BBCとガーディアンが、今日のUK国内トップニュースとしてこれを報じています。

BBC NEWS | UK via kwout
今の一曲:
And the Voiceless (And So I Watch You from Afar)
http://www.youtube.com/watch?v=KraZLPprYe4
http://www.myspace.com/andsoiwatchyoufromafar
※myspaceの4曲目。
北アイルランドで作曲された、「声なき者たち」というタイトルの、この美しすぎるインストの曲がざくざくと食い込んでくるニュース。
結局、何のための聞き取り調査だったのか。「紛争」のあとに、「政治的暴力」のあとに何があるのか。
Eames and BradleyのConsultative Group on the Past (以下、「CGP」) が最終的な結論を出した。その内容は……すべてが公開されるのは来週だが、メディアにリークされている内容からは、「これはないわ」としか言いようがない。
脱力しながら、以前これについて書いたエントリを読み返す。ははは、あたし、こんなこと書いてた。
2008年01月11日 政治的暴力と平和/和平のあいだに
http://nofrills.seesaa.net/article/77880306.html
これまで「北アイルランド紛争」とは「IRAによる政治的暴力」だと語られることが多かった……。実際にIRAが諸組織の中で最も多くの人命を奪ったのだが、ロイヤリストの側は、「自分たちはIRAの暴力から自分たちのコミュニティを守っているのだ」と認識していたということが多かった。……まるで「子ども会」から「青年会」に進むように、ほんとにカジュアルな感覚で武装組織に入ったロイヤリストの回想は、いくつか読んだことがある。(だからイスラエルの「右派」が「パレスチナの武装組織が攻撃してくるから」といって、自分たちの側の、カッサムロケットの何十倍も威力のありそうなミサイルを撃ちこめるような戦闘機による攻撃を正当化しているのを見ると、「包囲されているという精神状態 siege mentality」という点でそっくりだとか思ったりもするわけだ。)
しかし現実には、ロイヤリストは「コミュニティを守って」いただけではない。それどころか、「やられたらやり返す」といった範囲すらも超えたことをしていた。
CGPのレポートに、そのことが書かれるのかどうかはわからないが、それでも、あれが決して100パーセント「自衛」だったわけではないという事実は踏まえられるだろう。
Slugger O'Toole@1月23日
Eames and Bradley meet Gordon Brown
http://sluggerotoole.com/index.php/weblog/comments/eames-and-bradley-meet-gordon-brown/
BBC@1月23日
Troubles victims' payment planned
By Vincent Kearney
Home affairs correspondent
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/7847479.stm
確かに「北アイルランド和平プロセス」は、ジョージ・ミッチェルが言っているように、終わった。それも、ジェリー・アダムズが「タリバンと対話のチャンネルを」と主張できるほどきれいな形で。
北アイルランドの「紛争」は過去のものとなり、政治的暴力は停止され(少なくともある程度の規模を持つものは、だが)、「敵」同士として言語的にも物理的にも攻撃しあっていた勢力の代表者がファースト・ミニスターと副ファースト・ミニスターとして並び立つパワーシェアリングの(実態としては「共同運営」とでも言うべき)行政府が機能し始めた(<これが「和平プロセス」の終わり)。
しかし、積み残されている問題はある――「紛争」の後始末は? その「犠牲」をどう扱うのか?
