kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=


2018年10月28日

「本物は言うことが違うよね」って、「本物」が「戦場が流動的」とか「最強のなんとか」とか言うか、タコ。(ある「デマ」の記録)

安田純平さん解放・帰国のニュースがあって、「ああ、よかった」と胸をなでおろしているときに、またぞろ、ネット上で拡散されているとてつもなく雑な「デマ」のことを知った。

その「デマ」をぱっと見て、「出典を確認するような検証ならネットロアさんが腕をふるってくれそうだが、これはid:hagexさんがこんなふうにつっこみながらまとめてくれるんじゃないかな」と思って、1秒もしないうちにああそうだ、あの人もういないんだ、あの人、私たちから奪われたんだということに思い至った。殺害されるっていうのはこういうことなんだよね。理不尽な暴力が原因で、あの人が新たにものを書くことは二度とないし、あの人が「ネット上のデマ」を見て分析し、ツッコミを入れることも二度とない。

その「デマ」は、安田さんの解放というタイミングで広めている連中には明らかに政治的な思惑があると思われ、つまり英語のrumourを含め「不確か・不正確な情報」を何でもかんでも「デマ」と呼ぶ日常の日本語のおかしな用語法による「デマ」ではなく、定義どおりの「デマ(デマゴギー)」だ。(関係ないけど、かっこつけて「デマ」を「デマ」という省略形を使わずに言おうとして「デマゴーグ」と言ってる人に案外よく遭遇する。著書のあるような人でも混同しているようだが、「デマゴギー」と「デマゴーグ」は、「プロパガンダ」と「プロパガンディスト」くらい、「ギター」と「ギタリスト」くらい、「キャベツ」と「キャベツ農家」くらい意味が違うので注意されたい。)

この「デマ」は、わりと早い段階で「デマである(根拠がない)」と指摘され、報道機関でもその旨報道されているが(HuffPo, 共同通信東スポなど)、2万数千回もリツイートされているそうだし、ネット上にウヨウヨしている「話題になったことをまとめるサイト」や個人ブログ、個人のFacebookなどの投稿を含めれば、「デマ」を「デマ」と指摘する報道が追いつかないくらいに広まっているだろうし、それに、それこそid:hagexさんがずっと問題視していたような、「これはデマかもしれないけど、でも、言ってることは結局は正論/いい話だからいいじゃん?」的なヌルい受容のされ方もしているだろう。そういう場合、「発言主とされている人がこんな発言はしていないにしても、言ってることは妥当」などとして、根拠のない発言が一人歩きする可能性も低くない。つまり私は頭痛がして頭が痛い。特に「反日」「国に迷惑をかけるな」とカキコしたくてウズウズしている人々(いわゆる「ネトウヨ」)の間では、これが「戦場取材の鉄則」として既成事実化されるに違いない。私はやたらと「この道はいつか来た道」と言ってみせるというパターンには鼻白む思いをしている系だが、それでもこれは明確に「この道はいつか来た道」だ(あの四字熟語の大合唱が起きたのは14年半前のことだから、知らない人、忘れている人もいるかもしれないが)。実際、東スポの記事でスマイリーキクチさんが「渡部さんご本人も否定しているし、フェイクニュースだと伝えられているのに、今もこのデマを事実と捉えて拡散している人達がいる。感情に流されて自身の非を受容しない。デマを見抜けない人より、デマを認めない人が危険なんだ」と述べていることが紹介されている。

その「デマ」は「○○氏が語った戦場取材の掟」というものだ。実在するフォトジャーナリスト(ユニークな話し方と温厚な人柄が受け、一時テレビにひっぱりだこで、しかも一般的にかなり好かれていた)の名を挙げたうえで、全8か条が箇条書きにされているのだが、そのいずれもが雑としか言いようがない。「何ですか、これは」と反応するよりないというか、「戦場が流動的なところには行かない」というのは、ええと、そこは岸田今日子が住んでる砂丘か何かなんですか。「国外の難民キャンプとかを中心に取材する」の「とか」って何ですか。あたしの素の文じゃあるまいし。だれか文章校正しろよ。

だから、これはおそらく「ネタ」なのだろうと思うし、そうである場合「ネタにマジレス」の状態になると思うが、それでも、こんなん、ほっといちゃいかんのだろうなと思うし、同時にとてつもなく頭に来るじゃん。

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2018年10月23日

「反・西洋」という密かな熱狂が、邪悪な殺人を正当化するために利用されているかもしれない。

いわゆる「欧米」圏の外での出来事について、「欧米」が批判するなり非難するなりする場合、「欧米が欧米の価値観を押し付けようとして騒いでいるだけだ」ということにしてしまえば、静かであってほしい界隈は静かになる、というのがある。(ここで私が曖昧にぼやーっと書いている理由は察していただきたい。)

私が鮮明に記憶している例は、ずーっと前、10年以上前ではないかと思うが、中央アジアやイエメンでの若年女子と、中年・老年男性の強制結婚という「習慣」について、「人権上の問題であると言う者は、『普遍的人権』という『欧米』の価値観を押し付けようとしているだけだ」という反発があったこと。あと、インドの「ブライド・バーニング」についても、パキスタンの「名誉殺人」についても、スーダンやコンゴでの「性奴隷」についても、そのような「これはこの土地の習慣だ」論を見たことがある。(それらはたまたま被害者と位置づけられる側が女性で、フェミニズム方面での指摘が盛んだったのだが、被害者は女性とは限らない。例えば性暴力は男性にも向けられている。)

実際、イスイス団が特にヤジディの女性たちにめちゃくちゃひどいことをしまくりながら世界的規模で蛮行を先導/煽動したことで、全世界が「暴力反対」みたいなムードに傾いていなかったら、たぶん今でもこのような人権侵害について「この土地のやり方」云々が主張され、それが受け入れられていたのではないかと思う。その意味でも、今年のノーベル平和賞で性暴力に対する活動をしてきたヤジディの活動家、ナディア・ムラドさんと、とコンゴ(DRC)の医師、ドニ・ムクウェゲさんが受賞者となったことには大きな意義があると思うが、それですら、「ノーベル賞なんて欧米の云々」という発言を生じさせるだけの界隈もあるだろう。

そもそもその「欧米」とは厳密に何なのか、ということはひとまず措いておこう。通例、日本語で「欧米」といえば英語のthe Westのことなので、そう考えておく。

そのthe Westに対する反感、というかthe Westを敵視する主義主張のことを、Occidentalism(オクシデンタリズム)という。下記引用の (i) の意味。

Occidentalism refers to and identifies representations of the Western world (the Occident) in two ways:
(i) as dehumanizing stereotypes of the Western world ...
(ii) as ideological representations of the West ...

https://en.wikipedia.org/wiki/Occidentalism
※引用に際して読みやすくなるよう書式に手を加えた。


2006年と少し前の本だが、イアン・ブルマの本が新書になっている(アヴィシャイ・マルガリートとの共著)。

反西洋思想 (新潮新書)
反西洋思想 (新潮新書)


オクシデンタリズムは「欧米」の中に生じることもある。例えば、昨今の新自由主義社会での格差拡大などを身近に見て「西洋的な価値基準が絶対的に善というわけではない」と考えるところから、自分が属し、根ざしている社会そのものに疑問を抱くということがある。非常に大雑把にいえば、そういったベースの上では、「西洋でないもの」は「とりあえず無条件で受け入れるべきもの」となるし、「西洋的なもの」は「とりあえず否定すべきもの」となる。G7のような場についての報道で、日本の首相は(西洋の首相ではないということだけで)とりあえず無条件で肯定的な光のもとに置かれる、という状況は確実に存在する。たとえトランプとマブダチであることをアピールしまくっているような人物であっても、トランプが厳しく批判されている場面で「中立の人物」として解説される、といったことが実際にある(今年のG7サミットでのメルケルとトランプの写真についてるキャプションで見た。どのメディアで見たのかを忘れてしまったので、ソースが今探し出せないのだが……)。

