「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2008年09月17日

グラスゴー、Old Firmの「お歌」の応酬について――背景は北アイルランド紛争です。

第一印象っすか?「またか」です。ただ今回はアイルランド共和国領事館が、スコットランド自治政府とのいつもの会合の席でその話をしたということで、まあちょっとした「国際問題」になっているから、BBC Newsの記事になっているのだろうと思います。

何があった、って、これっすよ。

Concerns raised over famine song
Page last updated at 17:31 GMT, Monday, 15 September 2008 18:31 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/scotland/glasgow_and_west/7617518.stm

レンジャースとセルティックのOld Firm(意味的には「グラスゴウ・ダービー」)の試合で、レンジャースのサポが「じゃがいも飢饉は終わったんだから、アイルランド人は国に帰れ」という「移民排斥」のお歌を歌いました(この歌は、決してぬるい「サポ同士の応酬の歌」ではありません。明白に「排斥の歌」です。これ歌ってるのは「普通のサポ」じゃない)。クラブとしては「そのお歌はダメ」と言っていたのに、です。

この件、ヒナキさんのところでも触れられているし、やっぱり書いておこう、ということで書いているのですが、それ自体は「またか」、というか「ひどい雨が降って電車が止まった」的な話だと思います。でもアイルランド大使館・領事館が絡んできたので、「ひどい雨が降って橋が流されたので電車が運休、復旧のメド立たず」くらいの話になっているのだと思います。

で、この「お歌」云々は何なのかというと、すごくはしょって言うと、「北アイルランドのセクタリアニズム」なんです。なぜスコットランドでそんなものがあるかというと、Ulster Scotsという表現があるように、北アイルランドのプロテスタントは大半がスコットランド人であり、グラスゴウには19世紀半ばの「じゃがいも飢饉」でアイルランドから逃れてきたアイルランド人が多くいるから。(セルティックは、グラスゴウのアイリッシュ・コミュニティが設立したクラブで、ユニフォームが緑だし、クレストはシャムロックです。レンジャーズはスコットランドの青がチームカラーです。)両チームの試合には、北アイルランドからもそれぞれのチームのサポさんたちが出かけていきます。いつだったか、その観戦ツアーの復路の船の上でレンジャーズのサポが怪気炎をあげてなんちゃら、というニュースもありました。

IRAはスコットランドはボムってないんだが、というのは野暮なツッコミで、そういう問題じゃないんですね、レンジャーズの場合。そもそも彼らはスコットランドのナショナリズムとは逆、連合維持の側だし。ユニオン・フラッグばっかりでしょ、観客席。

というわけで、まずすごく基本的なことを、簡単に説明します。17世紀のアルスター入植でアルスター地方に移住した人たちの多くがスコットランド人で、彼らは元々そこにいた人たち(アイルランド人)から奪い取った土地に住みつきました。彼ら入植者は「プロテスタント」で、元々住んでいた人たちが「カトリック」です……というのは非常に粗雑な説明で(年号とかろくに書いてないし)、たぶんにミスリーディングかもしれませんが、正確なところはアイルランド史の書籍や資料をご参照ください。日本語ではネットでは情報は少ないんですが、英語ではネットだけでもある程度基本的なことは調べられます。例えばウィキペディアでも。
http://en.wikipedia.org/wiki/Plantation_of_Ulster

で、「19世紀のじゃがいも飢饉」というのは単なる「飢饉」ではなく、こんにちのタームでいえば「ジェノサイド」に相当する、組織的な抹殺だったというのがアイリッシュ・ナショナリスト(宗教的には大雑把に「カトリック」。でもプロテスタントでナショナリスト、という人もいます)の主張・考えです。私もそれを否定する立場ではありません。
http://www.nde.state.ne.us/ss/irish/irish_pf.html
http://www.democracynow.org/1997/3/17/potato_famine_was_genocide
※んー、もっとど真ん中でリパブリカンのサイトで同様の資料があったはずなのだが、見つからない……。

