「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=


2026年01月01日

別のブログで書いています。

こちらのブログはしばらく新記事を上げていません。書くときは、もうひとつのブログで書いていますので、そちらにおいでいただければと思います。
https://hoarding-examples.hatenablog.jp/

Haven't updated this blog for a while. I've been on another blog, hosted by Ha-te-na Blog. (Ha-te-na means 'question mark'. It does not in any way related to the English word 'hate'.) Thanks.
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2024年06月28日

「私が死ななければならないのなら、あなたは必ず生きなくてはならない」展(東京・六本木、WAKO WORKS OF ART, 2024年)

ものすごく久しぶりにこちらのブログの管理画面を開いたのは、今から書こうとしていることは、はてなブログよりも、こちらのほうが適していると思うからだ。

「書く」というより「覚え書きを残しておく」というべきか。

2024年5月17日から6月29日の日程で、東京・六本木のWAKO WORKS OF ARTというギャラリーで、「私が死ななければならないのなら、あなたは必ず生きなくてはならない」という展覧会が開催されている。2023年12月に、ガザ市で、イスラエル軍の標的とされて爆殺された(すなわち「暗殺された」)ガザのイスラミック大学教授で詩人でもあったリフアト・アルアライール教授(以下「リフアト先生」)が、最後にTwitter/Xで一番上に表示されるようにピン留めしていった自作の詩に基いた、というかその詩にインスパイアされた企画である。会期も終わりが近づくころになってようやく、六本木まで足を運ぶことができ、このギャラリーでは「写真撮影可、非営利での利用可」となっているので、撮影してきた写真とその他の情報をここにまとめておこうと思う。

"If I must die" というリフアト先生の詩自体が、米国の「ハーレム・ルネッサンス」の幕開けを告げたクロード・マッケイによる "If we must die" を下敷きにしているという。そして、"If I must die, you must live to tell my story" と始まり、"If I must die, let it bring hope. Let it be a tale" と結ばれるリフアト先生の詩は、世界中の翻訳者によって数多くの言語に翻訳され、街角のミューラルに描かれ、パレスチナ連帯・ジェノサイド反対の抗議行動のプラカードに書かれ、俳優によって朗読され、俳優でない人々によっても朗読され、言葉ではない別の形での表現を触発し、多くの人々の手によって、本当に、taleになりつつある。再話され、アレンジされ、連綿と受け継がれていく物語になりつつある。

展覧会の概要は下記:
https://www.wako-art.jp/exhibitions/ifimustdieyoumustlive/
このたび、ワコウ・ワークス・オブ・アート(六本木)では、2024年5月17日(金)から6月29日(土)まで、オランダ出身の作家ヘンク・フィシュのキュレーションにより、パレスチナ出身の詩人や画家の作品にフォーカスした展覧会『If I must die,you must live』を開催します。 本展のタイトルは、パレスチナの詩人リフアト・アルアライール(1979 年生まれ)が2011年に書いた詩の冒頭部分です。2023年の11月にこの詩をSNSに投稿した彼はその翌月、イスラエル軍の空爆により絶命しました。アルアライールが残したこの詩が、本展全体を通底するメッセージとなっています。
……
世代の異なる作家たちの想いや言葉が響き合う本展を通して、現在もなお苛酷な状況下にあるパレスチナの人々に思いを巡らすきっかけとなれば幸いです。フィシュの出品作のタイトルは私たちに問いかけます。 “Que sais-je?”(私は何を知っているのか?)と。 ぜひこの機会にご高覧いただきたく、ご案内申し上げます。


参加アーティストは、ヘンク・フィシュ、ムスアブ・アブートーハ、リフアト・アルアライール、スライマーン・マンスール、奈良美智。うち、詩人であるムスアブ・アブートーハは壁面の展示はなく、1人1部で配布されているブックレットに詩が掲載されていた(英日対訳)。このほか、書籍や地図も展覧会の一部となっていた。

ブックレットの表紙:
ブックレットの表紙
If I must die, you must live


ブックレットの目次:
ブックレットの目次
CONTENTS
目次

Introduction
Henk Visch
はじめに
ヘンク・フィシュ

6 poems
6つの詩
Mosab Abu Toha
ムスアブ・アブートーハ

Poetry of Resistance
レジスタンスの詩
Henk Visch, Irene Veenstra
ヘンク・フィシュ
イレーネ・フェーンストラ

If I must die
Refaat Alareer
私が死ななければならないのなら
リフアト・アルアライール
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2022年12月19日

アメリカのジャーナリストたちと一緒に、Twitterアカウントを凍結された件について、経緯を詳しく書いておく。

日本語圏でこんな目にあわされたのは、どうやら、私ひとりのようだ。

米国で、一流の仕事をしているジャーナリストたちが次々とTwitterアカウントをサスペンド(凍結)されていたとき、私も東京で同じ目にあわされていた。理由も、おそらくは同じだ――Twitterを手中に収めてやりたい放題のイーロン・マスクが所有するプライベート・ジェット機の居場所の公開情報を、Twitterにフィードしていたアカウント、「イーロンジェット」が、Twitterを追い出されたあとでMastodonに新設したアカウントのURLを、Twitterに貼ったこと。

私はジャーナリストではないのだが、Twitterではなぜか昔から(遅くとも2009年7月ごろから)「インフルエンサー」と位置付けられている(そのころにたくさんあった「あなたのTwitterを分析します」系のサイトのどれもが@nofrillsのアカウントをそう評価していた。当時はユーザーとユーザーのつながりに「価値」を見出すことが流行っていたので、何かの拍子で流れに乗ってしまったのだと思うが、実際、ベルファスト・テレグラフやエルサレム・ポストのような新聞のメインのアカウントと相互フォローだったりするしね)。今回、こういうことになったのも、おそらくそのことが影響しているのではないかと思う。

今日、2022年12月19日(月)に、イーロン・マスクがまさに朝令暮改というか、朝令昼改くらいのペースで気まぐれに出して気まぐれに撤回した「TwitterではMastodonなど他のソーシャル・ネットへの誘導は、これから禁止な!」というトンデモな方針を、日本語圏では「Twitterでほかのサービスを宣伝すること」の問題と受け止め、「スパムの抑制策」と解釈している人が、どうやら少なくないようだが、お前らの目は節穴ですかと、心底びっくりしている。先週の末、英語圏で何が起きていたか、まるっきり見てなかったのかと。

で、私は英語圏の人々と同じように、マスクの気まぐれに翻弄されてぐったりしてるのだが、今、これを書くためにエディターを立ち上げるほんの1時間くらい前までは、日本語圏でこういう目にあわされた人はほかにもいると信じていた。「信じていた」というより、疑いもしていなかった。「当然、私だけじゃないでしょ」と。

だって、マスクのプライベートジェットの位置情報まとめとか、みんな特に意味なく好きそうじゃん。フライトなんとかっていう追跡サイトもよく参照されてるでしょ、日本語圏でも。

だから、マスクのジェット機についての自動フィードに、「へー、こんなのが公開情報でわかるんだ」的に興味を惹かれ、それについて「Twitterでは見られなくなったようだけど、Mastodonにあるみたいだよ」という情報が流れてきたら、特に意味もなくURLをペタリ、とやった人は私の他にもいるだろうし、そうである以上、私と同じように、マスクのTwitterから締め出された人は他にもいるはずだ、と思っていた。

こういうのも「正常性バイアス」って言うんですかね。

そんなことはどうでもいいんだけど、ともあれ、ロッシェル・カップさんも、清義明さんも「他の例を知らない」とおっしゃっているし、私は日本語圏でおそらくただひとり、マスクの気まぐれに翻弄されることになったようである。ならば、なるべく詳しいことを書いておくのが公益のためになるだろうと思ったので、今、Twitterの自分の投稿のアーカイブをダウンロードしながら、エディターを立ち上げてキーをたたき始めた次第である。

以下、Twitterのことは知ってはいるがTwitterを使ってはいないという方にもお分かりいただけるよう、なるべく詳しく書いていくので、冗長に感じられるところもあるかと思うが、その点はあらかじめご了解いただきたい。

報道等での出典を明記しての引用はご自由にどうぞ。ただし文脈を無視した切り取り・切り貼りはしないでいただきたい。追加の質問がおありの場合、公開の場での質疑のやり取りなら応じますので(公開の場で起きたことですので公開の場でやります)、Mastodonまでお願いします(Twitterは見ないのでTwitterにご質問等いただいても気づかないと思います)。