マーティン・スコセッシの映画『沈黙』は、私が見た限り英語圏の一般メディアでは「よくわからないけど仏教を貶めてない?」という方向で不評だったのだが、それは「日本」という「非西洋」の残虐性がそのままむき出しに描かれていたためだったようだ。英語圏の人たちは、研究者やよほどのオタクでもない限り、日本にキリスト教徒迫害の史実があることなど知らないから、あの映画が「仏教批判」に見えるのだろう。そしてもちろん、「スコセッシの宗教臭い映画」を「見る価値なし」と一蹴する彼ら・彼女らは、あの映画が日本人作家である遠藤周作の小説をほとんどそのまんま映像化したものであることを知らない。

沈黙 -サイレンス-(字幕版)
沈黙 -サイレンス-(字幕版)

『沈黙』を「仏教批判映画」と位置づけた彼ら・彼女らの中にあるのは、「自分がよく知らないもの」に対する遠慮というか、ある意味での思慮深さと寛容だろう。そしてそういう思慮深さと寛容は、「僕は関係ないけど、あの人たちにも思想の自由・発言の権利はあると思うよ」「その発言の内容が変ならそれに対する批判が出てくるし、その発言はまともに受け取られることはないはずだ」といった形で、所謂「イスラム過激派」に場を与えたことは事実だ。少なくとも、(アメリカではどうか知らないが)イギリスではそうだった。

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2018年10月21日

10年以上前に書いた文と、トラックバックと、はてなダイアリーについて: 「検証可能」ではなくなるということ

『新潮45』の廃刊を受けて、高橋源一郎さんが書いた文章が、先日、はてなブックマークでおおいに話題になっていた。現時点(10月21日夜)でブクマ数1200件を超えている。

その文章は、どうか各自ご自身で読んで、感想があれば(私にぶつけずに)ご自身でアウトプットして消化していただきたいのだが、私自身は非常にひっかかるものを感じながら読んだし、一読して違和感以外の何ものでもないもの(なのに、別の何かに偽装されているもの)を喉元に詰まらされた感じがした。口に入れれば口の中の水分を全部持っていくカステラ的なおやつを、お茶も水もなく出されて、「どう、美味しいでしょう」という圧力を感じているという感覚だ。これは「志の高い若者が挫折し、ダークサイドに落ちた」という《物語》なのか? Facebookに就職したニック・クレッグのように? (クレッグのことはまた改めて書く)

中でも、最も大きな「?」が頭の上に浮かんだ箇所がここだ。

「LGBTという概念について私は詳細を知らないし、馬鹿らしくて詳細など知るつもりもないが、性の平等化を盾にとったポストマルクス主義の変種に違いあるまい」というのも類を見ない発想だ。他の雑誌でも「詳細を知らないが」と前置きして書いているのを見かけるので、あえて「知らない」ままで書くのがお好きな方のようだ。おそらく、その方がフレッシュな気持ちで書けるからだろう。とにかく、小川さんに「事実と違う」と指摘するのは意味がないのではあるまいか。だって「知らない」っていってるんだから。しかし、これ、いい作戦かもしれない。おれも、「詳細を知らないし、馬鹿らしくて詳細を知るつもりもない」と前置きして書くことにしようかな。それで文句をつけられたら、「おれの文章をきちんと読め! 知らないっていってるだろ」といえばいいわけだ。でも、それでは、「新潮45」を読むような善男善女の読者はびっくりしたと思う。ふつうは、ある程度、意味を知って書いているはず、と思いこんでいるからね。

--- 高橋源一郎、『「文藝評論家」小川榮太郎氏の全著作を読んでおれは泣いた』
http://kangaeruhito.jp/articles/-/2641


ブコメに書いたんだけど、「『……性の平等化を盾にとったポストマルクス主義の変種に違いあるまい』というのも類を見ない発想だ」というところで「?」となった。その「類」、けっこうよく見るんですけど……っていう感じ。それもネット上の特殊なところで見るわけではなく、書店の書棚なんかで。

高橋さんのこの記述自体が、この記述において述べられている「詳細を知らないし、馬鹿らしくて詳細を知るつもりもない」的な開き直りの構造になっているから、意図的なことなのかもしれないなと思うけれども、ともあれ、問題はLGBTQなどの用語で表されている「性的アイデンティティの多様化」(というか「男か女かの二分法を超えたアイデンティティ」)について、「マルクス主義がぁぁぁ」「サヨクがぁぁぁ」と叫んで「伝統の解体」だの「社会の破壊」だのをもくろむ陰謀だと主張する向きは、かなり前から、けっこうそこらへんにごろごろしているということだ(私個人が直接観測できる範囲では、LGBTQについて「伝統の解体」だの「社会の破壊」だのという結論を自分の中で導き出し終わっている人が、「では、それはなぜなのか」という理由を求めていった先が「サヨクがぁぁ」言説だった、ということがある。そういう場合は左翼でない/右翼の/マルクス主義の影響を受けていないゲイライツ活動家の実例をひとつふたつ示せば話は終わると思うが)。

そういうトンデモな主張について、私は以前このブログで書いている。私のそのブログ記事の前段階にあったのは、荻上チキさんの「トラカレ」の記事で、今回、高橋さんの文章に対するはてブのコメント欄には、それが読めるURLを貼っておいた。

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2018年10月18日

「そしてわたしは何も言わなかった。この人にどう反応したらよいのかわからなかったから」――2018年の #ブッカー賞は、アンナ・バーンズがMilkmanで受賞

今年で50回目を迎えるブッカー賞は、史上初めて、北アイルランド出身の作家が受賞した。

ブッカー賞は、ざっくり言うと、英語圏で最も参考にされている文学賞。日本でいえば「芥川賞」みたいな存在だ。元々は英国圏(ブリテン諸島、つまり英国とアイルランドと、旧英連邦諸国)の作家・作品を対象としていたが、2014年からは英語全体に対象を広げ、昨年と一昨年は米国の作家が受賞しており、今年も最終候補(ショートリスト)の6点のなかでは、米国の作家の作品が有力視されていたようだ。

その下馬評を覆して受賞したのが「大穴」のアンナ・バーンズ。1962年生まれの彼女にとって、受賞作のMilkman(ミルクマン)は長編3作目だが、デビュー作のNo Bones(2001年)もオレンジ賞の最終候補に残るなど高く評価されている。バーンズは北アイルランドの首都ベルファストの北部にあるアードイン地区に生まれ育ち、1987年にロンドンに移り住み、現在はイースト・サセックスに暮らしているという。

アードイン地区といえば北アイルランド紛争で最も激しく暴力が吹き荒れた場所のひとつである。ユニオニスト独裁政権への抗議行動が続いていた1968年10月(今から50年前)、デリーでの暴力により事態が「紛争」の局面に入ったとき、バーンズは6歳だった。うちらの感覚でいえば小学校入学から25歳までずっと、いろいろと厳しいエリアで、「紛争」の激しい暴力が日常という中で過ごしたのだ。

今回の受賞作Milkmanは、北アイルランドの「どこ」と特定していない町で、「どういう名前のだれ」と特定されていない18歳女子が、一人称で、彼女の身に起きたことを語るという作品である。

2018年1月に出た本で、ハードカバーだけでなく既にペーパーバックも入手できるが、日本から買うなら電子書籍が手っ取り早いだろう。

Milkman (English Edition)
Milkman (English Edition) - Amazon Kindle

Milkman【電子書籍】[ Anna Burns ] - 楽天Kobo電子書籍ストア
Milkman【電子書籍】[ Anna Burns ] - 楽天Kobo電子書籍ストア

受賞のニュースについて、また作家のインタビューやいろんな人の反応については、下記に(少しだけだが)記録した。

2018年のブッカー賞、同賞史上初めて北アイルランド出身作家の作品が選ばれる
https://matome.naver.jp/odai/2153976930796791501

