「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2008年10月06日

IRAについて、トンデモない与太話を流布するなというに

※長く書きかけになっていましたが、6日朝8時くらいに書き終えました。ひととおり。

ウェイン町山さんのブログ、10月5日のエントリ、「唐沢俊一の知ったかぶりには堪忍袋の緒が切れた」:
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20081005

個人的に唐沢さんの書かれたものを読む機会はないので、一連のあれこれにはさほど強い興味があるわけではないし、「論争」に加わる気もないけれど、ちょっとこれはひどい。ていうかこれは見過ごせない。

なぜなら、IRAネタだから。

しかも唐沢さん、「ああ、この人、IRAのプロパガンダにやられちゃってるなー」とか、「英軍のプロパガンダに(以下同文)」とかいうんでもない。解釈の違いでもない。単なる勘違いとうろ覚えと、検証・確認の作業を怠ったことによるデタラメだ。

町山さんのブログのエントリが参照しているところ@検証ブログさん:
http://d.hatena.ne.jp/kensyouhan/20081004/1223091287

唐沢さんの『トンデモ事件簿』という本(amazon.co.jpで確認したところ、三才ブックスという出版社さんから、2008/9/20に出ているそうで)に次のような記述が含まれている、という。
話をIRAに戻すと、この団体は女王陛下のイングランドに楯突く凶悪なテロ組織なのだが、しかしイングランドに長年虐げられてきたアイルランドの独立を目指す組織なので賛同者も多く、あの“女王陛下の007”ことショーン・コネリーも、この団体には多額の寄付をしている(だからコネリーはいまだにサーの称号がもらえないでいる)。


うー。

あー。

どっからつっこんだらいいんだ。

サー・ショーン、教えてください。

ちょっと休んでから書きます。OfficialとProvisionalのあたりから始めるのがいいのかね、真面目にやるなら。でもそこまで真面目にやらんよ。

ってか、「雑学」とか言うな。本気で頭くるわ。

ってかスコットランド方面! かとうさん、また一緒に茶をふきましょう!

とりあえず二方面に展開する必要がありますな、アイルランド方面とスコットランド方面に。

てか、唐沢さん、アイルランドとスコットランドの区別ついてんのかな。(アイランドとアイランドを間違えてしまった、とかいうのとは違う問題だよなあこれ。しかも、英国に関して何らかの「オタク」を自称するならあり得ない間違いだ。)

グラスゴウのオールドファーム(セルティックとレンジャーズ)がああいうことになってること、知らないのかな。つい数週間前にもセルティックの元主将で現在はコーチをしてるニール・レノン(北アイルランド人でカトリック)がボコられて病院にかつぎこまれて、ボコったのはレンジャーズのサポらしい、っていうようなことが起きているのだが、これだって突発的に起きたものではないと考えるのが妥当だし(加害者が起訴されて裁判中なのでまだ真相はわからないけれども)。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/scotland/glasgow_and_west/7633618.stm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/scotland/glasgow_and_west/7636828.stm

まあ、ともあれ二方面作戦開始。

1) アイルランド方面:
唐沢さんの記述:
話をIRAに戻すと、この団体は女王陛下のイングランドに楯突く凶悪なテロ組織なのだが、しかしイングランドに長年虐げられてきたアイルランドの独立を目指す組織なので……


元の文の文脈を見ないと「歴史上のどのIRAの話なのか」がわからないのだが、とりあえず一般的に「IRA」と呼ばれるProvisional IRA (1969〜) のことを言っているとすると、町山さんが指摘しておられるように、「IRAはアイルランド独立を目指す組織ではない」。アイルランドはとっくに「独立」しちゃってるから(ここで1921年とか1949年とかを語り出すととんでもなく長くなるのでこれで流させてください。この話では、エイモン・デヴァレラをスルーすることができないので)、今さら「独立を目指す」ことはできない。IRAは、「アイルランドの南北の統一を主張し、それを目指す組織」である。つまり、United Irelandを主張している。(United IrelandというフレーズがIRAのキーワード。例えば、Stiff Little FingersのファーストアルバムのWasted Lifeという曲に、「IRAが統一アイルランドとか大義名分掲げて勧誘しに来る。やってることはただの人殺しじゃね?」みたいなのがある。当時のベルファストのパンクのドキュメンタリーによると、本人たちはかなりびくびくしながら歌ってたそうです。)

