「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=


2008年10月29日

「イメージとしての英国」の最低最悪で最も醜悪で愚劣な例

シリアのこととかフィル・ウーラスのこととかあるんで、「こんなの心底どうでもいい」と思ってたんだけど、風呂入ってたらふつふつとこみ上げてくるものがあったのでエントリ立てておく。

ふだんうちを読んでくださっている方にとっては、たぶん、読んでも不快になるだけの下劣なものだろうと思うんで、読まないほうがいいです。

以下、本文。



「唐沢俊一検証blog」さんが、27日付のエントリで、『唐沢俊一のトンデモ事件簿』(版元は三才ブックスさん)収録の「イギリス人とテロの深い関係」を紹介しておられる。
http://d.hatena.ne.jp/kensyouhan/20081027/1225107478

ナナメ読みに毛が生えた程度の読み方をしただけで「ツッコミを入れる」ようなコメントをしたのだけど、どうも気になってあとでもう一度、今度はちゃんと読んだら「これはひどい」としか言いようがない。で、あまりにくだらないから忘れようと思って流したのだけれど、風呂入ってたら蘇ってきたので書いておく。

この「雑学コラム記事」の体裁をとったデタラメだらけの駄文「イギリス人とテロの深い関係」は――もうこのタイトルだけでダメ感に満ち満ちているのだが――、落ち着いて読むに、次のような構成になっている。

構成を説明する前に一言で要約するとすれば、「イギリス人ってやつはとにかく頑固なのだ」という話だ。要するに「イメージ」だ。

例えば90年ごろにベストセラーになったリンボウ先生のエッセイのように、細部ではいろいろと間違っているところはあるけれども、基本的には微笑ましい体験談で自分の印象を綴っているというものなら、ここまでの駄文にはならなかっただろう。司馬遼太郎のように、せっかくアイルランドに行っても自分が調べたことを通じて築いた強固な「イメージ」を確認するだけで終わってしまい、結論は「行かなくてもいい」になってしまっているのだが(orz)、細部はものすごく豊かで活き活きとしていて、文章としても読ませる、という文もあるだろう。

しかし唐沢さんは「雑学」として、「テロ」を軸に、薄い体験と伝聞と不確かな知識で「イギリスというもの」を語ろうとしている。その結果、グダグダであるばかりではなく、不快なものになっている。しかも何ですかこの、テクストとしてあまりに不誠実な、論理性の欠如は。間違いがなかったとしても、引っかからずに読むことは不可能です、この文。「雑学」なら論理不在でも構わないとでも言うんでしょうかね。

「イギリス人とテロの深い関係」の要旨は次のような感じ。いちいちツッコミどころがあるんですが、多くは「とりあえずスルー」します。ただ、問題のある部分はフォントの色を赤系にしておきます。(朱色が「明確な事実誤認」の箇所で、本当に「調べて書いている」のならありえない記述、桃色が「意味不明」、「問題あり」の箇所で、論理の上滑り、言葉足らず、無理な断定など。)私のコメントは、【 】でくくって、文字を薄くしておきます。

・2005年7月7日のロンドンでのテロでも、人々は動じなかった。それは国民性だ。IRAのテロがあったから打たれ強いのだ。
  ↓
・そういえばイギリスには爆弾テロを記念するお祭りがある。ガイ・フォークス・デイがそれだ
11月5日の祭りなら、ガイ・フォークス・「デイ」じゃなくて「ナイト」。それと、ガイ・フォークスのは「テロ」じゃなくて「テロ未遂」、立場を変えれば「テロ阻止」。さらに重要なことに、11月5日のあれは「ガンパウダー・プロットの失敗、つまり国王の無事」を記念する祭りであって、「プロット」を記念する祭りではないです。
  ↓
・謀反人であるはずのガイ・フォークスがヒーローとして祭り上げられているのだから、イギリスという国は変な国だ。
大嘘もいいところ。11月5日は「カトリック野郎」のガイ・フォークスの人形を火あぶりにして喜ぶ祭り(今はその意味合いは薄れてきている)。非常にセクタリアンなものです。