「大英帝国」の拡大期であった19世紀、アイルランドはブリテンの食糧供給地でした。そこではアイルランド人は土地を持たない小作農で(日本でいうと「水飲み百姓」)、日本の江戸時代の「年貢」のような形で、作った作物(アイルランドの場合は小麦など)を地主(不在地主)におさめ、自分たちは痩せた土地でも育つジャガイモを作ってそれを主食にしていました。そのジャガイモの病気が欧州に蔓延したのが1845年から49年の4年間。ドイツから逃げてきたマルクスがロンドンで本を書いて出してたころです。アイルランドではいくつかの要因があって病気がものすごい勢いで広がって、ジャガイモがまったく収穫できない状態になりました。でもそれはジャガイモの病気なので、麦とかは無事。

「おジャガがないのなら、小麦を食べればいいじゃない」と思ったあなたはアントワネット病。確かに、それができていればアイルランドの悲劇は起きなかったかもしれません。でも畑で作る小麦は年貢であり、自分たちの口には絶対に入らない。小作人は自分たちは食うものがない状態で、生産しているのは地主様、つまりブリテンに納める食料でした。こうして、面積にして北海道ほどのアイルランドという島で100万人以上が餓死したと言われています。(当時は正確な統計がなかったので正確な死者数は不明です。)そして、少しでも余力のある人たちはアイルランド島から脱出。米国やオーストラリアへ、そしてブリテンへ。

こうして移住していったアイルランド人については、特にアイリッシュ・アメリカンについてはけっこうよく知られているのですが(特にケネディ家。JFKやロバート・ケネディ、テッド・ケネディのお父さんのジョン・ケネディは無茶苦茶な反英主義者でした。彼については司馬遼太郎の『街道をゆく』のアイルランド編におもしろおかしく――というと語弊があるけれども――書かれていたのでそれに興味がある方はご一読を。私はあの本は「アイルランドを語る本」としては勧められないのですが、ちょっと知識と人脈がある観光客がいろいろと調べて書いた読み物としては、まあ)、当時アイルランドは「英国」の一部だったので(1800年の合同法/連合法で「グレートブリテンおよびアイルランド連合王国」が成立。その前も「独立」してたかというとNOですが)、ブリテン島に渡ったアイルランド人については、「世界史」という文脈ではほとんど光は当たりません。そうやってブリテンに渡った「アイルランド人」の子孫が名を残している事例はいくつもあるのですが(ザ・ビートルズをはじめ音楽の分野、またスパイク・ミリガンなどコメディの人たちにもアイリッシュは多い)。

ともあれ、ブリテン島の各地には、飢饉から脱出してきたアイリッシュのコミュニティ、というかスラムができました。宗教も違い(カトリック)、ノンコンフォーミスト(国教会以外の信仰を持つ者、つまりカトリックもメソジストも長老派もクエーカーも何でも)を公職から締め出す審査律こそ廃止されていた(せんはっぴゃくにじゅう……何年だったか忘れた)もののいろいろと差別も根強く、ただでさえ労働者階級の生活環境はひどかった英国でも、アイリッシュのコミュニティの環境はひときわひどかったそうです。

そういったコミュニティは、リヴァプール、マンチェスターといったイングランドの工業都市にいくつもできましたが、グラスゴウにもできた。それが現在の「レンジャーズとセルティックの対立」の背景にあります。

ちなみに、マンチェスターは「アイリッシュの移民」にとっては象徴的な街です。例えば1867年の「殉教者」事件(IRBメンバー3人が、見せしめで公開処刑された)がありますが、あれは英国がマンチェスターが「フィニアンの拠点」となることを未然に防ぐためにやった恐怖政治です。1996年にはそのマンチェスターがIRAに本気でボムられたんだから、わけわかんないです。

で、話をグラスゴウのOld Firmに戻します。まず、これは単なる「ライバルチームの対立」ではありません。より深い社会的背景があります。
http://en.wikipedia.org/wiki/Old_Firm
The competition between the two clubs has roots in more than just a simple sporting rivalry. It is infused with a series of complex disputes, sometimes centred on religion (Catholic and Protestant) and Northern Ireland-related politics (Loyalist and Republican). The result has been an enduring enmity between fans that has extended beyond the kind of intra-city footballing rivalry that might be expected in situations where two clubs dominate a country's footballing scene. This has been manifested in a history laden with sectarian violence, sometimes leading to deaths.