作品は、審査委員長のクワメ・アントニー・アッピアが「読むのに骨が折れるが、苦心して読んだだけの見返りが十分にある」といったコメントをしているのだが、とにかく全体的に「読みづらい」という評判だ。中には「本を売りたい人には喜ばしいニュースではない」(ガーディアン)とかいう分析もあるし、Twitterを見てたら「本ってのは読まれなきゃ意味がないんだから、読みづらい本なんて存在価値なし」みたいな極論を延々と連投している人もいたのだが、実際にはかなり売れているとアイリッシュ・タイムズのマーティン・ドイルさんは報告している。

私も早速電子書籍を買って読んでいるのだが、確かにすいすい読める感じではない。最近、自分を甘やかしていて、非常にロジカルなパラグラフ・ライティングされた文や、報道機関の定型に乗っ取ったような読みやい文ばかり読んでいるので、こういう、読むときに一呼吸必要な濃密な文、息の長いパラグラフは、読むのに時間がかかる。それに、内容もやはり、読みやすいものではない。あちこちでひっかかる。

だが、そこかしこで言われているように「実験的で読みづらい」とは、特に感じない。これが「実験的」なら、ジェイムズ・ジョイスなどどうなってしまうのか。職業柄、難しい文章を読みなれているアッピアは「スノードン山に登るようなもの」という比喩を使っているが、それならジョイスはエベレストか。あるいは月世界旅行かもしれない。いや、逆に洞窟の中か。

Written with few paragraph breaks, eschewing character names for descriptions, Appiah admitted that Milkman could be seen as “challenging, but in the way a walk up Snowdon is challenging. It is definitely worth it because the view is terrific when you get to the top,” he said. “I spend my time reading articles in the Journal of Philosophy so by my standards this is not too hard. And it is enormously rewarding if you persist with it. Because of the flow of the language and the fact some of the language is unfamiliar, it is not a light read [but] I think it is going to last.”

https://www.theguardian.com/books/2018/oct/16/anna-burns-wins-man-booker-prize-for-incredibly-original-milkman


ジョイスはどうでもいいんだ。

Milkmanの立ち読みは、Amazonの「なか見検索」でも提供されているし、版元のFaber & Faberのサイトでも提供されている。

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2018年10月09日

Google+終了の件: 問題は「サービス終了」だけではなく「不都合な事実の隠蔽」

「Google+が閉鎖される」――9日早朝の時間帯、Twitterはその話題でもちきりだった。

それに気付いたのは、PCの画面を見ながらツボ押し棒で腕のマッサージをしていたときに、Twitter (UK) で「Google+」がTrendsに入っていたからだ。Twitterの画面を見ているだけでわかったのは、消費者(一般ユーザー)向けのGoogle+が閉鎖されること(企業向けのは残る)、そしてAlphabet社(なのかGoogle社なのか、厳密なところは判然としないが)がその決定を下す前にウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の報道があった、ということだった。

「Google+の閉鎖」については、時期はいつなのかといったことはTwitterの画面だけではわからなかったが、そもそも自分では使ってもいないサービスなので、閉鎖がいつになろうと関心はなかった。閉鎖されても、まあどうでもいいかな、という感じ。

しかし、「WSJの報道」については無関心ではいられなかった。報道内容は、Twitterでわかる範囲だけでも十分に深刻なものだった。いわく、Google+でユーザーが非公開としている登録情報(名前など)がさらされる(さらされうる)というバグが、今から何ヶ月も前に発覚したが、Google社/Alphabet社ではそれを公表しないことにしていた、という。そして実際、そのバグのことは公表されずにいた。

私が見ていた範囲では、Twitterで見られる「Google+」についての発言らしい発言(メディア記事の見出しのフィードを除いたもの)の半分くらいが、そのWSJの報道内容について「これはひどい」と位置づけるものだった。また「Google+なんて、誰が使ってたのwww」というまぜっかえしのような発言に対し、Google+は(マイナーで奇妙でいいかげんでどうでもよいサービスであるかもしれないが)登録ユーザー自身が自分でアカウントを持っていることを把握してもいないケースが多いという指摘もかなり多く見た。

それらを自分でメモるつもりでTwitterに(雑に)書いておいたら、かなり多くretweetされるなどしていたので、一覧性のためにも、ここでまとめておこうと思う。まとめるに際し、適宜補足もしていこう。

なお、日本語圏では『「Google+」の一般向け終了へ 個人情報関連バグ発見と「使われていない」で 』 (ITmedia News) という方向での見出しがつけられていることが多いようだが、事態は「バグ発見」なんかより全然悪い、というかもろにevilだ、ということだ。「使われていない」などということは、Googleにとっては重大なことかもしれないが、個人情報がさらされた可能性があるユーザーとしては、この際ほんとにどうでもいい。こういった企業のステートメントそのままの見出しを見ると、「あんたら、どっち側に立って、どっち側を見てるの?」と思わざるを得ない。

ちなみに英語圏では、Google to shut down Google+ after failing to disclose user data leak (The Guardian: 一般の新聞) とか、Google shuts down social network after data issue: Tech giant faces privacy crisis after deciding not to reveal problem at Google+ (FT: 経済新聞) とか、Google is shutting down Google+ for consumers following security lapse (The Verge: IT系オンラインメディア) とかいった感じだ。ほか、BBCやCNNなど大手の見出しもTwitterのnewsのタブでざっと見ているが、「使われてないサービスを閉鎖するのはまっとうなこと(企業として健全な経営判断)」という方向に誘導しうる情報が見出しに含まれている例は、英語では見なかった。というか、日本語での報道を見て、びっくりしたんだけどね。

Twitterより(時間が経過したあとの画面で、私が最初に見たときの画面とは違うが):
https://twitter.com/search?f=news&vertical=news&q=Google%2B&src=tyah

google-plus-shutdown-headlines.png
※キャプチャ画像は減色加工をしてあります。

以下、自分のツイートのまとめなど。


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2018年09月28日

注目され続ける極右活動家「トミー・ロビンソン」ことスティーヴン・レノンと、ネット上の支持者

tommyrobinsontt27sep.pngふとTwitterの画面を見たら、UKでTommy RobinsonがTrendsに入っている。「また何かやったのか」と見てみると、オールド・ベイリーに出廷したことがニュースになっている。そういえば確かおととい、「トミー・ロビンソンが出廷する日が迫り、大勢の支持者が詰め掛けることが予想されているので、その日は周辺のパブは臨時休業」というニュースを見かけた。おそらく商業の側の自主的な休業判断だろうが、経済的に実害と呼べるであろうものが出ているわけだ。ロンドンは大変に大きな都会なので同一視はできないが、ベルファストの「旗騒動」においては政治的示威行為で経済的に影響が出たという前例を、彼らイングランドの極右活動家たちも十分に踏まえてはいるだろう。その方向性で影響力をweaponiseするということにならなければよいが。

……などということを、しとしと降る雨でとても寒い東京(今日は17度で、明日は25度以上の予報)でぼんやりと考えつつ、Twitterの画面を見てみた。いつもと同じく、報道機関のアカウントからのフィードと、反極右・反レイシズムの調査団体Hope Not Hate (HNH) のフィードが並んでいる。

HNHの今日の最初のフィードは、活動名「トミー・ロビンソン」ことスティーヴン・レノン(スティーヴン・クリストファー・ヤクスレイ=レノンというのが本名)についてまとめられた記事だ。「ロビンソン」ことレノンの名前は、英国、特にイングランドで売れるようになってからもう10年ほどになるが、ここ数年は北米でも名前を定着させつつあるし、さらにここ数ヶ月はスティーヴ・バノンが欧州で極右の連携と連帯をさらにステップアップさせるために活動を活発化させる中で「ロビンソン」ことレノンが注目されている。「ロビンソン」ことレノンは、もはやイングランドの「ローカルな活動家」ではなく「グローバルな極右のシンボル」になりつつあるような印象を私も抱いている。