※当記事の表示について: seesaaブログで、Twitterの埋め込みの表示が機能しなくなっているようです。過去記事のもうまく表示されていません。私が放置している間に何か機能が変更になったのかもしれませんが、ヘルプを見ても全然わからず、もう諦めました。スマホ版なら問題なく表示されているようなので、スマホやタブレットでご覧いただければと思います。お手数をおかけします。

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2021年12月09日

Twitterを「鍵アカ」にすると、「《検索したい語句》from:アカウント名」で自分のツイートの検索をしようとしても、過去1週間分しか表示されない件

先日来、わけあってTwitterをProtected/Privateで運用していた。俗にいう「鍵をかけた」状態だ。

その「わけ」というのは、下記の通り。当方は何やら言いたいことがある人々に所謂「ヲチ」対象として貼りつかれているのだが、その系統で当方についてのデマが拡散されようとしていた。発端は当方自身の発言だが、それを都合よく切り取って「こんな文言を使っているあいつは差別主義者だ」とやらかし、勝手に話を大きくしていくという、おなじみの、というよりもマニュアル通りの手口である。

twprtctdhdr.jpg

で、「何でもいいからとにかくもめごとが好き」という系統の人々が寄ってきて、ことが大きくなるのはいやなので、「鍵をかけ」ることにした。

ふつうに自分で書いているだけなら「鍵をかけていない」状態と特に何も変わらないのだが、当方をフォローしてくれている方々の立場では、当方の発言のリツイートはできないなど、ご不便をおかけしたと思う。また、自分でも、誰かほかのアカウントの発言をQuoteしてツイートする場合に、元発言のアカウントが当方をフォローしていなければ確認もしてもらえなくなるという不便もかなりあった。

それ以上に、Twilogに拾ってもらえなくなるというのが、自分のTwitterのログをしょっちゅう参照している立場では不便なのだが、過去ログの検索は、Twitter検索の「《検索したい語句》from:アカウント名」で意外と代用できてたので(Twitterでは日本語の文字列の扱いがイマイチなので、不便は不便なのだが……例えばハッシュタグにした「#花の名は」は、「花」の検索ではひっかからない、など)、しばらく鍵かけたままでもいいかなと思っていた。

twprtctdhdr2.jpg

ところが、鍵をかけてしまうと、自分の発言をTwitter検索することも十分にはできないということが、今回分かった。「鍵アカ」にすると、自分の発言であっても、ずっと昔のTwitterのように、過去1週間分しか検索してくれなくなってしまうのだ。(正確には、検索する日を除いての1週間。水曜日に検索する場合は、前週の火曜日まではさかのぼって検索されるが、月曜日以前のものは表示されない。)

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2021年07月27日

パンデミック下の東京都、「コロナ疑い例」ではないかと疑った私の記録(検査はすぐにはしてもらえない)

東京都の新型コロナウイルス感染対応 (COVID-19対応) は、都と各自治体(区・市など)と2つ窓口がある。何か症状があって、「ひょっとして……」と思ったときは、いきなり医療機関に行くのではなく、自分が住んでいる自治体のサイトを見て、相談窓口に電話をかけ、どうすればいいか相談することになっている。かかりつけ医がいる場合は、相談先はかかりつけ医でよいともいうが、かかりつけ医がいない人も多い。

この相談窓口の電話が、つながらないとか非常につながりにくいという話は、このウイルス禍が始まってからずっとどこかで言われている。私が実際にその当事者となったとき、本当にその通りだったので、それをちょこっとメモしておこうとTwitterに書いたら、なんだか自分にしてはすごいバズってしまって、広く心配をおかけしてしまった。

というわけで、個人的な記録のためと思ってTwitterに書くと140字に収まる範囲内で断片化されるし、断片のひとつだけがバズってしまうことが危惧されるので、大したことではないが、以下、ブログに書いておくことにした。ひとつの記録として見ていただければと思う。

tokyofeverconsultationcentre.png
※東京都の発熱相談センターへの相談件数のグラフ。このエントリを書き始めた2021年7月27日午前のキャプチャ。
https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/cards/number-of-reports-to-tokyo-fever-consultation-center



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2021年07月26日

都教委のサイトと外務省のサイトで、イスラエルの首都がなぜか「エルサレム」ということにされている件。

イスラエルの首都はどこか、と聞かれたらどう答えるだろうか。私は「テルアビブ(テルアヴィヴ)」と答える。だが日本国政府はどうやらそうではないらしい。それに気づいたのは、先週木曜日、7月22日の夜のことだった。

順を追って書き記しておこう。この日、19時から21時の予定で、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所に事務局が置かれている「イスラーム・ジェンダー学と現代的課題に関する応用的・実践的研究」によるオンライン研究会、「パレスチナのちいさないとなみ―写真と文学・映画から」が、Zoomを利用して、開催された。成蹊大学の嶺崎寛子准教授の司会で、前半は京都大学の岡真理教授による「パレスチナの人々―文学と映画から」、後半はパレスチナ現地を深く知る写真家の高橋美香さんによる「パレスチナのちいさないとなみ―写真から」という二部構成で、最後に参加者との質疑応答が行われたあと、東京外国語大学の黒木英充教授の締めの言葉、という流れだった。

岡教授のお話は、語ること・書くこと・伝えることと、それを受け取ることについて、今のこの状況(特に今年5月のガザ攻撃後という文脈)の中で何が行われ、どういうことが進行しているかを具体的に示し、一本の筋を通してくれるようなものだった。特に最後に紹介された "We Are Not Numbers" (私たちはただの数字ではない)というサイトの取り組みは、Twitterでのパレスチナ人たちの英語での発信と同様に、フォローしていきたい。語られなかったものが語られるようになったということの意義は、これから具体的に見えてくると期待したい。「期待」というより「希望」か。

高橋さんのお話は、西岸地区の人々、特に女性たちの等身大の姿――という常套句しか思いつかない自分の頭を殴りたいが、私の頭は昔のテレビではないし、殴ったらよりよくなるわけではないから殴らない――を生き生きと伝えるもので、日本でぼーっと過ごしている私たちの立場からいえば「声なき者」にしか見えない「現地の人々」に、私たち日本語話者に聞こえる「声」を与えるものだった(高橋さんの柔らかい、フレンドリーな語り口の役割は、とても大きいと思う)。特に「もうひとり、妻を持ってもいいんじゃないか」的な態度を取り始めた夫を家からたたき出したおかあちゃんの話は笑った。まるで往年の橋田寿賀子ドラマになりそうな話だ。

そのあとの質疑応答も、「Zoomの向こう側にいる人たちレベル高すぎ」と驚嘆するよりなかったのだが、何より驚いたのは、黒木教授が述べられたことにだった。





これがあまりに衝撃的だったので、Zoomのイベントが終わってすぐに、自分で調べてみた(→そのときのTwitterのスレッド)。そうしたら、この衝撃の「イスラエルの首都はエルサレム」説を唱えているのは、都教委(東京都教育委員会)だけではないことが確認できた。具体的には、日本国の外務省のサイトがそう言っているのだ。ほら、このとおり。

israel-parestine-maps-tokyo-jp-governments04c.png
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/israel/data.html#section1
(※画像はクリックで原寸大表示になります。以下同)

外務省のサイトは、イスラエルの首都をエルサレムとした記述に注釈をつけていて、その注釈で「日本を含め国際社会の大多数には認められていない」と書いている。つまり、日本国が認めていないことが、日本国政府外務省のサイトに既成事実として掲載されている、ということになる。

何を言っているかわからないと思うが、私もわからない。

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2021年03月30日

ファルージャ戦の娯楽素材化に反対の意思を示す請願文・署名のご案内 #イラク戦争 #ファルージャ

以下は、署名サイトchange.orgにアップされている下記の請願文の日本語化である。英語では請願文を読めないという方に、内容を把握するためのガイドとしてご参照いただければと思う。
Below is a Japanese translation of the following petition on the website change.org.

STOP HIGHWIRE GAMES AND VICTURA FROM NORMALIZING THE MASS MURDER OF IRAQIS
https://www.change.org/p/united-nations-stop-victura-and-highwire-games-from-normalizing-the-mass-murder-of-iraqis


【前置き Preface】
訳者(わたし)の解説みたいなものは本文の下につけておくが、その前に、ここで問題視されている2004年のファルージャ戦についてご存じない方もおられると思うので、訳者がかかわった過去の仕事へのリンクをはっておく。ファルージャ戦についてよく知らないという方には、それらをご参照いただきたく思う。
I am a co-translator of a book on the first battle in Fallujah in April 2004, made of on-the-ground reports by English-speaking journalists and humanitarian workers.