Rangers' traditional support has largely come from the Protestant community, while Celtic's has often, but by no means exclusively, come from those of Irish extraction. The rivalry between the two clubs has often been characterised along sectarian lines. Celtic have had a historic association with the Catholic peoples of Ireland, and some Celtic fans sing Irish Republican songs. Rangers fans are traditionally loyalists, and some of them sing songs that reflect that point of view. One effect is that Scottish flags are relatively rare among supporters, though more common amongst Rangers fans: Celtic fans are more likely to wave the Irish tricolour while Rangers fans tend to wave the Union Flag.

セルティックとレンジャーズの競争は、単なるスポーツ上のライバル関係というのとはレベルの違うところに根がある。それは、時には宗教(カトリックとプロテスタント)や北アイルランド関連の政治的要素(ロイヤリストとリパブリカン)を中心とした、複雑な争いで激化する。このため、両チームのファンの間の敵意は長く続き、同じ市にその国のリーグの支配的な強豪2チームがあるということで予想されるような、サッカーというくくりに限定された対立ではなくなっている。セクタリアンな暴力は継続的に何度も起きており、時には死者まで出ているほどだ。

レンジャーズの支持基盤は主にプロテスタントのコミュニティであり、一方セルティックはアイリッシュの系統の人たちのコミュニティが主体だ(ただしセルティックの支持基盤はアイリッシュだけではない)。これら2つのクラブの対立は、宗派の別によって特徴付けられてきた。セルティックはアイルランドのカトリックの人々との歴史的なつながりがあり、セルティックのファンの中にはアイリッシュ・リパブリカン【注:武装闘争主義のアイルランドのナショナリスト、つまり「アイルランドは島全体でひとつであり、それを実現するには武装闘争しかない」とする者のこと。乱暴にわかりやすくすれば「IRA」のこと】の歌を歌う者もいる。レンジャーズのファンはロイヤリスト【注:北アイルランドの文脈では、「北アイルランドは(アイルランドではなく)英国の一部である」とする政治的な立場をとる者のこと】であることが多く、彼らの中にはその見地からの歌を歌う者もいる。このことは、例えば、サポーターの間でスコットランドの旗【注:青字に斜めクロスの聖アンドリューズ・フラッグ】が使われることは比較的まれである、ということに現れている(この旗は、セルティック側でよりレンジャーズ側で見られることが多いが)。セルティックのファンはアイルランドの三色旗を振ることが多く、レンジャーズのファンはユニオン・フラッグ【注:英国の「ユニオンジャック」のこと】を振ることが多い。


さらに言えば、ロイヤリスト側には英国極右暴力組織(Combat 18とか)がついています。(グラスゴウのエスニック・マイノリティのコミュニティはレンジャーズよりはセルティックをサポする傾向にあります。)

現在、アルコール依存症で大変に苦しんでいるポール・ガスコイン(イングランド人)はレンジャーズ時代にゴールを決めたあとに「ロイヤリストのポーズ」(7月12日のパレードの象徴である「フルートを吹くポーズ」)をとってセルティックのサポ席を挑発し、ディシプリンになったことがあります。(スポーツは政治とは関係がないというのなら、こういうoutrightに政治的なことをするな、と。以下、罵倒を省略。)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/sport/football/46264.stm

で、2006年のBBCの解説記事によると、Old Firmがこのように「北アイルランド紛争の代理戦争」の様相を呈してきたのは1970年代、「北アイルランド紛争」(1969年〜1998年)が激化したころのことで、セルティックのサポにはIRA (Provisional IRA) のシンパが、レンジャーズのサポにはロイヤリスト武装組織のシンパがいた、とのことですが、その背景は上でざっくり解説したとおりです。