そういう展開に寄与した要因のひとつは、今年3月、Twitterがレノンを恒久的に出禁にしたことだろうし、さらに大きな要因は逮捕や起訴だ。2017年5月、彼は法廷内でカメラを使用したことにより「法廷侮辱罪」で有罪となった。その後、2018年5月には、判事により報道が規制されていた裁判(ロビンソンらが「ムスリムの連中がいたいけな子供たちを食い物にした」と糾弾している事件。なお、イングランドでは白人によっても同様の事件は引き起こされているが、彼らは加害者が白人の場合は「子供を守れ」的な言動はとっていない)について、法廷の建物の外でネットで実況中継を行い、「平安を乱した罪」で逮捕された。これが広く英語圏の極右の間で「トミー・ロビンソンを解放せよ」というハッシュタグ運動となって広まった

その経緯は、ウィキペディアでは次のように(ソースを細かく示しながら)記載されている。

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2018年09月26日

"dehumanize", "less than human" と「人間以下」: Twitter社のブログと翻訳ギャップ

「なぜそういう反応が?」――26日午後、「人間以下」というフレーズがTwitter上ので話題になっているのを見てみたら、私にはイマイチわからない光景が展開されていた。どうやらTwitter社が規約を改定する方針を示したようだが、日本語圏で起きていることは意味が取れない。ギャグというかボケているのかもしれないが、おもしろくないし笑えない(重複表現)。こういう場合、疑うべきは「文化の違い」で、このケースもまたそのようだった。私は生まれも育ちも日本で母語は日本語で日本のパスポートを持っているのであらゆる点で日本人だし日本の文化にどっぷりつかっているはずだが、ネット上の日本語圏とはいろいろと分かち合えていないのだから(例えば漫画には興味がないのでその話題はわからないし、90年代からネットを使っているが「テキストサイト」とかはほとんど知らない。ちなみに生魚が嫌いで寿司は食べられず、村上春樹も読んでいなくてジャパニメーションとかちょっとかんべんしてくださいっていう感じで、つまり西洋のインテリや日本通が「日本人」と聞いて思い浮かべる人物像ともかけ離れているので、挨拶後のスモールトークの段階での「気まずい沈黙」の経験は多い)。

そういう場合、私は私にわかる圏で、その言葉をめぐって何が起きているのかを把握すればよいだけだ。そのときのメモが私にしては多くのretweetsをいただいていたので、こちらにも投稿しておこうと思う。

そもそもその話題のフレーズ「人間以下」とは何なのか。いや、「以下」だとか「未満」だとかじゃなく(それ、この文脈ではかなりどうでもいいことです。揚げ足取り)、社会科学系としてはUntermenschを連想せざるを得ないじゃないっすか。Twitterがついにネオナチ(ヒトラーとナチズムの信奉者)を直接標的にしたのか?
Untermensch (... underman, sub-man, subhuman; plural: Untermenschen) is a term that became infamous when the Nazis used it to describe non-Aryan "inferior people" often referred to as "the masses from the East", that is Jews, Roma, and Slavs – mainly ethnic Poles, Serbs, and later also Russians. The term was also applied to most Blacks, and persons of color, with some particular exceptions, such as the Japanese. Jewish people were to be exterminated in the Holocaust, along with Romani people, and the physically and mentally disabled. ...These concepts were an important part of the Nazi racial policy.

Etymology
Although usually incorrectly considered to have been coined by the Nazis, the term "under man" was first used by American author and Klansman Lothrop Stoddard in the title of his 1922 book The Revolt Against Civilization: The Menace of the Under-man. It was later adopted by the Nazis from that book's German version Der Kulturumsturz: Die Drohung des Untermenschen (1925).


ナチスがその政策において用いたこの "Untermensch" という用語は、上述の通り、英語では "subhuman", "under-man" と表される。その英語の用語の意味を英語で解説すると、 "less than human" となる。今回「人間以下」(少し後に「人間未満」に改訳されたらしい)として日本語圏でぶんぶん飛び交っているのは、この "less than human" を直訳したフレーズであるようだ。

……と、話はここでは終わらない。どうやら今話題の "less than human" は、ナチスも採用した人種主義思想の用語という文脈にあるものではないらしい、ということに気付くまでには、ほんの2秒程度しかかからなかった。「人間以下」というフレーズだけでおちゃらけている(&自分たちがそもそもTwitterが何を言っているのかを理解していないということを把握せずに、何かを生産的な形で考察しているつもりになっている)日本語圏を一歩出てみたら、それは明白なことだった。

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2018年08月26日

教皇のアイルランド訪問とシリア難民: 2年前、全然英語ができなかった少女が、8万人の前で語るとき

フランシスコ教皇は難民に関して活発に動いてこられた方だ。2016年4月には、シリアをはじめ中近東から中央アジアにかけての地域から脱出してきた人々がトルコからヨーロッパに入る入り口となっていたギリシャのレスボス島を訪問し、難民として収容されていた人々と握手をし、肩に手をかけ、話に耳を傾ける(必要に応じてそれぞれの言語の通訳者を介して)という活動を行ない、帰りの飛行機にシリア難民12人を乗せていき、「ヨーロッパはもっと難民を受け入れるべきである」ということを、言葉ではなく行動で示していた。

このレスボス島訪問の少し前にキリスト教の東西の教会の対話が行われ、訪問は「東」の教会のトップと一緒に行われたということも、特筆に価するだろう。特に今回のアイルランド訪問で、プレスビテリアン、メソジストなどプロテスタントの教派のトップがダブリン城(「城」という名称だが、機能としては「会館」である)でのイベントへの招待を受けるという形で、教派の垣根が取り払われたことを見ると、フランシスコさんはのちのちまで語り継がれる存在になるだろうけど、その注目ポイントの一つは「宗派間の対話の促進」に置かれるだろうと思ったりもする。

閑話休題。ここで書いておきたいのは難民のことだ。

今回のアイルランド訪問に際し、空港に到着した教皇はサイモン・コヴニー外務大臣とそのご家族をはじめとするアイルランドの人々の出迎えを受けたあと、大統領官邸でのレセプションを受けた。

ちなみに大統領はあの見た目がかわいいマイケル・D・ヒギンズ大統領だが、この方もフランシスコ教皇と共通する部分の多い人道主義者である。下記のスライドショーはGetty Imagesでエンベッドできるようになっている写真から5点選んだが、お2人が並ぶとまるで映画に出てくる「善の長老たち」みたいだ。

Embed from Getty Images

ともあれ、アイルランドに外国の国家元首などが訪問するとこのように大統領官邸でレセプションがあり、そこではアイルランドの軍隊(といってもアイルランドは中立国だし、戦闘機など攻撃能力は持っていない。国連PKOで活躍している)を前に閲兵が行われるのだが、今回の教皇訪問ではその軍隊が陸軍ではなく海軍だった。上記スライドショーの2枚目から4枚目で確認できる通りである。

ここで海軍を持ってきたのは、「難民」が理由だという。アイリッシュ・タイムズの記事より:
He was greeted by the President Michael D Higgins and his wife Sabina in front of a guard of honour made up of members of the Irish naval service. They were chosen to reflect the importance of the naval service in the ongoing Mediterranean operation aimed at disrupting the activities of people smugglers and assisting migrants to prevent loss of life at sea.

https://www.irishtimes.com/news/social-affairs/religion-and-beliefs/papal-visit/syrian-family-of-asylum-seekers-meet-pope-francis-at-%C3%A1ras-an-uachtar%C3%A1in-1.3607785

つまり、アフリカ北岸から欧州を目指して地中海を渡ろうとする人々が海に飲まれて犠牲となることを防ぐための活動において海軍が重要な役割を果たすので、海軍が選ばれたというのだ。アイルランドの大統領は儀礼的な存在で政治には関与しないが、ヒギンズ大統領はこうすることで海軍を讃えると同時に、教皇と世界に対し、「やれることをやっていきましょう」というメッセージを送っているのだろう。

そして、大統領官邸でのレセプションではゲストが記念植樹をするのが慣わしなのだが(アイリッシュ・タイムズ記事によると、1853年から続いているのだとか)、その植樹のセレモニーにたずさわっていたのが、シリアから逃れてきたハッスーンさんたちの家族だった。