ファルージャ 2004年4月 - ラフール マハジャン, 賢, 益岡, よしこ, いけだ
ファルージャ 2004年4月 - ラフール マハジャン, 賢, 益岡, よしこ, いけだ

2004年のファルージャ戦は、上掲書で扱った4月と、同年11月から12月の二次にわたって行われたが、後者については当時、英語圏の報道等を見ながらほぼリアルタイムでブログで日本語で書いていた
Six months after the book was published, the US forces launched the second battle in (or they might have used "of" or even "for" instead of "in") the city, during which I along with my co-translator kept translating English news and analysis articles and posted them online.

では、以下本文。請願文のオリジナル(英文)と私の訳文(日本語文)を交互に示す「対訳」の形式をとるので、内容に関する疑問点などは原文をご参照の上、原文の著者さんにお問い合わせいただきたく思う。訳文の不備の指摘は私まで。
Enough of this preface thing. Below is the translation.


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2020年12月10日

英国での新型コロナワクチン認可と接種開始、そして誤情報・偽情報について。おまけに陰謀論ジョーク。

既に大きく報じられている通り、新型コロナウイルスのワクチンが、この12月2日に世界で初めて英国(UK)で認可(承認)され、早くも同月8日には実際に接種が始まった。今回認可されたのは、米ファイザー社と独バイオンテック社の開発したBNT162b2である。このほか、アストラゼネカ社やモデルナ社など複数のワクチンが開発され、実用化に向けて治験が進められているし、中国やロシアではまた別にワクチンの開発・接種が行われている。

英国では、薬などの認可は英国全体レベルで決定されるが、実際の医療行政はイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの各地域 (それぞれの地域のことはnationと呼ぶが、北アイルランドについては単独でnationとは呼ばない。理由は、以前から当ブログをお読みの方ならおわかりの通り) 別におこなわれ、今回のワクチン接種も地域別にどういう人を優先するかが定められている。イングランドでは入院中の高齢の患者さんが最優先とされ、初日は各地から高齢者の注射の映像が次々と届いた。最初に接種が行われたのは、イングランドのウエスト・ミッドランズ(バーミンガムのあたり)の都市、コヴェントリーの病院で、接種第一号となったのは、北アイルランドのエニスキレン出身で60年前からコヴェントリーに暮らしているマーガレット・キーナンさんという90歳の女性だった。今年はほとんど子供や孫に会えていないというキーナンさんは、接種翌日にはもう退院し、翌週の91歳のお誕生日は家族と一緒に迎えることができるという(注射してすぐに免疫ができるわけではないので、生活はかなり制限されると思うが)。ちなみにキーナンさんの次に接種を受けたのは、ウィリアム・シェイクスピアさんという80歳の男性で、お名前ゆえにTwitter上の英国圏では国語の時間の復習みたいになってた(シェイクスピアは英国では「国語の教材」である)。

全世界で156万人近くが犠牲となっている(9日の数値)このパンデミックを引き起こした新型コロナウイルスの症状が、初めて中国の武漢の医療現場で認識されてから1年経つか経たないかという段階で、ワクチンの開発から治験、接種までこぎつけたことは、「すごい」としか言いようがないことである。もちろんワクチンが実用化されたからといって、すぐにこのパンデミックが終わるわけではないけれど、これは確実に、「終わりの始まり」だろう。

とはいえ、このニュースで「よかった、もう終わったんだ」みたいなムードになったら一気に感染が拡大してしまうわけで、うちらにできることといえばこの何か月かと同じように慎重な行動パターンをとり続けることだけだ。ただし、今はもう、それが「いつまで続くのかわからない」という不安によって受け止められる事態ではなくなり、「いつかは終わる」という具体的な希望を抱いてもよくなったということだ。

しかしながら、このワクチンを最初に認可したのが英国だからといって、英国で閣僚がナショナリズムというかパトリオティズム丸出しになっているのは、正直、理解できない。このワクチン、開発にも製造にも英国はほぼ関係ない(開発がドイツの企業、製造が米国の企業で、工場はベルギーにある)。

最初にこのわけのわからないモードに突入していることを露呈したのは教育大臣のガヴィン・ウィリアムソンで、ワクチン認可についてLBCラジオで「わが国の医療監督にあたる省庁はフランスやベルギーやアメリカのそれよりずっと優れているから。なぜならばわが国は最も優れているから」という意味不明のたわごとを述べた

続いて、保健大臣のマット・ハンコックが、初のワクチン接種を受けて朝のTV番組で「イギリスに生まれてよかった」的なことを、涙を浮かべながら語った

ハンコックは自身、春に感染して、けっこうつらい症状を体験しているので、いろいろと思い出されたのかもしれないが、事実として、英国はこのワクチンにはほとんど何も関係していない。英国で開発が進められているのは別のワクチンであり、このワクチンは、単にいち早く認可しただけである。

ボリス・ジョンソンの保守党政権がここまでパトリオティズムの陶酔を煽動しているのは、Brexitがあってのことだろう(英国のEU離脱は、この12月末に移行期間を終える。つまり今度こそ本当に英国は欧州連合からexitする)。「わが国は欧州とは違うのである」ということを言いたくて言いたくてたまらない心理状態なのだろう。実際にはこのワクチンを開発したのは、アメリカの会社とドイツの会社で、ワクチンそのものも国外から(というかベルギーの生産拠点から)運ばれてきたものだというのに。

ともあれ、そういう的外れな方向で熱狂的なムードの中で始まったワクチン接種プログラムは、2日目にはもう特にニュースになることもなく淡々と進められていたように見えた。「え?」という話が流れてくるまでは。

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2020年11月29日

アット・ニフティのサイトを終了します。今後はInternet Archiveでお読みください。

今月いっぱいで@niftyのIDを失効させることにしたので、これまで約20年にわたって@niftyのサーバに置いてあった当方のウェブサイトも失効します(see @niftyのヘルプ)。とはいえ、ニフのIDはもう全然使っていないし、ウェブサイトも10年以上更新していないからほぼ誰も見ていないだろうし、特段の影響・変化は何もありません。ただ、ウェブサイトの中身は、過去ログとして残してはおきたいので、ディープリンクも含めて全部Internet Archive (Wayback Machine) で閲覧できるようにしてあります。当ブログのサイドバーからたどれるようにしてあります。というか、ここに書いておけば話が早いですね。

■拙サイトのトップページ:
https://web.archive.org/web/20170811151733/http://nofrills.in.coocan.jp/index.html
ここから中に入っていけますが、「ニュースで見たイギリス」だけはリンクがうまく動作しないので下記からお願いします。

■ニュースで見たイギリス (2001年2月〜2003年5月):
https://web.archive.org/web/20040203001736/http://nofrills.hp.infoseek.co.jp/news/index.html

■英語の単語や実例、その他もろもろ:
https://web.archive.org/web/20170802225817/http://nofrills.in.coocan.jp/britenglish/index.html

nofrills-coocan.png


↑このレイアウト、間が抜けて見えると思いますが、本来↓このように↓組んだデザインでした。多くの環境で画面の横幅がこういう狭さだったころ(21世紀になるかならぬかのころ)のデザインです。

nofrills-coocan2.png



このウェブサイトの中身は、またどこかのサーバにFTPでアップロードしようかなとも考えたのですが、やめました。お金を払って維持しておくべき内容でもないし、元々会員特典で無料でホスティングしてもらっていたので今後継続するとしても当然無料ホスティングを使いたいのですが、今どき自分で作ったHTMLのファイルをFTPでアップする無料ホスティングのサーバは片手で数えられるほどしかなく、アップしたとしてもいつサービス終了になるかわからないし、そうなったときにまた移転しなければならないというのもかなり負担です。このような理由に加え、どうせもう更新することはないということもあって、この状態でInternet Archiveにお任せすることにしました。凍結保存です。

@niftyは、2016年の秋に、それまでの「@homepage」というサイトホスティング・サービスを終了しその時点で当方のサイトはその後継サービスであるLaCoocanに移設したのですが、その後は一切手を加えていません。今回Internet Archiveで保存しているのはその移設時点の内容です。「@homepage」時代のページもInternet Archiveに入っているので中身がダブってしまうことになりますが……。

Internet Archiveの中身は通常のウェブ検索では検索対象にならないので、その点ではご閲覧のみなさまにご不便をおかけすることもあるかもしれませんが、なにとぞご理解たまわりますよう。「@homepage」終了時にサイトを存続させたのは主に、「ウェブ検索で見つからないものは存在しない」という世間の決めつけに少しでも抵抗していきたかったからで、すごく些細なことでも検索ワードにひっかかるようにしておくことは重要だと思ってきたのですが、これ以上継続する気力もお金もないのが実情です。