あと、ガイ・フォークスは「反体制」のシンボルです。そのことと、「ガイ・フォークスの花火」を単純に混同してるんでしょう。

  ↓
・話をIRAに戻すと、ショーン・コネリーがIRAに寄付をしているのに、特に何も言われないでいるのだ。イギリスという国は変な国だ。
ショーン・コネリーについては前に書きました。⇒http://nofrills.seesaa.net/article/107659374.html
  ↓
【論理的つながりが不明なのだけど、次のように展開する。】
・IRAはマウントバッテン卿を爆殺しているが、チャールズ皇太子はマウントバッテン卿に心服していた。卿が1979年に爆殺されていなければ、ダイアナ妃問題も起こらなかったのではないかといわれている
王室ゴシップは完全に私の関心の範囲外なんですが、ここでいう「ダイアナ妃問題」って何ですかね。チャールズ皇太子がカミラと恋に落ちたのは、マウントバッテン卿爆殺事件の何年も前で、チャールズがさっさとカミラにプロポーズしていれば、カミラがパーカー・ボウルズ夫人になることもなく、「ダイアナ妃問題」は存在してなかったかもしれませんが、カミラが最初の結婚をしたのは1973年、マウントバッテン卿が殺される6年も前。しかもこのおじ様は「男は若いうちに経験を積んだ方がいいが、妻にする女は……」みたいなアドバイスをしてカミラを遠ざけ、自分の曾孫とチャールズの縁組を画策……「ダイアナ妃問題」は起きなくても「マウントバッテン卿の曾孫問題」になってたんじゃないの。って、何で私がデイリー・メイルの読者向けサービスコラムみたいなことを書いているんだ。笑。※王室ゴシップにはど素人だから間違ってたらコメント欄で指摘してください。
マウントバッテン卿爆殺事件についての参考資料:A Nation Mourns Its Loss, TIME, Monday, Sep. 10, 1979
  ↓
・しかし、マウントバッテン卿は「露骨なお稚児趣味」【原文ママ】で知られていた。だからチャールズ皇太子がまっとうな結婚生活を送れたかどうかはやはり疑問だが。
根拠のないことを前提として、「うまいこと言った」つもりになっている。不快。マウントバッテン卿の同性愛については、確かに「噂」はありますが、真偽は定かではありません(バイセクシュアルとの説にはある程度の根拠はあるようです)。「真偽が定かでない」のはほかの多くのクローゼット・ゲイと同じですが、卿の場合は「IRAの情宣」で「ゲイ説」が流されたりもしているので、事実かどうかの判断については、よりいっそうの慎重さが要求されます(というか、「ストームなんちゃら」系でベルファストの少年売春スキャンダルと絡めて名前が出ていたりするのを見る限り、限りなく「誹謗中傷」目的の言説のような気がします)……って、こんなことはネットに頼らず本気で調べればわかるんだけどね。あと、信用できる資料かそうじゃないかはライターならある程度判断できるっしょ。最後に書き添えておくと、もちろん唐沢氏の文にうかがわれる「ゲイ」に対する目線も不快。
  ↓
・閑話休題。マウントバッテン卿の殺害に対し、首相のサッチャーは徹底して報復を行うと宣言、英国政府とIRAとの対決が激化するなか、ボビー・サンズのハンストが行なわれる。
前回書いたときはあまりにめんどくさくてスルーしたけど、「報復を行なう」と「宣言」の箇所、英語で出してほしい。事件後のサッチャーのステートメントはサッチャー財団のサイトで誰でも読めますが、「報復を行なう」という文言はないし、「報復」の主旨でもない。"The Government will spare no effort to ensure that those responsible for these and for all other acts of terrorism are brought to justice." が近いことは近いけれど、これは「報復」ではなく、「犯罪者に法の裁きを」という意味。てか「報復」っていう言葉の意味、わかってんのかなあ。

それと、マウントバッテン暗殺のその日に、北アイルランドの別の場所で、IRAのボムで英兵が一気に18人もやられてんのね。それも含めての1979年8月27日なんだけどね。それはスルーですか、ってのもある。

あと、サッチャーと北アイルランドのテロ組織を語るなら、IRAのボビー・サンズは実はあんまり関係なくて、1979年の総選挙の直前にロンドンの国会議事堂で起きたINLAによる爆弾テロ事件で保守党のサッチャーの盟友が爆殺されてんのね。(事件当時首相だった労働党のキャラハンは「いかほどの努力をすることになろうと、殺人者を法の下に引きずり出し、英国からテロリズムを一掃する」と述べているんですけど、これも「報復」じゃないよ。)

なんでこううるさいことを書くかというと、北アイルランド紛争において「サッチャーの報復」という言葉の持つ意味は、軽く受け流すにはあまりにも重大だから

  ↓
・ついにサンズが死んでしまった。IRAはこの報復のためサッチャー暗殺を企てホテルを爆破したが、サッチャーは大破したホテルの瓦礫の下で生きていた。そして予定通りに演説を行ない、喝采を浴びた。
これは1984年10月12日のブライトン爆弾事件のことなんですが、サンズの死亡は1981年5月5日、その報復が3年以上後で、しかもリパブリカンは何かと「日付を同じにする」習慣があるのにサンズの命日でもなければハンスト入りの日でもない10月12日……これが「サンズの報復」って、もうめちゃくちゃ。そんなにボビー・サンズを引き合いに出したいか。IRAのシンパでもないくせに。その名を口にすることの重さを知りもせず、どうしてこういうことができるんだろう。

それと、ブライトン爆弾事件では保守党の政治家やその妻など5人も殺されてて、身体の麻痺とかになってる人もいるのね。確かにサッチャーがメインのターゲットだったのだけど、彼女一人じゃなくて、保守党が攻撃されたのがブライトン爆弾事件(爆弾が仕掛けられていたホテルは保守党の党大会の会場)。それ知ってたらこういう流れでは文章書けないでしょ。

それから、サッチャーは瓦礫の下に埋まってったわけじゃない。確か、そのときにたまたま自室にいなかったとかでかすり傷ひとつ負わなかった。ブリカンに出てるか…… "The bomb went off at 2.54 am. Thatcher was still awake at the time, said to be working on her conference speech. It shredded through her bathroom barely two minutes after she had left it; but she and her husband Denis escaped injury."

ついでだから書くけど、爆弾事件後、サッチャーは予定通り演説をした(リンク先で読めます)が、その前、まだ現場が混乱しているような段階でBBCのインタビューに応じていて、「ええええー何であれで生きてるの」という驚きを誘ったらしい(←当時中学生の年齢だった労働党支持者の英国人から聞いた話。家族が「やっぱりヒトじゃなくて鉄だったか not human, but iron」と言っていたそうだ。口が悪い)。

ちなみに、後々の展開ということで考えれば、この事件で一番重要なのはIRAの犯行声明。"Today we were unlucky, but remember we only have to be lucky once. You will have to be lucky always." 何度読んでもこれはこわい。

