「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2008年08月29日

【雑学系】法廷の木槌

「人力検索はてな」で次のような質問があった。
アジア以外の映画で、裁判官が「開廷のとき」「判決を下すとき」「閉廷のとき」などに、【木槌を打ち鳴らす】シーンがあるものはないでしょうか。
http://q.hatena.ne.jp/1219736343

今週、マーガレット・サッチャーが認知症だというニュースがあって、複雑な気分のなか、ジェリー・コンロンの再審・無罪確定は1989年、サッチャー政権下だったよなあ→『父の祈りを』に彼女の発言が出てこなかったっけかと思って見ていたので(出てきてなかったみたい)、この映画の「木槌カンカンカン」のシーンについての説明をはてなでの回答に入れておいた。こうやって見てみると、映画が「音」についてどう組み立てられているのかが見えて非常に興味深い。ただ見ているだけでは気付かなかったことにいろいろ気付いた(音楽とか、映像のつなぎ方とか)。

というわけで、以下はこの木槌について。

本当はいろいろと細かなルールがあるのかもしれないが、木槌を連続して打ち鳴らすのは基本的には「静粛に」の意味 (call to order) だ。映画では、開廷時・閉廷時に限らず、法廷内がざわついら木槌の連続音が鳴り響き、これは緊張感・臨場感などを高める演出としてもよく使われる。例えばThe Untouchablesのクライマックス、アル=カポネ有罪のシーン(アル=カポネが暴れる)など、木槌を叩く判事をローアングルでとらえ、木槌の下の台が飛び跳ねるさまをとらえた映像を使っている。(ちょっと可笑しい。)

閉廷のときは一度だけ「カン」と鳴らす。判決を申し渡すときは、「被告人を〜とする」と述べた後に一度「カン」だ。

BBCなどでは、「かくかくしかじかの裁判で判決」のニュースのときのイメージ写真として、この「木槌」の写真が出ることがある。
http://f.hatena.ne.jp/nofrills/20080829004123
開廷のときは……映画などで見たというはっきりした記憶がないのでわからない。『父の祈りを』でも開廷の木槌がはっきりしているシーンはなかった。(一審のシーンでは柵を閉める音と開廷の音が重ねられるという演出がされている。再審のシーンでは、開廷時に「木槌カンカンカン」があるが、傍聴席がコンロンらを迎える歓声を静めるために何度か打ち鳴らされているもので、一般的な開廷シーンとはいえないだろう。)

ところで、あの木槌は英語で何と呼ばれているか。hammerではなくて、えっと……私は確実に「知っている」のだが、度忘れして出てこない。隔靴掻痒。頭がむずむずする……のでネットで調べてみることにした。

まずは、「競売にかけられる」ことを go under hammer と言うことから、「court judge hammer」でgooでEnglishで検索するも、「ハンマーで人を殺した男に有罪判決が申し渡された」みたいな記事ばっかりだ。「court hammer」にしてみたら、「ハマー」という名前(名字)の人とテニス「コート」みたいなのもあって、セマンティック・ウェブ・カモーン、という気分になる。

じゃあ、とWikipediaでhammerの項を参照するも、「法廷で裁判長がカンカンやるあれ」については記載がないようだ。

では、ということで「木槌」を和英辞典で参照してみると、a malletとある。うん、でも「マレット」じゃないんだ、私が度忘れしてるのは。でもそれが何なのかが全然思い出せない。ますます隔靴掻痒。

そこで、「mallet court judge」で検索してみると……あったー。

The hammer, the mallet and the gavel/Hammer und Schlegel
http://www.jurablogs.com/de/the-hammer-the-mallet-and-the-gavel-hammer-und-schlegel
Further to the last entry, I wondered how an auctioneers hammer - the British equivalent - was taken to the USA and became a gavel, and I also wondered what the judge actually does with the gavel. Wikipedia was helpful here: ...

これだー、度忘れしてたのはこれ、gavelだ。

あとこれ、Yahoo! のQ&Aサイトの回答から:
http://answers.yahoo.com/question/index?qid=20071114111936AAdvuMD
Generally a judge in order to get everyone quiet and seated would pound the gavel (wooden hammer/mallet) to get attention and say something like "Order in the Court".

# ……いかん、この実例を見ると「なぜ "the" gavelなのか、"a" gavelではないのか」を考えたくなってくる。←これはたぶん結論出ないので、やめといたほうがいいです。

ケンブリッジ辞書から:
http://dictionary.cambridge.org/define.asp?key=32338&dict=CALD
gavel
noun [C]
a small hammer which an official in charge of a meeting hits against a wooden block or table to get people to be quiet and listen


というわけで、あー、スッキリした。でもDictionary.com Unabridgedによると
[Origin: 1795-1805, Americanism; orig. uncert.]

アメリカニズムだったのか。

でもこれ、やっぱgavelって言ってるよ。
http://uk.youtube.com/watch?v=g_oMeNJfLEI

First Judge: Objection here, objection there! And that nice policeman giving his evidence so well - beautiful speaking voice ... well after a bit all I could do was bang my little gavel.

Second Judge: You what, love?

First Judge: I banged me gavel. I did me 'silence in court' bit.
http://orangecow.org/pythonet/sketches/poofyjud.htm

... and I waggled my wig!

ちなみに、ウィキペディアによると:
http://en.wikipedia.org/wiki/Gavel
It is customarily struck to indicate the opening (call to order) and closing (adjournment) of proceedings, giving rise to the phrase gavel-to-gavel to describe the entirety of a meeting or session.

なんか、"gavel-to-gavel" って、それを使うシーンのフォーマルさがイメージできる感じ。単に「始めから終わりまで」っていうより堅苦しい。

ついでに「マレット」も。
http://en.wikipedia.org/wiki/Mallet
A mallet is a type of hammer with a head made of softer materials than the steel normally used in hammerheads, so as to avoid damaging a delicate surface.

つまり、「金槌」とは違い、ヘッド部分が柔らかい材質でできているものを「マレット」という。ヘッドに使われるのは、ゴム、木、銅、鉛など。料理道具の「肉たたき」も「マレット」と言う。また、金槌のヘッド部に革をかぶせたものや合成樹脂でヘッドを作ったものが、彫金や革細工で使われている。また、木琴などの撥(ばち)、鼓笛隊の「大太鼓」の撥も「マレット」というし、クロッケー、ポロで使われるあれも「マレット」だ。

あと、ウィキペディアによると、「ピコピコハンマー」も英語ではmalletという。
Mallets are commonly used as children's toys. Lightweight wooden mallets are used for peg toys. Toy mallets are also used in games such as Whack-a-Mole. Another type of toy mallet is a plastic mallet made of soft, hollow vinyl, with bellows and a built-in whistle, so that when the mallet is struck, it produces a sharp, chirping sound.

※この記事は

2008年08月29日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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