@homepage時代からLaCoocanに移設後まで、ブラウザにブックマークするなどしてきてくださったみなさまには、今回の突然の終わりについてお詫びし、これまで心に留めておいてくださったことに感謝申し上げます。ありがとうございました。

ブログは続けます……といっても、ここももうほとんど更新しておらず、はてなブログでやっている英語実例ブログがメインになりつつありますが。


2020年11月29日 nofrills拝


追記: Internet Archive (Wayback Machine) を使うには、ブラウザの拡張機能が便利です。
-Firefox (Tor Browserも):
https://addons.mozilla.org/en-US/firefox/addon/wayback-machine_new/

-Chrome:
https://chrome.google.com/webstore/detail/wayback-machine/fpnmgdkabkmnadcjpehmlllkndpkmiak?hl=en-US

-Safari:
https://safari-extensions.apple.com/details/?id=archive.org.waybackmachine-ZSFX78H3ZT
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2020年11月14日

"整理" されてしまった「翻訳・通訳のトビラ」の中身を、Web Archiveでサルベージする方法(今ならまだ間に合うのでご協力を)

かなり事務的な事柄について、取り急ぎのメモですが、Twitterで連続投稿していてもバラけてしまって共有されにくいので、まとまった形が可能なブログで書いておきます。細かい説明は抜きにします。

今日、Twitterでアルク社のウェブサイトから、「翻訳・通訳のトビラ」のコーナーが全部削除されているということを知った (via @nest1989)。11月11日の抜本的なリニューアルの際、「コンテンツ」の「整理」対象となったようだ。

「翻訳・通訳のトビラ」は、翻訳や通訳という作業について、実務に携わる方々による貴重なリソース集で、常に参照可能なレファレンスとして非常に重要な存在だったのだが、私企業にとっては「整理」すべき「コンテンツ」だったようだ。驚いたのは、寄稿者にも連絡なしで削除されたということで (via @yunod)、書籍だって絶版や断裁の前には著者に連絡が入るものだが……。

ごちゃごちゃ言っていても始まらないのでともあれ、今ならまだ間に合うのでWeb Archiveを利用してキャッシュを取得している。本稿はその手順について説明することを目的とする。

まず、アルク社のウェブサイト、alc.co.jpにアクセスしてもすでに「翻訳・通訳のトビラ」はなくなっているし、個別URLも404エラーになるが、alc.co.jpというドメインではなく、数字の羅列(にしか見えないもの)である「IPアドレス」にアクセスすると、今はまだいける。

「ドメイン」と「IPアドレス」については、かごやインターネットさんの説明がわかりやすいので、そちらをご参照のほど。
ホームページを運用するwebサーバーやメールを運用するメールサーバーなどには、IPアドレスという数字の住所が割り振られています。しかし、数字では人が覚えにくいため、その数字と紐づける形で「ドメイン」を使ったわかりやすい文字列によるホスト名が採用されているのです。

たとえば「www.kagoya.com」というホスト名のIPアドレスは「203.142.205.139」ですが、パソコンなどのコンピューターは、インターネット上の住所ともいえるIPアドレスを基に目的のホームページが収容されたwebサーバーにアクセスします。
https://www.kagoya.jp/howto/webhomepage/01/


この場合、ブラウザのアドレスバーに「www.kagoya.com」と入れても、「203.142.205.139」と入れても、同じウェブページが呼び出される(同じものが表示される)。

現状、alc.co.jpというドメインとリニューアル前のサイトのIPアドレスとを結ぶ回路が断ち切られている状態で、「翻訳・通訳のトビラ」の諸記事に関しては、旧IPアドレスの方に直接アクセスすれば中身はまだ見られるようだ。なので、旧IPアドレスを直接ブラウザのアドレスバーに入れればよい。

と、ここで私の手元には「210.146.253.72」というIPアドレスがある。信頼している方がDMで伝えてくださったものだ。どうやらこれがその旧IPアドレスのようだが、一応確認はしたい。ところが、ここでこのIPアドレスをそのままGoogle Chromeに打ち込んでも、下記画面のように警告が出てしまうので先に行けない。

21014625372-01.png

警告の文面:
210.146.253.72 では、悪意のあるユーザーによって、パスワード、メッセージ、クレジット カードなどの情報が盗まれる可能性があります。
NET::ERR_CERT_COMMON_NAME_INVALID


警告の下部にある「詳細設定」(なぜ「設定」なのか、意味がわからん。Chromeのローカライズ担当者さん、しっかりして)をクリックすると(なぜか「詳細設定」が「詳細情報」に早変わりするんだけど):

21014625372-02.png

文面:
このサーバーが 210.146.253.72 であることを確認できませんでした。このサーバーのセキュリティ証明書は *.alc.co.jp から発行されています。原因としては、不適切な設定や、悪意のあるユーザーによる接続妨害が考えられます。


これはSSLのセキュリティ証明書が失効しているときなんかに出てくる警告で、フィッシングなどのおそれはあるが、閲覧するだけならまあ大丈夫だろうと判断し、念のためにChromeの「シークレットモード (incognito window)」や「ゲスト」を使って先に進むことにする。Incognito windowを立ち上げて、210.146.253.72 とアドレスバーに入力し、ここまでと同じ手順で進んできて、さっきのキャプチャ画像内の一番下にある「210.146.253.72 にアクセスする(安全ではありません)」をクリック。

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2020年06月28日

【訃報】ボビー・ストーリー

ボビー・ストーリーが64歳でこの世を去ったことが、6月21日に公表された。27日にはベルファストに無言の帰宅があった。

「ボビーなんとかって、誰それ?」と思われるかもしれないが、北アイルランド紛争、特にIRAについて文献を読めば必ずこの人の名前が出てくる。一回り年長のジェリー・アダムズ、故マーティン・マクギネスといった人々とともに、シン・フェインとIRAを、武装闘争の時代、「機関銃と投票箱」の時代、和平と紛争転換の時代と移り行く流れのなかで、引っ張ってきた重鎮のひとりであり、地域社会の顔役であった。というか、IRAなので、まあ、そういうことだ。マーティナ・アンダーソンもジェリー・ケリーも「彼は前面に立って引っ張ってきた (he led from the front)」と語っている。(っていうかこの "He led from the front" 言説は《物語》ですね。今のIRAによる「リパブリカン正史」の物語。アンダーソンタウン・ニュースもそれを強調している。)

Sinn Féin has announced the death of leading IRA figure Bobby Storey, who allegedly acted as the organization's head of intelligence during the Troubles.

Storey was an influential figure in the republican movement throughout the troubles in Northern Ireland and the subsequent peace process.

He had been unwell for a significant period of time and died on Sunday at the age of 64.

Storey became involved in the republican movement from a young age when he was interned without trial as a teenager.

https://www.irishcentral.com/news/bobby-storey-ira-head-of-intelligence-dies


以下、この訃報に際しての言葉を書き留めておく。

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2020年06月14日

アベノマスクが届いたので、糸をほどいて解体してみた。 #abenomask #abenomasks

5月下旬のある日、そろそろ一時のマスク不足も解消しつつあるかな、という感じが強まっていたころに、東京都23区内在住の私の家の郵便受けにも通称「アベノマスク」が届いていた。その前の週に「特別定額給付金」(例の10万円)の申込書類は届いていて、「もうアベノマスクは届かないのではないか」と思っていたのだが、届けられた。

要らないのに。

顔の下半分を全体的に覆える大きさもないような、ほぼ何のフィルターにもならない布でできた「給食マスク」は、単に物理的に役に立たないのだから、いらないのに。

国費から、何百億円だかかけた上に、追加検品で何億円だかかけて届けられた「やってる感」マスク。花粉症でマスクを着け慣れている人々が大半の巷からみれば、粗野で粗雑で奇妙で奇矯としか言いようのないマスク姿を衆目にさらしている政治家たちのコスプレでもしろというのだろうか。


how-to-wear-your-mask-like-a-pro.png


ともあれ、先日、その「アベノマスク」を、よく切れる糸切りばさみと顕微鏡を持っているすばらしい友人と一緒に解体し(糸をほどいて展開)、顕微鏡やルーペで観察した。本稿はその記録・報告を目的とするものである。

