「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2008年10月11日

英、金融危機に対処するため「対テロ法」を持ち出す→アイスランド激怒

※12日、追記あり。記事の一番下に。

どこのモンティ・パイソンですか、とツッコミを入れた0.01秒後に、ああ英国ですね、こりゃまた失礼、となる話。

このたびの金融危機でアイスランドが事実上のデフォルトの状態みたいになっている(→レイキャビク、人々の反応についてのBBC記事)。アイスランドにはnudge nugde, wink wink, say no moreなお金もたくさん流れ込んでいたのだそうだけれども(なのでそっちも大変)、英国の一般人のお金もたくさん流れ込んでいたそうで(詳しいことは私もよくわかりませんが、英国にアイスランドの銀行の支店があり、英国の個人の預金があったとのこと。さらに7月にはすでにLibDem上院議員とTory下院議員が与党労働党と政府にアイスランドは危ないと警告していたとか)、さらに、アイスランドといえばハムのオーナーがアイスランド国籍でアイスランドの銀行の株主で、ハムはめちゃくちゃ大変だとか、まあとりあえず、BBC Newsのサイトでこんなに「アイスランド」という単語を頻繁に見かけることはなかったぞ、というのが続いていたのですが、今日はお茶ふいた。

いつも非常に端的に、ポイントだけを読みやすい英文でまとめてくれるポール・レイノルズの記事:
Britain v Iceland: Fish now finance
By Paul Reynolds
World affairs correspondent, BBC News website
Page last updated at 11:26 GMT, Friday, 10 October 2008 12:26 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/politics/7662827.stm

いきなりタラ戦争の話……私もリアルタイムでは知りませんが、1950年代から70年代にかけて、英国とアイスランドは漁業権をめぐって紛争状態(「戦争状態」に非常に近かったとのことだけど)に陥ったことがある。英語でいうCod Wars (Cold Warのもじり) だ。

レイノルズはこの「漁業権をめぐる3度のほとんど意味のない戦争 (pointless ... little wars)」を導入部に置き、30年以上を経た現在、銀行預金をめぐって、再度「アイスランドとの関係」が英国にとって大きなものになっている、ということの説明に入る。両国首相が非常にきっつい言葉を応酬しているのだそうだ。

英国からアイスランドにきっつい言葉が行くのは、ゴードン・ブラウン(労働党党首)による英国民(英国の有権者)のための「パフォーマンス」(<和製英語の意味で)の側面もあるだろうし、こんなのはまあ、東アジアでもしょっちゅうあるし、BBC Newsなど見てれば「アメリカとイラン」とか、「イスラエルとイラン」とか、「ロシアと英国」とか、2000年ごろなら「パキスタンとインド」とか、いろいろあるので別に驚きはしない。

お茶ふいたのはこれだ。
The British Prime Minister, Gordon Brown, has publicly declared Icelandic actions to be "effectively illegal" and "unacceptable" and the Icelandic Prime Minister, Gier Haarde, has expressed his annoyance that the UK used anti-terrorism legislation to seize assets in Britain of the one of the Icelandic banks.

つまり、英国は、英国内にあるアイスランドの銀行のひとつの資産を差し押さえるために、対テロ法を使った、と。

えー、ひょっとして、nudge nugde, wink wink, say no moreなお金がどこから来ているのかという話で、ついに英国があの国のnudge nugde (以下略) を、「テロ組織」として認定したのか――ちょうど、米国がイランの革命防衛隊をそう認定したように――、と一瞬慌てたが、それならTerrorism Actであって、Anti-terrorism Actではない。いやまて、しかし報道記事の説明の部分にあるanti-terrorism legislationというと、TAなのかATAなのかわからないのが英国だぞ(北アイルランドの各組織まで行かなくても、固有名に紛らわしいものが多くて区別が大変)、と読みすすめると……
The Icelanders are hurt that the British government acted under the Anti-terrorism, Crime and Security Act 2001, specifically Part 2, Article 4.

The Act is in fact very broadly based and says that assets can be frozen in the UK if the Treasury "reasonably believe" that "action to the detriment of the United Kingdom's economy (or part of it) has been or is likely to be taken by a person or persons, or action constituting a threat to the life or property of one or more nationals of the United Kingdom..."

…… (^^;)

……あの法律をこう使うとは、斜め上すぎる。

http://en.wikipedia.org/wiki/Anti-terrorism,_Crime_and_Security_Act_2001
Parts 1 - 3 (Terrorist finances)
These sections applied to the finances of suspected terrorist organizations. They rewrote parts of the Terrorism Act 2000 relating to seizure of suspected terrorist assets, specified how bank accounts could be frozen, and authorized the disclosure of financial information relating to any criminal investigation.