  ↓
・ブライトン爆弾事件直後に演説をしたサッチャーを前提として、「要するにイギリス人は、不動心というか、どんな事態になっても“いつもの気分”を失わない国民なのだ」と展開。
……どこからツッコミ入れようか……えと、いつからサッチャーが「イギリス人」全体の心理を代表するようになったんでしょうか。「安倍辞任」とか「福田辞任」で「日本人の国民性」を語るみたいな粗雑なことをされても唐沢さんは動じないのかもしれないけど。「どんな事態になっても“いつもの気分”を失わないことが美徳とされる」という書き方なら問題ないのに。って書いたらパクられるか? (^^;)
  ↓
・「頑固なイギリス人」は、「ヤバン人」【原文ママ】のテロごときで自分の習慣を変えたりはしないのだ。
……もう疲れたのでツッコミをサボります。皆さん勝手にツッコミ入れてください。「イギリス人は頑固だ」っていうことを言うために、「ヤバン人」のテロを持ち出すのか、と呆れるばかりで、私は完全に無力化されました。ああ。すごいリーサルだわ、この文。
  ↓
・しかし日本では、地下鉄サリン事件の翌日に地下鉄がガラガラだった。動揺しすぎである。イギリスとはえらい違いである(という主旨で展開)。
ええと……デジャヴー……It's the Mind...でーでーでーでーじゃ、ぶー
  ↓
・「このイギリス流の頑固さを証明するのが、食事のまずさだ」。【原文ママですよ!】
パトラッシュ、なんだかとっても眠いんだ……あまりに華麗なトンデモ展開に、僕は疲れたよ。大丈夫、食事に「ありがとう」と書いた紙を貼っておけばおいしくなるよ。
  ↓
・フランスのシラクがイギリスについて、「食事のまずい国は信用できない」と述べたが、あまり批判されなかった。「すべての国が……イギリスの食事はまずい、と心の中で思っていたから」、シラクの失礼な発言が批判されなかったのだろう。
まず、シラクがあの「失礼な発言」で「あまり批判されなかった」というのがウソで、UKの某右翼レッドトップが歯をむき出して怒ってました……と思ったらこの記述、あまりにグダグダすぎてツッコミさえ入れられない。だってここでいう「批判」の主体って「イギリス以外の国」なんだもん。でもその前の部分からのつながりでは「イギリス」が主語になってるんだもん、論理的には。ダメな議論の典型じゃん。

で、「イギリスはメシが不味い」も、「イギリス人は頑固」も、今さら発見したかのように言うようなことかよ。どちらもステレオタイプ・ジョークの定番ネタで、「ドイツ人は几帳面」とか「イタリア男は女好きでマザコン」と同じくらいに手垢のつきまくったものです。

  ↓
・実際にイギリスのメシはまずい。(以下、ごくごく狭い範囲の体験での主観オンリーの具体例の羅列。それは別に文句はつけません。ツッコミも入れません。こういうのは名調子で書かれてればおもしろいんですが、この文章は読むのがつらいです。個人の好みですか、そうですか。)
  ↓
・こんなひどい料理でイギリス人は満足しているのはなぜなのかと思うが、「イギリス人もやはり、自分の国の料理はまずいと思っているらしい」。
だからそれはあまりに定番で、素で、もはや誰も笑わないようなネタですが、何か。
  ↓
・しかし料理を美味くしようとはしないのがイギリス人だ。彼らは頑固で保守的なのだ。
だから言ったでしょ、僕はもう疲れたって。こういうベタベタな内容の文でも、文にリズムがあり、書き手に「ユーモアのセンス」があればおもしろいんだけどね……アイルランド人なみの「ユーモアのセンス」は要求しないからさ……。
  ↓
・イギリスはめったに陽がささない。青果はスペインなどからの輸入品でかなり値段が高い
いずれも明らかなウソね。ちなみに、レストランでサラダが異様な値段だったりするのはVATのせい。あと、英国での「スペイン産」や「ギリシャ産」は、日本でいうと感覚的には「タイ産」とか「中国産」。

それと、論理展開の点ですけど、この話は「現代」の話ですよね。でも次にいきなり過去に飛ぶ。

  ↓
・「16世紀に南米からジャガイモが輸入されてくるまでは、すさまじい飢饉がしょっちゅう英国全土を襲っていた」。
これは大袈裟だけど、イングランドで何度か深刻な飢饉があったのは本当。14世紀のこれとか。】。
  ↓
・しかしジャガイモが定着するには200年も【原文ママ】かかった。見たこともないものを食べるには彼らはあまりにも頑固だったのだ。
部分的には本当。でも文章が冗長でおもしろくないので単に退屈。
  ↓
・ジャガイモは普及するまでには時間がかかったが、普及したらいきなり国民食になった。フィッシュ&チップスなど。「(そういうこと)なら、早く受け入れればよいのに、と思ううちはまだイギリスのことを分かったとはいえない」。
意味不明。ってかあなた、「イギリスのこと」をわかってるんですかと。スコットランドとアイルランドの区別もつかないのに? ハギスはスコットランドの名物ですよ、アイルランドじゃなくて。ギネスはアイルランドのビールですよ、イングランドじゃなくて。ショーン・コネリーはスコットランド民族主義の宣伝部長ですよ、アイリッシュ・リパブリカニズムじゃなくて。アイリッシュ・リパブリカニズムの宣伝部長は、政治家ですけど、ジェリー・アダムズっていうおっさんです。同僚のジェリー・ケリーは今は政治家ですけど70年代は爆弾犯で服役してました。劉とした美男で女性に人気だそうです(←鈴木先生の本にあったどうでもいい小ネタ)。でも議場での様子を中継で見てると、ガチで怖いです。どこの親分さんですかという様子です。マーティン・マクギネスはお母さんと同じ顔をしています……(壊れた。)
  ↓
【上からの論理的つながり皆無で】
・「ジャガイモもまた、爆弾騒ぎと隣り合わせなのである」。2006年5月に世界大戦時に戦場となった欧州大陸から輸入されたジャガイモに爆弾の部品が混入していて、加工工場から人々が退避する騒ぎになった。
日本でもわりと普通に「不発弾処理」ってありますよね……先日も多摩のほうで大規模なのがありましたが、あんなに大掛かりなものじゃなくてもあるよね。で、この「ジャガイモに榴弾事件」は、たまたま執筆中に入ってきた「おいしいネタ」だったのかもしれないけど、誰かが意図的にジャガイモに爆弾を混入させたとかいう話でもないのだから、このコラムで使えるネタじゃないでしょ、どう考えても。「爆弾」ってだけで「テロ」とは関係ないし。普通、そこでここでのネタとしては使えないなって判断しますよね。
  ↓
・こんな物騒なことになっても、この会社の製品の不買運動や工場の従業員のストが起こることはない。騒ぎの翌日から普通に仕事が行なわれている。イギリス人の頑固さたるやおそるべし、さすがイギリス人だ。(という主旨の展開)
えーっと……そんな理由でストしてた時期もあったのかもしれませんけど……私は労働運動には詳しくないのでわかりませんが、「従業員の安全が第一だ」っつってね……でも「輸入のイモに不発弾が紛れ込んでいた」を理由とするストってのは、単に労働運動上の戦術として、ありえないと思うけど。イギリスでもフランスでもベルギーでも。ただしそれが爆発して労働者が怪我したりしたらストに出る可能性は高いでしょうね。
  ↓
・「今度ロンドンでフィッシュ・アンド・チップスを食べる時には、砲弾のかけらが歯に当たって欠けたりしないように、用心をした方が良いだろう」。
失礼な。「英国流ユーモア」を真似しようとして見事に履き違えて単に失礼になっているだけじゃないか、これは。

