英国は総選挙モードだが、総選挙が微妙に微妙な存在である北アイルランドではかなりの程度は通常運転のようだ。ストーモントの自治議会はもちろん、ウエストミンスターの国会とは日程的には関係ないので、通常モードで運営されている。総選挙では、前回2010年に「妻が若い愛人を作っていた」とか「妻がその愛人に便宜をはかっていた可能性がある」とかいったスキャンダルに見舞われたDUP党首が議席を落とし、アライアンス党のナオミ・ロングが議席を取った東ベルファスト選挙区は注目されているが(今回、DUPは数年前にベルファストのロード・メイヤーをつとめた若手をこの選挙区の候補者としている)、全体的には、北アイルランドでどういう選挙結果になるかより、ブリテンでの結果(おそらく、2010年と同じ「単独過半数なし」のhung parliamentになるだろうと見られている)次第で北アイルランドの地方政党がウエストミンスターの中央議会で持ちうる影響力についてがもっぱらの関心事であるようだ。
といっても、注目されているのは宗教右翼(キリスト教原理主義)のDUPだけなのだが。(シン・フェインは「議会不出席主義」のため議席をいくつ獲得してもウエストミンスターの政治には関わらないし、ほかの政党は物の数に入るほどの議席数は獲得しそうにない。ちなみに
2010年の北アイルランドでの選挙結果はこちら。)
そのDUPが、2010年ごろは多少は「現代化」する気配を見せていたのだが、
2012年12月以降ダラダラと続いた「旗騒動」後に、その「リベラル路線」は完全に消えた。北アイルランドでは、「保守強硬派」で鳴らして出世したユニオニスト政党のリーダーが「リベラル」路線を取ると失脚することになるというジンクスがあり(UUPのデイヴィッド・トリンブルが典型)、ピーター・ロビンソンはそういうふうにはなりたくなかったのではないかとも言われている。その結果として、2013年後半の「ハース交渉」は、あれほど時間と人手をかけて交渉したのに合意に必要な「妥協」がなされなかったのだが、その後もDUPの「強硬」路線は維持。というか、ストーモントの議会が機能してんのか、という状態。
ほかの政党、というかシン・フェインにも「過去」という問題がついて回り(彼らは「過去」について、北アイルランドで望まれているような態度は取らないだろう。なぜなら「北の政党」ではなく「全アイルランドの政党」なので)、北アイルランドでは「政治が機能してんのか」という点についてのジョークが今もまだ定番化したままだ。「紛争」が終わって、15年以上経過しているのに。
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