そういう中で、「じゃがいも飢饉は終わったんだから、アイルランド人は国に帰れ」という歌を歌うということが、単なるbigotryであることは明白です。

で、レンジャーズのサポがそういうことをやってクラブから注意されるというのは、もちろん、今回が初めてではないんです。アイルランド領事がスコットランド自治政府との定期会合でその話を持ち出したのは初めてかもしれないけれども。

今回の記事にある、ことの経緯の部分をおさらい:
Representations were made by Ireland's Consul General after a Celtic supporter complained about a song which refers to the Irish potato famine.

...

After the song was sung by some Rangers supporters at August's Old Firm game, a Celtic fan wrote to the Irish Embassy in London to complain.

The Irish consul general in Edinburgh raised the issue at her regular meeting with the Scottish Government.
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/scotland/glasgow_and_west/7617518.stm


2007年8月には、レンジャースのサポはインヴァネス相手にセクタリアンなお歌をプレゼントして、もう少しでクラブに制裁ということになっています:
Rangers spared chanting sanctions
http://news.bbc.co.uk/sport2/hi/football/teams/r/rangers/6962683.stm
Rangers have escaped punishment following an inquiry into sectarian chanting heard from their supporters during the SPL game against Inverness.

An SPL board of inquiry decided the club had been pro-active in tackling sectarianism within its fanbase.

But the board warned Rangers of future sanctions if supporters indulged in sectarian chanting in the future.


今年マンチェスターで行なわれたUEFAカップの決勝戦でもレンジャーズのサポは暴れたし(あれはマンチェスター警察の側がレンジャーズのサポを警戒しすぎていたという話もどこかで読んだけれど、2003年にマンチェスターの地域新聞にレンジャーズのサポは「カトリック」のマンUが大嫌いということについて記事が出てますな):
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/england/manchester/7399067.stm
※あ、この記事の写真がわかりやすい。写真の右側にある「白地に赤の十字に真ん中に星、星の中に赤い手」は北アイルランドのユニオニスト/ロイヤリストの使う旗です。相手はロシアのチームなのにこの旗があるということは、北アイルランドのレンジャーズ・サポかな。

で、こういう問題が前回起こったのはレンジャーズじゃなくてセルティックなんです。

BBCでは昨年11月。一部のサポ(20人くらい)が「IRAのお歌」を歌った、と。

Celtic Trust in IRA war of words
Last Updated: Tuesday, 20 November 2007, 18:16 GMT
http://news.bbc.co.uk/sport2/hi/football/teams/c/celtic/7104362.stm

ただ「IRAのお歌」というのが、基準が非常に恣意的で、単にアイルランドの独立戦争で歌われた(したがって「IRA」が歌っていた――といってもその「IRA」は「北アイルランド紛争」の「IRA」とは別組織と考えるべきかもしれないのだけど、歴史的には)戦意高揚の歌がそう位置付けられることもあれば、完全にProvisional IRAへの支持の歌の場合もあり、そこでもめることもあるから、セルティック側のはもう見ないことにしてます。付き合いきれない。

BBCの外では、今年3月にセルティックがやってますね。

Uefa investigate Celtic chants
Sectarian singing being examined
Mar 28, 2008
http://european-football.suite101.com/article.cfm/uefa_investigate_celtic_chants
A Uefa spokesman said: "We have received some footage showing Celtic supporters singing some alleged anti-Queen and pro-IRA songs - sectarian songs. If the investigation is conclusive, a disciplinary case would be opened."

