kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2008年09月17日

「創造論」を学校でどう扱うかについて、なんかちょっとあったらしい。

英国の王立協会、つまりthe Royal Society (of London) で、「創造論 creationism」をめぐってちょっとあったらしい。

'Creationism' biologist quits job
Page last updated at 19:42 GMT, Tuesday, 16 September 2008 20:42 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/education/7619670.stm

ロイヤル・ソサイアティでdirector of education(教育部門の長)をつとめていたMichael Reiss教授の「創造論」についての発言が「問題」となり、Reiss教授はその職を去った。ただしロイヤル・ソサイアティの一員としてはこれまでどおりだし、それにそもそもその職はパートタイム職で、教授はフルタイムで別の役職についておられるとのことで、本質的には大きなことではないのだろう。

で、Reiss教授の発言というのは――これがまた「伝言ゲーム」が加わっているようで少しややこしくなっているのだが、「創造論は、学校教育の場において、生徒側から提起された場合は、議論されねばならない creationism should be discussed in science lessons if pupils raised the issue」というものだった。これが「伝言ゲーム」を経て、「創造論は、学校教育の場において、教えられねばならない creationism should be "taught" in science classes」となって、科学者がReiss教授に対して激しい批判を行なった、ということだそうだ。(BBCがそう書いている。)

ロイヤル・ソサイアティではこの一連の「騒動」(だよね)について、「Reiss教授の発言は確かに解釈の余地の大きいものであり、誤解を生じさせるものだった」とし、それによってソサイアティの評判に傷がついたということで、教授の辞任を求めた、という経緯のようだ。

しかしReiss教授のこの職は、上に書いたようにパートタイムで(まあ、それもRSが教授にあまりに大きなダメージを負わせないように配慮して、play downすることを意図した説明かもしれないけれども<根拠のない憶測)、フルタイムの本職はソサイアティのInstitute of Educationのprofessor of science education(つまり、RSの教育専門機関の科学教育部門の教授)で、その職は続行する、とのこと。

そして、ロイヤル・ソサイアティは改めて、創造論は科学的な根拠のあるものではなく、学校教育において科学のカリキュラムに取り入れるべきではないとの立場を強調している。

それでも現実には学校の授業で生徒の側が「創造論」を持ち出すこともありうるわけで、その場合には、ロイヤル・ソサイアティでは、「教師は、進化(論)がしっかりした科学的な論・説である一方で、創造論はいかなる点でも科学的なものではない、ということについて理由を説明できるようにしておかねばならない (teachers should be in a position to explain why evolution is a sound scientific theory and why creationism is not, in any way, scientific.)」と述べている。

Reiss教授は生物学者 (a biologist) で、この2年にわたってRSのdirector of educationとして科学教育という重要な分野で仕事をしてこられた、そのことに感謝する、今後ますますのご活躍を、といったことも、RSは述べている。

で、Reiss教授が上記のような発言を行なった背景だが、それについてはBBC記事には、次のようにある。
Prof Reiss, speaking at the British Association Festival of Science at the University of Liverpool, estimated that about one in 10 children was from a family which supported a creationist rather than evolutionary viewpoint.

He said his experience had led him to believe it was more effective to include discussion about creationism alongside scientific theories such as the Big Bang and evolution - rather than simply giving the impression that such children were wrong.

【概要】リヴァプール大学での講演で、Reiss教授は、10人に1人の子供が、進化論よりも創造論をとる家庭の出身だと述べ、自身の経験から、創造論を口にする子供について単に「間違っている」という印象を与えるようにするよりも、創造論を科学のコンテクストで議論に加えるほうがより効果的である、と信じるようになった、と述べた。


これ自体は特に問題のある発言とは私には思えない。頭ごなしに否定するのではなく、「どうしてそれが否定されるべきなのか」を説明する、ということは、科学に限らず学校での勉強では必要なことだ。

問題は、これがどうやら「頭ごなしに否定するのではなく、説明をしよう」という話ではなく、「肯定しよう」という話であるかのように受け取られているらしい、ということだ。でなければ、ロイヤル・ソサイアティでこの発言がこういうふうに受け取られるとはちょっと考えられない。「創造論」が禁句になるほどファナティック(「原理主義的」といってもいい)ではないはずだから。... well at least I hope so.

BBC記事末尾には、3人の科学者のコメントが紹介されている。

1人目はLord Robert Winston, professor of science and society at Imperial College Londonで、彼は「今回の件でロイヤル・ソサイアティの存在は小さくなってしまっただけではないか。科学や科学者の評判にとってよいことではなかった。本人は科学についての誤解を解くために議論を呼びかけているのであって、それはロイヤル・ソサイアティの主張していることと同じだ。讃えるのなら話はわかるが」ということを述べている。

ここで興味深いのは、「科学についての誤解 misconceptions about science」だ。誰とは言わないけれど罵倒芸のようなことをしている面ばかりがメディアで取り上げられて、その「言っている内容」ではなく「語りのスタイル」が、「科学者っていうのはああいう連中なんだよ」的な「誤解 misconception」を呼んでいる、ということだ。

2人目は、Dr Roland Jackson, chief executive of the British Association for the Advancement of Scienceのコメント。彼はReiss教授が職を去ることは非常に残念なことだと述べ、「実際にその講演を聞いていたが、話の内容は本質的には、ロイヤル・ソサイアティが主導している立場と同じだった。RSは彼を支持し、この機会にさらに理性的な議論を行なうべきだった」と言う。

つまり、職を解いた理由がイマイチわからない、ということだ。RSとしても火をつけられたから消しておかねば、ということだったのだろうか。で、火つけたのが創造論者だというのなら「いつものあれ」なのだけど、その気配はない。

BBC記事でのコメント、3人目はProfessor Chris Higgins, vice-chancellor of the University of Durhamだ。この人のは原文からそのまま抜粋しておく。

"There should be no room for doubt - creationism is completely unsupportable as a theory, and the only reason to mention creationism in schools is to enable teachers to demonstrate why the idea is scientific nonsense and has no basis in evidence or rational thought."


