と全然違う話になってて、わけがわかりません。

あと、オバマ大統領が就任後最初に会う首脳としてブラウンを選ばなかったという件について、労働党嫌いの新聞のdis記事を根拠にするのはやめてもらいたいと思います。労働党にとっていいことがあったときに労働党サポ新聞のヨイショ記事を根拠にするのと同じくらい、ばかげたソースの選び方です。

【参考、たぶん】 2003年でストップしているけど、BBCの「英国とユーロ」の特設ページ:
http://news.bbc.co.uk/2/hi/in_depth/uk/2001/uk_and_the_euro/default.stm



……というわけで、見てみますか、為替レート。



▼今の気持ちを画集で表すと:
4887831285エドヴァルド・ムンク (タッシェン・ニュー・ベーシック・アート・シリーズ)
Ulrich Bischoff
タッシェンジャパン 2002-04

by G-Tools




当該記事についてのはてなブックマークで、「ひとりで茶を吹いていた」ら、かとうさんがしるこサンドを差し入れてくださったことを記念して、私のはてなブックマークのタイトルに、副題、「お茶をふいても、ひとり。」を付け加えました。

↑この日本語が、「原因・理由」と「結果」について、他人にわかるように書かれていると思ったあなたは、ひょっとしたら多極化の罠に陥りやすいのではないかと思います。(意味不明、さらに倍。)



ガーディアンの(たぶん)アジ演説記事:

Twenty-five people at the heart of the meltdown ...
Julia Finch, with additional reporting by Andrew Clark and David Teather
The Guardian, Monday 26 January 2009
http://www.guardian.co.uk/business/2009/jan/26/road-ruin-recession-individuals-economy
Kathleen Corbet, former CEO, Standard & Poor's
The credit-rating agencies were widely attacked for failing to warn of the risks posed by mortgage-backed securities. Kathleen Corbet ran the largest of the big three agencies, Standard & Poor's, and quit in August 2007, amid a hail of criticism. The agencies have been accused of acting as cheerleaders, assigning the top AAA rating to collateralised debt obligations, the often incomprehensible mortgage-backed securities that turned toxic. The industry argues it did its best with the information available.


タイムズの謎記事に「英国の国債はS&Pの格付けがAAAのままだから大丈夫」みたいなことが書かれているのと、上記引用部分の下線部とを照らし合わせると、うむー。

※この記事は

2009年01月26日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