「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2008年10月11日

アニメ『シンプソンズ』の新シリーズがすごいことになっていた

もうね、お茶ふくどころじゃない。こんな時間だけどおなかすいたってんでビスケット食べてたりすると、気道に入って大変なことになりますよ、というくらい。

アメリカで、シンプソンズの新シリーズが始まったとのことなのだけど、これの紹介文が……BBC News Northern Irelandのサイトから、BBC NIで "Politics Show" という番組を担当しているジム・フィッツパトリックの記事:

Homer embarks on political Odyssey
By Jim Fitzpatrick
BBC NI Politics Show
Page last updated at 16:18 GMT, Friday, 10 October 2008 17:18 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/7664314.stm

『シンプソンズ』では、数年前に、リアム・ニーソン(北アイルランド人)が声優としてゲスト出演したとき(アイリッシュのプリーストの役で。『プルートで朝食を』かよ)に、「カトリック最強!ボストンもある、南米もある、そしてアイルランドの大部分(よい部分)もある!」と絶叫して、ビール飲みながらカウチポテトってた人たちがカトリックへの改宗を真剣に考えたらしいけど(フィッツパトリックの記事にそう書いてある。笑)、今回のはネタが「カトリック」というかあの……

Last month the show began its 20th season on US television with an episode featuring St Patrick's Day celebrations in Springfield that turn nasty when the Irish parade encounters an Orange march.

つまり、「先月、第20シーズンが始まった。その初回は、スプリングフィールドでの聖パトリックの日のお祝いが、ひどいことになる、という内容だった。アイリッシュのパレードがオレンジ・マーチと対決してしまうのだ」という話。

自分で日本語にしてて、日本語にしたら全然おもしろくない(おおかたは私の言語運用能力のせいだが)のに愕然とするけれど、ここでまずお茶ふき。

事態が悪化するなか、リサ・シンプソンが "Tura Lura" (アイリッシュの子守唄)を歌って沈静化をはかるも、一瞬だけしか効果がなく、街路は両派の全面対決、そして「緑とオレンジ」のシンボリズム。ここらまで読むと涙が出てくる。

そして:
Earlier, as the celebrations get underway with a troop of Riverdancers, Bart asks: "Where's the IRA when you need them?"

……げふんげふんげほげほげほ。

ジム・フィッツパトリックは、「遠くから、ここ(=北アイルランド)がどう見られているのか、ということでもあるが (It says something about how this place is viewed from afar.)」と述べ、さらに、「このストーリーは、アイルランドでの『戦争』は終わったかもしれないが、あちら(=北米)ではまだ互いに憎しみあっている、ということを言いたいのだ」と続けている。(ということは、今回のシリーズでは、シンプソン一家が住んでいるスプリングフィールドには、オレンジ・マーチもあれば聖パトリックのお祝いもあるということで、マサチューセッツだろう。と適当なことを書いてみる。)

うん。選挙前だし。

バラク・オバマは自身のルーツがアイルランドにもあることを強調し、また民主党らしく「アイリッシュ・アメリカンのサポート」を磐石のものとすべく動いている――「パット・フィヌケン事件のインクワイアリの実現」、とか――。ジョン・マケインは自身が「アルスターマン」だということを数ヶ月前にやたらと強調していたのだが、そこからいろいろと、なんかすごいことになってるみたいだし。これとか(議論の基礎がぐだぐだなので議論になってはいないが、アメリカでのアカデミックではないところでのものの見方というか語られ方のサンプルとしてはなかなかおもしろい)、これとか……。

『シンプソンズ』は決して政治的ななんちゃらではないけれど、視聴者が時事・政治的な状況を思い浮かべて笑うことができるような作りだし。

ちなみに、エピソードのタイトルはSex, Pies and Idiot Scrapesです。

ジム・フィッツパトリックの記事に戻ります。

『シンプソンズ』について書いた部分は導入で(そうなのか、みたいな)、その下が本論。

It's an interesting image and in politics image is everything and the American audience is crucial.

これは興味深いイメージであり、政治においてはイメージこそがすべてであり、アメリカ人の観客が決定的である。

この、ホップ・ステップ・ジャンプ的な華麗なレトリックは、「お話はここから」の指標。でこの先は、というと:
Gerry Adams is just back from the States. Ever since Bill Clinton gave him a visa, he's hardly been out of the place and it's not just in pursuit of frequent flyer miles - although he must surely now have enough to treat the whole assembly team to a pre-Christmas shopping weekend in New York.