これはいろいろな人がいろいろなところで書いているし、私も書いている。このブログでも書いているし、はてなのキーワードでも次のように書いている。
イギリスの植民地だったアイルランドが独立する過程で「イギリスの一部」として残された北アイルランドをアイルランド共和国と統合し、統一アイルランドを実現させることを目指す。なお、「北アイルランドの独立を目指す」という説明は誤りである。


ウィキペディアにだって:
アイルランド自由国成立後は、IRAの目的は北部6州と南部26州(共和国)とを統一すること、つまり北アイルランドを連合王国から分離させて全アイルランドを統一することにある。

※実はこれは私が前の人の記述を整理する形でリライトしたものだが。ちなみに、ウィキペディアもはてなキーワードも、「IRA」でググれば上位に表示される。

唐沢さんはひょっとしたら「アイルランド」と「北アイルランド」の区別をしていないのかもしれない(そんな粗雑な認識は、ライターとしてはいかがなものかと心底思うが)。「北アイルランドの独立」という主張は、1970年代に実在していたことは事実だ――ただしIRA側にではなく、ユニオニスト側、英国側に。1974年、サニングデール体制が崩れたあとにハロルド・ウィルソンもそれを真面目に検討していた(プランを策定していた)ということが、つい数週間前に明らかになっている (He wanted to cut all constitutional ties with Northern Ireland and turn it into an independent dominion territory. 鼻からお茶ふいた)。

2000年代にも細々とその主張はあるのだが(今は実際にどうか知らんけど、2005年には確実にあった)、「北アイルランド独立」を主張しているのはユニオニストの中でもものすごく極端なほうだ。1998年のベルファスト合意(グッドフライデー合意)の結果として、何十年かあとであっても、北アイルランドがアイルランドの一部になる可能性があるのだが、そのくらいなら独立したほうがいい、ということだ。

いずれにせよ、「女王陛下のイングランドに楯突く凶悪なテロ組織」としてのIRA、つまり英国の法律でプロスクライブされている(特定組織として指定されている)IRAについて言うのなら、それは「アイルランドの独立」を主張してはいない。「北アイルランドの独立」も主張していない。「南北アイルランドの統一」、というか「南北間のボーダーの解消」を主張している。そしてそれは1998年ベルファスト合意までは、アイルランド共和国の憲法にでかでかと書かれていた「アイルランドの国土」の定義と、内容的には同じである。それがいわゆる「北アイルランド紛争」の基本の基本だ。

なお、IRAについて「女王陛下のイングランドに楯突く凶悪なテロ組織」と書くのは、記述としてはすべての文節にツッコミどころがあるというしょーもない状態になっているが(後続の「女王陛下の007」にひっかけたかったのだろうが、その後続部分もダメだし)、真面目にそう考えてこう書いているのだとすれば、それはそれでひとつの政治的なスタンスであろう。当てこすりのつもりなら、質は高いとはいえないと思うが、一応当てこすりにはなっているだろう。

また、何かが「凶悪なテロ組織」であるのか、それとも例えば「自由を獲得するために銃を取った者たちの組織」であるのかについては、終わらない論争になるだけなので、ここでは措く。

さらに、「イングランド England」と「英国 Britain」の違いについても、やたらと長くなるだけなので省略。少なくとも1969年のOfficialとProvisionalの分裂以降のIRAの有名なスローガンのひとつは "Brits Out" である、ということだけは書いておく。それと、北アイルランドにおける「プロテスタント」は基本的にスコットランド人だ、ということも一言だけ書いておく。てか前に書いたから繰り返さない。IRAについて書くならそのくらい常識だ。ついでにいえばRUCとかUDAとかUVFとかも常識だ。で、問題の本でどういう文脈でIRAが出てきてるのかわからないけど、この程度の基本的なところで事実とは異なることを書いているというのは、全体が絶望的と判断されても当然だろう。これならまだ、ソエジマさんの映画本で『デビル』についての文脈で書かれていたヌルいIRA論のほうがずっと誠実だしずっとましだ。

2) スコットランド方面:
唐沢さんの記述:
……あの“女王陛下の007”ことショーン・コネリーも、この団体には多額の寄付をしている(だからコネリーはいまだにサーの称号がもらえないでいる)。

※どうでもいいが、「組織 organisation」なのか「団体 group」なのか、統一してくれんかね。(IRAはthe organisationだけどね。)