結論から言えば、虫は入っていなかったが、正体・出自不明の繊維片は、マスクの布の繊維に絡みつくようにして、入っていた。つまり俗に言う「ゴミノマスク」だった。注意深く見れば、目視でもわかるレベルの混入もあった(が、視力0.5の人が普通のオフィスや倉庫の照明のもとで作業していたら見えないかもしれない。視力1.0でも目が疲れていれば見えないかもしれない)。

「ゴミノマスク」なんていうと「大げさな」と非難されるかもしれない。確かに、タオルとかハンカチのような身に着けるものではないもの、あるいは身に着けるものでも完全に外用のもの(衣類やヘアゴムのようなもの)ならばああいう繊維片(ゴミ)の混入は全然問題にならないだろうが、マスクは衛生用品だ。Tシャツやヘアゴムと同等の基準でみるわけにはいかない。その繊維片が、縫製作業に当たった人の服の繊維なのか、縫製に使ったミシンについていたものなのか、縫製工場で空気中を舞っていたものなのか、床に落としてしまったのを拾い上げてパンパンとはたいたあとに残ったものなのか、梱包作業のときに混入したものなのか、そういったことは一切わからない。そういうものが、繊維の中に入り込んでいた。それは事実である。

以下、記録を目的とするので、とても長いということをお断りしておく。

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2020年04月25日

「漂白剤は飲んで効く奇跡の薬」と主張するアメリカのカルトまがいと、ドナルド・トランプ

今のこれは確かに「ウイルスとの戦い」だが、ウイルスは別に意図をもって攻めてきているわけではない。一方でウイルスから防御する側の私たち人間は、意図を持っている。そしてほとんどの人々は、第一に、「死ななくてもよい人を、これで死なせてはならない」と意図している。それが医療現場の最前線でCOVID-19の患者を人工呼吸器につないでいる医師や看護師や技師たちであれ、外出せずに自宅で過ごしている一般市民であれ、「リモート」で音楽ビデオを作るセレブたちやそのスタッフであれ、自分の会社に何かできることはないかと申し出たり模索したりする企業トップであれ、

しかし中には、全然別な方向に意図が向いている人もいる。その人たちは「死ななくてもよい人」のことなどカケラも考えていない。何の因果か、この未曽有の危機に際して米大統領という立場にあるドナルド・トランプも、そういう人のひとりだ。

最初にそれが明らかになったのは、記者会見で「マラリアの薬が効くそうですよ」みたいなことを言ったときだった。「どうせ利権(というか、より正確には株価)だろ」と思って眺めてたら、案の定そうだった。

そのときは私はほぼスルーした。あとから自分のTwitterログを見返せば確認はできるという程度にメモ的なことは書いたしいくつかニュース系のツイートをリツイートして記録はとったが、しっかり書くということはしなかった。そんな時間がもったいなかったし、そうすることで逆にドナルド・トランプのばら撒いているデマ(政治的な……というか政治および経済的な意図のある誤情報)を広めてしまうことになるのを懼れたからだ。実際にトランプが「薦めた」というその薬の名前は、日本語圏でカタカナで出回ってもいた。

ドナルド・トランプがアレな人物だということは、日本では意外なほど知られていない。日本のマスコミの報道を見ていても、トランプがとんでもない人物だということは何となくわかっても、どうとんでもないのかは多分わからない。具体的にとんでもないことは、例えば「金正恩と会談」「中国と対決」みたいなことのように詳しくは報じられないから(そして「金正恩と会談」「中国と対決」みたいなことは、鮮烈な印象を残すから)だ。記者会見などで見せるあのひどい言葉遣い(ひどい英語)も、英語がわからない人には何がひどいのかわからない。

日本ではひょっとしたら肯定的に、つまりそれが「よいこと」であるかのように受け取られているかもしれないが、ドナルド・トランプは陰謀論者だ。ロシア疑惑だのウクライナ疑惑だのといったガチもんの国際政治疑惑によって、語られるべきことの奥の方に押し流されていてもう誰も語っていないかもしれないが、「大統領」である以前に「陰謀論者」だ。もう知らない人も多いと思うが、「バラク・オバマは実はアメリカ合衆国で生まれていないので、大統領の資格はない。合衆国生まれだというなら出生証明書を見せろ」と主張した、いわゆる「バーサー Birther」の筆頭格がドナルド・トランプだったのだ。(ついでに言えば、この「バーサー」という用語の元となったのは、「2001年の9.11事件は米国政府が仕組んだ」などというトンデモ説を唱えることを「真相究明運動」と称した勢力が「トゥルーサー Truther」と呼ばれたことである。)

「自由の国」では(そうでなくても)陰謀論そのものは個人の思想信条の自由の範疇に入り、それに基づいた行為(例えば破壊行為や襲撃、金銭的詐欺など)が違法になることはあっても、思想そのものは何にも問われない。いかにトンデモでも、思想自体は違法にはならない。

陰謀論者は「今の世の中で当たり前とされていることは、本当に『当たり前』なのか」と問いかけることで社会の中に、あるいは個人の心の中に、足場を築く。

ドナルド・トランプはそこまで器用な人物ではないようだが、自分の立場を利用して何かをひそかに売り込む(宣伝する)といういわば「ステマ」屋としての技能はあるし、2016年以降、ステマ屋としてはこれ以上は望めないくらい高い地位にある。本当は「大統領のお墨付き、万病に効く命の水」くらいのことをやりたいのだろうし、アメリカ合衆国でなくもっと小さな国の大統領だったら実際にそうしていたのではないかと思うが(実際にそういうことをしている国家トップもいる)、それは想像の話、仮定法で語る話だ。

トランプ本人が上述のような一種巧妙な心理戦の能力を持つかどうかは別問題だが(私はあの人物にはそれは無理だと思う)、トランプに働きかける人物たちの中には、そういう心理戦のプロフェッショナルたちがいる。トランプを媒介として自分たちの言いたいことを世間に広めることで、自身に直接的な利益がある、という人々がいる。

そして、米国政治は「ロビー活動」に対してあまりに無防備で無頓着だ。

それを実感させられた話。

24日(金)、本気で、自分が英語読めなくなったのかと思うようなことがあった。正確に言えば、私が知ったのはそれが起きてから9時間ほど後のことだったのだが、金曜日はほとんどネットを見ておらず、Yahoo! Japanなどをちょこっと見ていただけで、そんなことがあったとは知らずに過ごしていたのだ。

Screenshot_2020-04-24-16-26-03.png


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2020年04月07日

英ボリス・ジョンソン首相、集中治療室へ #新型コロナウイルス

2020年4月5日(日)夜、英国ではエリザベス女王の録画メッセージがTVで放送された。女王が毎年のクリスマスのように決められた時以外に国民に広く、直接語り掛けるのは異例のことで、これまでに行われたのは1991年湾岸戦争での英軍地上部隊投入時という「有事」に際してと、1997年ダイアナさん死去時、2002年皇太后死去時、そして2012年ご自身のダイヤモンド・ジュビリーに際しての4度だけあったそうだ。この録画メッセージの中で女王は、最初に、この危機の時にあって家にいず現場で仕事をしている医療従事者や社会的インフラの従事者を讃え、「今は感染拡大防止のため離れ離れになっている大切な人とも、必ず再び相まみえる日がやってきます」と語った。"We will meet again" というフレーズは、明らかに、過去の戦争において、愛する人を送り出す人と送り出される人との間で歌われたあの曲の引用だ。



日本の「専門家会議」が「オーバーシュート」とかいう変な造語をいきなり定着させてしまったことで言語的に大きなダメージを受けている中で、そんなことをブログに書こうと四苦八苦していたときに、それどころではないニュースが飛び込んできた。

ボリス・ジョンソンの集中治療室(ICU)入りである。

ジョンソンは3月27日(金)に検査を受けて新型コロナウイルス陽性となり、以後、自宅(といってもダウニング・ストリート10番地)で自主隔離となっていた。仕事はリモートで閣議を行うなどしていたが、毎日の記者会見には、それ以来、ジョンソンは姿を見せていない。毎週木曜の夜に行われるようになった、医療従事者ら最前線で働く人々を讃える拍手に加わって、10番地の玄関口にまで出てきているのはメディアでも伝えられていたが、あとはSNSにアップされる自撮りビデオだけだ。その自撮りも、明らかにつらそうで、このウイルスは人によってはちょっとした風邪程度で済むとはいうが、やっぱり発熱がはんぱないから体にはこたえるんだなあ……などと思っていた。ジョンソンは元々、体力は有り余ってる感じの人だから(あのしゃべり方……)、少し寝てれば治るんだろうと思い込んでいた。