一家は男性2人、女性2人と幼い子供3人の7人。一番下の子は1歳だという。



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「新しくなったアイルランドへようこそ」(教皇のアイルランド訪問)

実に、約40年ぶりのことである。そしてその約40年ぶりの賓客を迎える側の政治トップ(首相)はゲイ男性であり、閣僚にはかつて修道女だった人と結婚し、彼女の最期を看取ったゲイ女性もいる。40年前、彼ら・彼女らはカムアウトすることもできなかっただろう(アイルランド独立前に制定された19世紀の英国の法律の下で、男性間の関係は違法だった。社会的に、女性同士のそれは存在しないものと扱われていた)。

この変化の大きさには、今まで何度息を呑んだかわからないが、今また息を呑む。人口460万人程度の小さな国は、何らかの権威による上意下達の指示によってではなく、投票を通じて示された人々の意思で、一気に変わったのだ。変化の道のりは決して平坦なものではなく、いろいろと、醜い言葉が叫ばれるなどもしたが、変化はもたらされたのだ。



前回、アイルランドの地をカトリック教会のトップ(教皇。日本のマスコミ様用語では「法王」)が訪問したのは1979年。北アイルランドでは「カトリック系住民」(マスコミ様用語)と「プロテスタント住民」(同)の対立が武力紛争として日常を覆うようになって久しく、「一にも二にも反カトリック」という思想を過激な言動に乗せて社会に拡散し続ける原理主義者(根本主義者、プロテスタント過激派)、イアン・ペイズリーが、欧州共同体(後のEU)に懐疑的な欧州議会議員として議場でわめきたてていたころだ。
Paisley opposed the European Economic Community (EEC), but stood for election to the European Parliament to give a platform to his views and those of his supporters. In June 1979, in the first election to the European Parliament, Paisley won one of the three Northern Ireland seats. He topped the poll, with 29.8% of the first preference votes. On 17 July, Paisley interrupted the opening proceedings of the European Parliament to protest that the Union Jack outside the building was flying upside down. Louise Weiss, who presided over the Parliament, dealt with the interruption swiftly and later said of it that she was used to dealing with "recalcitrant youngsters". On 18 July, Paisley tried to interrupt Jack Lynch−then Irish Prime Minister and President of the European Council−as he was making a speech in the Parliament. Paisley was shouted down by other MEPs.

https://en.wikipedia.org/wiki/Ian_Paisley#Election_to_European_Parliament


それから39年。

その間に北アイルランド紛争は終結し、イアン・ペイズリーは「カトリック」のマーティン・マクギネスと2トップで北アイルランド自治政府を率い、TVの子供番組でおなじみのコメディアン2人組にちなんで「チャックル・ブラザーズ」と呼ばれた。そして2019年の現在では、ペイズリーもマクギネスも既にこの世になく、つい先日はチャックル・ブラザーズの1人も他界した。今の大学生は紛争を記憶していないし、高校生は紛争が終わったあとに生まれている。

アイルランド共和国ではカトリック教会運営施設における子供や女性たちに対する身体的・精神的・性的虐待の実態(実相)が明るみに出て、それに関する包括的な調査が政府によって進められ、報告書としてまとめられ、首相の謝罪が行われるなどした(首相が国民に対して謝罪したのである)。さらに、ここ数年の間にアイルランド共和国は国民投票という形で婚姻の平等(同性結婚の合法化)を実現し、妊娠中絶を「非合法」から「条件付き合法」にした。カトリック教会の影響力が100パーセント消え去るということはないと思うが、かつてアイルランドで生活の隅々にまで及ぼされていたカトリック教会の影響力は、たいへんに弱まった。今のアイルランドで、映画『ローズの秘密の頁』のようなこと――若く美しい女が「お前は男の関心を引く。それは罪だ」と神父によって断罪され、彼女がプロテスタントの男と(プロテスタントの教会でひそかに)結婚したことは無視され、英軍に加わって戦争に行った夫は「カトリック系」の武装組織によってリンチされて殺され、彼女が夫との間になした子は神父によって取り上げられ、彼女は精神病院に隔離される、などということ――は、起こりえないことだと断言できるが、かつてはそんなようなことが実際に起きていたのだ(『ローズの秘密の頁』はフィクションではあるが、映画の原作となった小説は、作者が大叔父の忘れ去られた配偶者にどのようなことがありえたかを作家が思い描いて作品化したものである)。いや、もっとひどい。神父が力ずくで性の道具とした子供に向かって「お前は治療しなければならない」と言い、スティグマを与えるようなことが起きていた。そしてカトリック教会は見てみぬふりをしていた。

それが「とてもひどいこと」であると月曜日に公式の言葉にして認めた教皇が、土曜日にアイルランドの地を踏んだ。それを迎えるアイルランドの人々は、歓迎一色でもなければ抗議やボイコット一色でもない(関係ないが「ボイコット」はアイルランド由来の英語表現である)。歓迎する人々もいれば、抗議する人々もいる。

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posted by nofrills at 12:45 | todays news from uk/northern ireland | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月20日

当ブログに入れている広告を少し整理しました。

※以下はPC(パソコン)での場合について述べています。スマホで閲覧する際に表示される広告はseesaaブログが挿入しているものであって当方ではどうすることもできないので、ご寛恕ください。(この点について末尾に追記あり)


当ブログで表示させている広告に、よからぬものがあることがわかったので、遅きに失した感はありますが、Google AdSenseの管理画面で広告を少し整理しました。

Google AdSense (GAS) は自分のところのを自分でクリックしてしまうといろいろとややこしいことになりかねないので、自分では表示させないようにしています(広告ブロッカーで制御)。そのため、気付くのがとんでもなく遅くなっていると思います。もしご迷惑をおかけしてしまっていたら、ごめんなさい。

今回整理した広告には、「ドライバが古くなっています!」系のメッセージを引っさげてくる押し売り屋(例えばこういうのとかこういうのとか)、「あなたのパソコンにエラーが!」とか「ウイルスが!」と脅しつけてわけのわからないソフトウエア(有償)をダウンロードさせようとするもの(例えばこういうのとかこれとか)、便利ソフトを装ったブラウザハイジャッカー(例えばこんなのとか)の広告がありました。これらに気付かず放置していたことは痛恨の極みです。面目ない。

ほか、非表示にしたものには、直接GASで配信しているのではなくアドネットワーク経由だったためにすり抜けていたのではないかと思うのですが、出会い系サイトと占い(オカルトかも)のポータルのようなものの広告がありました。

その他、いわゆる「情報商材」と思われるものの広告(ああいうのを「投資」と呼ぶのは違和感あるんですが、いわゆる投資関連……ただし、暗号通貨関連のは暗号通貨関連だというだけでは非表示にはしていません)、「美少女ゲーム」の広告(banするかどうかという点で考えると躊躇がないわけではなかったんですが、ああいうエロティシズム満載の変な顔に風船みたいな胸を描かれ、そういう目線・そういう目的で消費されることが前提の絵がポルノグラフィーとしてフィルターされないのは、不快であるとかいうの以前に、やっぱおかしいと思うんっすよね。レンタルビデオ屋なら「18」ののれんの向こうでしょ、ああいうの)も、今回、個別に非表示に入れました。

化粧品やシャンプーなどは、基本、非表示にはしていませんが、ホメオパシーなど明確なニセ科学関連のは元から非表示設定しています。

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posted by nofrills at 08:32 | 雑多に | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月19日

「書籍が無料」をうたうフィッシングサイトの言ってることが、「googleメンバーシップリワード」の当選詐欺のそれによく似ている

最近立て続けに2度、広告ブロッカーを入れていない環境で英語圏大手新聞社のサイトを閲覧中に、ページがGoogleと見せかける妙なサイトに切り替わってしまうという事象に遭遇した

切り替わった先のサイト(ウェブページ)はGoogleっぽいが一目で真正ではないとわかるロゴを掲げた上で「googleメンバーシップリワード」を標榜しており、内容は非常に古典的な、「あなたが特別に選ばれました」&「あと○秒で手続きしないと、当選の権利は別の人に移行します」という文言での詐欺である。

