「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

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2008年06月25日

「不快」との「苦情殺到」で打ち切りになったCMは、ほのぼのホームドラマ

まずはこのビデオを見ていただきたい。英国で放映されていた映像だ。30秒もないし、英語を聞き取らなくても映像を見るだけでわかる内容だし、とにかく、何も言わずに見ていただきたい。

http://uk.youtube.com/watch?v=Xl0bkv0jCCM&NR=1

※記事末尾に一応解説を。

どう感じられただろうか。私はかなりほのぼのとした気分になった。

ところが実際には、これが放映された英国では「不快」に感じた人々からの苦情の電話が殺到、という事態になっている。

デンマークでの「ムハンマド戯画騒動」のときに「連中にはユーモアがわからんのですよ、一方我々にはモンティ・パイソンの『ライフ・オヴ・ブライアン』があります」とかぶっこいてた英国が、シャーリア法の国で同性愛者の迫害という問題があると聞けば「イスラームは同性愛者を阻害し排斥している、一方我が国ではcivil partnershipの制度があり云々」とアジる「リベラル」が(少しは)いる英国が――まあ「英国」という人格があるわけじゃないけどさ、いいじゃないの、カタいこと言いっこなしよ――、男の子と女の子とパパ(男)とママ(男)の「家庭」が、たった30秒、テレビの画面から流れてくることに耐えられない。

最高のジョークだ。笑えない類の。(何が「我が国にはマグナカルタ以来のcivil libertyがあり」云々だ、笑わせんな。←ジョークのつもり)

Heinz pulls ad showing men kissing
Mark Sweney, Tuesday June 24, 2008
http://www.guardian.co.uk/media/2008/jun/24/asa.advertising

実際、この件について最初は何かの配信で「ゲイのキスでマヨネーズのCM打ち切り」みたいなセンセーショナルな見出しで知ったので、こういうの↓程度に成人向け(マヨネーズつき)でどぎつすぎたのかと思ったら、全然、ほのぼのホームドラマじゃんね。

http://uk.youtube.com/watch?v=FORTVwAS3og

※これはCM大賞を受賞した有名なCM。1993年。

なお、打ち切りとなったCMはハインツの「ニューヨーク・デリ」というシリーズのマヨネーズのもので、「これさえあればデリのようなサンドイッチが家庭でお手軽に」という主張が根底にあるが、あまり声高にそれをアピールしているわけではない。にもかかわらず、商品がかなり強く印象に残ったので、CMとしては大成功なのではないかと思う。

(どのくらい強く印象に残ったかというと、もし英国に住んでいたら、「次にスーパーマーケットに行ったときにラベルくらい確認してみてもいいかな、ヴェジタリアン好適マークの有無くらいは見てもいいよね」と思いつつ、「ちっ、ちがうもん、資本主義のスーツ族に踊らされてなんかいないもん! CMでイメージ操作されて買わされるんじゃないもん!」という言い訳を心のどこかに用意していたに違いない、というくらいにだ。)

それだけでなく、きぃきぃうるさい人たちが「苦情の電話」をかけまくったおかげでこのことが新聞などで報道され、今の新聞報道はネット経由で全世界に流れるから、全世界で人々がこのことを話す、ということになる。YouTubeなど動画サイトでも多くの人が検索してみるだろうし、新聞社のサイトにビデオがアップされているケースもある(ガーディアン)。(※ただし私の環境ではなぜか見えない。ブラウザをバージョンアップしたせいかも。)

結果、ハインツのマヨネーズは世界的な知名度を獲得し、英国は「ホモフォビアの国」というイメージを獲得する。おめでとう。

結局はハインツのマーケティング策が大成功した、ということだ。

……なんてことを秒速100メートルくらいで思ったら、やっぱりそういうことを書いてる人がいた (via Google Blog Search)。コムラード!!

それと、ハインツはUSの企業だし、こういうネタならハフィントン・ポストっしょ、と思ったら期待以上のものが。

http://www.huffingtonpost.com/2008/06/21/oreilly-on-new-heinz-ad-i_n_108445.html
Fox News host Bill O'Reilly spent some time on Friday's show crying out against the ad. His comments (via ThinkProgress) below:
So why are they doing that? Why -- it was. It was obviously a gay thing. Now I don't know what the message is, other than gay people like mayonnaise. ... I'm confused. This whole gender blending thing. It's confusing to me. ... I just want mayonnaise. I don't want guys kissing.

「マヨネーズがほしいだけだ。男同士のキスなど見たくはない」か。いろいろ応用可能だ。「サントリーのプレミアムモルツがほしいだけだ。ヤザワなど見たくはない」とか、「ソニーのBlurayのめんどくさそうな機械がほしいだけだ、ヤザワなど見たくはない」とか。



【CMの内容】
男の子(イングランド南部訛り)がキッチンに駆け込んで「ハムサンドね、ママ (Mum)」。

デリのキッチンスタッフのようななりの男が「ママ」に反応しているような間。ほどなくニューヨーク訛りで「できてるよ」と言い、男の子にサンドイッチの包み(お弁当)を渡す。男の子去る。

続いて女の子が来て「あたしには? What about me?」。「ママ」が女の子の口調を真似て「あなたには What about you?」と言いつつ、ハインツのマヨネーズをパンに塗ってハムサンドを作る。「ハムをおまけしてあげたよ、お兄ちゃんにはナイショね」。「ありがと、ママ」で女の子去る。

スーツの男来る。慌てた様子で「じゃあいってくる See you tonight, love」と言う。

デリの男、スーツの男を呼び止める。「わすれもの! Hey, ain't you forgetting something?」(ここ、イングランド訛りを真似てるように聞こえる)

スーツの男、口を大きくあけ、それから力が抜けたように笑ってデリの男に歩み寄り、キス。(ここでのデリの男の足がかわいい。)「いってらっしゃい Love you!」

ハインツのマヨネーズの瓶の映像に切り替わって、デリの男のNY訛りで、「寄り道しないで帰ってこいよ Straight home from work, sweet cheeks」

参考:
http://www.huffingtonpost.com/2008/06/16/heinz-mayo-ad-features-tw_n_107337.html
http://www.guardian.co.uk/media/2008/jun/24/asa.advertising

あと、YouTubeのコメ欄によると、NYのデリの人のようなかっこうの「ママ」を演じている俳優さんはAlfred Sauchelliという名前で、アメリカの映画やテレビドラマに出ているらしい。YouTubeには「Alは私のおじです」という人もコメントしている。

なお、この商品は元々子供が見る時間帯には放映できなくて(高脂肪の食品)、今回の打ち切りの決定は「子供に悪影響」云々というSection 28 (now defunct) じみた話ではない。単に「保守派」が自分にとって不快だということで電話かけまくったのだろう。



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タグ:LGBT

※この記事は

2008年06月25日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 01:18 | Comment(0) | TrackBack(1) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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ハインツ続報:ホモフォビアな電凸→CM打ち切り→ゲイ・ライツ運動が商品ボイコット
Excerpt: 先日「パパ」と「ママ」がどちらも「男性」であるというシヴィル・パートナーシップな「家庭」のあわただしい朝の光景を描いたハインツの「ほのぼのホームドラマ」のCMが、「男同士であんなこと、けしからん!」と..
Weblog: tnfuk [today's news from uk+]
Tracked: 2008-07-01 23:09

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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