それと、「ポテトフライ工場」っていうロイター記事の日本語を鵜呑みにしたせいで、その工場で揚げる工程まで済ませてると思ってんのかな。だとしたら、本人がチッピーで芋買ったことない、ってことになるけど。あと、これは軍事筋に訊かないとわかんないんだけど(訊いてもわかんないか)、イモ畑に埋まってて、収穫のときにイモに紛れ込んじゃうような「砲弾のかけら」って、「イモ食ってたら歯に当たって歯が欠けた」とかいうサイズのものなんですかね。そんなサイズのって、洗浄の過程でどっか流されると思うんですけど。

  ↓
・「とにかく、こういう国で美食が広まるわけがない」。
ジェイミー・オリヴァーとかゴードン・ラムジーとか知らないんですかね。あとテレンス・コンランとか……。

でも、こういう奴に限って「階級社会がうんちゃら」とかいうことで知ったかぶっこいていそう。ぶっこく前にブレイディみかこさんのブログを読んだ方がいいよ! でもパクるなよ!

  ↓
・「まずい食事に耐えられる国民であればこそ、ナチスの空爆にも、今回のテロにも平然と耐えられたのである」。メシが美味い国は弱い。先の大戦ではイタリアは弱かった。フランスもテロの脅威に耐えられないから、イラクに軍を送らなかったのだろう。

不快!不快!不快! 気の利いたことを言っているつもりだろうが、バカにするにもほどがある。「メシが美味い/不味い」は関係ない。

フランスがなぜイラク戦争に反対したのかっていうと、「弱いから」じゃないでしょ。(確かにフランスは弱かったっすよ、ええ、お茶飲んでたらマジノ線破られて総崩れ、みたいにね。でもさ、アルジェリアとかもあるじゃん。てかさ、この人、フランスについて何を知ってるの? アルジェリアとかわかってんのかな)。

私は2003年2月14日の国連安保理の生中継をテレビで見ていて、ド・ヴィルパン外相の演説を聞いて一縷の希望をフランスに託し、そして3月20日に爆撃を受けるバグダードを見て泣いたクチですが、ド・ヴィルパンははっきり言ってましたよ、「戦争がより安全で、正しく、安定した世界に我々を導くのだと主張することも出来ない。というのは、戦争は常に失敗した者の制裁だからだ」、「これは、戦争と占領、そしてそれに伴う残虐行為を知っている、地雷のような大陸であるヨーロッパの古い国・フランスからのメッセージだ」って。

ところで、「メシが美味い」イタリアはイラクに軍出してますよ。ナシリヤでしたよね、確か。病院やら学校やらを軍拠点にしてくれましたが。


スルーしたものについて、淡々と列挙:
■世界各国のニュースでその現場の状況がレポートされ、興奮したキャスターたちのアナウンスが響いている中で、
⇒どーでもいいんだけど、「アナウンス」するのは「アナウンサー」。「キャスター」のは、「コメント」かな。面倒だから単に「ことば」って書くけどね、私は。てか、それが「響いて」るのはテレビの前でしょ、「現場」じゃなくて。でも次に続く部分を読むと「現場」で「響いて」ることになってる。論理性皆無。

■当のイギリス人は、近くのパブで、いつも通りギネスのジョッキを傾けながらこう会話していたという。
⇒ロンドンでイギリス人が「いつも通りにギネス」……。ギネスは「イギリス人」が「いつも」飲むものというのは、ちょっと珍しいかなあ。だってアイルランドのビールだし!

■IRA(カトリック系武装派北アイルランド軍)
⇒「北アイルランド軍」て……北アイルランドはいつ独立国家になって軍隊を持ったんだ。という茶々はさておき、そのIRAを日本語で説明したい場合、「アイルランド共和軍」と言います。(1919年とか20年とからへんのIRAは「アイルランド共和国軍」。)辞書引けば書いてあると思うけど!

■このガイ・フォークスという人物は、やはりアイルランド出身のカトリック教徒で、
⇒Guy Fawkes (13 April 1570 – 31 January 1606): Born at High Petergate in York, Yorkshire, ...
http://en.wikipedia.org/wiki/Guy_Fawkes

Yorkshire has never been part of Ireland, NEVER!

■彼はまた伊達男として有名で、いわゆる“ナイス・ガイ”のガイというのは彼の名前から取られたといわれているくらいのハンサムだった。
⇒イングランドおよび英国で「ハンサム」の代名詞になってる人には、例えばボー・ブランメルとか、ロード・バイロンとかいろいろいるわけですが、ガイ・フォークス???

