「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2008年11月27日

Woolworthsの経営破綻

※以下、オーストラリアの「ウールワース」などのことではなく、英国の「ウールワース」のことです。

The Sound of Silence: After Hours, by Jon Nicholls
*a CC photo by a flick user 'fotologic'

Ex-Woolies, by Toby Bradbury
*a CC photo by a flick user 'mrlerone'

Woolworthsが経営破綻してしまった。
http://www.woolworths.co.uk/

Woolworths set for administration
Page last updated at 19:21 GMT, Wednesday, 26 November 2008
http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/7751064.stm
High Street legend Woolworths has buckled under its debt and is set to go into administration, BBC business editor Robert Peston has learned.

The move will put tens of thousands of jobs at its 815 stores under threat.

The board of Woolies - one of the UK's oldest store groups - is meeting to take the formal decision.

この記事の3語目の "legend" ってのを見たときに、心底ため息が。それと、"Woolies" っていう愛称。はぁ……。さみしいのぅ。。。

19日にBBCに、株価暴落(昨年比83%安)、店舗網を£1で売却とかいう目を疑うようなニュースが出て、ガーディアンに英国の小売業がガタガタであっちもこっちも季節外れのバーゲン、ウールワースはクリスマス前の6週間が書き入れ時なのに息をしていないの、みたいな記事が出て、さらには事実上のオビチュアリーともいえる「ウールワースの歩み」の記事まで出て、これはもうだめかもわからんねというのがリアルな話なのだなあと思っていたけれど、ついに。

ガーディアンで、会社更生手続入りの様子が生々しく伝えられている。

Woolworths and MFI crash threatens 31,000 jobs
Julia Finch, City editor
guardian.co.uk, Thursday November 27 2008 00.01 GMT
http://www.guardian.co.uk/business/2008/nov/27/woolworths-mfi-rescue-madelson
Woolworths directors met at 6pm to formally call in administrators to take over the running of the 800-strong retail chain, which was founded in 1909 and is a cornerstone of high streets in hundreds of towns and cities. Accountants from Deloitte were standing by, ready to take control.

...

The collapse of Woolworths came despite an eleventh-hour intervention by officials representing Lord Mandelson, who summoned the retailer's lenders to a late-night meeting on Tuesday, amid fears that the retailer might not be able to pay staff wages this week. The lenders - GMAC and Burdale, part of the Bank of Ireland group - were asked to do all they could to avoid the demise of the chain, which employs 25,000 staff, and at least keep them open, and the staff paid, for the next few weeks. They had provided loans of £385m to Woolworths. ...

……あまりに生々しいので「書きすぎじゃないの?」という気分になるが、実際にMandyの行動について、BBCとはトーンが間逆だ。
Peter Mandelson, the business secretary, had been in contact with the company on Wednesday, to ensure that if it went into administration, it would minimise the anxiety to its employees.
http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/7751064.stm

まあいい。ガーディアンによると、Woolworthsのグループ企業で、SainsburyやMorrisonsといった大型スーパーにCDを卸しているEUK (Entertainment UK) も、本体は黒字経営であるにもかかわらず、Woolworthsと一緒にさよーなら。ただし同じくグループ企業でも、Bertrams(書籍卸)と2entertain(BBCの番組をDVD化している)はこれまで通り、Woolworths Groupで事業継続。

Woolworthsの経営状態はこの数年悪化の一途をたどっていて、この夏にはIceland(冷凍食品ばっかり売ってるスーパーなんだけど、ほんとにアイスランド系)のオーナーが買い取るとかいう話になりかけた矢先にアイスランド(<冷凍食品屋じゃなくて国のほう)がああいうことになり、9月に経営陣が刷新されたけれど新社長は店舗運営のあまりの杜撰さに呆れ、最近では従業員の給料も遅配、納入業者も商品を納入せず、債権者は取り立て……うは。

全国規模で当たり前のように身近にある小売店の破綻というと、日本ではダイエーの経験があるなあ。

ウールワースは1879年にアメリカのペンシルヴァニアで創業、1909年11月に英リヴァプールに進出し、徹底した低価格路線(「店内全部6ペンス以下」)で大成功、1920年代には破竹の勢いで支店を開設(17日ごとに1店舗、っていくら第一次世界大戦後のことでもすごいよね)、第二次大戦中も物資窮乏のなかがんばって、近年では駄菓子の量り売り pick 'n' mixが子供に大人気、英国の人の多くが「クリスマスの買い物はウーリーで」という経験を共有していて……というような写真特集を各メディアが組んでいる。

ガーディアン(16点。歴史的な写真が多いので、ヒストリアンにお勧め):
http://www.guardian.co.uk/business/gallery/2008/nov/19/woolworths-history-retail-gallery?picture=339830590

タイムズ(8点。毎日の光景、という感じのが多いので懐かしみたい人にお勧め。最後のはカムデン・ハイストリートだよ):
http://www.timesonline.co.uk/tol/template/2.0-0/element/pictureGalleryPopup.jsp?id=5222866&&offset=0&§ionName=News

デイリー・テレグラフ(5点。コメントのしようのない特集):
http://www.telegraph.co.uk/finance/3482687/Woolworths-a-brief-history-in-pictures.html

で、こういう「ナショナル」な話では、難しいことわかんないからという読者をターゲットに感傷に訴えるThe Sunの記事が案外よかったりする。ライティングは「うーん」というか、高校生の作文みたいだけど。
http://www.thesun.co.uk/sol/homepage/news/money/article1977288.ece
... in hard economic times during World War II, Woolworths abandoned its "Nothing over Sixpence" pledge. Many shops were damaged or destroyed by air raids.

