「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2008年10月01日

継続的に北アイルランド見てきてよかった、と思った日。(余談)

いろいろ矢継ぎ早なので、ブログで文章書いていられません。はてなブックマークで100字でメモるのが精一杯です。というわけで、このブログの間延びした感じに「あれぇ?」ときたらはてブへおいでください。
http://b.hatena.ne.jp/nofrills/

で、今日のはてブの注目記事に米国の下院で緊急法案が否決されたことについてのほかのブログさんのエントリが上がっていたのだけど、それ読んで「うへぇ、これはない」と思うと同時に、あーあたし北アイルランド情勢を継続的に見ててよかった、と思ったんで、このブログを見ていてくださっている方がたの中に必ずおられるであろう同志に対し、シベリアでゆっくりして……「同志」からの連想でこっぴどく間違えた、仕切り直しますと、同志に対し、「DUPの言い分を読み、シン・フェインの言い分を読み、UUPの言い分を読み、SDLPの言い分を読み、アライアンスの言い分を読み、UDAの政治団体(もはやアルファベット・スープに付き合いきれないので名称度忘れ。覚えた頃に改称したし)の言い分はないかとネット上をさまよい……という複雑な『藪の中』的な作業は、決して無駄ではないのだ、同志!」と言いたいと思います。ってこんだけ書けるならブログ更新しろよ。今更新してるよ。

というのは、その「注目記事」になっていたブログさんでは、共和党のジョン・マケインの次の言葉のうち、太字にした部分だけを引用して「セイロンだ」……これはお茶、もしくは解放の虎……「正論だ」と書いているから。お茶ふいたんですけどね、ほんとに。
SEN. JOHN MCCAIN, (R-ARIZ.) PRESIDENTIAL CANDIDATE:
Senator Obama and his allies in Congress infused unnecessary partisanship into the process. Now is not the time to fix the blame. It's time to fix the problem.

「今は誰のせいでこうなったと取り沙汰している場合ではない。問題の解決が最優先だ」というのは、単にそれだけを読んだ場合、今週のこの状況においては、まったくの「正論」です。確かに。

でもね、どの口でいうか、と。

というか、マケインは、「今は誰が悪いとかじゃなくて、問題解決しなきゃ」と言う直前に、「オバマ上院議員とその仲間(つまり民主党陣営)は、党利党略で動いている」と述べている。えー、悪いのは民主党っすか? 「どの口で言うか」以前の話だ。お茶ふくよ、ほんと。(という記事もBBCかどこかで一瞬見た。本質的にどうでもいいのでブクマはしていない。)

しかしながら、件のブログでは、「正論」の部分だけ抜き出して「マケインは偉い」と言っている。そのブログを書いている人は、マケインを支持して/信じているから彼の言葉は正しい(事実を述べている)と信じ、マケインの言うとおり、「民主党が党利党略で動いている」のだ、だから法案が否決されたのだと考えているのかもしれない。そして、ネット上で人々が「金持ちを俺らの税金で救済する必要ないだろ」とぐちぐち言っているのを見て、「やっぱり民主党は金持ちはほっとけということで反対に回ったのだ」と思い込んで(ここでfalse)、決定的に重要な数字を無視して書いた……としても、それは、たとえ個人のブログでも、なんだかなー。

それもさあ、北アイルランドみたいになかなか記事が見つからないとか、記事があっても偏りがあることを前提として読まないといけないとか(BBCは英国のメディアだし、英国の大手新聞は全部Britのスタンス、つまり「反IRA」で、バイアスの強さは媒体ごとにいろいろある)、政党のトップのことばなどすべて「事実」ではなく「プロパガンダ」である(DUPであれシン・フェインであれ)のが前提で、ときどき、または稀にそこに「事実」が潜んでいる、そしてどの口から出るものもある程度は「正論」を含んでいる(A time for war, a time for peace ってやつね、イアン・ペイズリーが大好きな)、っていうのとは違うっしょ。

こういうややこしいものが対象なのなら、いくら気をつけていても「プロパガンダ」の言説を「事実」を言うものと解釈してしまう可能性はかなりある。ていうか私はこのブログで自分の書いてることがそうなってないという自信は持っていない。(ていうかジェリー・アダムズはいいかげんに自分の過去を公の形で認めよう。それが総本山なんだってわかってるくせに、このぉ、ちょんちょん、ちょんちょん。)←二重三重に話ずれすぎ。

でもさあ、今回の話は北アイルランドじゃなくて、アメリカ大統領選挙とかアメリカの議会とかでしょ、情報はふんだんにあるし(ふんだんにあるからこその難しさもあるのは確かだが)、何より、ものを考えるとき、何かを書くときの基盤となる「数字」はそこらへんにごろごろ転がってるわけで、それを見ないで何かを書くのは、いかに個人のブログでも怠慢だと思うし、それを見た上で「マケインと共和党は法案に賛成していたのに、オバマと共和党が反対した」という方向で記事を書いてしまうのは、意図的な誤誘導だ。

数字:
http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/7641733.stm
The rescue plan, a result of tense talks between the government and lawmakers, was rejected by 228 to 205 votes in the House of Representatives.

About two-thirds of Republican lawmakers refused to back the rescue package, as well as 95 Democrats.

...

つまり、「下院全体で228対205で否決」、「共和党の約3分の2と、民主党の95人が法案賛成を拒否」……って、BBCのこの記事にはこんなざっくりした説明しかないのか。(でもこれを読んで私のような知識の浅い者でも「うは、共和党が割れた、民主党は党所属議員の過半数は賛成した」と判断したんだよね――民主党が200人以上、共和党が200人未満、と記憶しているだけで細かい数字は知らんけど。)

細かい数字は:
http://en.wikipedia.org/wiki/Proposed_bailout_of_U.S._financial_system_(2008)
The amendment was not accepted by the roll call vote of 228-205 with one voting "present". Democrats voted 140 to 95 in favor of the legislation, while Republicans voted 133 to 65 against it.

つまり、総数で228対205で、内訳が:
  民主党 賛成140 反対95 →党としては賛成
  共和党 賛成65 反対133 →党としては反対 (ただし共和党は1人が棄権とのカウントもあるらしい)

つまり、「せっかくまとまりかけていたのに民主党が反対したから共和党のマケインが正論を吐いている」のではまったくなくて、共和党が土壇場で次々と反対に回ったから否決されたんです。で、マケインはそれを民主党のせいにして、秒殺された(嘲笑された、とも言う)。選挙の為に差し迫った危機を利用してんのはどっちだよ、という。「こんなときにまでネガティヴ・キャンペーンしてんじゃねぇよ」という。

それと、ついでに、はてブでどなたかが引いておられるNYT記事参照:
http://www.nytimes.com/2008/09/29/opinion/29krugman.html?_r=1&oref=slogin
クルーグマンだよ。でもタイトルが "The 3 A.M. Call" なので頭の中で自動再生されるぞ、こぴーらいとりべれーしょんふろんとが。

というところで。


※この記事は

2008年10月01日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 22:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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