それについての詳細は、8月3日にInternet Watchに出ていたので、ご一読いただきたい。

突然「Googleをお使いのあなた! iPad Air 2の当選者に選ばれました」と表示された
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/dlis/1136222.html


※この記事では、「ウェブを閲覧していると、あるとき突然に新規タブが開き、『おめでとうございます! Googleをお使いのあなた! <製品名>の当選者に選ばれました。OKをクリックして景品をお受け取りください』と表示される」と述べられているが、私が遭遇した事例では、新規タブが開くのではなく、見ていたページが切り替わってしまう(それまで読んでいた記事が読めなくなってしまう)という、迷惑にもほどがある挙動だった。ちなみにGoogle Chrome使用。

この「当選詐欺」は、アドネットワークを介してユーザーの手元で表示されるようになっているようで、要は「変な広告が表示された」ということだから、単にブラウザorタブを閉じればよい(気持ち悪ければキャッシュを削除)。特に「マルウェア対策」などはしなくてもよい(パニクって、表示された文言をググるなどした人を標的に、Tech系のブログを装った「マルウェア感染」詐欺が展開されていたりするので、注意が必要。詳細後述。ツイートを連続して埋め込んである箇所を参照)。

この「googleメンバーシップリワード」は、Twitterでハッシュタグにもなっていたのだが、自分の手元で表示されることがなくなったので、それきりしばらく忘れていた。

そんなタイミングで見かけたのが、19日付毎日新聞の下記記事である。

フィッシング
大量の書籍「無料」うたうサイトに注意

毎日新聞2018年8月19日 13時00分(最終更新 8月19日 15時15分)
https://mainichi.jp/articles/20180818/k00/00e/040/313000c

これが、「googleメンバーシップリワード」によく似ている。

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posted by nofrills at 22:51 | 雑多に | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月17日

英語の冠詞についての優れた本2冊

実用積読技能検定1級保持のみなさん、こんにちは。その技能に磨きをかけすぎた私は、ここしばらく「ネットにつなぐな、本を読め」を標語に、積読してあった紙の書籍1冊と電子書籍2冊(いずれも読みかけだった)を完読したのですが、懲りもせずまた積読本を増やしてしまいました。だって「おれ、この本を読み終えたら、あの本買うんだ……」と思っていた本なんですもの。

4887245734英語冠詞大講座
猪浦 道夫
ディーエイチシー 2016-01-20

by G-Tools


もちろん、積読技能は日々磨きをかけねばならないので、この本も積読中です。とはいえ、購入する前に都心部の大型書店で中を見て、第1章から第5章は「それかー」とか「そこかー」と言いながらノリノリで一気読みしてしまったので(といっても30ページ程度)、まったく手付かずというわけではありません。第7章も、すぐに必要としていたことが書かれていたため、早い時期に読んでしまいました。

目次は下記の通り。これよりもさらに細かい(小見出し入りの)目次が、版元のサイトにおいて画像で提供されています。(さらに、各章ごとの本文中の表&収録できなかった表もDLできるようになっています。)

第1章 序論―冠詞とは何か
第2章 冠詞が名詞に与える様々な情報
第3章 名詞の分類
第4章 名詞の4つの世界
第5章 名詞の各語形がもつ本質的な意味
第6章 不特定概念の名詞の分析
第7章 一般概念名詞の分析
第8章 特定概念名詞の分析
第9章 無冠詞名詞のまとめ
第10章 固有名詞と冠詞の徹底研究
第11章 「原則」を修正させるファクター
第12章 形態と統辞上の注意
Appendix 表
演習問題

https://www.dhc.co.jp/goods/goodsdetail.jsp?gCode=895210


目次の最後にちょろっと1行だけ出てくる「演習問題」が500題もあって、解答解説とあわせて本の厚さの半分を占めています。だから、全体で352ページの本ですが、読むところは180ページくらいです。180ページ程度、読み始めたらすぐに読めてしまうはずですが、何しろ中身が濃い。「怒涛の知識」な感じだから、勢いに乗って読んだほうが逆に頭に入りやすいかもしれないけど、年も年だし、昔のようには勢いに乗れない。

その濃い中身の本に何が書いてあるのか、10字以内でまとめよと言われたら(誰もそんなこと言わないけど)、「英語って、変だよね」ということです。すばらしい。そう言ってくれる本を待っている百万人(推定)にとっては必読の1冊。

著者の猪浦道夫さんはめっちゃたくさんの言語がおできになります。外大のイタリア語学科卒、同大学院ロマンス言語学研究科修了で、12ヶ国語の翻訳にたずさわり、7ヶ国語の語学研修講師ができるという方で、「ポリグロット外国語研究所」の代表を務めておられるということで、あたしなんざドジでノロマな亀でしかないという現実に秘儀「あー、あー、聞こえない」の術を駆使して立ち向かうよりないという感じですが、そういうパースペクティヴをお持ちの方が、英語の冠詞(および冠詞に必ずついてくる名詞……いや、主客が逆転してるか、名詞についてくるのが冠詞なので)について「ここが変だよ」と指摘してくださるので、「ですよねー」「なるほどー」「ですよねー」「なるほどー」連発で読み進めていくうちに、ああ、スッキリ!

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posted by nofrills at 11:00 | 英語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月12日

【実例】"The team is 〜" か、"The team are 〜" か(集合名詞とアメリカ英語とイギリス英語)

サッカーのワールドカップのときに、英国のメディアの試合実況記事を見ながらちょこちょこ書いていた「イギリス英語」の特徴的用法について、先ほど読んだ記事で「アメリカ英語」の実例が出てきたので、ささっと書いておこう。これは多かれ少なかれ英語を真面目に(つまり「通じればいいんだよ」的な態度とは離れたところで)勉強しているとぶつかる壁のひとつで、細かいっちゃー細かいところなのだが、こういうところでどうしたらいいかわかんなくなって書き進めなくなってしまうことも多い。こうやって書いて検索可能な形にしておけば、いずれどなたかの役に立つこともあるだろう。

その「特徴的用法」というのは、《ひとつの集団》を意味する語(集合名詞)を単数として扱うか、複数として扱うかということに関するもの。例えばthe teamという語が主語になるとき、be動詞がisになるか(アメリカ英語)、areになるか(イギリス英語)、一般動詞(例えばhave)がhasになるか(米)、haveになるか(英)、という違いがある。

この場合必要なことに絞ってざっくり前提を説明しておくと、「集合名詞」というのは、見かけ上複数形でないものを言う。例えばThe New York Yankeesはそれ自体複数形なのでここで説明する単数・複数のルールとは関係なく常に複数扱いされるのが自然だが、ArsenalとかManchester Unitedとかになるとイギリスでは複数扱い、アメリカでは単数扱いというケースが見られるようになる。音楽のバンド名でも、例えばThe Rolling StonesとかThe Beatlesといったものはそれ自体が複数形だから特にconflictを起こすことはないのだが、BlurとかOasisとかOne Directionとかだとややこしくなる。(ちなみに私がこの「アメリカ英語とイギリス英語の違い」に気づいたのは、NMEとかMelody Makerを毎週読んでたときのことで、インターネットなんて環境がないことはもちろん、英語の本(洋書)も今のようには簡単には入手できず、なかなか「これ!」という説明に出会えなかった。)

現代において、一般的な日本の学校で教えられるのはアメリカ英語で、ほとんどの人がその《ひとつの集団》が「まとまって行動しているときは単数扱い、個々の成員について言うときは複数扱い」と習うはずだ(区立中学→都立高校と進んだ私もそうである)。ネット上に数限りなくある英語話者向けの文法解説サイト(多くは書籍に基づいている)でも、そのように説明されていることが多い。例えば、アメリカの専門家が書いた文法解説、grammarbook.comでは:
If these nouns are acting as a unit, use a singular verb.
Example: The team is heading for practice this afternoon.

If the sentence indicates more individuality, use a plural verb.
Example: The team are eating with their families tonight.