しかしこれ、SPLの話じゃなくて、UEFA CLでの話で、相手はバルサなんだよ……女王もIRAも関係ないじゃん。いや、関係はまったくないとは言えないのだけど(スペイン→バスク独立武装闘争主義ETA→IRAとがっつりつながっている)。でもバルセロナでそれ歌っても……。

その前のシーズンにやはりCLでスペインの(というかバスクの、ともいえる)Osasunaと対戦したレンジャーズが、同じくセクタリアンなお歌を歌って罰金、ということがあったそうです。

こんなふうにしょっちゅうあるから、今回あったというのも「またか」なんです。単に領事館が出てきた、というのがインパクトあるだけで。それもガチで外交問題にする気はないだろうから、特に何かが発展するとも思えない。ハードコアなあの人たちはいつまでもずっとセクタリアンなお歌を歌い続けるでしょう。

ただ、こうやってBBCが大きく取り上げることで、Kick out the Racism/Bigotry的なキャンペーンの効果はあると思います。次の世代は「うは、おっさん、かっこわる」と思うようになるだろうし。

ちなみにセルティックの問題のお歌はたぶんこれ:
http://home.wanadoo.nl/maarten.geluk/songs/celtic.html
Say Hello to the provos
say hello to the brave
say hello to the provos
and Ireland shall be saved
keep the faith in the provos
keep the faith in the brave
keep the faith in the provos
and Ireland will be saved
So bring on the peelers by the numbers
bring on the loyalists by the score
you're orange sash's a fuckin rag
and fuck your fascist uk flag
because we are gonna set dear Ireland free

Provisional IRAに挨拶を/勇者たちに挨拶を/Provisional IRAに挨拶を/そしてアイルランドは救われる
Provisional IRAを信じよう/勇者たちを信じよう/Provisional IRAを信じ続けよう/そうすればアイルランドは救われる……以下自粛します

あと、いくつか「単なるIRAのお歌」みたいなのがありますが、内容は「アイルランドの愛国歌」と区別がつかないので(明らかにテロリストを賞賛するプロパガンダソングはない)この辺で。

一方レンジャーズのほうは……えっと、問題のその「国に帰りやがれ」の歌は見つからないんですけど……セルティックとは比べ物にならないほどすごいですな。あからさまなセクタリアン・ビゴトリーの見本市であり、ロイヤリストの歌の見本帳。
http://home.wanadoo.nl/maarten.geluk/songs/glasgow.html
For Ulster is my heritage and Ulster is my cause
I laugh at her futility her glory is a fraud
But im bleeding heavily and I must go to God
Im leavin' the Armagh Brigade

これ↑は単にロイヤリストの伝統的な歌であって、サッカーとは何も関係ない。7月12日に歌うような歌。
ttp://www.lol.1960.50megs.com/whats_new.html

We're comin', We're comin', We're comin' down the road
we're the volunteers of the UVF and we're comin' down the road

↑これは単にUVF(ロイヤリスト武装組織。カトリック側の「IRA」に相当する組織のひとつ)の歌であって、サッカーとは何の関係もない。

次はあまりに強烈なので、単なるコピペなのですが、一部伏字にします。「4文字語を消す」わけではありません。いくらなんでもひどすぎる。あからさまな反カトリック。私が見るに耐えない。How moronic these words are!
We hate roman catholics, we hate nuns too
we hate bishops and priests (THE'RE *****s)
but the Rangers we love you

If you want to go to heaven when you die
you must wear a rangers scarf and rangers tie
you must wear a Rangers Bonnit
With FUCK THE POPE upon it
if you want to go to heaven when you die

Who *****ed all the boys, who *****ed all the boys
celtic boys club celtic boys club
you **** all the boys

Neil Lennon's illegitimate
He aint got no birth certificate
He's got **** and cant get rid of it
He got *****ed in confession

The pope he is a N***
He was in ******* youth
And he likes to bless the wee ***** ****
cos he's a fuckin ****