条文はこれ。
http://www.opsi.gov.uk/Acts/acts2001/ukpga_20010024_en_2#pt2
Part 2 Freezing Orders
Orders

4 Power to make order
(1) The Treasury may make a freezing order if the following two conditions are satisfied.
(財務省は、以下の二件の条件が満たされれば、資産凍結を命令することができる)

(2) The first condition is that the Treasury reasonably believe that—
(第一に、財務省が充分な根拠あって次のように判断できる場合:)

(a) action to the detriment of the United Kingdom's economy (or part of it) has been or is likely to be taken by a person or persons, or
(a. 英国の経済もしくはその一部が、単数または複数の人物の行為によって、損害/損失を与えられた場合、もしくは与えられることが想定される場合)

(b) action constituting a threat to the life or property of one or more nationals of the United Kingdom or residents of the United Kingdom has been or is likely to be taken by a person or persons.
(b. 英国民もしくは英レジデントの生命もしくは財産に脅威となるような行為が、単数または複数の人物によって、行なわれたか、行なわれることが想定される場合)

(3) ……以下略

アイスランドの銀行破綻について、これの a を適用して英国内の資産を凍結したということなのだが、この法律が「テロリズム」を前提としているということは華麗にスルーして、まさにアクロバティック。イラク戦争開戦前のジャック・ストロー外務大臣(とゴールドスミス司法長官)のあれやこれやを思い出してしまうほどに。

というわけで、銀行が破綻しちゃっただけなのに、英国によって「テロリスト」扱いされたアイスランドは怒るよ、そりゃ。

てかおまえがいうな、って話だし。テロの面でも、金融の面でも。誰だよ、あれもこれもみーんな証券化してみーんなハッピー、ってのを煽動してたのは。

で、こんなものを持ち出して、「みなさんの預金は大丈夫です」ってやらないといけないほど、英国は切羽詰っていたのではないかと話。レイノルズの記事から:
It is not clear why the Act and not another had to be used but one suspects that it was to hand and was quick.

なぜ他の法律ではなくこの法律だったのかは不明であるが、これが手近にあって早かったからだと考えられるだろう。


レイノルズは、続けて、"And it shows how an Act designed for one set of circumstances can easily be used for another. (これは、ある状況のために整備された法律が、いかに簡単に、別の状況に用いられるかを示している)" と書いているが、まさにそれが恐ろしい。

でもそれをやるのが英国だから。単に無神経なのか、過度にプラグマティックなのか(とりあえずこれが手っ取り早いからこれでよくね?主義)、計算ずくなのか、わかんないけど。そして、rule of lawを叫ぶ。

あほくさ。


レイノルズの記事は、この下は「タラ戦争」の詳しい話なので、軍事じゃないんですけど(砲撃などはなかった)、紛争についていろいろ知りたい人は目を通しておくといいかも。レイノルズは70年代にはすでにジャーナリストだった(つまり当時をよく知っている)。さらに、文章がとても上手なのですいすい読める。



追記@12日:
12日付けで朝日新聞が報じています。「冷戦状態」という形容で語ろうとする、いわばデイリー・メイル調の記事ですが (口悪くてすみません :-P) 英国におけるアイスランドの銀行(記事見出しにある「アイスランド銀行」は固有名ではない点にご注意)についての概略はわかりやすく書かれた記事。

金融危機で冷戦状態に 英がアイスランド銀行の資産凍結
2008年10月12日3時0分
http://www.asahi.com/business/update/1011/TKY200810110163.html

 【ロンドン=土佐茂生】米国発の金融危機で苦しむ英国とアイスランドの関係が急速に冷え込んでいる。アイスランド政府が、経営破綻した同国の銀行に預けていた英国人や団体の預金を補償できないと表明したことに、英国側が反発。反テロ法を持ち出して、英国内にあるアイスランドの銀行の資産を凍結に踏み切る対抗手段に訴えた。……


