kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2008年11月22日

「ささやかな提案」

こんな記事を読んでお茶ふいた。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/251
(英エコノミスト誌 2008年11月15日号)

 モルディブの大統領が世界の諸問題に対する解決策を見いだした。

 昨今の暗い経済情勢の下では、家を失うことは悲しいかな、さほど珍しいことではない。しかし、通常それは個人レベルの話であり、国家レベルで起きることではない。

 だが、モルディブ共和国の国民は、海面上昇の影響で全員がホームレスと化す危機に直面している。モルディブは最も高い地点でも海抜2.3メートル程度で、ゆくゆくは1200に上る島がすべて海に飲み込まれる見通しだ。

 憂慮すべき事態に直面し、モルディブ新大統領のモハメド・ナシード氏は国家水没と同じくらい劇的な解決策を思いついた。モルディブの観光収益の一部を使って、新たな国土を買おうというのである。……

このあたりまでは、ごく普通の記事だろうなと思って読んでるわけですよ。このページのデザインでは記事のタイトルは見落としてしまっているし(わたしはおっちょこちょいなので)。

(そう、ここで記事のタイトルをちゃんと読んでさえいれば、お茶をふくことなく、単にニヤニヤして済んだんだけどね、たぶん。)

記事はこのあと、ナシード大統領の「国土を買う」という考えについて、まず考えられないものだとした上で、「大統領自身が引き合いに出す唯一の前例――イスラエル建国の前にユダヤ人がパレスチナの領土の一部を買い上げたケース――は、ナシード氏の計画が世界の調和を高めるという確信を生むものではない」と続く。

ここらへんでそろそろそういう雰囲気がしてこなくもないのだけど、『エコノミスト』あたりではこのくらいのイヤミは珍しくもないので、ちょっとニヤニヤして先に行ってしまう。

続く部分では、「国土を買う」などというあまりうまく行きそうにもないプランではなく、モルディブの国土が消滅する危機の原因を作った国々に受け入れてもらうというプランについて、モルディブ国民は37万人に過ぎないのだから、と話が進む。

しかし、ツバル共和国の1万2000人に対しオーストラリアは市民権を拒否しているのだから、37万人もいるモルディブ人にとっては相当難しいだろう、と残念な展開である。第一、そういうふうに「吸収される」ことを彼ら自身が望んでいるかどうか、と。

そして、何となくシリアスな感じを基調としながら、記事は第一のお茶ふきポイントに差し掛かる。

もしかすると彼らは1つの社会としてまとまったまま、自分たちの共同体精神や民族舞踊、そして政治的反体制派を投獄する伝統を守る道を選ぶかもしれない。となると、ナシード大統領が打ち出した過激な手段が唯一の解決策となる。

えー。あー。

上と同じくここでも、そういう雰囲気を感じ取ってもよさそうなものだけれども、『エコノミスト』あたりではこのくらいのイヤミは珍しくもないので、ちょっとニヤニヤして先に行ってしまう。(これを、「英国脳の恐怖」という。)

そして、先に行って、盛大にお茶をふくことになる。
 最近の不動産市場は買い手市場である。もしモルディブが島国を探しているのであれば、聞くところによるとアイスランドがお買い得らしい。だが、モルディブ人には、選り好みできるほど選択肢があるかもしれない。ほかの国々が手放してしまいたいと考えている面倒な領土がどれだけあるか、考えてみるといい。

 例えば、紳士気取りの英国人は長い間、ウエールズ地方を蔑み、「メソジスト派の牧師と不満だらけの羊が住むところ」と揶揄してきた。……

わたしの脳程度に鍛錬された英国脳を持っていると、この「英国人」はEnglishmanかEnglishの訳(現在では「誤訳」として扱われることも多い)であるとすぐに気付くし、「羊」といえば例のあのひどいステレオタイプだなということで笑いすぎてどうしたらいいのかわからなくなり、先行する「今ならアイスランドがお買得」のインパクトがすっかりかすんでしまう。なお、細かいこと言えば「地方」は余分だ>「ウエールズ地方」。

しかるに、ゲラゲラ笑っているわたしになどお構いなく、この記事の筆者の筆は、ここからが本編ですよとばかりに冴え渡る。まず、南の海に浮かぶ楽園モルディヴの人々にとって、ウェールズのミゼラブルな天候はどうよという問題提起を行ない、それに対し「少しばかり巧みなマーケティングを駆使し、海抜の高さを強調し、キャサリン・ゼタ・ジョーンズとアンソニー・ホプキンス(残念ながら今は2人とも住民ではない)の名を売り込めば、成功しないとも限らない」とalways look on the bright side of lifeな展開を見せる。ウェールズは海抜は高いから水没する心配はなく、ある丘に登ったイングランド人は、下りてきたときにはそれが山になっていたというものすごい体験をしているし、美女もいれば名優もいるし。多少天気が悪くったって、ねぇ。ぎゃははは。