--- Subject and Verb Agreement with Collective Nouns

つまり「チームが練習する」ときはチームが1つのまとまりとなって行動しているので単数扱い、「チームがそれぞれの家族と食事する」ときは個々の成員の行動を言うので複数扱いとなる、という説明だ。これがオーソドックスな解説だろう。

しかしこの件について、コメント欄(おお、古き良き、機能しているコメント欄よ!「思いついたことの書き捨て場」でないコメント欄よ!)で次のようなやり取り(質疑応答)が行われている。

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posted by nofrills at 10:00 | 英語/実例 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月11日

2018年のthe 11th Nightは、近年珍しいほどに不穏な雰囲気だ。

というわけで暑い。近場の地域猫温度計によると35度(いつも人と目が合ったらぴゅーっと逃げていくねこさんが、今日は風通しのよい場所でコンクリの上にぐでーっと溶けたまま、じーっとこっちを見て、立ち上がるそぶりすら見せなかった)。まだ7月上旬ですよね、と思っていたが、今日はもう11日なのだった。

trendsbelfast11july2018.png7月11日。スレブレニツァ虐殺の日(と書くと「スレブレニツァだけないですよ」とか「セルビアだけじゃないですよ」とか「『戦争広告代理店』を知らないんですか」とかいう人から噛み付いてこられるので一応明示しておくと、「だけ」なんてことは言ってませんし、『戦争広告代理店』云々は虐殺が実際にあったことを否定するものではありません。否定論者はどっか行け、しっしっ)であり、北アイルランドでは毎年恒例の「イレヴンス」の日。今年はサッカーのワールドカップでイングランドが4強に残り、決勝進出をかけた試合が行われるっていうんで、私の通常の観測範囲は基本的に「その話でもちきり」の状態に近いが、ふとベルファストを見に行ってみると、やはり微妙に違っていた。

Trendsで1番上にあるBloomfield Walkwayは、この場所に設置されている11th Nightのボンファイアが11thの夜を迎える前に燃えた(燃やされた)ということでニュースになっているのだが、単に「何者かが火をつけた」ということだけではなく、現在の北アイルランドの過激派周りでキーとなる感じということで注目されているらしい。

「過激派」といってもあっち側ではない。そっち側だ。

Bloomfield Walkwayという通りの名をGoogle Mapsに投げても、どんぴしゃのものは見せてくれない(Googleには限界があるということを知るにはいい例だ)。私が見たときには近似値として "Bloomfield Avenue, Belfast" にピンを立ててくれやがったが、その通りにはボンファイアを設置するスペースなどない。つまりGoogleが「間違ってるかもしれないんですが」と言いもせずにしれっと示しているのは、「間違った答え」だ。

この場所を正確に知るには、別ソースから当たる必要がある。7日付ベルファスト・テレグラフの記事より:
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2018年07月08日

"Football is coming home" というお歌と、「イングランド」の包括性

イングランドがスウェーデンを破り、準決勝にコマを進めた。テキスト実況でしか見ていない(映像を見ていない)ので「快進撃」という表現が果たして妥当なのかどうかよくわからないが、ワールドカップでイングランドの「お通夜」を見ることなく「お祭り騒ぎ」を見る、ということが続いていること自体、感慨深いことだ。

特に準々決勝でのスウェーデンとの試合があった今日は土曜日で、Twitterには「結婚式だというのに誰もが気もそぞろ」という報告あちらこちらから上がっている

始まるまでは、あんなに盛り上がってなかったのに。

今回のワールドカップ、事前の盛り上がりがなかったのは、直前での監督解任という異様なことが起きていた日本だけではない。イングランド――というか、UKの一般メディアでも、事前にはあまり関心が払われていなかったのではないかと思う。開催地がロシアであること、そして2018年3月のソールズベリーでの化学兵器による襲撃事件などもあって、ロシアに対する英国の感情は、控え目に言っても「とても悪い」ということも作用しているだろう。大会開幕前によくありがちな「開催地のトラベルガイド」のような記事も見なかったし、逆に「こんなことで開幕できるのか」的な煽り記事(2010年南ア大会のときが本当にひどかった)もずいぶん前にならあったかな、という感じ。

それどころか、開幕直前に愛国タブロイドThe Sunが、ラヒーム・スターリングが右脚に入れたタトゥーを「問題視」するとかいうわけのわからないことをしていて、リネカーさんが「大会前にプレイヤーの気持ちを折ろうとするメディアの奇習」といったことをTwitterで述べていたくらいだ(この「報道」は逆に、スターリング本人にそのタトゥーの理由を説明する機会を与えることとなったのだが。ちなみに彼のタトゥーはM16機関銃で、それを入れた理由は、彼が子供のころに銃で殺された父親のことを踏まえて、「俺は銃は持たない。俺には右脚があるから」ということを表現するため)。

しかし開幕してみれば、ガレス・サウスゲイト率いるイングランドは快進撃で、試合のあった日はほぼ必ず、♪It's coming home, it's coming home... のお歌が(ヴァーチャル空間に)響き渡るという様相だ。



この曲は元々、1996年――1966年にイングランドがワールドカップを手にしてから30年後――の欧州選手権(EURO)イングランド大会のときに、イングランドの公式応援歌としてリリースされた。いろんな意味で「イングランドらしい」曲だ。

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2018年06月26日

言葉だけの世界に基づいて、言葉だけでない世界に実在する人の人生を断ち切るということが起きて(含: 「はてな」の複雑なサービスの説明)

「えっ」としか言葉にならない。ご家族・ご友人・同僚の方々にはどれほどのショックであることか……。私には「深く哀悼の意を表す」といった決まり文句を書くことしかできないが、実際のところ「哀悼の意」以前の「衝撃」の段階で止まっている。

起きてはならないことが、起きたのだ。

25日(月)昼の時点で既に、報道は多く出ていた。そのあとも記事は続いた。「セミナーで講師をしていたIT専門家が殺された」、「その専門家はブロガーでもあった」という方向の報道をいくつか見たが(例えば毎日新聞: archive)、たぶん逆で、「ブロガーが殺された」、「そのブロガーは本職では専門家だった」という事件だ。

記事の見出しを見るだけでも痛ましいが、NHKの記事を2つ見ておこう。

セミナー講師 刃物で刺され死亡 交番に出頭の男が刺したか
2018年6月25日 1時42分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180625/k10011494201000.html (archive)
警察によりますと、刺されたのは、この施設で開かれたIT関係のセミナーで講師を務めた東京・江東区の会社員、岡本顕一郎さん(41)で、セミナーの終了後、トイレで男に背中を刃物で刺され、その後、死亡が確認されました。

男はナイフのようなものを持って自転車で逃走し、警察は殺人事件として行方を捜査していました。

警察によりますと、24日午後11時前に福岡市東区の交番に血のついた刃物を持った男が出頭し、「人を刺した」と話したということです。

警察は、この男が岡本さんを刺したとみて確認を進めています。


ITセミナー講師死亡 逮捕の男 背中や胸を何度も刺したか
2018年6月25日 14時55分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180625/k10011494661000.html (archive)
24日午後8時ごろ、福岡市中央区にある企業の創業支援施設で、IT関係のセミナーの講師を務めた東京・江東区の会社員、岡本顕一郎さん(41)が、セミナーの終了後、トイレで男にナイフで刺され死亡しました。

警察は、交番に出頭した福岡市東区の無職、松本英光容疑者(42)を殺人などの疑いで逮捕しました。

調べに対し容疑を認め、「ネット上で恨んでいた。死なせてやろうと思った」などと供述しているということです。

警察によりますと、松本容疑者は会場の施設で岡本さんを待ち伏せし、背中や胸、首などを何度も刺したということです。

その後、松本容疑者が出頭した直前、インターネット上に、「俺を『低能先生です』の一言でゲラゲラ笑いながら通報&封殺してきたお前らへの返答だ。『こんなことになるとは思わなかった』なんてほざくなよ。これから近所の交番に自首して俺自身の責任をとってくるわ」などと書き込まれているのが見つかりました。