In the 50s and 60s, teen culture brought new spending power to the chain. In 1962, Woolies started to cash in on Beatlemania with Fab Four merchandise ― but not music.

In later years the firm expanded its entertainment section to include records and videos, with many children buying their first singles and albums from Woolies.


スコッツマン。記事見出しがすごいのでついついメモりたくなる。
MFI and Woolworths, household names that revolutionised British shopping, are laid low
http://news.scotsman.com/uk/MFI-and-Woolworths-household-names.4735988.jp

というわけで英国にいけば普通にあるべきもの、別にそれを見に行くわけじゃないけど、そこに行けばあるもの、それがひとつなくなる(といってもよい状態になる)、というニュースでした。

ちなみにWoolworthsには拙著でも言及してます。amazon.co.jpの「なか見検索」で、「電球」で検索してみてください(英字だとうまく検索できないみたい)。そして「余分なアポストロフィ」をせせら笑ってください(スルーしちゃってたんだよね、表記がいろいろあった上に、文字が小さすぎて。笑)。21ページです。

改訂新版 週120ポンドで暮らすロンドン生活術改訂新版 週120ポンドで暮らすロンドン生活術
いけだ よしこ

2度目からのロンドン・ガイド A-Z London Map and Walks (Street Maps & Atlases) ロンドンゆきの飛行機の中で読む本 イギリス〈2006~2007年版〉 (地球の暮らし方) ハッピーロンドン (ガールズ・トラベラーズ・ファイル)

by G-Tools


って、flickr見てみたらアメリカの人がロンドンに行ったときに撮影した「電球」の写真、あったよ!(笑)

*a CC photo by Adrian Black

カムデンの店舗のすっごい普通の写真も:
http://flickr.com/photos/markhillary/526428493/
http://flickr.com/photos/vividbreeze/2620336073/

うは、こんなのがある。
http://flickr.com/photos/25356196@N08/2473278991/

ストラトフォード・アポン・エイヴォン、今年4月:
http://flickr.com/photos/jwhittox/2390142332/
窓に映りこんでるM&Sの看板とかね……。

うわ、この値札見たら泣けてきた。the Orbだし。(; ;)

*a CC photo by 'jvk' on flickr



The Woolworths Virtual Museum
http://museum.woolworths.co.uk/
Woolworthのグループ自体は存続するとのことで、このサイトも残ってくれればいいのだけど。歴史資料としてこういうものが閲覧できることは、とても貴重だし重要なので。

シティでお仕事されている弁護士さんのブログのエントリ:
http://diary.jp.aol.com/tenhn8attyk/1046.html
政府は今週はじめ、VAT(消費税)を一時的に2.5%カットすることや所得税の税率を変えるなど、あの手この手で景気対策を打ち出している。それでもまだ歯止めがかからない。クリスマスセールスの時期まですら持たなかったというのは、かなり深刻だ。

BBCによるとマンデルソンは事後処理の念押しをしただけみたいだし、ガーディアンによると救済できないかいろいろ動いただけのようですが、あのウールワースがクリスマスまで4週間のこの時期に、ということだけでもショッキング。

でもこの7月のカムデン店の末期的な状態が書かれたレポート@小売業専門サイトを見ると、別の意味でショッキングだったりもする。大都市は別な店がいくらでもあるからいいけど、地方で、ウーリーしかないようなところがどうなっちゃうんだろう。
http://www.retail-week.com/People/2008/07/woolies_future_lies_in_small_shops.html



追記、北アイルランドから。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/7752169.stm
Former Woolworths manager Sean Trainor said it was a "blow to everyone".

"Woolworths were certainly very much part of town centres throughout the Troubles and survived and came back again and traded very strongly," he said.

"Unfortunately, their trading patterns over the last four to five years have been declining rapidly."


現在、店舗の維持に向けての取り組みが進行中とのこと。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/7751714.stm

※この記事は

2008年11月27日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 12:00 | Comment(0) | TrackBack(1) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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That's the wonder of a Woolies' Christmas
Excerpt: 店舗網の買い手が見つかったという報道が出ないなあと思っていたが、先日、経営破綻したWoolworthsはもう本当に終わりのようだ。一昨日あたり(日本時間)から「全店で閉店セール開始」が報じられている。..
Weblog: tnfuk [today's news from uk+]
Tracked: 2008-12-12 14:55

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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