「墓から蘇ったか」という趣味の悪い冗談はさておき、この記事が今ランキングに入るほど読まれている理由がお分かりの方、もしいらしたらコメント欄でお知らせください。おそらく、何か別のところで言及されていて、多くの人がリンクをクリックしているのだろうと思います。(でも何か、今言及したい要素がこの記事にあるのだろうか、という疑問が。)
当該の記事は、2005年のG8サミットのとき、というか同年7月7日のロンドン公共交通機関爆破事件の翌日に書かれたものです。
The struggle against terrorism cannot be won by military means
Robin Cook
guardian.co.uk, Friday 8 July 2005 15.00 BST
http://www.guardian.co.uk/uk/2005/jul/08/july7.development
筆者のロビン・クックはこのおよそ1ヵ月後、2005年8月に山歩き中に心臓発作で急死しています。
http://en.wikipedia.org/wiki/Robin_Cook
タグ:ロビン・クック
※この記事は
2008年12月25日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
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http://is.gd/dm3J
元記事はパキスタンの新聞のようですが..
これは強烈ですね……
redditの元のdaily.pk
http://www.daily.pk/world/europe/8714-there-is-no-al-qaeda-says-ex-uk-foreign-secretary.html
まず、daily.pkで、2008年12月24日付で「英元外相の発言」として、ロビン・クックの述べたことの引用であるかのように、「アルカイダという名称の組織はない。すべてはアメリカのプロパガンダだ」という(冷戦ジョークの「同志、すべては西側の陰謀です」というオチのような)ことが書かれていますが、ロビン・クックは2005年8月に急死していて、2008年12月に発言することはできません。
daily pkに書かれていることについてですが、RedditにGlampersさんという方の投稿で、
The actual quote is from a French Major called Pierre-Henri Bunel but Robin Cook did repeat this quote in the House, maybe that is where the confusion comes in.
(実際にはこれはフランスのピエール=アンリ・ブネルという軍人の発言で、ロビン・クックは国会でそれを引用している。それが混乱の元ではないか)
what3v3rさんという方の投稿で:
The quote is actually from a 2004 article by Pierre-Henry Bunel, a former agent for French military intelligence:
http://www.globalresearch.ca/index.php?context=viewArticle&code=BUN20051120&articleId=1291
Pierre-Henri Bunel
http://fr.wikipedia.org/wiki/Pierre-Henri_Bunel
彼はフランス軍の退役軍人で、2002年にティエリ・メサンという「9-11は米国の陰謀」論者の本に参加しているそうです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Thierry_Meyssan
もうこれでワタシ的には終了でいいとも思うんだけど(忙しいから)、つまり、「アルカイダなどというものはない」といったdaily pkの文章は、「自作自演説」のものと考えるのが妥当でしょう。
で、ロビン・クックがそんなものを国会で引用したというのが本当だとして、なぜそれを引用したのかというコンテクストについて。これは、通常はハンサードを見れば確認できるのだけど、Redditでのポストによるとハンサードには残っていないそうです。それどころか、クックが国会で「アルカイダ」について述べたことも確認できないとのこと。(ただ、ハンサードは議事録ですが、形になる前に編集が入ります。この件とは系統が全然違いますが、ジョン・プレスコットの事例を参照。これはウィキペディアでも調べられると思います。)
ロビン・クックは、イラク戦争には反対したのですが、アフガニスタン爆撃は支持しています。もっと注目すべきは、旧ユーゴスラヴィアに対する「人道的介入」の推進役だったという点、またイラクに対する経済制裁を推進していた点だと私は思います。それは今は直接的には関係ないけど。
http://www.opendemocracy.net/globalization-institutions_government/robincook_2742.jsp
むろん、アルカイダという「緩やかな連合体」は、例えばIRAのような「組織」(IRAは入るときに宣誓をしなければならないし、メンバーが守らねばならない規約もありました)ではないし、それを言うためには、「アルカイダという組織」は存在していないと言ってもいいかもしれない。でもそれは言葉遊びの域に近い。ロビン・クックがどこかで「ひとつの組織としてのアルカイダは存在しない」と述べたことはあったのかもしれませんが(あくまでも「かも」)、それは「すべてはアメリカの筋書き」という意味ではない。
なお、daily.pkは、少し見てみたところ、信頼できる (trustable) ソースのようには見えません。多分「新聞」ではなくオンラインだけのニュースサイトで、信用性は担保されていない。
一応、whois情報。
http://whois.domaintools.com/daily.pk
ははは、となりますな、これは。
それと、Redditで何度か、Power of Nightmaresが言及されていますが、これは下記で見られるはずです。(Google videoなどでも見られますが。)
http://www.archive.org/details/ThePowerOfNightmares
2004年にAdam Curtisという人が制作したすごいドキュメンタリーですが、「自作自演説」の話ではありません。プロパガンダというものについての話です。昨年だっけ、今年だっけ、同じくBBCでピーター・テイラーの「テロリズム」についてのドキュメンタリーがあったのですが、それと似た傾向のドキュメンタリー(って、説明になってないかも)。