このあとがもっとすごい。もはやモルディブは関係ない。
 ナシード大統領の斬新な発想がひとたび世間に受け入れられれば、その概念は相当幅広く応用できる。例えば、イスラエル人はパレスチナ人に新たな土地を買い与えることで、100年に及ぶ不毛な対立に終止符を打つことができる。イスラエル人が負担金を分かち合えば、極めて好条件の土地を買えるだろう。フロリダ州など、どうだろうか。

カンサスなどもいいと思いますけどね。今住んでる人たちとも仲良くやっていけそうだし。

続いて、「中国は台湾を脅さず、既にチャイニーズが実権を握っているマレーシアを買えばいい」とかいうのを挟んで:
 米国の団結を掲げるバラク・オバマ氏も、国内の死刑容認者や銃規制反対論者、同姓婚反対論者に別の土地を買い与えることで、文化的対立を解消できるかもしれない。「空白地帯(Empty Quarter)」と呼ばれるサウジアラビアの砂漠地帯の一角は、ぴったりだろう。土地は広大だし、新たな住民は地元の人々と多くの共通点を見いだすはずだ

うん、サウジのワハビな人たちと、米国のファンダメさんたちって、文化的にはかなり仲良くなれそうだよね! どっちも旧約聖書な宗教なんだし!

で、ここらへんで、いくら「英国脳」なわたしでも、この記事について何か根本的に「あれ?」という気がしてくるのだけれども、とりあえず先に進むと:
 英国人は「自国に飽きたら他国の領土を手に入れろ」という概念に慣れている。


wwwwww ひょっとして「お手本はスウィフトです」とかってことじゃないのか、この自虐サタイア。

……というところで、記事の題名を確認してみる。

沈みゆくモルディブ:住家を求めて・・・
英エコノミスト誌のささやかな提案
2008年11月21日(Fri) The Economist


あう、やっぱりそうだ。The Economistのサイトに行って記事を探して、原題も見てみよう。

A modest proposal
O give me a home...
http://www.economist.com/opinion/displaystory.cfm?story_id=12601940


確定だ、うははははは、A Modest Proposal!! 
http://www.uoregon.edu/~rbear/modest.html

つまりこのエコノミストの記事は、ジョナサン・スウィフトの例のあれを踏まえたサタイア! (最初っから気付いとけよ。>自分)

せっかくだから、最後の部分はThe Economistの原文で読んだ方がいい。
The British are familiar with the notion that, if you're bored at home, you grab somebody else's country; but recent experience suggests that invading places can be expensive and troublesome, so a market solution seems a better way of dealing with national dissatisfaction. The British are, let's face it, fed up with their damp little country. Instead of renting villas in Tuscany, they should buy the place; instead of complaining about the weather, they could complain about Silvio Berlusconi. The Russians suffer from too much crime and too much snow; the Gulf Arabs from too much heat and too little fun. Both should think of buying a temperate, orderly city with decent nightlife, such as London. Wait a minute…

http://www.economist.com/opinion/displaystory.cfm?story_id=12601940


You know, London has already been bought by rich people from Russia and the Gulf. I never know what has happened since the financial criris, though. Wait a minute, aren't we talking about the Maldives? Anyway, my modest proposal would be for you to stop complaining about anything all together, no matter where you are. Silvio Berlusconi sucks and every single soul on the earth knows it. You don't have to voice it out.



Jonathan Swift wrote his own epitaph:

Hic depositum est Corpus
JONATHAN SWIFT S.T.D.
Huyus Ecclesiæ Cathedralis
Decani,
Ubi sæva Indignatio
Ulterius
Cor lacerare nequit,
Abi Viator
Et imitare, si poteris,
Strenuum pro virili
Libertatis Vindicatorem.

Obiit 19 Die Mensis Octobris
A.D. 1745 Anno Ætatis 78.

which William Butler Yeats translated from the Latin as:

Swift has sailed into his rest.
Savage indignation there
cannot lacerate his breast.
Imitate him if you dare,
world-besotted traveller.
He served human liberty.

http://en.wikipedia.org/wiki/Jonathan_Swift#Epitaph

※この記事は

2008年11月22日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 07:26 | Comment(1) | TrackBack(0) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 これをモンティパイソンが公式YouTubeに.
Posted by 消印所沢 at 2008年11月22日 21:43

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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