You're only whores poofs and junkies
Whores poofs and junkies

最後のほうで最大限に侮辱され、さらにまた侮辱されているニール・レノンは、この歌が歌われていたときにはセルティック主将だったのだろうと思いますが、彼の出身は北アイルランドです。北アイルランドのカトリックで、1994年から北アイルランド代表でプレイしていました。代表の主将だったこともある。でも「統一アイルランド」(アイルランドの南北分断の解消)を代表するチームでプレイしたいと発言した、とされたことから、ロイヤリスト武装組織の中で最も過激で何をするかわからないLVFから「ぶち殺す」という脅迫を受け(LVFでは自分たちはやっていない後から弁解しているらしいけど)、2002年に代表を引退しました。年齢的なこともあったかもしれないけど(当時30歳)、それにしても……ね。
http://en.wikipedia.org/wiki/Neil_Lennon

というところで、長くなりましたが、Old Firmについては、ほかの「都市ダービー」と同様には考えられません。これがごくありきたりな「都市ダービー」になるときが、本当の「紛争の終わり」だろうと私は思っています。北アイルランド紛争は政治的に、また手続き的に終わったことになっているだけで、真相究明も進んでいないし、紛争のメンタリティも終わっていない。人口160万とかのちっちゃいところで、30年以上も続いてきたあれは、全然終わっていない。でも前に進まなきゃ、という段階なのです。その残り火が、なぜかグラスゴーで燃えている。

なお、セルティックとレンジャーズについては、2006年に北アイルランドで発生したセクタリアン暴力事件(カトリックの中学生がロイヤリストのモブに撲殺された事件)についての記事もご参照ください。

2006年05月18日
セルティックのユニとレンジャーズのユニ――Ballymena少年襲撃殺人(2)
http://nofrills.seesaa.net/article/22305830.html


'Sectarianism' victim is buried
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/4989800.stm

この写真を見て、「100%悲しい」というわけではない涙を禁じえなかった。

純白の棺を肩にになって先頭に立った、マイケルと同年代と思われる男の子2人は、ひとりは緑のシャツ、もうひとりは青のシャツである――セルティックとレンジャーズのユニ。(セルティックはアウェイ用。)


そうそう、この事件(少年撲殺事件)、容疑者が起訴され、被告は罪状認否で有罪と述べました。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/7619153.stm



追記:
スコットランドのフーリガニズムについては、2005年にBBCのPanoramaが特集を組みました。下記から、トランスクリプトが入手できます。

Scotland's secret shame
http://news.bbc.co.uk/2/hi/programmes/panorama/4284023.stm

あと、この件についての記事のクリップは下記に。
http://b.hatena.ne.jp/nofrills/Scotland/sectarianism/

なお、私はこのトピックについては、軸足はアイリッシュ・ナショナリズムの側に置いています。それゆえの偏りはあると思います。しかし私はアイリッシュ・リパブリカンの武装闘争を一切支持しません。



しかし仮に今 "Say hello to the provos." と歌ったら問題になるのだろうか。指定テロ組織へのサポートを公の場で公然と表明することは「対テロ法」か「テロ法」で違法行為 violation になるはずだけど、そもそも今のProvosはどうなのだろう。むしろProvosではないIRA(Real IRA, Continuity IRAなど)がまずいというのが2007年からあとの状況で、2007年のSinn Fein党大会で「警察をサポート」を圧倒的多数で決めたことで、Provosは「無害化」されたのではなかったか、つい先日のIMC報告書@第19次で認められたように。。。というのはジョークです。法はそんなに早くは追いつかないということはわかってるので。

※この記事は

2008年09月17日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 08:54 | Comment(4) | TrackBack(5) | todays news from uk/basic | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
関連して:
Celtic visit is 'unlikely' for MP
Page last updated at 12:32 GMT, Friday, 19 September 2008 13:32 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/7625293.stm

DUP所属、つまりロイヤリスト/ユニオニスト側の政党の所属で、北アイルランド自治政府でスポーツ大臣をしている政治家が、セルティックからの招待を、「IRAのお歌」を根拠に、断りました。

いろいろと思うところがある話なのですが、とりあえず記事リンクだけ。
Posted by nofrills at 2008年09月19日 23:06
関連、もう1件。8月31日にグラスゴウで、セルティックのコーチをしているニール・レノン(元セルティック主将)が夜、路上でボコられ意識を失うという事件があったのですが、それがどうやら、初期報道のとおり、セクタリアンなものだということで裏が取れたみたいです。