BBCにあるのはこれだけ。BBCはこの件についてはそれほど不誠実なメディアではないから、ヒギンズ教授のコメントが「RSで教授が役職を解かれた件」についてのものではなく「創造論と学校教育」についてのものだということに、読むべき行間がいろいろあるような気がするのだが、これ以上は憶測になるのでこのへんで。

なお、BBC記事の上のほうに書いてありますが、Reiss教授はキリスト教の教会の聖職者、より厳密には、イングランド国教会のミニスター(牧師) (a Church of England minister) でもあられるとのことです。

Reiss教授についてのロイヤル・ソサイアティのプレスリリース:
http://royalsociety.org/news.asp?id=8008



「創造論」については、この記事が出る前日の15日に、BBC news のMagazineという読み物記事(報道ではない)に、次のような記事が出ています。

Who are the British creationists?
By Julian Joyce
BBC News
Page last updated at 17:06 GMT, Monday, 15 September 2008 18:06 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/magazine/7613403.stm

the Genesis Expo museumという創造論博物館を設立・運営しているthe Creation Science Movementという集団についての記事です。彼らは英国のhomegrownの(とかいう言葉をキリスト教方面について使うと怒られるかな)ファンダメンタリスト団体だそうです。

で、この記事に、RSのReiss教授が出てきます。
A spokeswoman for the Department for Children, Schools and Families says creationism is not included in the science curriculum because "it has no scientific basis... but it can be discussed in [religious education] lessons".

But that ruling was questioned last week by an influential figure. The Rev Professor Michael Reiss, director of education at the Royal Society, says science teachers ought to be willing to talk about creationism if students bring the subject up.

He told the British Association Festival of Science in Liverpool that while making clear creationism is not accepted by the scientific community, teachers should convey a message of respect that does not "denigrate or ridicule" children's beliefs.


……言語屋からみれば、これは、明らかに、includeの定義をめぐる混乱です。「授業中に扱う」か「授業で扱う」の違い、というようなもの。

もうみんな、自然言語なんかやめて、「∃x(Rx∧∀y(Ry⊃x=y)∧Bx)」で話せばいいんだと思うよ。
http://members.jcom.home.ne.jp/miurat/br100.htm

あと、BBC NewsのMagazineの記事のコメント欄を眺めていると(読んではいない、まだ)、「創造論はかつては支持されていたけど、もうそうではない」とか「創造論はもう古い」とかいった粗雑な説明が、「ダーウィンの進化論は仮説にすぎず、完全なものではない」みたいな科学的に誠実な言葉を「文字通り」に受け取って「解釈」する人の中で、混乱を引き起こしていることは間違いないんじゃないかと思う。キリスト教(を含む旧約聖書の宗教)というものが環境になかった身には、実体験としてはまったく遠い世界の話だけれど。

ところで、英国で「宗教的熱心さ」が、一般のニュースなどでも目に見える存在になったのは、ここ10年のことでしょう。トニー・ブレアは夫人がカトリック(アイルランド系)で、そのために子供たちはカトリック、自身も首相を退いてからカトリックに改宗しましたが、改宗前も「おお神様」系だったことは首相在任時から報道はされていました。イラク戦争の前に本気でお祈りしたとか、北アイルランドのガチのファンダメンタリストであるイアン・ペイズリー(政治家である以前に、新興の教会の設立者である)と意気投合するのに宗教談義が大きな役割を果たしたとか。まあ、ブレア本人の先祖が北アイルランドのプロテスタントだったということも大きいと思うけど。それから、第一次だっけ、第二次だっけ、忘れたけどヒラ議員から閣僚に抜擢されたルース・ケリーという女性の若い政治家は北アイルランド出身のカトリックで、オパス・デイという保守的結社の一員。この件は、ちょうど『ダ・ヴィンチ・コード』の小説のヒットと時期が重なっていたのでおもしろおかしく取り上げられていました。それからもちろん、「イスラミスト」とデイリー・メイルなどが呼んだ政治的暴力の思想が、「まったく異質のもの」として作用し、「わたしたち」つまり「キリスト教文化」の存在は多少は意識的に見える/見るべきものになってきたこと。

その10年かそこらのなかで、これは単に「偽造防止のローテーション」なのだけれども、バンク・オヴ・イングランドが紙幣でチャールズ・ダーウィンの肖像を使うことをやめてしまったりといったこともあり、また、「創造論」を唱えるグループが登録団体(charity)を立ち上げたりDVDを配布したりといったこともあり、要するに、「流れ」は確実に変化してきている、ということかもしれないと思います。

※この記事は

2008年09月17日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 23:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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