今も細々と続いている、武装解除を拒んでいるパラミリタリーの、多くの場合犯罪組織としての活動(UDA, UVF)、「和平」を拒絶しているパラミリタリーの政治的暴力の行使者としての活動(Real IRA, Continuity IRAなど)といった、「紛争」の残り火のような問題のほかに、「紛争」にさまざまな形で関わることになり、それを終わらせることに合意した人たちによる、彼ら自身のための、紛争の後処理という問題があって、それが、例えば「セクタリアン・ディバイドを超えた対話」とかいった形で行なわれたり、パラミリタリーによる謝罪といった形で具体化されたり、というようなことは1990年代以降ずっと継続的に進められているのだが(それがまだほとんど進められていないと言うべき分野もあるが。例えば警察と武装組織との結託 collusionとか)、そういったレベルではどうしようもない、国家の政策にかかわる部分について、「北アイルランド紛争」の後始末をどのようにしたらいいのかを(英国)政府が決定するために調査を行ない、方針を考える役目を負ったのが、Eames and BradleyのCGPである。
CGPは約1年をかけて「紛争」の影響を直接的に受けた人たちに話を聞いてきた。昨年1月のエントリから。
CGPというのは北アイルランドの過去(=紛争)の残したものに対処するにはどのような方法がベストであるかについて、プロテスタント側ともカトリック側とも話し合うために設立された、政府から独立した立場のグループである。座長はロビン・イームズ(アングリカンの全アイルランド大主教・アーマー教区アーチビショップを1986年から2006年までつとめた)とデニス・ブラドレー(デリーの地域社会で活動してきた元司祭、元NI警察監視委員会の副議長で、Provisional IRAと英国政府との極秘の交渉の橋渡し役で1972年1月30日の目撃者)のふたりで、メンバーはフィンランドの元大統領と南アフリカの「真実と和解委員会」の創設に関わった弁護士というふたりの外国人を含む8人で、全体では10人で構成されている。今年の8月に勧告をまとめた報告書を出すことになっており、北アイルランドの各武装組織(政治的暴力の行使者)、政治的暴力の被害者組織を含め、多くの人たちと話をすることになっているほか、サイトで人々の意見を受け付けている。
http://www.cgpni.org/
※引用文中の「フィンランドの元大統領」は、2008年のノーベル平和賞を受けたアハティサーリである。
CGPの報告書はまだ正式には公開されておらず、BBCはその一部を先行して報じているのだが、それを読む限り、まさに the Voiceless(「声なき者たち」)、何のために個別の聞き取り調査が行なわれたのか、という印象だ。
BBCは次のように伝えている。
The government is to be asked to pay £12,000 to the families of all those killed during the Troubles - including members of paramilitary groups.
The families of paramilitary victims, members of the security forces and civilians who were killed will all be entitled to the same amount.
英政府は、北アイルランド紛争の期間中に殺された人々――武装組織のメンバーを含め――すべての家族に、£12,000を支払うよう要請されることになる。武装組織の活動による犠牲者、殺された治安当局の要員や一般市民の家族が、全員、同じ額を受ける資格を得る。
具体的には:
The group, co-chaired by Lord Eames and Denis Bradley, is expected to say there should be no hierarchy of victims and that everyone should be treated in the same way.
ロード・イームズとデニス・ブラッドレーが共同議長を務めるこのグループは、犠牲者のランク付けはなされてはならず、全員が同じように扱われるべきであると述べる見込みである。
That would mean the family of the IRA Shankill bomber Thomas Begley would receive the same for his death as those of the families of the nine civilians he killed.
Likewise, the families of two UVF members killed while they planted a bomb that also killed three members of the Miami Showband in 1975 will be entitled to the same payment as those of the victims.
それはつまり、IRAのシャンキル爆弾事件の実行犯、トマス・ビグリー【注:タイミングを誤って脱出に失敗し、彼自身の爆弾で死亡した】の家族が、その死に対し、彼の殺した9人の一般市民の家族と同じ額を受け取る、ということである。
同様に、自分たちが設置した爆弾で死亡したUVFメンバー2人の家族が、その犠牲者の家族と同額を受け取る資格を得るということである。1975年のこの爆弾は、マイアミ・ショーバンドのメンバー3人を殺した。
The Consultative Group on the Past is also expected to recommend the creation of a five year legacy commission, appointed by the British and Irish governments, to deal with the past - and to say there should be no further public inquiries.
「過去についての諮問委員会」はまた、過去の問題と取り組むために5年を活動期間とするレガシー委員会を創設することを提言し、この先はもうパブリック・インクワイアリーは開かれるべきではないと述べる見込みである。
The total cost of the proposals would be £300m, and the Irish government will be asked to make a significant contribution.
