Man appears in court charged with terror offences
By Richard Edwards, Crime Correspondent
Last Updated: 3:37PM GMT 07 Nov 2008
http://www.telegraph.co.uk/news/3397918/Man-appears-in-court-charged-with-terror-offences.html
この記事のリード文――起訴された男は、サフォークの鉄道駅で逮捕されたときに「手製の爆弾(爆発物)2つとナチス系 (Nazi-themed) ハンドブック」を所持していた。うむ。BBCには「ハンドブック」は出てきていない(BBCに出ていた男の所持品は、"improvised explosive devices including timers, weedkiller and firelighters")。
この記事は「起訴された男が出廷した」という内容なので、もうちょっとさかのぼって調べてみると……
Man charged in 'explosives' find
Page last updated at 10:09 GMT, Saturday, 1 November 2008
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/england/berkshire/7702950.stm
……あー、あたしこの記事読んだ。読んだけどブクマはしてなかったみたい。
いわく、10月30日(木)、サフォークのLowestoft駅で男が駅員に絡んでいるというような通報があり、現場に赴いた警察が男の所持品検査を行なったときに爆発物と思われるものが発見され、男は逮捕された。爆発物は処理班が処理した。また31日には男の家にも捜索が入った。男はpossession of an article to cause criminal damageの所持、およびpublic order offenceで11月1日に起訴された。男はこのときは保釈されている。(爆弾運んでる男が駅員ともめるって……。)
で、この記事にある男の名前が、まずムスリムではない。ていうか名字はイングランドっぽいが、北アイルランドの組織の構成員の場合、名前では判断できないこともあるし、むろん、イングランドの極右・ネオナチ武装組織の可能性もある。年齢は43歳だから……と思ったことは記憶している。
BBC記事によると、男は保釈されたあとすぐに再逮捕され、the Metropolitan Policeにさらに尋問された――ということは、地域の警察の管轄外という意味で、つまり「対テロ」に引き継がれたということになる。
実際、BBC記事によると、男の罪状は、"being in possession of articles connected with the commission, preparation or instigation of an act of terrorism, contrary to the Terrorism Acts of 2000 and 2006", つまり「テロ法2000年および2006年」に違反して、ということだそうだ。
その根拠となるのが、所持品と自宅から見つかったものなのだろうけれども、ここで参照記事をBBCからテレグラフに変えると:
Neil Lewington, 43, is accused of travelling to Lowestoft station in Suffolk from his home in Berkshire with improvised explosive devices, seven timers, four containers of sodium chlorate weed killer, three tennis balls and a number of fire lighters.
He is also accused of being in possession of the Waffen SS UK members' handbook, several notebooks containing drawings and handwritten notes, and a book called Counter Bomb.
うん。爆発物とタイマー7つと塩素酸ナトリウムの除草剤4本と、テニスボール3つと(……? と思ったら、ハリーんとこのコメント欄に説明がある)、複数のライターを持って、バークシャーの自宅から電車でサフォークまで移動していた、と(かなり離れてますね。感覚としては、群馬から神奈川という感じかなあ)。また、"the Waffen SS UK members' handbook" なるものと、図入りのノート数冊と、"Counter Bomb" なる本を(おそらく自宅に)所持していた、と。
で、"the Waffen SS UK members' handbook" って何だろう……と検索ウィンドウに投げたら、「それって何よ」というツッコミを入れているUKのブログ(妙な「言論の自由」系なのでリンクしません)か、同じニュースの文面(おそらく警察発表の文言)が見つかるだけで、特に収穫なし。
自分で(あるいは身内で)そういう「ハンドブック」を作っちゃったのかもね。いずれにせよ、「Waffen SSのUKメンバー」というありえない妄想の時点で、どう見ても「ネオナチ」です。それも「若いのがファッションでやってる」とかじゃなく、43歳でしょ、80年代末〜90年代初めの一連の出来事を知ってるわけでしょ。それでいてファッション感覚でやってるとしたらただの痛い人だ。(いや、そういう人もいるかもしれないけど。)
"Counter Bomb" なる本については詳細不明。裁判過程で明らかになるだろうと思いますが。
今後どういうふうになるか、記事が出たら読むようにしておきたいと思います。(ということをブログに書いておかないとまた忘れそうなのでエントリにしました。)
※英国社会についていろいろと関心のある方は、ハリーんとこのコメント欄は読んで損はないと思います。「左翼ではないリベラル」っていうか、ユーストン・マニフェストな界隈にお邪魔してみました、的に。もしこれが「イスラム過激派」の逮捕だったら、メディアでの報道はこんな程度では済まなかったはずだ、という「ハリーんとこ」の意見には、私も同意。
※「ハリーんとこ」ことHarry's Placeは、UKの政治系ブログで老舗で定評があるところのひとつ。
追記:
そういえば同じような内容の過去記事。(さっきテレビでやってたから検索して来られる方が何人かいらっしゃるんですが、「1999年4月のデイヴィッド・コープランドのネイルボム@SOHOなど」については、下記に少し書いてあります。)
2006年10月10日
英国でテロ計画未然に防がれる! ただし・・・
http://nofrills.seesaa.net/article/25167281.html
不法な目的で爆発物を所持していたとして49歳と62歳の男2人が逮捕・起訴された、という記事。10月6日付け。
法的根拠は、the Terrorism Actではなく、the Explosive Substances Act 1883(<こりゃまた古い法律だ)。
警察の捜査で押収された物質(爆発物製造に用いられる化学物質だと思われる)の量は英国で過去最大だそうだ。もしこの計画が進められていたらと考えるとぞっとするね。
ただしこんなにでかい話なのに、BBCとかで記事になってる気配がないんだよね。少なくとも、UK versionのトップページでは見てない。(International versionのトップではもちろん見てない。)
なぜか?
たぶんこれが「イスラム過激派の恐ろしいテロ計画」じゃないからだと思う。
この「爆発物」の件については:
http://en.wikipedia.org/wiki/Talbot_Street_bomb-making_haul
タグ:極右
※この記事は
2008年11月08日
にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。
【todays news from ukの最新記事】
- 英国での新型コロナワクチン認可と接種開始、そして誤情報・偽情報について。おまけに..
- 英ボリス・ジョンソン首相、集中治療室へ #新型コロナウイルス
- "Come together as a nation by staying ap..
- 欧州議会の議場で歌われたのは「別れの歌」ではない。「友情の歌」である―−Auld..
- 【訃報】テリー・ジョーンズ
- 英国の「二大政党制」の終わりは、「第三極の台頭」ではなく「一党優位政党制」を意味..
- ロンドン・ブリッジでまたテロ攻撃――テロリストとして有罪になっている人物が、なぜ..
- 「ハロルド・ウィルソンは欧州について中立だった」という言説
- 欧州大陸から来たコンテナと、39人の中国人とされた人々と、アイルランドのトラック..
- 英国で学位を取得した人の残留許可期間が2年になる(テリーザ・メイ内相の「改革」で..