警察が事情を聞きたがっている男2人のCCTVの映像(暴行現場ではなく歩いているところ)を、警察が公開しました。

Images issued over Lennon attack
Page last updated at 12:58 GMT, Friday, 19 September 2008 13:58 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/scotland/glasgow_and_west/7625395.stm
Posted by nofrills at 2008年09月19日 23:23
先日、IRAをめぐるガセビアについてちょっと書いたときにも触れたのですが:
http://nofrills.seesaa.net/article/107659374.html#more

ニール・レノン襲撃事件は、かなりひどい方向に展開しています。13日のベルファスト・テレグラフ。

Fury over "Punch Neil Lennon" game
http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/local-national/fury-over-punch-neil-lennon-game-14000399.html

これについては、改めてエントリを起こすべきだと思うので、また改めて。
Posted by nofrills at 2008年10月15日 03:23
今週火曜日(28日)のカップ戦でのレンジャーズの試合(対ハミルトン)の際、警察がレンジャーズのサポに対し、「飢饉のお歌を歌ったら逮捕する」と警告し、実際、試合会場では飢饉のお歌は出なかったそうです。先週土曜日(25日)にはアウェイ戦でレンジャーズの観客席の一部からこのお歌が聞こえてきたとか。
http://news.bbc.co.uk/sport2/hi/football/scot_prem/7696302.stm

何と言うか、その……子供をしつけるときに、「そういうことをするとどんな結果になるのか考えてごらんなさい」ではなく、「そういう悪いことをするとあのおじさんに怒られるよ」っていって、とりあえずいうことをきかせる、というのがありますね。根本的には何にもならないような方法ですが。
Posted by nofrills at 2008年10月30日 13:08

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「飢饉は終わった」発言と「脅迫」――NIサッカー、場外乱闘(言語的に)
Excerpt: 「またか orz」感満載。サッカー北アイルランド代表のエースストライカー、デイヴィッド・ヒーリーに対する脅迫があるそうです。(「またか」ってのは、ニール・レノンの件があるから。後述。)まあ、「脅迫」っ..
Weblog: tnfuk [today's news from uk+]
Tracked: 2008-10-26 21:32

Old Firmのお歌の件(アップするの忘れてた)と、フットボール界のbigotry問題
Excerpt: レンジャーズのサポの一部が試合のときに歌う、例の「飢饉の歌 Famine song」に、事実上「強制力のある禁止命令」「が出されました。
Weblog: tnfuk [today's news from uk+]
Tracked: 2008-12-28 00:29

18年ぶりに、アイルランドとイングランドが「親善試合」を行なう。
Excerpt: 今日(現地29日)、ウェンブリーでは、イングランドとアイルランド共和国の親善試合(サッカー)が行われる。 Just 9 hours until kick-off #morethanafriendly..
Weblog: tnfuk [today's news from uk+]
Tracked: 2013-05-30 03:25

来期からSPLで復活するオールド・ファームのライバル関係について、今から半笑いしておく。
Excerpt: 4年前の2012年、スコットランドのサッカー、プレミアリーグの強豪のひとつ、レンジャーズFC(Rangers FC: RFC)が、4部リーグにまで格下げされた。理由は、サッカーそのものとは関係のない、..
Weblog: tnfuk [today's news from uk+]
Tracked: 2016-04-18 00:01

UEFAチャンピオンズリーグ予選で、ベルファストのリンフィールドとグラスゴーのセルティックが対戦する。
Excerpt: UEFAはたぶん気にかけてもいなかったのだろう。気にかけていれば、別組になるようにしたんじゃないか(例えば「スペインとジブラルタル」のように)とも思うが、代表ではなくクラブの大会だからそういう配慮がな..
Weblog: tnfuk [today's news from uk+]
Tracked: 2017-07-05 23:37

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

……全文を読む
▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼















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