この提案の総額は3億ポンドとなる見込みで、アイルランド共和国政府にも巨額の貢献が求められることになっている。
記事に挙げられている具体例(シャンキル・ボム、マイアミ・ショーバンド)は非常に極端な例だが、要するに、
- civilianであろうと、killed in action (<IRAやUVFなど武装勢力の用語) のステータスで扱われている武装組織メンバーであろうと、「交戦」などで死亡した英治安組織メンバーであろうと、同じ「犠牲者」として扱う。
- 今後、「北アイルランド紛争」についてのパブリック・インクワイアリーは行なわない。
- 「過去」の清算の作業は、あと5年で終える。
ということだ。現時点でBBCが把握していることを明らかにできる範囲で。
これはない。ほんと、マジでこれはない。
これまでの観察経験から、こういうものが事前にリークされるときには、最初に書かれる項目は中でもless controversialなものであることが多い。つまり、「他者(しかも民間人)を殺傷する目的で自分が持っていた爆弾で死んだシャンキル・ボマーも、その爆弾の被害者も、同じ扱い」というのは、CGPのこの報告書の中では、相対的に、あまりショッキングではない内容なのかもしれない。実際に記事の後のほうにちょっとだけ抽象的に書かれている2点は、ショッキングなんてものではない。
パブリック・インクワイアリーについては、現在、治安当局と武装組織の関連をめぐる疑いが濃厚な殺人事件、6件についてのものが進められている。2件はアイルランド共和国警察がIRAに情報を流していたことが疑われるケース、残りの4件が、英治安当局が北アイルランド武装組織に情報を流していたことが疑われるケースだ(ローズマリー・ネルソンについてはLVFに、ビリー・ライトについてはINLAに、パット・フィヌケンについてはUDAに、ロバート・ハミルについては、組織名はちょっとわからないのだがロイヤリストに)。
http://en.wikipedia.org/wiki/Cory_Collusion_Inquiry
これら6件は「氷山の一角」に過ぎない。それから、こういった「敵の敵は味方」系の話のほかに、IRAと英国政府がどういうふうに、どこまでつながっていたかという問題もある。Stakeknife, Kevin Fulton, Denis Donaldson ...
英国政府とのつながりについて明らかにされねばならない「IRA」というのはもちろんProvisional IRAだが、PIRAから分派した組織にも英国はスパイを入れていた。1998年オマー爆弾事件について証言しているケヴィン・フルトンがその最たる事例だが、この事件では犯人の刑事訴追は断念され、被害者の家族による民事訴訟でしか「真相追究」ができない状態だ。そして、オマー爆弾事件のパブリック・インクワイアリーは2000年に「なし」という判断になり(当時は「警察に任せるべき」という理由が与えられていた。しかし結局は刑事訴追は断念されたのだ)、唯一起訴されていた「実行犯である可能性が高い人物」が、検察側の証拠があまりに無茶苦茶だった裁判で無罪となったあと、2008年春には北アイルランド自治議会でそれを求める動議が提出され、そして2008年夏に「新たな証拠」(GCHQ関連)が出たあと、再びパブリック・インクワイアリーを求める声が高まり、GCHQ関連ではつい2,3日前に記事が出て……それは別のエントリにします。そうじゃないと収拾がつかない。ああ、何というえげつないカオス。
そして、CGPが「5年の時限で過去の清算」としている件については、北アイルランド警察にはHET (Historical Enquiries Team) というセクションが2005年に設けられて、1970年代の殺人事件を含め、昔の未解決事件を捜査している。その捜査過程で、治安当局と武装勢力の汚い関係があった疑いが浮上しているケースもある。そのHETの仕事は、なかなか進まない。当たり前だ、長い時間が経過している事件の捜査なのだから。しかもRUC(昔の北アイルランド警察)の証拠の扱いのひどさは、ちょっと信じられないほどだ。関係者しか入れない書類倉庫が放火されたり(パット・フィヌケン殺害事件)、現場で回収した時限爆弾の破片という非常に重要な証拠物品も裁判では証拠として通らない状態だったり(オマー爆弾事件)。それに、重要なデータの入ったパソコンがなくなったりもしている(ローズマリー・ネルソン爆殺事件、ビリー・ライト射殺事件)。(そして、そういうことがあっても、たいして大きな反応がない。「ああ、またか」なのかというように見える。)
CGPの「ご意見投稿」には、そういう昔の事件の捜査で使われる資料を扱う政府機関で仕事をしている人の意見として(2008年10月投稿)、「HETは活動予定期間を半分過ぎているが、スケジュールは大幅に遅れている。第一、北アイルランド紛争での3268人の死の再調査には、どうやっても10年はかかると見積もっておくのが正解なのに、なぜCGPの案では5年の活動期間なのか。単純に計算しても、毎日3件の殺人を解決していかねばならない。しかもロイヤリストやリパブリカンの武装組織が協力するという前提には無理がある」といった投稿がある。
http://www.cgpni.org/your-views/
北アイルランドの「紛争」(武力行使)が終わり、こういったところまで来るのに、米国やカナダなどいくつもの国々の人たちから成る「国際なんちゃら」の積極的関与を得た上で、10年かかっていて、それでも面積としても人口としてもあんなに小さなところで、そして闇はあまりにも深いというのに、そのあまりの深さゆえに追求してもしょうがない、とCGPは言っているのかと、そういうことかと。