何があったかをこの朝日新聞記事も参考にしてまとめると、こんな感じになると思う:
アイスランド政府が、ネット銀行を子会社に持つ「ランズバンキ銀行」を政府管理下に置く(7日)
 ↓
アイスランド政府が口座凍結。ランズバンキのネット銀行で口座を開設していた英国の人たちが預金を引き出せない状態に
 ↓
英国政府、英国人の預金の保護をアイスランド政府に要請するも反応がひどい→英国政府、ムカっとくる
 ↓
英国政府は(昨年Northern Rockで大変な目にあっているのだが)、アイスランド政府が動く気配がないため、しょうがないのでとりあえず「英国政府が個人口座の預金は補償する」との方針を示す(これで他の金融機関の取り付け騒ぎを未然に防ぐことが目的だろうけど)
 ↓
しかし、アイスランドの銀行には個人ばかりか地方自治体の口座も! つまり、個人口座の保護だけでは不十分、しかも巨額
 ↓
(ここらへんで、保守党やLibDemから、「俺ら7月に警告してたでしょ、アイスランドはやばいって。なのに無策だったのは政府与党でしょうが」とツッコミを浴びせられる)
 ↓
「アイスランド政府が何とかするのが筋だろうに、なぜ英国政府がやらにゃならんのだ」という感情と、とにかく早く動かないと第二第三のNorthern Rockが出る、という焦りがあって、「対テロ法」発動(とりあえず、一番早く対応できる)でアイスランドの銀行の資産を凍結

……どう考えてもブラウン政権の失策ですよね、「対テロ法」は。「対処の為に何か法的根拠が必要だ」→「何か使える法律はないのか」で引っ張ってこれたのがこれかよ、という。誰も止めなかったのだろうか。

で、朝日の記事には、
 腹の虫が治まらないブラウン英首相は「アイスランド政府はアイスランド国民だけでなく、英国までも裏切った」と激しい怒りをぶつけた。……

というように、「感情」とか「怒り」が根本にあったように書かれているのだけど、実際にはブラウンは、"What happened in Iceland is completely unacceptable . . . They have failed not only the people of Iceland, they have failed people in Britain." という言葉を使っています。これは外交の言葉としては最大限に厳しいものだけれども、個人的な「怒り」かどうか……「腹の虫」という日本語は「個人的な怒り」の言葉だけど。

ってか、ゴードン・ブラウンは首相になる前は閣僚、それも財務大臣だったんだから(それも10年にわたって)、英国の金融システムがここまでズタボロになっている「責任」を野党から「問われ」たら(その「責任を問う」というやり方が妥当なものであるかどうかは別の問題として)、今以上に苦境に立たされることになる。そして、今政治空白を作ることは、絶対に許されない。でも、誰からも信頼されないような状態で、(事実上の)政治空白を作らずにいることは、不可能に近い。だから「何かをしなければならなかった」。

で、今月に入って内閣改造を行ない、EU通商代表だったピーター・マンデルソンをBusiness大臣のポストで閣僚として呼び戻すというびっくり人事を断行して、まさに「必死だな」の状況、というより、「内憂外患」かな、と思ったのだが(内憂=労働党内のあれこれがあり、党大会前に何とか押さえたと思ったらルース・ケリーの件/外患=支持率、野党、スコットランド問題・SNP、北アイルランドの膠着状態、金融危機などなど)、そこにきてこの「アイスランドの銀行の破綻」という問題、しばらく前から警告されていた問題が現実のものになってしまった。ここで労働党が「何もしていない」と国民から思われたら(実際には公的資金注入での金融機関救済とかもあるのだが、それだって「金融機関は助けるのに国民は助けない」という「感情」は引き起こす)、今回の金融危機は、ブラウンにとって、サッチャーにとっての「ポールタックス」みたいなものになるかもしれない(ここまで、「今のところそうなってない」というのを前提にしてますけど、さて)。だからこそ、とにかく対応を急いだ(=「対テロ法」で何とかした)のだろうと思う。決して「怒りに任せて」みたいなことだけじゃないと思うんだよね。そういう面があるのは確かであるかもしれないけど。

(ところで、マンデルソンといえば「ブレア政権のスピンドクター」の代表格で、いろいろと怪しげな状況で2度にわたって閣僚を辞している人物、「国民からの支持」という点ではあまりに危険な選択。というか私はこれで「ブラウンは、ガーディアン、というかひょっとしたらフェビアン協会が基本図式として書いているような『ブラウン派とブレア派という構図の労働党』しか見ていないのだな」と思ったけど、それが当たってるのかどうかは知らん。いずれにせよマンデルソンを呼び戻すなんて、「策士」ですらなく、「自暴自棄」なのだと思うけど。)

で、朝日の記事には「英国とアイスランドの冷戦関係」という見出しをつけた図がついていて、記事見出し自体も「冷戦状態」という一節を入れてあるのだけれど、その点については記事の最後に少し書かれているだけ。いわく、アイスランドは財政悪化でロシアに支援を要請した。ロシアといえば英国はリトビネンコ事件以後のゴタゴタなど因縁があるから、「ロシアに急接近するアイスランドへの感情的な思い」もあるのでは、ということなのだが……ええっと、今私が読んでいるこれはデイリー・メイルですか。

