「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2008年11月05日

アメリカ合衆国、「初の黒人大統領」

It's the answer spoken by young and old, rich and poor, Democrat and Republican, black, white, Hispanic, Asian, Native American, gay, straight, disabled and not disabled - Americans who sent a message to the world that we have never been just a collection of individuals or a collection of Red States and Blue States: we are, and always will be, the United States of America.

Full text: Obama's victory speech →映像&音声
http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/us_elections_2008/7710038.stm

※バラク・オバマのスピーチは、全文日本語化されたものが既に複数アップされています→、びじうさん@びじうのログ、DanKogaiさん@404 Blog Not Found、加藤祐子さん@gooニュース……ほかにあればコメント欄でご教示ください。(「要旨」ではなく「全文」で。要旨を入れると多くなりすぎる予感。)【追加→】朝日新聞(翻訳者不明)、毎日新聞(翻訳者不明)

BBCで開票速報を生で見てからしばらく後、今回の米大統領選挙について、とてもよい文章を読んだ。

「バラク・オバマ」がいかに意識に浸透していったか コラム「大手町から見る米大統領選」(67回目)
2008年11月5日(水)13:33
http://news.goo.ne.jp/article/gooeditor/world/gooeditor-20081104-02.html

gooニュースでFT記事の翻訳もしておられる加藤祐子さんの文章だ。オバマが選挙人273人を獲得した30分後にアップされている。「アメリカ合衆国初の黒人大統領」が決まった今日という日の「熱気」を、日本から日本語で発している文章として、単に、すばらしい。(加藤さんのこのシリーズの記事はどれもおもしろいのでぜひ。)

加藤さんは1970年代を米国の小学校で過ごした経験がおありだ。
当確が打たれた今。なぜこんなに泣けるのか。政治家が当選したからといって泣いたことなど、今まで一度もないのに。「マケインも好きで、オバマもすごい」と素直に思えるこの2人の候補を、ずっと見つめてきたというその幸運もある。聡明で優秀な大統領が、過去8年間の蒙昧、不寛容な分断を打ち払ってくれるだろうという、その期待もある。そしてアメリカで黒人がどういう境遇にあるか、幼いころから見てきた故の、その思いもあるだろう。

「アメリカ」を直接知らない私には、こういう感情は遠いものだ。むしろ、過去に書いたように「嫌米」の私は(「アメリカ」という「価値観」をあの「英語」に乗せて「当たり前のもの」として押し付けてくるのが嫌いなのだ)、「過去8年間の蒙昧、不寛容な分断」があろうがなかろうが……みたいなシニカルなフィルタがかかっているから、非常に冷めて見ていたと思う。それでもこの文章にはとても共感したし、泣いてはいないけど、オバマのスピーチが流れるなか、会場の人々の顔を見て、やはり胸に迫るものがあった。ワシントン大行進から45年。

個人的には頭がとても忙しいので(未整理ともいう)、1997年のトニー・ブレアとか、この10月の「公民権運動から40年」の北アイルランドのデリーとか、つい数日前の、シン・フェインの人たちの「無言」の抗議とか、そういったものが、もぐらたたきのもぐらのようにぴょこぴょこと顔を出しては引っ込み、顔を出しては引っ込みしているのだが、ここでタ〜イムマシ〜〜ン(小林克也風に)。

2004年11月06日...
http://ch00917.kitaguni.tv/e92130.html


ブッシュを笑うのはあまり好きではないのだが、はははははははは。このときの無力感と脱力感ったら、すごかったですねぇ。結果出てすぐにオンラインのフォーラムで共和党支持のアメリカ人の勝ち誇ったようなコメントが湧いて出てくるのに心底げんなりしたり(宗教右派ではないインテリのブッシュ支持者ってほんとガチですごいなあというか、そういう感じ)。この人たちは世界が壊れないと投票行動を変えないし、世界が外部から壊されればますます声を大きくして拳を振り上げるし……と、この9月まで思っていたのだけど、9月に彼らの世界が内部から壊れたんだね。

週末に言うTGIF (Thank God it's Friday!) にならって、TGIF (Thank God it's finished!) ですな、とりあえずは。まあマケインでもブッシュではないのだからそうだったかもしれないけど、「共和党」がね。BBCの開票速報番組でのジョン・ボルトンとかさ、ほんとにもう……だったもん。だからといって民主党なら、というわけでもないけど、今の段階の私の知識では。

2004年11月5日(開票後)...
http://ch00917.kitaguni.tv/e91991.html
……そんなような、別にどうってことはないことを感じつつ、ずっと、ここでは爆弾が落ちてくる心配は誰もしてないんだろうな、と感じていた。

ブルドーザで家を壊される心配も、「テロリストの隠れ家だから」といって近所に爆弾が落とされる心配も、「占領軍の戦車がいるから」といって近所に爆発物がしかけられる心配も、銃弾や爆弾やミサイルで自分や自分の知ってる人が殺される心配も、しなくていいからしてない。

いきなり拉致されて身代金を要求される可能性はあることはあるけれど(そして気の毒なことに最悪の結末になることもあるけれど)、自分が拉致されることを心配して東京のどこかの街を歩くことは、私にはない。ましてや、いきなり拉致されて、何らかの交渉のカードとして使われることなど、自分のことにはなり得ない。

わりと最近、「ダブヤ」ことGWBは、The world is safer nowと言っていた。

saferとは何か。そしてこの男の言うthe worldというのはどこのことか。

この男はファルージャからの手紙を読んだのだろうか。


「アメリカ」はアメリカだ。誰がトップになろうが、イラクから米軍を「撤退」させようが。そうやって「あらかじめ期待しない」ことが第二の習性になっているのは、自分ではもう今さらどうしようもない。