しかし実際には、それから1週間が経過した時点でも症状がおさまらなかった。確かジョンソンの1日か2日前に陽性となっていたチャールズ皇太子は7日経過して元気になり、東ロンドンの五輪会場でもあったコンベンション・センターExCELを臨時改装して設営されたNHSナイティンゲール病院の開所式もリモートで執り行っていたし、ジョンソンの(確か)直後に陽性となっていた保健大臣マット・ハンコックは、多少やつれてはいるもののすっかり元気になっていて、NHSナイティンゲール病院開所式典では現場で一番前に立ってリモートの皇太子のスピーチを聞いていた。

しかしジョンソンは、4月5日(日)になっても症状がおさまらないとの理由で、ロンドンの病院(後にセント・トーマス病院であることがわかる)に搬送された。このときは "routine tests" を受けるためだと説明されていた。そういった言葉をネットで見ながら私は、「まだ治療法が見つかってもいない病気について、"routine" とは何なのだろう」と思っていたが、BBCの記事に出ていた医療の専門家の説明では、肺炎の検査(たぶんCTを取るとかそういうの)のことをそう呼んでいるらしかった。まあ、それはroutineといえばroutineなのだろう。医者も検査技師も看護師もみながっちがちの防護服姿であれ何であれ。ジョンソンの入院は、女王のTVメッセージが終わった直後だったという。

ジョンソンは症状が出てから10日以上となっていたが、この時点では政府の責任者はジョンソンであることに変わりはなく(ジョンソンが何らかの理由で働けなくなった場合は、ドミニク・ラアブ(ラーブ)外相が代行として任にあたることが決められている)、ジョンソンは「元気だ」などとメディアを通してさかんに言われていた。ただコブラ・ミーティングや毎日の記者会見はジョンソンはできないので、ラアブが代行する、とのことだった。
https://en.wikipedia.org/wiki/Boris_Johnson#COVID-19

だがそのときにも、ラアブのフワフワ感というか、いろいろつじつま合ってないよ、というのは気になっていた。


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2020年03月30日

美しかった。ひたすらに。

これを見て、しばらく立ち尽くしていた。さしていた傘が、降り積もった雪で重たくなるまで。


47848.jpg


ばさばさと何度か開閉するようにはたいたら、傘は驚くほど軽くなって、本当はこんなに軽いものなんだ、と思った。


その朝、それを何度か繰り返しながら、少し歩いた。雪がひどくならないうちに、日課の散歩。


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2020年03月20日

「オーバーシュート overshoot」なる用語について(この用語で「爆発的な感染拡大」を言う英語の実例がほとんど確認できない件)

■3月23日追記■
以下で述べているのは、厚生労働省のサイトにアップされた「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議: 新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言(2020年3月19日)」 で用いられている用語についてである。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000610566.pdf

本稿は最初にアップしたとき、事態のリアルタイム性を重視して「何があったか(何を見たか)を時系列でたどる」形式で書いたので、問題の用語の初出である上記文書へのリンクが記述の中に埋もれてしまっていたので、改めて上に掲示しておく次第である。また、これを加えた際に、ついでに本文に少し追記を加えた。内容は変えていない。より大きな追記はまたこのあとでおこなう予定である。

追記は以上。以下、アップロード時の文章。




3月17日(日本時間では18日早朝)のアイルランドでの首相の素晴らしいスピーチの余韻も冷めやらぬ中、今度は日本で、3月19日の夜、政府の専門家会議が新型コロナウイルス感染症について検討した結果を、記者会見で広く一般に伝える、ということが行われた。ネットで生中継されていたので私も何となくつけていたが、アイルランドに「言葉の力」をこれでもか、これでもかと見せられたあとで、日本では標準的なものではあるが、言葉に全然力のない、間延びした物言いを聞き続けているのは、正直、非常につらかった。それでもそこで語られていることは重要なことで、ちゃんと聞いておかないと……と思ってはいたのだが、英文法の本を読みながら聞いていて(全然ちゃんと聞いてない)、途中でトイレに行きたくなって、ついでにお茶を入れるなどしていたので、結局、ろくに聞かずに終わってしまった。

しばらく経ってから、会見の内容をまとめた記事がそろそろ出ているのではないかとYahoo! Japanのトップページを見てみると、Twitterで話題になっている語句を表示する「リアルタイム検索で話題のキーワード」の欄に、「オーバーシュート」という語が出ていた。この語と一緒に「つぶやかれているワード」から専門家会議の会見での言葉だということはすぐにわかった。私にはなじみのない言葉だが、会見で出てきていたか。どういう文脈で出てきてたんだっけ?

リアルタイム検索を見ると、「アウトブレイク、パンデミック、クラスター、などなど、カタカナ語ばかりでいやになる」という主旨の発言が並んでいた。「キャプテン翼か」みたいな発言もいっぱいあった(「それはオーバーヘッドシュートだろう」と突っ込むべし)。そういう中に、私が自民党の国会議員だと認識できる名前の方(どなただったかは覚えてない)が「オーバーシュート(爆発的感染拡大)」と記載しているツイートがあった。この記述は「オーバーシュートという専門用語があって、それは『爆発的感染拡大』という意味だ」ということを含意する記述である。(3月23日追記: あとから調べてみれば、この言葉は「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」による「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言(2020年3月19日)」で用いられていて、専門家会議の人たちによる記者会見でも当然口にされていたのであったが、リアルタイム検索の画面を見ていたときの私は、まだそこまでたどり着いていなかった。)

「オーバーシュート」ってovershootでしょ。「飛行機が着陸地点を通り越して飛んでいく(そして、場合によっては本来の着地点とは外れたところに着陸してしまう)」ことに使う語だが、「爆発的感染拡大」なんていう語義あったっけ? ……というのが最初の反応。

次にすることは、とりあえずネットで簡易的に辞書を引くことだ。はい、コリンズ:
https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/overshoot

オクスフォード:
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/overshoot?q=overshoot

どちらもだいたい同じ。「自分が止まろうとしていた地点よりも遠くに行ってしまうこと」(先述の飛行機の例)、また「最初に考えていたよりも多くのお金を使ってしまうこと」。もう少しかみ砕いて考えると、「何かを物理的に飛び越してしまうこと」(overした状態にまでshootする)と、その意味を比喩的に展開して「何かを超過すること」。どちらも動詞だが、名詞としての用法もある。

「爆発的感染拡大」をもう少しヒラな感じ(文脈から切り離して一般化した感じ)にして、「何かが急激に増えること」と《翻訳》してみたところで、コリンズにもオクスフォードにも(さくっと確認できる範囲では)その語義は見られないということになる。

きっと辞書が貧弱なんだ。大辞典には載っているはず……と、2時間ドラマで凶器として使われそうなでかい辞書を取り出そうとしたが、だるかったのでやめた(3月23日追記: コリンズ・コウビルドにもオックゥフォードにも載っていないような語義なら、一般向けに使うべきではないか、「和製英語」的な何かでしかないということだし)。その前にウィキペディア(英語版)だ。
https://en.wikipedia.org/wiki/Overshoot

ここからテキストだけコピペすると(ハイパーリンクはコピーしない):
Overshoot may refer to:
- Overshoot (population), when a population exceeds the environment's carrying capacity
- (書籍のタイトルなので略)
- Overshoot (signal), when a signal exceeds its steady state value
- Overshoot (microwave communication), unintended reception of microwave signals
- Overshoot (migration), when migratory birds end up further than intended
- Overshoot (typography) the degree to which a letter dips below the baseline, or exceeds the cap height
- Overshoot (combat aviation), a key concept in basic fighter maneuvers (BFM)
- In economics, the overshooting model for the volatility of exchange rates


というわけで、「何かが急激に増えること」は、あえていえば最後の "the volatility of exchange rates" に関する用語。株式や証券の相場に関する用語だ。

「爆発的感染拡大」とは、何か違くない?