となると、Sluggerの記事からリンクされている、CGP発足後のBBCの記事も、見え方が変わってくる。
Troubles group posts criticised
Last Updated: Tuesday, 26 February 2008, 15:39 GMT
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/7264565.stm
CGPの共同議長、ロード・イームズとデニス・ブラッドリーは、2007年6月に、当時の英政府NI担当大臣、ピーター・ヘインによって任命された。(ヘインは英領時代のケニア出身で、子供のころから南アのアパルトヘイトに反対していたような人で、70年代とかには反アパルトヘイト運動の活動家としてかなり激しい人だった。ただ、ブレア政権発足後はそういった昔の信念を過去のものにしてしまったようだ、と昔の彼を知る誰かが書いていたが。)
この任命について「公職任命委員会 The Office of the Commissioner for Public Appointments for Northern Ireland」から 「疑問がある」という声が出てきているとBBCが報じたのが2008年2月、任命から8ヶ月ほど後のことだ。なぜそんなに時間がかかったのかはわからないが、いずれにせよ。
Lord Eames and Denis Bradley were appointed ... without the roles being advertised.
Felicity Huston said such appointments should be "open and transparent".
The Northern Ireland Office said it was not unusual for individuals to be asked to take up short term positions.
In a statement, the NIO said ministers agreed that Lord Eames and Denis Bradley both had considerable experience in dealing with issues relating to the legacy of Northern Ireland's past.
It also said that the ad-hoc nature and short duration of the group meant it was not considered proportionate to embark in a public recruitment process.
つまり、両共同議長はその役割を公示しないまま任命し、NIOでは、短期のポストを個人にお願いすることは稀ではなく、両共同議長は北アイルランドの過去の遺物に関する問題の扱いに相当な経験があるとの判断で任命された、と。そして、CGPはアドホックな性質のもので活動期間も短いので、あのようにNIOがいきなり任命したことは合理的である、と。
ブッシュ政権のイラク政策(@戦後処理何も考えてませんでした)の言い訳か、という。
Slugger O'Tooleでは、昨年1月に、CGPはユニオニストのコミュニティから大きな疑念を持たれているということを報告していた。それは、CGPが「北アイルランド紛争」に war という言葉を与えようとしていたからで――そしてそれは、リパブリカンの「用語」、というか主張であったからで――、つまりCGPはリパブリカン寄りという警戒感がとても高かった。(なお、あの「紛争」をwarと呼ぶということについては、その後明確に、NI自治議会で「否 No」という結論が出された。私、NI FAQのページで、いかにも常識でしょって感じでウィキペディアを引いてきていますが、白鳥は水面下では大変でね……すべてがこの調子なので、「簡単に」説明とか、ほんと無理なんで。個人的には「あれは war だ」というスタンスは理解はできるものです。)
そして、昨年の10月――CGPは昨年8月に最終報告書を出すはずだったのだが、それが10月にずれこみ、さらに今年1月にずれこんだ――、私は「CGPの最終報告書」について次のような報道があったことをこのブログで書いている。
2008年10月21日 政治的暴力と平和/和平のあいだに 2
http://nofrills.seesaa.net/article/108395319.html
BBC記事の大まかな内容は、CGPがこれから出す最終報告書において、すべての殺人事件を再調査する独立委員会を、活動期間を5年間と定めて、創設することが勧告される、ということだ。そして、微妙なのは、その「再調査」なのだが――If prosecutions are not possible, the police, army and paramilitary organisations will be asked to provide details about their roles.
「起訴が可能でない場合には」と書き出されているこのパラグラフを読めば、「起訴が可能でない場合」は例外なのだろう、と考えるのが自然だろう。
そしてその次のパラグラフにはこうあるのだ。Any information given would not be used for prosecutions.