「女王陛下の007」はコネリーじゃなくてレーゼンビーです、というのは方々からツッコミが入っているので……。第一「女王陛下の〜」は邦題だし。原題は On Her Majesty's Secret Serviceで、「女王陛下のシークレット・サービスに勤務して」とかいう感じの意味合いで、そうかけ離れてはいないが。

また、ショーン・コネリーは2000年の女王悪誕生日の叙勲のときにナイトになってる、つまりtitle (称号) として「ミスター」などではなく「サー」を使うステータスを得ています。てかこのときに「彼の発言と叙勲は相容れない」ということでスコットランドではかなりのブーイングがあったんですけど……。彼については、そもそもスコットランドに住んでるわけでもないのにナショナリズムとかふざけんな、って見方もあったわけで。(これはアイリッシュ・アメリカンに対するアイルランド人の間にも見られるのですが。)

で、本題ですけど、サー・ショーン・コネリーがIRAサポですって? おほほほ、何か資金ルートでもあるという話なのかしら。SNP→Sinn Fein→IRAの。(←こういうのが存在したことがないわけではないかも。SNPが左右連合してSNPになる前とか。そこまでは調べたことがないからわかりませんが。)

これも各所で指摘されているけれど、ショーン・コネリーが資金を寄付していたのは、IRAでもSinn Fein(IRAの政治組織)でもなく、SNP、つまりScottish National Partyという政党だ。
http://en.wikipedia.org/wiki/Sean_Connery#Political_causes

SNPはスコットランドのナショナリズムの政党で、「スコットランド独立運動」を……というのは10年くらい前にかなりの部分としては過去になった話(←非常に乱暴な書き方をしています。すみません)。1999年、ブレア政権下でスコットランド(とウェールズ)に自治議会 (the Scottish Parliament: assemblyではなくparliamentというところで足を取られるケースもあるらしいけど「国会」じゃなくて「自治議会」が定訳。てかこれ実はとてもややこしい話)が設置されて以降は、とりあえずは「独立」ではなく「自治」のスタンスだ。現在のSNPの言うIndependenceは、「独立」というより「自立」に近い。ただし、SNPが連合王国のUnionを「もう何の役目も果たしていない」と見ていることも事実だし、SNPが「スコットランド独立」についてのレファレンダムを行なうとかいう姿勢を示していることも事実だ。その部分でウエストミンスターの英国会と、ホリルードのスコットランド自治議会(直近の選挙でSNPが、過半数には及ばないまでも、第一党となった)の間でがちがちやりあっているのも事実だ(ゴードン・ブラウンはスコットランド人だから余計に)。でもそれは牽制という意味合いが強いものだろう。

ほんで、スコットランドのナショナリズム(とかウェールズのナショナリズム)の文脈で、スコットランド(やウェールズ)の武装闘争集団が、いかに小規模であっても存在して活動していたことは事実で、それらの集団とIRAがつながっていた(IRAの武器が流れていた)ことも事実なのだけど(日本語で読んだのか、英語で読んだのか覚えていないけど、そのうちにまた調べてみます。どちらにせよここらへんの話は非常に微妙ではあるけど)「SNPに資金を寄付していた」ことが「IRAのサポ」と結びつくほど単純な話ではない。というか、もしそうなら大変なことだ。

スコットランドの武装闘争主義のことはこれとか:
Tartan terrorist's bid for a free Scotland ends at his own hands
By Paul Kelbie, Scotland Correspondent
Saturday, 23 October 2004
http://www.independent.co.uk/news/uk/this-britain/tartan-terrorists-bid-for-a-free-scotland-ends-at-his-own-hands-535387.html
It was from here that Andrew McIntosh, a self-proclaimed patriot and militant nationalist, planned to hold an anti-English march through Aberdeen next month as part of his lifelong mission to achieve independence.

Unlike his previous attempts to highlight the separatist cause the march promised to be non-violent and council officials were due to consider his application on Monday. However, the bid will almost certainly fail because McIntosh, a convicted terrorist and member of the Scottish National Liberation Army (SNLA), was found hanging in a jail cell on Monday, shortly before he was to face charges over an alleged plot to disrupt the royal opening of the Scottish Parliament.

...

McIntosh, 49, was found hanged in his cell at Aberdeen's Craiginches Prison, hours before he was due in court with two other men on firearms charges. He had been in custody for nine days after he was arrested in a police swoop on a number of suspects on the Forth road bridge before the Holyrood opening on 9 October.