でも実際の英語ではそういう転用が見られるのかもしれない。ということでGoogle検索を試したり、米語コーパスで調べてみたりしたのだが、やはり、「爆発的感染拡大」の意味でovershootの動詞・名詞が使われている例は見当たらない。エボラ出血熱やら豚インフルエンザやらMERSやらSARSやらの深刻な伝染病、あるいは家畜の伝染病の口蹄疫やら何やら、はたまたワクチン反対の陰謀論者のおかげで復活してきたという麻疹など、「爆発的感染拡大」が語られる事案はたくさんあるのだから、「爆発的感染拡大が生じた今回の新型コロナウイルスが出てきたのは最近すぎて、コーパスが扱えていないから、検索結果に出ないのだ」と考えるのもおかしい。WHO(世界保健機関)の用語集にもovershootは見当たらない。

と、リアルタイム検索を見ると、PubMedをチェックした方のツイートがあった。(そうだ、こういうときはPubMedだ。)

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2020年03月19日

"Come together as a nation by staying apart from each other" −−アイルランド首相のすばらしい演説について

新型コロナウイルスの感染を拡大させないため、アイルランドでは先週から、屋外で500人以上、屋内で100人以上の集まりを禁止しており、3月17日のセント・パトリックス・デーのイベントはすべてキャンセルされた。

何もなければ、パレードに参加したりパレードを見物したりした人々が集まって騒いでいたであろうはずの17日夜、アイルランド首相レオ・ヴァラドカーがテレビ演説を行い、非常に厳しい見通しを率直で真摯な言葉で語った。この演説が大反響というか、ものすごく高く評価されている。「ものすごく」というより「驚くほどの」というべきかもしれない。何しろあのジェイミー・「旗騒動」・ブライソンまで誉めているのだ(ジェイミーはレオ様のこのスピーチの才能をうらやんでいるに違いない)。

私もリアルタイムでネットで聞いていて、非常に大きな感銘を受けた。まさに「言葉の力」というのはこういうものだと思う。"We are asking people to come together as a nation by staying apart from each other." という言葉は、レオ・ヴァラドカーという政治家について、ずっと語り続けられる言葉になるだろう。

英語実例ブログの方に、簡単な背景解説とスクリプトへのリンクを上げてあるので、そちらをご参照いただければと思う(同じことを複数の場所に書きたくないので、こちらには書かない)。

映像はこちら:



英語圏では、このほかにも、"We are all in this together" という力強いメッセージがいろいろと出ている。気づいたものはTwitterでメモしている。
posted by nofrills at 23:30 | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年03月01日

学術的に確認はされていないことでも、報道はされていたということについてのメモ(新型コロナウイルスの「再感染」について)

※本稿の表題ですが、「報道があった」ことは「その事実がある」ことを必ずしも意味しないので、その点はよろしくお願いします。また本稿は、「報道があった」ことを盾に「その事実を認めよ」と迫るものではありません。むしろ逆で、「英デイリー・メイルなどタブロイドを鵜呑みにするな」と言いたくて書いたエントリです。

BuzzFeed Japanのこんな記事が話題になっている:
「新型コロナウイルスの再感染は致死的」医師の動画に批判、専門家「信用しないで」
https://www.buzzfeed.com/jp/ryosukekamba/iwata2


この見出しがあまりにわかりづらくて、私は最初にTwitterでこの見出しを見たとき、どこかのまとめサイトだろうと思ってスルーしてしまったのだが、そんなことは本質的なことではなく、記事自体は、現在のこの「何もかもが不安と不信」というムードの中でひとつの明確な指針となりそうなものだから、読んでおくといいと思う(見出しについては本稿の最後で具体的に指摘する)。

分かりにくい見出しを整理すると、「新型コロナウイルスの再感染は致死的」と主張するビデオを自身のYouTubeに上げている医師がいて、そのビデオについて(その医師とは別の)専門家が「信用しないで」と評価し、内容を批判している、ということである。また、その医師のビデオはネット上でかなり流行っているらしい。私は見たことなかったが、BuzzFeed記事に埋め込まれている当該のビデオのキャプチャ画像を見れば、多くの人が「あー、このビデオ見たわー」となるのだろう。

記事の冒頭には次のようにある。(太字も原文のままで引用してある)
「新型コロナウイルスの再感染は致死的」。そう説明する現役医師の動画がネット上で拡散されている。感染症の専門家で神戸大学教授の岩田健太郎医師は「そういう事例の報告はない」「引用論文が明示されていないものは信用しない方がいい」と注意を呼びかけている。
https://www.buzzfeed.com/jp/ryosukekamba/iwata2


そして記事の下の方には、岩田教授の発言として、次のようにある。
そもそも「2回感染した」という事例は、1度も確認されていない。検査で陰性になった後に陽性になったという人が、「2度目に感染したのか」はまだ謎なんです。

大阪の事例にしても、中国の事例にしても、陰性になったのは検査で見つけられなかっただけで、ずっと感染していただけなのではないか。再感染より「再燃」(いったん減少したウイルスが再び増加すること)の可能性の方が高いと考えています。

再感染が確認されていないということは、それが心不全を起こすということも当然確認されていない、ということです。


と、岩田教授は「1度も確認されていない」と言い切り、その後で陰性だった人が陽性になったのは「2度目の感染」なのかどうかは「まだ謎」、つまりまだ解明されていない(わかっていない)と述べている。これは非常にロジカルな言い方なのだが、「2度感染することがあると分かっていない以上、2度感染したという事例はこれまで確認されていない」というのは、やや人を食ったように感じられるかもしれない。要するに、「2度感染するなどということが本当にあるのかどうか、わかっていない」のである。

だから「2度の感染(再感染)」を前提として何かを語ることは、できないわけだ。

以下、BuzzFeedの神庭記者と岩田教授の話は、さらに別の側面へと発展していき、そのパートがなかなか読み応えがあるのだが、本稿ではそちらは扱わない。読めばわかるので、各自で、読んでいただきたいと思う。

本稿を書いているのは、ここで岩田教授によって批判されている医師のビデオにある「再感染で心不全」という話に、おやと思ったからだ。

私は医学は専門外だから、用語を正しく把握・記憶しているかどうかはわからないのだが、「再感染する」「心臓に影響が出る」といった話は、2月の間に何度か、Twitter上で英語で遭遇したことは確かだ。"infected again" とか "second infection" とか、"cardiac なんとか" といった単語でそういう内容のことが語られていた。それが気になったので、今回改めて検索して掘り出してみた。そういう報道があったということはこれで確認できると思う。

詳細を述べる前に念のために書いておくと、岩田教授がおっしゃる「確認されていない」は、医学的にそういう事実があるということが検証を経たうえで確認されていないということであり(つまり所定の手続きで確認されたと位置付けられる論文等が出ていない)、「メディアでの報道がない」ということは意味していない。だから、岩田教授の発言と、私が報道記事を見た(見つけた)ということは矛盾しない。「〜という事実がある」ことと「〜という報道がある」ことは必ずしもイコールではなく、「事実はあるが報道がない」ことも「事実はないが報道がある」ことも、ありふれている。「〜という報道があったのに、岩田先生はないと言っている」という疑問や不安を覚えている人には、何か発言する前に、まず前提として、このことを再確認していただきたいと思う。

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2020年02月25日

「難しいことはわからない私」でも、「言葉」を見る目があれば、誤情報から自分も家族も友人も守れるはず――善意で広まるあるチェーンメール

新型コロナウイルスに関してはいろんなことが言われていて、その一部はデタラメだ。個人的にウイルスの話など読んだり聞いたりしてもどのくらい正確に理解できるのか怪しいくらいの素養しかないのだが、それでも「今回のウイルスは、熱に、弱いそうです」で始まる日本語のメッセージを受け取ったときは、「これはデタラメだ」と即判断した。

なぜか。日本語がひどかったからだ。「ひどかった」というより「機械翻訳臭」に満ち満ちていたから。もっと言えば「失敗した機械翻訳臭」だ。(詳細後述)

そういうダメな翻訳の話は、今回の新型コロナウイルスに関するニュースのなかでもうひとつあるのだが、そちらについて書こうとしていたらなぜかドツボにはまってしまい、昔聞いていた『基礎英語』のテーマ曲が頭をぐるぐるし始めるというありさまで(その音楽が『基礎英語』のテーマだということは、あとから調べて確認しなければならなかったのだが……つまり、ぐるぐるしている間はずっと「これ何だっけ、これ何だっけ」と考えていた)、もう少しこなれるまでの時間が必要だということで、取り急ぎ、「今回のウイルスは、熱に、弱いそうです」の怪文書から。

そう、これは「怪文書」だ。

これは「怪文書」である

このメッセージを(幸いにも)受け取っていない人もおられるだろうから、下記に画像データで示しておく。(読み上げソフトをお使いの方には申し訳ありませんが、コピー&ペーストできるテキストの形で再掲することは、不確かな情報を記載した怪文書を、当ブログからまたコピペで拡散させてしまうことになるので、なにとぞご理解ください。)画像データには大量のウォーターマークを入れておくが、それはこれをこのまま悪意で再拡散・再利用させないためである。読みづらい点はお見逃しいただきたい。