「提出された情報は、起訴のために用いられることはない」。
これは、昨年1月にCGPが「武装勢力メンバーにアムネスティを与えるわけではない」と言っていたことと重ね合わせるべきだ。
このとき、ベルファストで「紛争の犠牲」となった人のご家族は、次のように述べていた。
「法廷に行き着くこともない情報と交換でテロリストに免責特権を与えることを提案するなんて、まったくひどい。CGPが考えることができた方策でこれがベストであるというなら、(CGPの運営の費用は)まったくの浪費だった。私にとっては、これは、パラミリタリーに関連した殺人は、そうでない殺人ほど深刻なものでない、と言っているようなものだ。誰もが何らかのかたちで正義を得られるのが当然なのに、殺人をおかし、それを認めて、そして訴えられることもないなんて、これでどのように正義が得られるというのだろう。こんなことでは父の死を終わりにすることはできない」
...orz
しかしながら、CGPのこれが「テロリストへの免責特権」のみを意味するものではない、ということは、非常に重要なポイントだと思う。Slugger経由で……ええと、どの口で言うかということは度外視して:
Adams comments on Eames/Bradley Report
Published: 22 January, 2009
http://www.sinnfein.ie/news/detail/37069
Sinn Féin has concluded that the establishment of an Independent International Truth Commission is the best way of taking this issue forward. But this cannot work if such a body is established by and answerable to the British Government. The British State are protagonists in this conflict, they are not innocent observers. There are many victims' organisations that fear that the Eames/Bradley proposals will not recognise this reality and allow the British State to continue its policy to date of cover up and concealment. That would be unacceptable to Sinn Féin.
独立した国際的な真実の委員会が、この問題を先に進める最善の策であるとシン・フェインは結論した。しかしながらこれは、そのような機関が英国政府によって設立され、英国政府が責任を持っていては、何にもならない。英国政府はこの紛争の主役である。事態に関係のないオブザーヴァーではない。CGPの提案がこの現実を認識するものではなく、英国が今日まで続けてきた隠蔽の政策を継続すると考える被害者組織は多くある。これはシン・フェインには受け入れられるものではない。
どこまでが真摯な言葉で、どこまでがプロパガンダなのかが非常にわかりづらいのだが、「英国政府はこの紛争の主役である」は事実だ。これはシン・フェインのただのプロパガンダではない。
しかし、読めば読むほど、「どの口で言うか」というのがどんどん膨らんで、爆発しそうになるな、これ。まあいいや。
Sluggerから(投稿者はTurgonさん):
http://sluggerotoole.com/index.php/weblog/comments/eames-and-bradley-meet-gordon-brown/
The BBC are reporting that Eames Bradley "has met more than 100 individuals and groups in the last 18 months. It has also received more than 250 written submissions." It appears that the 2061 letters opposing an amnesty for terrorists may have been conveniently ignored by Eames Bradley: they were certainly treated rather dismissively a year ago. Eames Bradley claim there will be no amnesty for terrorists. I have always been extremely dubious of that claim (though I suspect there will be a weasel worded way by which they can pretend it is true).
