海外で報道される国会議員の南京事件否定論
http://d.hatena.ne.jp/good2nd/20070620/1182312753
good2ndさんの記事では、英語メディアから5本の記事がリンクされているが(詳細は後述)、これら5本のうち唯一通信社配信記事ではないのがBBC記事。東京特派員で、クジラからロボットから靖国まで何でも書いているChris Hoggさんが書いている。
私はふだんから一日一度はBBC Newsのサイトを見ているので(このブログ全体を参照)、以下において、このBBC記事について解説を試みようと思う。
Japan MPs play down 1937 killings
※記事タイトルは「日本の国会議員、1937年の殺戮はさほどのものではないと主張」といった内容。
By Chris Hogg
BBC News, Tokyo
http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/6768847.stm
まず注目に値すると思われる点は、1937年12月の南京での悲惨かつ非道な出来事について、BBCはkillings(殺戮)という語を使っており、mass killingsとかmassacreといった語は使っていない、という点である。とだけ書くと修正主義な方々が喜びそうだが、BBCは用語法には極めて慎重で、例えばterroristという語は誰かの発言の引用でもない限りはめったに用いられない。Disputeしている「アルメニア虐殺」についてもkillingsという語が用いられるか、あるいは引用符つきで"genocide"とするかである(ただし記念碑の名称など固有名は別)。
記事の冒頭を直訳で。
日本の与党に所属する国会議員の一団(a group)が、1937年に南京で日本軍に殺された人の数を中国が誇張していると主張している。
【写真:明示されていないが南京の記念館? 壁に貼られた大勢の人の顔写真の前に立つ人の横顔、APの資料写真か】
【写真キャプション】中国は、南京攻撃の期間中におよそ30万人が日本軍(the Japanese)によって殺されたと主張
東京にて、与党の自由民主党の右派(the right wing of the governing Liberal Democratic Party)に属する国会議員たちが、自分たちが組織だてて1ヶ月間行なった研究の結果、死者数は2万であることがわかったと主張した。
BBC記事にはその「議員の一団」の規模についての言及はないが、IHT掲載のReuters, The Associated Press記事では、冒頭で、「与党議員およそ100人(About 100 Japanese governing party lawmakers )」としている。
なお、上では「研究」という訳語を当ててあるが、これはその「議員の一団」、つまり「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の用語を使うならば「検証」である。BBC記事にあるstudyの語には「検証」の意味合いは感じられないので「研究」という訳語を用いた。「1ヶ月間」で「研究」というのもちょっと変な感じがすると思われるかもしれないが、「研究」というのはBBC記事の筆者の語の選択であり、さらには私の訳語の選択であり、そこに「翻訳」につきものの「ずれ」が関わっている、ということを申し添えておきたい。
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