■ガイというのは彼の名前から取られたといわれている
⇒「男」の意味のguyの語源:
http://www.etymonline.com/index.php?term=guy
"fellow," 1847, originally Amer.Eng.; earlier (1836) "grotesquely or poorly dressed person," originally (1806) "effigy of Guy Fawkes," ...

つまり、「不気味もしくはひどい身なりをした人」のことね、語源的には。てか、guyっていう単語の意味わかってるのかなあ。そもそも「ナイス・ガイ」は「ハンサム」じゃなくて「好青年」みたいな感じだし。(CM起用でいえば、キムタクじゃなくてくさなぎくん、っていうイメージ。)

※この後のIRAについての部分は前に書いたので今回はスルー。

■ヤバン人(多くのイギリス人はアラブ人をまっとうな人間と思っていない)
⇒いつの時代の話ですか。それと、2005年7月7日の事件は「アラブ人」じゃないですよ。「パキスタン系英国人」です。(PakistaniがArabじゃないことくらいは知ってるよね、誰でも。)

■テロごときで毎日、その駅近くのパブを利用するという自分の習慣を変えたりはしないのである。
⇒「何かあるときはある、ないときはない。何かを心配していたらきりがない」というどこにでもあるような心理(それも「集団」ではなく「個人」によるようなもの)を、強引に「イギリス的な頑固さ」に結び付けているだけで、まったく事実無根。「地下鉄はこわいから自転車」とかいう流れがあったし、「リュックを背負ったアジア系の男」はむやみやたらと警戒されていた。(当時読んでいたロンドナーのブログに「恥ずかしいことだけど正直、怖いと思った」ということが書いてあった。それも複数。)

■イギリス人だって不安だろうが、彼らは自分の習慣を優先する国民なのだ。
⇒てかそのパブがボムられたんすか? そのパブの並びとか向かいの店がボムられたんすか? じゃなかったら関係ないっしょ。

てか、ロンドンでのテロの話がしたいなら、1999年4月のSOHOのネイルボム事件のこととか、復習してみるといいと思うよ! あれはイっちゃった白人至上主義者がやった事件だけどね。

■アイルランド料理のハギス
⇒wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
これを見てビスケットでむせました。こんなことを書けるライター、こんなのを通す編集部、どっちもまるで信用できません。

■ここまでひどい料理でイギリス人はなぜ満足しているのか、舌がバカなのかと聞いてみたら
⇒ぜひその質問に使った英語フレーズを教えていただきたい。私も相当クチは悪いけど、目の前にいる人に殴られる危険を冒さずにこう質問できるフレーズがあるのなら、知りたいので。

■インド料理店や中華料理店……はかつて自国が植民地にした時、腕の良いコックを拉致して連れてきたから味が良いのだ、と彼らは自慢する(ひどい自慢だね、しかし)
⇒「自慢」じゃねぇよ、「ジョーク」だよ。これがわかんなくて「イギリス」がわかったことにならないんじゃね?

■発見されたのは、「マッケイン」というカナダ資本の世界最大手のポテトフライ会社だったが、洗浄中のジャガイモに砲弾が混じっているのが発見され、労働者たちが一斉避難する騒ぎになった。
⇒よく読むとこの日本語のグダグダっぷりはすごいですね。ポテトフライの会社が発見されたの?

■まずい食事に耐えられる国民であればこそ、ナチスの空爆にも、今回のテロにも平然と耐えられたのである。
⇒そういえば、「英国が戦争に勝てたのは不味い食事でも平気だったからだ」というのはギャグで聞いたことあるなあ……「フランスは美味い食事にうつつを抜かしているスキにドイツに占領された」だったか、「フランスは美味い食事がないことで議論しているスキに(以下略」とかいうので。「食事が質素でも平気」なのが「強さ」になったというのは、ある程度は当たってると思います、英国の戦時中のポスターとか文献とか少し見た限りでは。何しろあのマーマイトは戦時中の代用スープだったそうだし。

でも「テロ」は食糧の窮乏とかには関係しないよ。

■国家の強さは食事のまずしさに比例する、といった人がいたが、
⇒ちょっとおもしろいので出典希望。

以上。

検証blogさんのエントリのコメント欄にもいろいろとツッコミが集まっていますので、是非ご覧ください。藤岡真さんのコメントによると、別の文章で「イギリスの右翼――いるのか?――の人に言い訳すると」というくだりもあるそうです。まったくありえません。極右については確かにフランスのルペン、オーストリアのハイダー(先日事故死しましたが)、ロシアのジリノフスキーほどには有名な名前はないかもしれないけど、あんたがさんざん書いてる「サッチャー」がまさに「右翼」だよ、左翼から言わせればだけど! ていうか、「連合 union」と「王室」の関係なんていうひどく基本的なことも把握していなさそうだなあ。(把握してなくても、調べられるだけの知識とスキルと、「調べること」の必要性についての自覚があればいいんですけどね。)

自分で投稿したコメントの写し@2008/10/28 17:12:
とりあえず、「ハギス」で、おやつのビスケットが喉に詰まってむせました。やっぱりアイルランドとスコットランドの区別ができてないんですね。この際だから、ウェールズとコーンウォールもこのカオスに投入したいです。

ガイ・フォークスについての認識もひどいですね。11月5日の花火は「プロットが阻止されたこと」を記念するものです。ガイ・フォークスを「ヒーロー」として讃えるお祭りではありません。あれは彼の人形を火あぶりにして喜ぶ祭りです。

マウントバッテン卿について「彼はゲイだった」という説は実在します。私はよく知りませんが、「Mountbatten gay」で検索すればそういう説がいくつか出てきます。これらの「説」を「事実」としてとらえていいかどうかは非常に微妙だと思いますが。