それでも、ほんの少しの期待を。法律家として「人権」というものに真面目に取り組んできたバラク・オバマが、「グアンタナモ」を正視してくれることに。「ディエゴ・ガルシア」を正視してくれることに。「ケニアの息子」にほんの少しの期待を。

後から振り返ったときに、2001年から2008年は「異常な状態」だったのだ、と、素直に言えるようになることに、少しだけ期待を。



今日はなんとなく「そういうの」を聞きたくなって、finetuneで自分なりに「黒い音」を集めたプレイリスト(全然未完成だけど)をさっきから聞いている。ジェイムズ・ブラウンがGet Up, Get Into It, Get Involvedとシャウトしている。
http://www.finetune.com/playlist/2147770
JBにこの日を迎えてもらいたかったね。バラク・オバマのハワイのおばあちゃんにも。



BBCの選挙まとめのページ:
http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/us_elections_2008/7697829.stm
スウィング・ステートだったVirginiaが非常に興味深い。大統領でオバマ51.8%、マケイン47.3%とかなりの差がつき(その他は0.9%)、議会で上院が、2004年までは共和党2、民主党0→2006年共和党1、民主党1→2008年共和党0、民主党2となった。下院は、2006年まで共和党8、民主党3→2008年共和党6、民主党5となった。ヴァージニアが、赤くなくなってきている。

ヴァージニアと同様にSwing Stateとの扱いだったOhioは、大統領がオバマ51.2%、マケイン47.2%、その他1.4%で、オバマが過半数を押さえた。議会は、上院は両党1ずつ(2006年と同じ)だが、2004年までは2議席とも共和党だった。下院は、2004年までは、共和党12、民主党6→2006年に共和党11、民主党7となり、そして2008年には大逆転、共和党8、民主党9だ。

そしてフロリダ。これは数字見て泣けた(私は物語を見せられるより数字を見せられたほうが泣けるらしい)。オバマが50.9%、マケインが48.4%、その他が0.6%。金融危機で「自分のこと」が不安になった人々の行動がこの結果なのだろうが、フロリダが青いんだよ、フロリダが。ブッシュ家のフロリダが、ね。議会はまだまだがっつり赤いけど(下院が共和党15、民主党10、上院は1ずつ)。

最もガチで赤いのはどこかなー、と適当にあたりをつけて見たところ:
Oklahoma: McCain 65.6%, Obama 34.4%
Alabama: McCain 60.5%, Obama 38.7%
Utah: McCain 62.9%, Obama 34.2%
Idaho: McCain 61.8%, Obama 35.8%
Wyoming: McCain 65.2%, Obama 32.7%
Alaska: McCain 61.6%, Obama 36.2%
共和党が60パーセントを超えてるのはこれだけみたい。

カンサスが56.8対41.5、テキサスが55.5対43.8、ルイジアナが59対39.5、ミシシッピが56.5対42.7、ジョージアが52.9対46.4、アーカンサスが58.8対38.8、テネシーが57.2対41.6、テネシーが57.2対41.6、サウス・カロライナが54.1対44.7、ノース・カロライナは両者49%台で拮抗、まだ結果が出ていません。(2000年のフロリダ状態かも。)マケイン出身地のアリゾナは53.7対45.1になってます。

ノース・カロライナの他に結果が出てないのはミズーリだけ。こっちも両者49%台で拮抗。

一方、民主党が60パーセントを超えているのは、ハワイ(オバマ出身地)、カリフォルニア、イリノイ、ヴァーモント、マサチューセッツ、コネチカット、ニューヨーク、デラウェア、メリーランドとワシントンDC。DCに至っては、オバマ92.9パーセント。ははは。
タグ:米国

※この記事は

2008年11月05日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 21:23 | Comment(3) | TrackBack(0) | 雑多に | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ノース・カロライナ(選挙人15名)の結果がようやく出たようです。すごい接戦。2000年のフロリダを思い出しますが、今回は数え直したら逆転ということがあったとしても全体への影響はありません(オバマがダブルスコアで圧勝、なので)。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/us_elections_2008/7697829.stm

North Carolina:
Barack Obama 49.9%
John McCain 49.5%
Barr 0.6%

もうひとつ、まだ結果が出ていないミズーリも、両者49%代で拮抗しています。
Posted by nofrills at 2008年11月07日 20:06
お久しぶりです。

ノース・カロライナでは両者の差が14,000票なのに対して、未開票の40,000票の暫定票(provisional ballots)が残っているそうです。結果がひっくり返るわけではないでしょうが。ノース・カロライナが青い州になるのは1976年のジミー・カーターのとき以来だそうです。
http://news14.com/content/politics/601170/north-carolina-goes-for-obama/Default.aspx

Straight ticket(いちいち候補者を選ぶ手間を省いて一括して政党に投票する、大統領選には適用されない)は民主党6割に対して共和党4割なのに、大統領選はなぜか接戦になりました。

マケインの敗北宣言もよかったですよ。翻訳する気はないですか?この訳は間違いが散見されるので。
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51134971.html
Posted by バグってハニー at 2008年11月07日 22:51
バグってハニーさん、情報の追加をありがとうございます。まだprovisional ballotsが残っているんですね。

> ノース・カロライナが青い州になるのは1976年のジミー・カーターのとき以来だそうです。

すごい……クリントンのときも赤い州だったところが、今回青くなるとは。

マケインの敗北宣言、リアルタイムで聞いたときはぐっとくるものがありました。
Danさんは誤訳やタイポはコメント欄で連絡すれば素早く修正してくださるので、気付いたところがあればぜひ。私はすでに許容量を超えた感が…… (^^;)
Posted by nofrills at 2008年11月07日 23:19

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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