CGPのこういうのの背景にあるに違いないのが、長期化してコストばかりかかっているブラディ・サンデー事件のインクワイアリーのことだ。ウェブ検索すると、いかに巨額の費用がかかっているかを嘆き糾弾するようなUKの右翼新聞の見出しが並ぶ(特にメイルとテレグラフ。なお、テレグラフの「ブラディ・サンデー事件のインクワイアリには巨額の費用をかけるのに、2005年7月7日のインクワイアリはない」というのは、それ自体は非常に正しい指摘だ。問題はあの新聞は「ブレア政権憎し」でプロパガンダを張っていたということだが、2005.07.07も、ストックウェル事件も、パブリック・インクワイアリが必要な事件だった)。
ブラディ・サンデー事件のインクワイアリーについて、UKでこういう見方がされていることは、あの日あの現場にいたデリーの人が怒り嘆いていたけれども(あの事件の加害者は英国の陸軍で、しかも彼らは真相を隠蔽しようとしていたのだから、英国が費用を負担して真相究明するのは当然であると私も考える)、費用がかさんでいる主要な原因が、いつまで経っても結論が出ないことであることは事実だ(確かに大変な量の検証を行なわなければならないことになっているが、それも当初英軍が真相を隠蔽しなければ――自分たちが射殺した非武装の民間人の上着のポケットに手榴弾を忍ばせたりしなければ済んだ話だ。英国が責任をもって真相を解明すべき)。
しかし、こういうことから「北アイルランド紛争については、インクワイアリーというものは始めたらいつまでもずるずるとやっていることになる」と考え、それについて "Never again!" ということになるのは、現実としては理解できる。それでも、「悪化する経済情勢」によって「経費のかかることにNO」みたいな大雑把な口実が与えられつつあるという中で、CGP報告書で提言されていること――つまり、真相究明はもう諦めて、死んだ人については一律で補償金を支払うことで決着、ということ――は、それは「紛争」の後始末としては、ものすごくお粗末だ。
はなから、peace before justice (「正義」の前に「和平/平和」を達成する) というのが、「北アイルランド和平プロセス」の根幹だったのだけれども。
何か書こうと思ったのだけど、忘れた。思考力も柔軟性も失われる、今日このごろ。(あたしの年齢のせいではありません。)
以前に書いたものを参照しながらこれをまとめていたら、以前に書いたものをコピペしておきたくなった。
2008年01月11日 政治的暴力と平和/和平のあいだに
http://nofrills.seesaa.net/article/77880306.html
イスラエルを訪問したブッシュ米大統領が、「第三次中東戦争でイスラエルが占領した土地からイスラエルは撤退すべきだ」など、これまでになく強いことばで「和平」の展望を述べ(ことばを口にしている本人がそれを完全に理解していたのかどうかは私には疑問だが、ことばが強かったことは事実だ)、首相を辞めてから「カルテット」(国連とEUと米国とロシア)の特使として中東和平に関わっているトニー・ブレアが、バラク・オバマ以上に抽象的なことばで「和平への楽観論」を語り、ということがこの2日間ほどで起きているが、ガザの食糧事情は危機的なまでに悪化していると世界食糧計画が発表し(燃料は「一時的に」封鎖前の補給状態に戻されたようだが)、そもそもガザでは電力不足のためブッシュ訪問を報じるテレビもろくに見られない(<リンク先、3人目のアブダラ・サミールさんの声を参照)状況で、あとは個別記事にリンクをする気力もないが、流血も継続している――イスラエル軍、パレスチナ武装勢力双方の政治的暴力によって。
昨年めでたく「和平」が現実のものとなった北アイルランドのことを考えれば、10年前にグッドフライデー合意(ベルファスト合意、包括和平合意)が成立したときも、当時の私は今ほどには北アイルランドについて知らなかったけれども、それでも「あれ」が終わることがあるとは思っていなかったわけで、今回のブッシュのことばが「自分の任期内に何としても」という功名心――ビル・クリントンが失敗した「中東和平」を自分がやり遂げてみせるという名誉欲――からだけ出た空疎なものではなく、少なくともある程度は現実を踏まえているものだと思いたい部分はある。
政治的暴力による紛争のあとの「和平」においては、大きな政治的な枠組みを動かす力も必要だが、それと同じくらい、ひょっとしたらそれ以上に、個々の人々の「問題」を解決しようという力も必要である。イスラエルやパレスチナについては、報道を見ている限り、どちらの「側」にも「非暴力」を訴える人たちがいて、双方のつながりや交流もないわけではなく、そこからより大きな流れが起きてくれることを願うばかりだ。(この「願う」というのは、部外者の無責任な態度のひとつではあるが。)
北アイルランドでは、30年に及んだ「紛争」が地域社会や個々の人々に残した「傷」に対処するための活動がいくつも行なわれている。The Consultative Group on the Past(以下「CGP」。意味としては「過去に関する諮問協議会」とでもいうか)もそのひとつだ。
んで、「傷」に対処するために、「犠牲者」は一律で英国とアイルランド共和国(の国庫)から£12kを受け取り、真相追究については訴追もなければパブリック・インクワイアリーもない、などという方向性は、最低最悪である。
英国が、「ルール・オヴ・ロー? なにそれくえるのおいしいの?」っていう状態であるなら、「最低最悪」の手前で留まるのだが、実際にはそうではないのだから。
タグ:北アイルランド
※この記事は
2009年01月24日
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1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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