「テロに慣れている」という話は2005年7月7日直後にありました。事実として、1990年代はロンドン地下鉄では毎日必ずbomb scareがありました(これは私が自分で体験しています)。IRAは地下鉄をターゲットにしていました。駅構内での銃撃戦で地下鉄職員が巻き添えで死んだこともあります。IRAは1994年に停戦し爆弾作戦も終了しましたが、1996年に停戦を破棄してまたロンドンで暴れましたから、最終的にいろいろおさまったのは1998年だと思います。(私もその時期に在英だったわけではないので体験としてはわかりませんが。)たった10年前のことです。2005年の7月は「また始まったのか」という感じに見えました。ただいずれにしても「慣れ」の定義の問題ですね。

私が知る範囲では、語られていた「慣れ」は、決して個人個人の話ではなく、街全体の空気というか雰囲気の話で相対的なものでした。9-11直後の米国に見られた熱に浮かされたような状況は英国では起きていない、それはなぜなのか、という文脈で。具体的には、米国でそういう疑問が出るのを「IRAの爆弾」にさらされてきたイングランドは冷笑的に見ていた、というような。(IRAの資金がどこから来ていたのかを考えれば、まあ、「冷笑」は当然の反応と言えると私は思います。事件当時に私のブログにもそういうことは書きました。)

しかしこれを「国民性」で片付けるのは、変です。IRAが暴れたから「打たれ強い」のだ、という主張は、それがジョークを意図しているか、あるいは論理的に構築されている場合には「そういう考え方もあるなあ」と思いますが、唐沢さんの文章は単に粗雑なだけです。

ボビー・サンズの映画については、先週の上映を見てきたあとに書いたものがありますのでよろしければお読みください。
http://nofrills.seesaa.net/article/108447691.html
※「ネタバレ」全開ですのでご注意ください。見る機会があれば是非。すごい映画です。

唐沢さんの書かれていることの問題点は、ここのコメント欄でのnyannさんのご指摘の通りです。サンズは議会に出席できないからハンストしたんじゃないです。ってことをあんまり書くとまるで自分がIRAサポのような気分になるのでここらへんで切り上げます。長文失礼しました。




http://d.hatena.ne.jp/kensyouhan/20081027/1225107478#c
上記URLに投稿した私のコメントの写し。ほかのコメント投稿者さんの書いておられる内容についてのレスみたいなものも含まれていますので、私の投稿だけでは文脈がわからないと思いますが。

2008/10/29 14:21
爆発があった時間と、誰かが飲んでる時間がずれているのは当然ですよね。爆破された場所で飲んでるわけじゃないですし、爆発があったそのときに取材しているわけではないですから。私も、当日か翌日か翌々日くらいに東京で、)。「事件の余波」、「市民の反応」をまとめたものだったと思いますが、テレビかネットのニュースの写真か何かで、「パブで飲んでる人」の映像を見た記憶はあります(あまりに「普通の光景」でしかなく、特に気に留めなかったので詳細は忘れました)。

それと、2005年7月7日についてのウィキペディアは、英語版も日本語版も、一時ニュース速報化してカオスになってしまい、「情報が錯綜しています」という状態で止まってしまっているような感じです。(これこそ、何とかしないといけないですね。)例えば、日本語版の「逮捕」の項にある「2007年3月22日に逮捕された男性3人」は、その後起訴されていますが、今年の8月初めに陪審が結論に達さないという形になっています(下記参照)。そういったことですらウィキペディアには反映されていません。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/7537552.stm

それから、確かに一時期「犯人は運び屋として利用されたにすぎない」という話になっていた記憶は私にもありますが、その後報じられたことから、7月7日に爆破を行なった4人がただの「運び屋」だったと考えることは無理じゃないかと思っています。爆発物のエキスパートでなかったことは確かであるかもしれませんが。
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/uk/crime/article1845237.ece

そんなことより、問題は、7月7日、21日(未遂)、どちらの事件も「アラブ人」ではないということですね。国籍でいえば英国人です。ルーツでいえば多くがパキスタン系です。(7日の4人は、ひとりはルーツはジャマイカンで改宗した人ですが、3人はパキスタン系ムスリムです。パキスタン系は「アラブ人」ではありませんし、彼らをそう呼ぶ習慣は英国にはありません。パキスタン系の人は一般的にはAsianと呼ばれます。)

いずれにせよ、ハギスがアイルランド料理だと書いているようなものは、それだけで信頼性はないと判断するのが妥当です。一箇所なら「うっかりミス」かもしれませんが、同じエッセイの中で、「ショーン・コネリーはIRAサポ」とセットですからね、単にアイルランドとスコットランドの区別すらついていないのでしょう。しかも「カトリックといえばアイルランド」だと思っているから、ガイ・フォークスについても適当なことを書いている。それでいて自分のなかの「イメージ」の「英国」を膨らませるために「テロ」を引っ張り出してきている。このような失礼なこともできちゃうんだな、と思うだけです。

上記の件で「アラブ人」についての部分は、kensyouhanさんが本文に追記してくださいました。

2008/10/29 18:26
追記ありがとうございます。「ハギス」の衝撃がすごすぎて、シリアスなツッコミどころにしばらく気付かなかった……。自分のコメントへのツッコミなのですが、7月21日の未遂事件に関連した人たちの中には「アラブ人」もいたかもしれません。関係者の数が多すぎて全然把握しきれていないのですが (^^;)、北アフリカやヨルダンにルーツがある人もいたかもしれません。(何人[なんにん]が逮捕され、何人が起訴され、何人が有罪になっているのか、そしてそれらの人々はどういうバックグラウンドなのか、といったことから調べないとこのことについては書けないのですが。)

> ロンドン同時爆破テロについて「屁のようなテロ」
……えっと、実際にロンドンにいる人が「あんなもん、屁みたいなもんだ」と言って自分が意気消沈しないようにしているということはあるかもしれませんが、そうではない人間が他者の言葉として使うべき言葉とは思えません(「伝聞」ならまだしも)。外部の人間が2005年7月7日についてそう言うのは、あの事件についてまともに調べていないということです。