基本的に送信されてきた文面をそのまま画像化したが、画像化に必要とされる改行を何か所か加えた(改行を加えた個所は、画像中に「☆」で示してある)。また、私にこの文面を送信してきた人(直接つながりのある人)の書いた部分もプライバシーの観点から一部を保護したが、その人にこのメッセージを送信したのがどういう立場の人かはわかるようにしてある。

あと微細なことだが、文中で半角のナカグロ(「・」の記号)が1か所使われているところがあったが、それはテキストデータにするときに全角に変換してしまった。(この手の怪文書で半角のナカグロが使われていることは、ちょっと気になるけど。)

cvdkbsh.png
※画像はクリックで原寸表示。

この文面は、Twitterで多発が報告されている文面(「耐熱性に乏しく、26-27度の温度で殺傷します」を特徴とする)とは若干異なっている。つまりこの「怪文書」の文面は1つではない。

書き出し最初の2行にある情報、つまり「ウイルスは熱に弱い」とか「温かい飲み物を飲もう」「ぬるま湯を持ち歩こう」とかいったことは、厳密ではないかもしれないが(「ぬるま湯」では持ち歩いてるうちに「常温の、つまり冷たい水」になってしまう)、別に変ではない。日本語も、「やたらと読点(、)が多いな」という程度で、特に変には見えない。日本語の文章を書き慣れていない人が、丁寧に書こうとして、やたらと読点だらけの文を書いてしまっているのだろうというのが第一印象で、だから私も元々は看護師さんからの転送メッセージだというこの文面を、読まずに捨てることはせずに読んでみたのだ。しかし、読み進んでいくうちにどんどん「?」となってくる。

まず「?」が浮かぶのは、5行目の「必ずたくさん伝達してください.」だ。チェーンメールの常套句ではないか。

チェーンメールは善意が回す

「チェーンメール」とは、人から人へと鎖状に(チェーンのように連鎖的に)転送させることを目的とするメールのこと。SNSやLINEのようなメッセンジャー・アプリが当たり前になった現在では「メール」という名称は時代遅れだが、言語的には「筆」ではなく「鉛筆」を入れているのに「筆箱」と呼び続けているような現象なので、そこは気にしないでいただきたい。

この「チェーンメール」について、日本データ通信協会は次のように説明している

チェーンメールとは、転送を呼びかけ、次々と鎖のように連鎖していくメールのことです。

チェーンメールは転送されることを目的としているため、受信者の恐怖心をあおるホラーな内容や幸せになれるおまじないなど、善悪様々な種類の内容で転送させようとします。

……こういったチェーンメールのほとんどはデタラメ(で)……軽はずみな転送は、悪質なデマの情報を不特定多数の人にまで広げてしまうことになります。


「必ずたくさん伝達してください.」という文言は、まさに定義通りの転送の呼びかけである。

チェーンメールの目的(なぜ多くの人に転送させたいのか)はケース・バイ・ケースで、中には本当に善行を目的としたものもあるのかもしれないが、インターネットといえばパソコンを使わないと利用できなかった時代からネットを使っている人々の多くは、「なるべく多くの人に転送してください」という不特定多数宛てのメッセージは無視する習慣が身についていると思う(メーリング・リストなどにうっかりチェーンメールを転送してしまうなどした日には、お叱りやら罵倒やら忠告やらアドバイスやらで大変なことになったものである)。

だが、現状、ネット利用者の多くがそういうわけのわからない情報空間に慣れていない人たちだ。FacebookであれLINEであれ何であれ、リアルの知り合い同士の安心できる情報交換や交流の場でしかなく、そういうところにネットの、いわば野良のチェーンメールが持ち込まれても、「無視する」というマナーが発動しないのだろうと思う。だから(私が受け取ったのとは少し違う文面だが、同内容の怪文書が)拡散してしまっているのではないかと思う。






ちなみに私が受け取った文面で、「必ずたくさん伝達してください.」の文末の句点は半角ピリオドである。文書全体にわたって、句点は全角のマル(。)で統一されているのだが、ここだけ、なぜか半角ピリオドだ。「あとから付け加えられた」臭が立ち込めている。

上述の半角のナカグロにしても、「あとから付け加えられた」部分で発生した誤変換かもしれない。(ナカグロに全角と半角があるということを知っている人はそれなりのスキルがある人で、パソコンなんかほとんど触ったこともない人たちがどんどんネットを使うようになっている現在、そこを統一するのが当たり前で統一されていなければおかしいと考える人は「異様に細かい人」扱いされるものだが、何が言いたいのかというとGoogleなり何なりに投げて得られる機械翻訳結果に半角ナカグロって含まれるものなんすかね、ということ。)

ここらあたりから、文面は一気に「不自然な日本語」っぽさを増していく。上述の「必ずたくさん伝達してください」という常套句にしても、日本語としては不自然だ。

しかし、「日本語として不自然」だからという理由だけで「転送すべきでない文書、怪文書の類なのではないか」と疑える人は、実はそんなに多くはない。だってこの文書には何かもっともらしいことがかいてありそうだから。

「何かもっともらしいこと」というのは下記の図をご参照いただきたい。


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2020年02月03日

【業務連絡】はてブを非公開(プライベートモード)にしました。

表題通りです。先ほど、はてなブックマークをプライベートモードにしました。

以前ははてなIDを指定して一部公開ができるようになっていたはずなのですが、今、どこを見てもその指定ができるところが見当たらないので、その機能は廃止されたのでしょう。このため、全面的に非公開になってしまいますが、当面はこの形で運用しようと思います。見て下さっていた方々にはご不便・ご迷惑をおかけしてしまうかもしれませんが、何卒ご了承ください。

非公開にした理由は、はてな村ではよくある話ですが、「知らない人から粘着されたから」です。ブコメ一覧を非公開にしてるのと同じような話です。

私にとっては「語る権利」という基本的な権利ゆえに発言はしたけれど、語られていること(あるマンガだかアニメだかのキャラクター)それ自体には関心はなく、というか積極的に「どうでもいい」というトピックについて、発言からすんごい時間のたった今頃になって、「メタブはご遠慮ください」と書いているにもかかわらず、メタブで絡んでこられました。

hatebuhikoukai.png

そのマンガだかアニメだかのキャラクターについては、新たなグッズが作られたとかなんとかいうことがあったみたいなんですが、私はここ数日ずっとBrexitとアイルランドの総選挙の話を追うのと(あと中東とイラクもウォッチしてる)、頭の中を整理するのとで忙しくて、そんなどうでもいいキャラクターのことは見てないんっすね。自分では見てなくてもTwitterでは「みんな」が話題にしてると視界に入ってくるので、もうほんとうっとうしいしキモいしでついに最終兵器、単語単位でのフィルタリング(キャラクター名)を発動したくらい。あれをめぐるすべてがあまりにうっとうしくて、視界に入れたくもないので。

というわけで、再燃したそれについては何も見てないから、話は私にとっては訳の分からない方向に行ってて、仮に何か話しかけられたら「何かまた再燃してるらしいね」くらいで終わらせるようなことなんですが、はてブという場はそれで終わるということを可能にさせない。システム設計の問題なのか、ユーザーが当たり前のものとしている行動様式の問題なのか、他の何かの問題なのかはわからないけど、何か発言があったら延々と粘着されてさらし上げられることが可能にされてる場です。その昔、はてなの相談役だか社外取締役だかの人が「スルーする力」について熱弁をふるっていたんだけど、そして実際に「スルー力」は重要だと個人的には思うんだけど、実際に粘着されたときに何ができるかという点ではてブはほんとに頼りないというか、システム設計が基本的に2000年代半ばのままなんですよね。今のネットのモブには対応できない。そしてそのキャラクターをめぐるあれこれは既に「モブ」化してるんです。次から次へと「敵」を求めて狩り回ってる感じ。

自分に100の関心があることについて、誰か別な人も発言していたら、その人も100の関心があると思い込んで、ウザ絡みしてくるという子供じみたことは、やめてほしいんですけどね。あなたに100の関心があっても、私には0.001くらいの関心しかないです。

私は元々はてブの「メタブ」という文化(みたいの)が大嫌いです。あれは本当に気持ち悪い。そして、よりによってあのキャラクターの話を蒸し返されたうえで絡まれたくないんです。だから鍵をかけます。

メモっておきたい記事はTwitterの方でもかなりフィードしているので、お手数ですがそちらでご確認いただければと思います。
https://twitter.com/nofrills

よろしくお願いします。


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posted by nofrills at 13:31 | 事務的なこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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