「敵の味方は敵」で長期的戦略(<「冷戦関係」っていうからにはそういうことだよね)を立てるほど、英国はバカじゃないと思うけど。むろん、ロシアに対して圧力がかけられる局面ではかけるだろうけれど、ならば矛先をアイスランド政府に向けるような子供じみたことはしない(はず)。アイスランド政府に対しては、米軍が撤退して空いているアイスランドへの影響力を増す方向で動く(はず)。

でもそういう余裕がないのだろう。ブラウンが何かをしても、何もしなくても、2009年には選挙になる。



追記2:

Last updated: October 10 2008 03:00のタイムスタンプで出たFT記事。ランドバンキとは別のアイスランドの銀行が行き詰まって国有化されたとのこと、アイスランドの閣僚はその原因が、「英国がその銀行の英国部門を潰したこと」(<この日本語の用語法は極めていいかげんです)にあると述べていることなど、いくつかの情報があるのですが、「対テロ法」について次のようなくだりが。文中のHaardeとは、アイスランドのGeir Haarde首相のことです。
http://www.ft.com/cms/s/0/cdf6fc54-9665-11dd-9dce-000077b07658.html
Alistair Darling, the UK chancellor of the exchequer, spoke to Mr Haarde by phone yesterday to discuss the use of anti-terrorist legislation.
対テロ法を用いたことについては、昨日、英国の財務大臣からアイスランド首相に電話があった。(※英財務大臣はG7でニューヨークに飛んでますが、その前かもしれません。)

"I told the chancellor . . . that we did not consider this to be a particularly friendly act, but we understand that the UK authorities need to act in the interest of their citizens," Mr Haarde said. Other Icelandic businesses operating in the UK have been caught up in the fallout from the banks and lost normal banking services this week.
「財務大臣には、これは友好的な行為とは思えませんがと申し上げましたが、英国には英国民のために動く必要があることは了解しています。」UKで事業を行なっているアイスランドの企業は、今週、銀行のごたごたに巻き込まれ、通常の銀行取引ができなかった。

Mr Haarde said he had been assured by the UK government that normal banking service from seized Icelandic banks in the UK would be allowed to resume as soon as possible.
アイスランドの首相は、英国政府から、資産凍結になっているアイスランドの銀行での通常の銀行業務は、できるかぎり早く平常化を許可されるとの確約を得ている、と述べた。


やはり、英国とアイスランドが「冷戦状態」を望んでいるとは思えません。ロシアと英国のような(あるいはDUPとシン・フェインのような)、相互が「上等!」ムードになった状態だとは思えません。

それと、BBCの11日記事:
'Progress made' in Iceland talks
http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/7665451.stm

Tensions have flared between Britain and Iceland as the collapse of Iceland's banks have put billions of pounds of UK savers' money at risk.

The chancellor has said all UK private accounts affected by the bank crisis will be protected.

A Treasury delegation is in the Icelandic capital to seek assurances UK savers with money in collapsed Icelandic banks will not lose their deposits.

The group wants to establish a claims procedure for British depositors to get their money back as soon as possible.

Private deposits with collapsed banks Kaupthing Singer and Friedlander (KSF) and Heritable have been sold to ING Direct, where the accounts should continue to operate normally.

Private customers with Icesave are protected by the UK's Financial Services Compensation Scheme, with Mr Darling promising compensation above the usual £50,000 limit to cover all deposits.

The first £16,000 of a deposit is meant to be guaranteed by the Icelandic authorities.

It is understood Iceland has now agreed in principle to honour this commitment. ...

というわけで、英財務省の代表団がレイキャビクに入ってアイスランドの当局者と会合を開いていて、それは友好的なものだったとのこと。
The Treasury delegation in Reykjavik includes officials from the Bank of England and the Financial Services Authority.

After a number of sharp exchanges between Gordon Brown and his Icelandic counterpart Geir Haarde, the countries have sought to show they are now working together.

"Delegations of Iceland and the United Kingdom have met in a friendly atmosphere in Reykjavík to discuss issues of mutual interest related to the current financial crisis," the joint statement said.