> つまり、日本人をバカにしようとしてイギリスを持ち上げたわけです。
なるほど。英国についてのそういう文章は1990年代に流行ったことがあります。「イギリスはすばらしい」と言うためだけに、例えば「ロンドンの地下鉄」を誉めるのですが、誉めるのは別に構わないにせよ、具体例がいちいち事実無根というか、地下鉄を利用したことがある人が書けるような内容ではありませんでした。

そういうのも、何か根拠があっての主張ならそれはそれなんですが、唐沢さんの場合は、スコットランドとアイルランドの区別すらついていない(区別の必要性にさえ思い至っていない)ということですね。両者の違いは「おもしろい雑学」の宝庫なんだけどな……。

書店か図書館に『社会派くんがゆく!維新編』があれば、一応、中を見てみますね。確認のために。

で、このあと、『社会派くんがゆく』はあまりに中身がすごいので、読んでもむかつくだけですよと心配し、「屁のようなテロ」は唐沢さんではなく村崎さんの発言だと解説してくださる投稿あり。

いずれにせよ、元の文を見もせずに考えをめぐらすと「アイルランド料理のハギス」への道が開けてしまうので、「たまたま見かけたら中を見てみる本」として頭の片隅に置いておく、ということにします。

※この記事は

2008年10月29日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 01:21 | Comment(10) | TrackBack(0) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
唐沢先生はチャールズ皇太子をイギリスの「君主」だと思っているような方ですから、歴史、民族、文化の認識が変なのは推して知るべしでしょうね。
Posted by 藤岡真 at 2008年10月29日 08:36
藤岡さん、コメントをありがとうございます。
結局のところ、「どうだ、俺って物知りだろう」と言っているだけなのですが、その「物知り」の内容がめちゃくちゃなんですよね。ありがちなことですが、スコットランドとアイルランドの区別がついていないのは、文筆家としては、あまりにもフリーダムすぎます。(^^;)

急いで書いていてうっかり間違えることはありますが(私も、架空の例ですが、「オランダ」って書いてるつもりだったのに「ドイツの名選手、ヨハン・クライフ」みたいなことをやらかしてゲラで絶叫したことがあります)、明らかにそうではない。

> チャールズ皇太子をイギリスの「君主」だと思っている
あれには参りました。「国家元首」とは何かということを考えたことも調べたこともないのでしょうね。
Posted by nofrills at 2008年10月29日 14:31
検証blogの記事は読んで「コネリィが?けしからん!」と思っていたら、nofrillsさんが熱烈検証とはありがたいです。うほー、ハギスのくだりはすごい。ショートブレッドが喉に詰まって咳き込んだら腰痛が悪化しました。

> 「やっぱりヒトじゃなくて鉄だったか not human, but iron」

↑これステキすぎます(笑) ぜひどこかで使いたいと思います。
Posted by britishstudies at 2008年10月29日 19:11
熱烈歓迎、やっぱり「メシが不味い」と書いておくと……ニヤリ。

> ショートブレッドが喉に詰まって咳き込んだら腰痛が悪化しました。

not iron, but human ... 行列のできる法律相談所に「訴えてやる!」と叫びながら持ち込みたいくらいの被害です。お大事にどうぞ。
Posted by nofrills at 2008年10月29日 20:48
「検証blog」さんに次のエントリがアップされています。
http://d.hatena.ne.jp/kensyouhan/20081030/1225367709

1996年のダンブレーン銃乱射事件についてのものですが、
Among those to whom he complained were local MP Michael Forsyth and the Queen.
に基づいて書かれたと判断される部分の唐沢さんのミスにより、あなたが食べているものが喉に詰まったり、あなたの腰痛が悪化したりする可能性があります。

(こういうのをつぶすために執筆者自身がゲラを見るという工程が存在するのだと私は思ってましたが。)
Posted by nofrills at 2008年10月31日 15:33
ダンブレーン事件について、「検証Blog」さんにコメントしたものの写し:

http://d.hatena.ne.jp/kensyouhan/20081030/1225367709#c

2008/10/31 15:13
英国について薀蓄を傾けたいのならForsythという人名で「フォーサイス」が出てこないのもどうかと思いますが、それは罪ではありません。単に調べていないだけですから。MP, full metal jacket, hollow pointなどは明らかに知らないし、調べてもいませんね。サイトを調べるだけじゃなくて辞書を引こう、という教訓として自分も気をつけます。

花の名前になったinnocenceは、殺された子供たちや先生がinnocent victimsだったということが前提で、「無垢」であり「無辜」でもあり、ぴったりくる日本語をひとつだけ挙げるにはあれこれ考えなければなりませんが、私なら「潔白」は真っ先に候補から外します。

> Mi6(ジェームズ・ボンドもいたイギリスの情報局)
ジェームズ・ボンドは架空の人物だということは同じ本の中で前提されているのでしょうか。それならよいのですが、でなければやや不注意な記述かもしれませんね。また、IRAやMI6が事件の背後にいたなどという説は、「インターネットで」というより「インターネットのごく限られた範囲のみで」見られるものです。普通に事件について調べていて見つかるものではないように思います。実行犯の名前とMI6で検索すれば、どういうところで「語られて」いるか、わかります。(このページを読んで疑問に感じられる方がいらっしゃるでしょうから、念のためポインタだけ。)

この事件で最も重要なのは、本文でリンクされている杉本優さんのサイトにある通り、その役目には適していないと判断されてしかるべき人物がチェックされなかったというシステムの不備があったことで、この事件を特に「英国的」というならその点(システムはあるが機能が不十分であるという点)ではないかと個人的には思います。