For the man police described as an "inconsequential loner" it appears that the prospect of a long prison term may have been too much. As a self-confessed former area commander of the SNLA, a fringe group of tartan terrorists which tried to model itself on the IRA, he had already served six years of a 12-year sentence for a campaign in the early 1990s. Released in 1999, McIntosh faced the prospect of completing his sentence plus anything extra imposed if convicted of fresh offences. ...

↑「英語読めないんで」とかいう質問は受け付けません。あしからず。

なお、私の推察だが、唐沢さんは、「著名人で、反英(反イングランド)ナショナリズムのサポ」ということでジョン・レノンとショーン・コネリーを混同しているのかもしれない。そしてスコットランドとアイルランドの区別がついていないから、「スコットランド対イングランド」の対立軸と、「アイルランド対英国 (Great Britain)」の対立軸がごっちゃになってるのかもしれない。ま、いずれにせよありえないんだけどね、ライターとして。

なお、ジョン・レノンについては、Provosのために歌を、という話もあったとかいろいろ、どこまでが「事実」でどこまで「与太」なのかとか、どこまで「記憶違い」なのかとか、わかんない話が多すぎる。そういえばジョン・レノンって、ボビー・サンズのハンストの前に殺されてるんだよね。サンズのハンストのときにレノンが生きていたら何かあったかもしれないけど。



派生。

町山さんの記述から:
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20081005
IRAを「凶悪なテロ組織」と呼ぶことに問題がある(いくつもの派閥がある)。

記述が先を急いでいる箇所である上に短すぎて何をおっしゃりたかったのかわからないのだけれど、「派閥」という表現は不正確。それと、「IRAを凶悪なテロ組織と呼ぶこと」と、「IRAを名乗る組織・団体・集団がいくつもある(派閥がある)こと」との間に関連性はない。

「IRA」にいくつものIRAがあることは事実だが、“北アイルランドのテロ組織といえば「IRA」”というのは不正確(間違い)である。IRAとは政治的に逆の立場(英国に残留したい派、つまりユニオニスト)のほうにテロ組織がいくつもある。UDAとかUVFとかUFFとかLVFとかRHCとかオレンジ義勇軍とかいろいろ。これらユニオニスト過激派、つまりロイヤリストの武装組織は、「テロ組織」と見なされるまでに15年とか20年とかくらいかかっているのだが(それまでは合法の組織だったのだ)、つまり彼らのやったことは「テロ」ではなく、IRAのやったことは「テロ」だという時期が長かったのだが、彼らはIRAの派閥ではない。(例えばUDAとUVFが殺し合いをしていることは、英語ではfeudと言う。しかしIRAとUDAの殺し合いはそうは呼ばない。)

IRAと同じ側(アイルランド統一派、つまりナショナリスト)にもIRAから分派した組織はいくつもあるけど(INLAとか、Real IRAとか、Continity IRAとか)、それらは「派閥」とは扱わない。完全に別の組織として扱う。

「IRAの派閥」があるとすれば、South ArmaghとDerryと、みたいな話になるだろう。(実際、こういう「派閥」のIRA内主導権争いはかなりあったみたい。ショーン・オキャラハンとかそのへんの回想を探して読んでみるとわかると思う。)

ibid, および検証ブログさんの本文:
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20081005
http://d.hatena.ne.jp/kensyouhan/20081004
「サー」は称号ではなく、ナイトの称号を持つ者への敬称。

これはことばの問題ではないかと。編集者的にいえば、それぞれのテクスト内で一貫していれば問題なし、というところでは。

英国では、Knightになると、(以下、男性の場合についてのみ書くが)名前にMrではなくSirがつく(つまり、Mr John SmithがSir John Smithになる、というふうになる。Knight John Smithとは呼ばれない)。Knightは爵位というか階級のようなもののひとつの名称で(「伯爵」とか「男爵」みたいな)、それすなわち「称号」ではないのだが、それが「称号」という日本語で説明されることももちろん多い。

http://en.wikipedia.org/wiki/Sir
Sir is an honorific used as a title (see Knight) and in several other modern contexts.


http://en.wikipedia.org/wiki/Honorific
An honorific is a word or expression that conveys esteem or respect when used in addressing or referring to a person. "Honorific" may refer broadly to the style of language or particular words or grammatical markings used in this way, including words used to express honor to one perceived as a social superior. Sometimes the term is used not quite correctly to refer to a title of honor (honorary title).