「冷戦」とかいう派手な文言に釣られすぎないように。

問題は、このエントリの本文部分で参照したポール・レイノルズの記事にあるとおり、「法律が本来の文脈とは別の文脈で用いられることがいかに簡単であるか」で、それが「対テロ法」のような非常に微妙な法律でも可能である、ということです。両国の関係が「冷戦」かどうか、背後にロシアがいるかいないかは、副次的な話。

また、アイスランドと英国の関係は互恵的なもので、決して「アイスランドの高金利につられた英国の金がアイスランドに流れていた」だけではありません。ウエストハム(ハム)もそうだし、小売店でもアイスランド資本のチェーン店があるし (Somerfieldがそうだったはず)。でも実際に、高金利が多くの預金をひきつけていたことは事実(アイスランドの銀行はしばらく前から格付けとかでやばいことになっていたそうだから、慎重な人は避けていたかも)。

そういう面から、特に自治体がアイスランドの銀行にお金を入れてた件について、ちょっとだけ「自己責任論」を展開しているのがテレグラフの下記論説記事。
http://www.telegraph.co.uk/opinion/main.jhtml?xml=/opinion/2008/10/10/dl1001.xml

ただし、「金利がお得」をでかでかと書いた広告を掲載してたのはおたくの新聞でしょ、というツッコミがコメント欄にあったりするけど。ていうかこの記事はむしろコメント欄。変なノイズが少ないし、ざっと見てみる価値はあるかもです。

それと、オフショアの場合。下記でガーンジーとマン島についての説明があります。ガーンジーは補償なし(うは)。マン島は£50,000まで。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/programmes/moneybox/7665119.stm

※この記事は

2008年10月11日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 09:13 | Comment(3) | TrackBack(0) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Iceland for sale on eBay for 99p
http://blogs.telegraph.co.uk/financial_crisis_humour/blog/2008/10/10/iceland_for_sale_on_ebay_for_99p
こんなものを取り上げるテレグラフって…。
Posted by shu at 2008年10月12日 23:02
個人的にはこの「アイスランドを出品」はネタとしてもあまり好きではないのですが(やっぱりこういう「バカ」がいたか、とは思ったけど)、元々明らかに「ネタ」だし、出品者が「よりによってクロイドン」だし(ここはちょっとおもしろい)、「ネタ humour」としての扱いで記者ブログなど「シリアスなニュース」とは別に話の種にするんなら、テレグラフだろうがほかのどこだろうが、取り上げても問題ないと思います。(さすがに国家背負ってるBBCにはちょっと微妙すぎるけど。)

個人的な期待としては、英国でのこれ系のネタ/取り組みとしては、「シーランド公国」を超えてくれないと、というのがあります。
http://en.wikipedia.org/wiki/Principality_of_Sealand

ていうかビョークよりシガーロスでしょ。シガーロスとパフィン(←鳥の)。
http://www.nhk.or.jp/darwin/program/program101.html
Posted by nofrills at 2008年10月13日 01:50
本当に、朝日新聞の書き方がデイリー・メイル(メイル・オン・サンデー)と同じである件。ははは。

Nato fears as Iceland turns to Moscow for £3bn loan
By Mail On Sunday Reporter
Last updated at 12:21 AM on 12th October 2008
http://www.dailymail.co.uk/news/article-1076705/Nato-fears-Iceland-turns-Moscow-3bn-loan.html

[quote]
With relations between Russia and the West at rock-bottom following the war in Georgia, senior diplomatic sources have told The Mail on Sunday there was ‘concern’ that Russian Prime Minister Vladimir Putin was trying to drive a wedge between Iceland and her Nato allies.
[/quote]

"With ... Georgia" のところは読み飛ばしてOKで、本論は、「外交筋が本紙に対し、ロシアのプーチン首相がNATO加盟国であるアイスランドとそのほかの国の間に楔を打ち込もうとしているという『懸念』がある、と語った」。つまりソースは「外交筋」。そして、NATO加盟国の大使とアイスランド外務省の緊急会合で、「ロシアからの融資は政治的なものではないことを言明するよう」、NATO諸国からアイスランド側に強い要請があった。(これにアイスランドがどう反応したのかは記事に書かれていない。だからメイルはいや。)

さらにいえば、この件、メイルでさえもちょっと遠慮がちというか、「米、英、EUがアイスランドからの融資の要請を退けたあとに、モスクワが緊急融資を申し出た」と記事の(下の方にではなく)上の方に書いています。つまり、「窮地に立たされたアイスランドが頼ったのは、西側ではなくモスクワだった!」みたいなことは、メイルでさえ書いていない、ということで。

なお、メイル記事には下の方に、アイスランド沖の油田の開発についての言及が、少しだけあります。
Posted by nofrills at 2008年10月13日 02:19

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