2008/10/31 15:28
自分ツッコミです。上で「その役目には適していないと判断されてしかるべき人物が」と書いていますが、「役目」は言葉のあやです。この場合は「銃所持ライセンス」なので、何か特定の「役目」というわけではないですね。すみません。
Posted by nofrills at 2008年11月01日 22:25
※上の続き:

2008/11/01 22:16
ところで、Knockin' on Heaven's Doorのところ、気になってはいたのですが、やっと、Wikipediaと見比べてみました。結論としては、ウィキペディアを参照して書いたのなら、誤訳です。

原文直訳:ボブ・ディランの同意を得て、ダンブレーンのテッド・クリストファーという名のミュージシャンが、ダンブレーン小学校の子供たちとその教師を追悼するため、Knockin' on Heaven's Doorに新しい詞を書いた。犠牲者の兄弟姉妹をコーラスに、マーク・ノップラーをギターにしたこの曲の新版の録音は、1996年12月9日にUKでリリースされ、(チャートの)ナンバーワンになった。

この記述から読み取れるのは、ボブ・ディランは「あの曲を使いたいのですが」というクリストファーに許可を与えたが、ディラン自身は絡んでいないということですよね。ウィキペディア以外で「ディランが動いた」という説明があるのかもしれませんが、本当にウィキペディアに基づいているとしたら、「ディランがクリストファーに演奏させた」と書くのは、英語が読めてないということです。

あと、「ちなみにこの事件の後、イギリスでは小児同性愛者たちに対する嫌悪感が国民に蔓延し、小児性愛者(ペドファイル)と言葉が似ている小児科医者(ペディアトリスト)が焼き打ちにあって引っ越さざるを得なくなった、という事件まであったそうである」の部分、「小児同性愛」と「小児性愛」を都合よく使い分けていますね。ただし、小児科医の家が襲撃されるというばかばかしい事件は実際にあったそうです(ちゃんとは調べていませんが、数件、そのような事件があったとの一般人の書き込みは確認しました)。

それから、ダンブレーン事件のことを根拠にして、諸外国は「事件を記録し、記憶に留め、経験をふまえた上で再発防止に取り組んでいる」と述べる根拠としているようですが、ダンブレーン事件について「背後にMI6が」とかいった陰謀論がもっともらしく語られていた理由をまったく踏まえておられないご様子ですね。つまり証拠の開示は当面行なわないとの決定があったから陰謀論がまことしやかに囁かれたのですが。(英語版のウィキペディアにも簡単に書かれていますが、事実かどうかはウィキペディアからリンクされているソースでご確認ください。)

あと、どうでもいいような細かい話になりますけど、『ホーム&アウェイ』は連続ドラマ (soap opera) で、「コメディ」とは扱わないと思います。MPはMilitary Policeだと思ったのだろうと私も思いました。となると、Military Policeの意味もよくわかってないということになるのですが……あまりに細かいところを言うのもあまり気分がよくないのでこんなところで。

追記:
Knockin' on Heaven's Doorについて、本当に「海外のサイトも調べて書いている」のなら、もちろん、下記はお読みだろうと思いますが、それでもなお「ディランがテッド・クリストファーに録音させた」のだと思っているのなら、英語の勉強をやり直した方がいいと思います。
http://www.bannockburnband.co.uk/dunblane.htm

ちなみに、マーク・ノップラーはスコットランド人です。書かなくても誰でも知ってるか。

あと、これもね……「海外のサイト」でここを見ていないとはちょっと考えられない、BBCの当日の報道。
http://news.bbc.co.uk/onthisday/hi/dates/stories/march/13/newsid_2543000/2543277.stm

これを見れば、Michael Forsyth MPが当時どういう職にあったか、一目瞭然なのですが (The Scottish Secretary, Michael Forsyth, who represents Dunblane)、唐沢さんは "MP" がわからなくて、フォーサイスのことを「警官」だと思っているという体たらく。海外のサイトも調べているだなんて、ウソも休み休み言いなさいよ、みっともない。「フォーサイス」が読めないのくらいはどうってことないけど。
Posted by nofrills at 2008年11月01日 22:28
日本では日付変わっちゃったけど、今日がガイ・フォークス火あぶり祭りの日です。

関連して、BBCのMagazineにこんな記事が出ています。「雑学」としてはとてもおもしろいと思います。
Free the Gunpowder Plot One
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/magazine/7688786.stm
Posted by nofrills at 2008年11月06日 00:27
さっき、日テレの『世界まるみえなんとか』という番組(ビートたけしと楠田えりこと所ジョージの)で、BBCのYou Are Being Watchedの抜粋を紹介してた部分で、1999年4月のSOHOネイルボム事件(を含む連続爆弾テロ事件)が出てきましたね。爆発直後の現場映像に続き、CCTVでスポットされた「容疑者」が、警察はノーマークで身元が把握できなかったのだが、メディアで写真を流したら「テレビの力」で捕まりました、裁判で有罪になりました、という部分。でもコープランド(犯人)のバックグラウンドに言及した部分は、日本で放映された範囲では、なかった。

また、紹介されていた部分は「監視カメラはこんなに役立ってます」みたいな内容でした。(番組に対する批判的批評は下記に)
http://www.mediahell.org/BBCcrimeporn.htm

「イギリスってハイテクだなあ」という印象を与えるかもしれないですね。
Posted by nofrills at 2008年11月10日 21:09
「テロに慣れている」という話について、自分のログを見ていてエントリを見つけたのでメモ。

2007年07月06日
セントラル・ラインで脱線事故&愛国心でテロを撃退しよう運動?
http://nofrills.seesaa.net/article/46869914.html

[quote]
なお、Annie Moleさんの職場には米国から転勤してきたばかりの人がいて、その人はロンドンではみな静かなことに驚いているとのこと。
[/quote]
Posted by nofrills at 2008年12月04日 08:44

この記事へのトラックバック

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

……全文を読む
▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼















×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。