「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=


2008年11月08日

「手製の爆発物を持って鉄道で移動していた男」の起訴(ただしあんまり報道されてない)

7日にアップしたエントリで「英国でのテロ」について少し書きましたが、そこで飛ばした「極右」の「テロ」について、ニュースがあったので。最初BBCで見たんだけど、詳細不明なので、Google Newsに被告の名前を投げて出てきたテレグラフ。

Man appears in court charged with terror offences
By Richard Edwards, Crime Correspondent
Last Updated: 3:37PM GMT 07 Nov 2008
http://www.telegraph.co.uk/news/3397918/Man-appears-in-court-charged-with-terror-offences.html

この記事のリード文――起訴された男は、サフォークの鉄道駅で逮捕されたときに「手製の爆弾(爆発物)2つとナチス系 (Nazi-themed) ハンドブック」を所持していた。うむ。BBCには「ハンドブック」は出てきていない(BBCに出ていた男の所持品は、"improvised explosive devices including timers, weedkiller and firelighters")。

この記事は「起訴された男が出廷した」という内容なので、もうちょっとさかのぼって調べてみると……

Man charged in 'explosives' find
Page last updated at 10:09 GMT, Saturday, 1 November 2008
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/england/berkshire/7702950.stm

……あー、あたしこの記事読んだ。読んだけどブクマはしてなかったみたい。

いわく、10月30日(木)、サフォークのLowestoft駅で男が駅員に絡んでいるというような通報があり、現場に赴いた警察が男の所持品検査を行なったときに爆発物と思われるものが発見され、男は逮捕された。爆発物は処理班が処理した。また31日には男の家にも捜索が入った。男はpossession of an article to cause criminal damageの所持、およびpublic order offenceで11月1日に起訴された。男はこのときは保釈されている。(爆弾運んでる男が駅員ともめるって……。)

で、この記事にある男の名前が、まずムスリムではない。ていうか名字はイングランドっぽいが、北アイルランドの組織の構成員の場合、名前では判断できないこともあるし、むろん、イングランドの極右・ネオナチ武装組織の可能性もある。年齢は43歳だから……と思ったことは記憶している。

BBC記事によると、男は保釈されたあとすぐに再逮捕され、the Metropolitan Policeにさらに尋問された――ということは、地域の警察の管轄外という意味で、つまり「対テロ」に引き継がれたということになる。

実際、BBC記事によると、男の罪状は、"being in possession of articles connected with the commission, preparation or instigation of an act of terrorism, contrary to the Terrorism Acts of 2000 and 2006", つまり「テロ法2000年および2006年」に違反して、ということだそうだ。

その根拠となるのが、所持品と自宅から見つかったものなのだろうけれども、ここで参照記事をBBCからテレグラフに変えると:
Neil Lewington, 43, is accused of travelling to Lowestoft station in Suffolk from his home in Berkshire with improvised explosive devices, seven timers, four containers of sodium chlorate weed killer, three tennis balls and a number of fire lighters.

He is also accused of being in possession of the Waffen SS UK members' handbook, several notebooks containing drawings and handwritten notes, and a book called Counter Bomb.

うん。爆発物とタイマー7つと塩素酸ナトリウムの除草剤4本と、テニスボール3つと(……? と思ったら、ハリーんとこのコメント欄に説明がある)、複数のライターを持って、バークシャーの自宅から電車でサフォークまで移動していた、と(かなり離れてますね。感覚としては、群馬から神奈川という感じかなあ)。また、"the Waffen SS UK members' handbook" なるものと、図入りのノート数冊と、"Counter Bomb" なる本を(おそらく自宅に)所持していた、と。

で、"the Waffen SS UK members' handbook" って何だろう……と検索ウィンドウに投げたら、「それって何よ」というツッコミを入れているUKのブログ(妙な「言論の自由」系なのでリンクしません)か、同じニュースの文面(おそらく警察発表の文言)が見つかるだけで、特に収穫なし。

自分で(あるいは身内で)そういう「ハンドブック」を作っちゃったのかもね。いずれにせよ、「Waffen SSのUKメンバー」というありえない妄想の時点で、どう見ても「ネオナチ」です。それも「若いのがファッションでやってる」とかじゃなく、43歳でしょ、80年代末〜90年代初めの一連の出来事を知ってるわけでしょ。それでいてファッション感覚でやってるとしたらただの痛い人だ。(いや、そういう人もいるかもしれないけど。)

"Counter Bomb" なる本については詳細不明。裁判過程で明らかになるだろうと思いますが。

今後どういうふうになるか、記事が出たら読むようにしておきたいと思います。(ということをブログに書いておかないとまた忘れそうなのでエントリにしました。)

※英国社会についていろいろと関心のある方は、ハリーんとこのコメント欄は読んで損はないと思います。「左翼ではないリベラル」っていうか、ユーストン・マニフェストな界隈にお邪魔してみました、的に。もしこれが「イスラム過激派」の逮捕だったら、メディアでの報道はこんな程度では済まなかったはずだ、という「ハリーんとこ」の意見には、私も同意。

※「ハリーんとこ」ことHarry's Placeは、UKの政治系ブログで老舗で定評があるところのひとつ。



追記:
そういえば同じような内容の過去記事。(さっきテレビでやってたから検索して来られる方が何人かいらっしゃるんですが、「1999年4月のデイヴィッド・コープランドのネイルボム@SOHOなど」については、下記に少し書いてあります。)

2006年10月10日
英国でテロ計画未然に防がれる! ただし・・・
http://nofrills.seesaa.net/article/25167281.html
不法な目的で爆発物を所持していたとして49歳と62歳の男2人が逮捕・起訴された、という記事。10月6日付け。

法的根拠は、the Terrorism Actではなく、the Explosive Substances Act 1883(<こりゃまた古い法律だ)。

警察の捜査で押収された物質(爆発物製造に用いられる化学物質だと思われる)の量は英国で過去最大だそうだ。もしこの計画が進められていたらと考えるとぞっとするね。

ただしこんなにでかい話なのに、BBCとかで記事になってる気配がないんだよね。少なくとも、UK versionのトップページでは見てない。(International versionのトップではもちろん見てない。)

なぜか? 

たぶんこれが「イスラム過激派の恐ろしいテロ計画」じゃないからだと思う。

この「爆発物」の件については:
http://en.wikipedia.org/wiki/Talbot_Street_bomb-making_haul
タグ:極右

※この記事は

2008年11月08日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 19:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

……全文を読む
▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