ジェリー・アダムズはアメリカに行っていたのか(8日だっけな、マーティン・マクギネスのお母さんの葬儀には参列していたそうだが)。

もうこの人が渡米したからっていちいち報道されることがない(米国の「警戒リスト」のせいで飛行機搭乗拒否になったことが報道されたのは、いつだっけか)、というのは感慨深いものがあるけれど、フィッツパトリックが「ほとんどアメリカにいる (hardly been out of the place)」とまで書く(誇張はあるにせよ)ほどアメリカにいるのはなぜか、というのがね。これの後続部分:
The reason Gerry Adams, and others, spend a disproportionate amount of time in the US, is to sell their message to an audience with influence and money.

つまり、「アダムズらがあまりに多くの時間をUSで過ごしているのは、影響力があり金もある人々に対し、自分たちのメッセージを売るためである」。

言葉の意味はわかるけれど、それが意味するところが、ちょっとわかりづらいっすね。シン・フェインは何をしたいんだろう。むろん、「外圧」的に米国に頼るという方策はあるのだけれど、それは英国政府を動かすときの手段だし、今は英国政府がどうたらという局面ではない。パット・フィヌケン事件の真相究明にしても、それ自体が目的というわけでも……なくはないのか。あの事件の核心は「ロイヤリスト武装勢力と警察がずぶずぶの関係にあったこと」だから。(以下、憶測を省略。フィヌケン事件を「掘り返す」ことで何が出てくるのか……。)

で、今のシン・フェインのメッセージは、フィッツパトリックも書いているけれど、「ストーモントが空転しているのはDUPのせいだ、DUPは何が何でもわれわれの参加を止めたいのだ」ということで、対するDUPは「シン・フェインが出てこないから空転しているのだ」ということを言い続けている。そして、そろそろ互いに言うことがなくなってきているのに、なぜかどんどんエスカレートして、「いつものお約束」の領域を超えて、ちょっと危険なところ(「それを言っちゃぁおしめぇよぉ」的な)に入ってきてるんではないかという気がするのだけど。というより、11日付のベルテレ記事などを見る限り、小学生のケンカに似てる。
http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/politics/robinsonrsquos-attack-on-lsquosadrsquo-adams-13999845.html
DUP leader Peter Robinson hit back at claims that elements of his party were opposed to sharing power with Catholics by branding Mr Adams a "sad spectacle".

Mr Robinson rejected the republican claims of bigotry in his party and said the Sinn Fein leader's comments should be treated with "pity rather than scorn".

"What a sad spectacle Gerry Adams has become," he said.

# どっちもsadだ。

……というお話の詳細は、日曜日の "The Politics Show" でわかるかもしれません。

ジム・フィッツパトリック記事には、「追伸」があって、これも、さっきビスケットでむせてひりひりしている喉を優しくいたわれる程度にお茶ふける。(イミフメイ)
PS - In these troubled times, a book title catches my eye: "IRA Wealth. Revolutionary Strategies for Real Estate Investment". What's this?

『IRAの富――不動産投資の革命的戦略』。ぎゃはははははは。

この "IRA" は、the Irish Republican Armyではなく、下記のIRAです。でもこれ、笑わずには読めない(小見出しが、"Overview of IRA's" とか、"Tax Advantages of IRA's" とか、"Pitafalls of IRA's" とか)。漢字のない言語って不便よねー。

How IRAs Work -- Some Pros and Cons
http://banking.about.com/od/investments/a/ira.htm

※真面目な話、the Irish Republican Armyについて検索しているときに、下記のようなものが、何らかの語句の組み合わせでヒットしてしまうと、「???」となりますが、the Irish Republican Armyは常に "the IRA" なので、それで人力でフィルタかけてIndividual Retirement Accountについてのページは排除できます。あるいは "retirement" とか "investment" とかを除外して検索やり直し、で。

※この記事は

2008年10月11日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 23:56 | Comment(1) | TrackBack(0) | todays news from uk/northern ireland | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
D'oh! この回のシンプソンズについて、ベルテレさんが淡々と書いています。BBC NIのより「ストーリー紹介」に重点があります。

http://www.belfasttelegraph.co.uk/entertainment/film-tv/news/where-are-the-ira-when-you-need-them--bart-simpson-14006839.html

コメント欄に金言発見:
if you can't appreciate satire you should avoid any comedy show that references Northern Ireland. Shows like Give my Head Peace, Have I Got News For You, The Blame Game, Mock of the Week, etc.

……こんなに羅列しなくても、"Give my Head Peace" だけで充分だと思います。(番組名で検索すれば少しは出てくるはず。) "Little Britain" の性格の悪さが前面に出たキャラのコント(つまり車椅子のあれですが)を、北アイルランド紛争をネタに、集団でやってる感じです。ついていけません。
Posted by nofrills at 2008年10月18日 07:22

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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