検証ブログさんのコメントから:
http://d.hatena.ne.jp/kensyouhan/20081004#c1223125254
ショーン・コネリーは独立運動をしているスコットランド国民党(SNP)を支持しています。IRAへの寄付については、イギリスからの分離独立というSNPと同じ目的を持っている組織に寄付することは一応有り得るのかな?と思いましたが。

ありえなくはないと考えることはできますが、そもそもショーン・コネリーはスペイン在住で、SNPへの寄付ですら合法・非合法でいろいろあったわけです(シン・フェインなど北アイルランドの政党に対する米国などからの寄付は、「外国人による寄付」の制限条項で例外とされているそうですが)。2000年のBBC記事参照。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/scotland/1052696.stm

で、IRAへの寄付があったとしたら、それは英国およびアイルランド共和国の法律で「テロ組織」として指定されている組織への寄付ということになります。ありえません。

それと、コメント欄でショーン・コネリーの叙勲がいつだったのかについての話がありますが、毎年、叙勲者の名簿の発表がクリスマスにあり、叙勲の儀式は翌年1月だっけかな、そこらへんで行なわれます。なのでショーン・コネリーが「サー」つきになる、というのが報道されたのが1999年12月、実際にその儀式が行なわれて正式に「サー」になったのが2000年、ということが考えられます。ただ確認はしていませんので、各自ご確認をお願いします。何かあればコメントご投稿ください。


※この記事は

2008年10月06日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 01:11 | Comment(3) | TrackBack(1) | todays news from uk/northern ireland | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 分かったよ,もうIRA FAQ作るよ……>唐沢氏
(でもまだ,例の基本文献すらまだ積ん読ですが)

 というわけで,転載させていただければ幸いです.
Posted by 消印所沢 at 2008年10月06日 21:47
所沢さん、どもー。

むしろ、FAQのQを羅列していただく→わたしができる範囲で(<弱気)、誰でも参照可能なソース(en.wikipedia, cain.ulst.ac.ukなど)をつけて何か書く、っていうのが最短距離かも、ですね。時間はかかるかもしれないし、常に検証可能・チェック可能にして誤訳や間違いは修正、ってことができるようにしないといかんけど。

というわけでよろしければここのコメント欄を使って、FAQのQを書いてみてください。で、それに対する答えをわたしがエントリ化する、みたいなふうにしてったらいいかも。

唐沢流「雑学」のようなデタラメな与太が出回ると、誰も幸せにならないんですよね。与太の根底に政治的な思惑があるとかじゃないし。
Posted by nofrills at 2008年10月06日 23:35
個人的にはこの唐沢さんという人のことは興味もないのだけど(自分もしくは知り合いが書いたものがパクられたら話は別だが)、「唐沢俊一検証blog」さんが27日付で紹介しておられるのを読んで、ビスケットでむせたのでそのご紹介。
http://d.hatena.ne.jp/kensyouhan/20081027

「国王に謀反を企てたけしからんカトリック野郎」の人形を火あぶりにして喜ぶセクタリアンな祭りである「ガイ・フォークス・デイ」を、「イケメンだった反逆者をヒーローとして讃える祭り」と書き、ガイ・フォークスはアイルランド人という珍説(というよりデタラメ)を書き散らし……というデタラメじゃないところを探すほうが楽なくらいにデタラメが並べられた「雑学コラム」。

個人的には、「アイルランド料理のハギス」というフレーズだけでオナカイッパイです。これ以上かかわる必要性を感じません。アイルランドとスコットランドの区別がついていない気の毒な人、というか両者は区別されねばならないということすら知らないかわいそうな人なんだな、というだけで。

この下は、「検証blog」さんに投稿した私のコメントのコピーを投稿しておきます。

EDIT: 新規エントリに転記しました。
http://nofrills.seesaa.net/article/108757310.html
Posted by nofrills at 2008年10月28日 18:07

この記事へのトラックバック

『唐沢俊一の古今東西トンデモ事件簿』連載最新回でパクリ発覚。
Excerpt:  nofrillsさんにトラックバックしていただきました。10月4日の記事と10月5日の記事を受けて、より詳しい解説を書いています。いやあ、専門家ってすごいなあ。この「唐沢俊一検証blog」では、ヒ..
Weblog: 唐沢俊一検証blog
Tracked: 2008-10-06 12:36

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