……

岡本顕一郎さんは、インターネットで「Hagex」という名前でブログを運営し、この中でネットの匿名掲示板やソーシャルメディアでのトラブルなどをいち早く紹介したり、わかりやすく解説したりする、いわゆる「ネットウォッチャー」の1人として知られていました。


Hagexというハンドルネーム/IDは、見れば「ああ、あのブログの人」とわかる程度にはネット上で知っていたが、特に接点はなかった(「はてな」社のサービスのユーザーとしてすれ違うくらいのことはあっただろう)。そのブログはとても有名で、毎日チェックするという人も非常に多そうだ。私個人は「話題になっているときに見てみる」程度でしかないが、私と同様に「読者とは言えないが、知っている」という人を入れたら、氏の書いたものにそれなりの頻度で接している人は、膨大な数にのぼるだろう。

その人が、「ネット上で恨んでいた」という理由で、ネット上の誰かに刺し殺されたという。

事実上「知らない人」のことなのだから、「気の毒に」と思いはしても衝撃などは受けなさそうなものなのだが、実際にはそうではない。ネット上で「脅迫」だの何だのということと無縁ではないためだろう。


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2018年06月11日

英国のEU離脱とロシアの関係についてオブザーヴァーの調査報道記事が出る直前に、「サンデー・タイムズのスクープ」という〈物語〉がBBCなどでもでっち上げられた件

6月10日付のオブザーヴァーで、Brexitを強力にプッシュしたキャンペーン・グループに活動資金を出してきた富豪が、これまで考えられていたより深くロシアとつながっていたという疑惑が裏付けられたという報道があった(オブザーヴァーはガーディアンの日曜版で、ウェブサイトへの掲載は前日の土曜日、9日の深夜というタイムスタンプになっている)。記事に署名があるのは、Facebookとケンブリッジ・アナリティカに関する調査報道で陣頭に立ったキャロル・カドウォーラダー記者。

Arron Banks ‘met with Russian officials multiple times before Brexit vote’
Documents seen by Observer suggest multiple meetings between 2015 and 2017
Carole Cadwalladr and Peter Jukes, Sat 9 Jun 2018 23.35 BST
https://www.theguardian.com/politics/2018/jun/09/arron-banks-russia-brexit-meeting
The communications suggest:

- Multiple meetings between the leaders of Leave.EU and high-ranking Russian officials, from November 2015 to 2017.

- Two meetings in the week Leave.EU launched its official campaign.

- An introduction to a Russian businessman, by the Russian ambassador, the day after Leave.EU launched its campaign, who reportedly offered Banks a multibillion dollar opportunity to buy Russian goldmines.

- A trip to Moscow in February 2016 to meet key partners and financiers behind a gold project, including a Russian bank.

- Continued extensive contact in the run-up to the US election when Banks, his business partner and Leave.EU spokesman Andy Wigmore, and Nigel Farage campaigned in the US to support Donald Trump’s candidacy.


私がこの記事に気づいたのは日本時間で10日の朝8時前のこと。ガーディアンのスマホのアプリをチェックしたときにトップニュースになっていた。

スクショを取っておかなかったのが悔やまれるが(その後、所用を済ませて夕方になるころにはトップニュースはG7サミット閉幕の記事に切り替わっていて確認できず)、Exclusive(オブザーヴァー独占)とは書かれていなかったと思う。だが、形式的には「オブザーヴァーが確認した文書によると」なので「独占」という扱いで出ててもよいはずだ。

「他のメディアにも同じ文書がばらまかれて、各社一斉報道ということなのかな」と思ったが、その時点ではBBCには記事がなく、「各社一斉報道」の線は消えた。

何だろうな、という疑問が解けたのは、所用を済ませたあと、夕方になってパソコンを立ち上げたあとだった。Arron Banksの名前がTrends (UK) に入っていたので、「オブザーヴァーのスクープ(だと私は思っていた)が大反響のようだ」と思いながらクリックすると、目に飛び込んできたのはオブザーヴァーではなく、サンデー・タイムズの記事についての大量のツイートだった。2紙同時報道? ネタかぶり?


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posted by nofrills at 09:31 | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月03日

A Very English Scandal: ジェレミー・ソープという政治家の疑惑と、BBCの消していなかった調査報道テープ

英国で、1960年代から70年代に活躍した政治家に、ジェレミー・ソープという人がいる。1929年生まれで、最初に国会議員になったときはまだ30歳だった。イートン校からオックスフォード大というエリートコースを歩んできた彼は、名門の出で、父親と母方の祖父は保守党の国会議員だったが、自身は当時党勢を失っていた自由党(1988年以降は自由民主党: Liberal Democratic Party)に入った。1967年には自由党の党首に選出された。

1970年代、保守党と労働党の二大政党の人気が低落する中、自由党は「第三極」として選挙で成功を収めるようになった。保守党のテッド・ヒース首相が足場を固めようとして戦った1974年2月の総選挙で、労働党のハロルド・ウィルソンを相手に大苦戦というか37議席も減らすという体たらくに終わり(2017年のテリーザ・メイの愚かな総選挙によく似ている)、保守党が297議席、労働党が301議席のhung parliamentとなったときには、14議席を獲得していたソープの自由党が保守党の連立相手として交渉が行われた(サニングデール合意によってアルスター・ユニオニストが離反していたため、保守党にはほかに頼れる政党がない状態だった)。しかしこのとき、ソープが得票率と獲得議席の乖離を修正する選挙法改正を求めたことで連立交渉は決裂し(これは2010年の選挙とよく似てるけど、2010年は選挙法改正運動そのものがふにゃふにゃにされて終わってしまった)、保守党のヒースは辞任し、組閣は労働党のウィルソンが行うことになった(その後、同じ年の10月に改めて選挙が行われ、ウィルソンの労働党が単独過半数を取って、安定した労働党政権が発足した)。

1950年代、ソープは、大学を出て法律家(バリスター)の資格を得ていたが、それでは満足に暮らしていけなかったので、テレビのジャーナリズムで仕事をするようになった。元から植民地主義や人種隔離(アパルトヘイト)を改善しなければならない(でないと社会主義に対抗できなくなる)と考えて活動してきた彼は、1950年代の激動の世界情勢を伝えるジャーナリストとして存在感を示していたことだろう。

ジャーナリズムの道は政治家と両立できず、彼はテレビの仕事はやめてしまったようだが、その経験は「テレビ映え」という点で彼の中によい財産として残ったようだ。自由党党首となったソープの会見の様子(下にエンベッドするものの前半)や、TVでのインタビュー(音声なし)のBritish Patheの記録映像を見ると、「この政治家は人気があっただろうな」と思える。





しかもその主張が、「弱者」への思いに満ちている。下記はトラファルガー・スクエアでロンドンの労働者階級の劣悪な住環境を改善すべきと演説しているときのもの。どうでもいいけどハトがすごい。


しかし、このようにキラキラと輝いていた時期には既に、ジェレミー・ソープには隠蔽すべき秘密があった。

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2018年05月21日

ハリー&メーガンの結婚式: We must discover loveというシンプルで力強いメッセージ

英王室には特段の興味はないが、「英国の儀式」類を見るのが好きなので、ハリー&メーガンの結婚式もネット中継で見ていた。式の日取りが告知されて以降の、まさに「フィーバー」としか言いようのない熱狂的な報道は、「政治家は式に招待されない」というこっち系の話題を除いては見出しを見るくらいしかしていなかったので、詳しいことは知らなかったが、それでも式がウィンザーで行われることとか、メーガンさんのお父さんが式に出るの出ないので話が二転三転していたこととかは(最終的には「健康上の理由で断念」ということになり、花嫁の手を取って祭壇に向かう「花嫁の父」役は、新郎の父であるチャールズ皇太子がつとめることになった、ということも含めて)把握できていた。

というか、今回のロイヤル・ウェディングに関する英国の報道は、本当に「熱狂的」としか言えないレベルで、普段から「王室大好き」をアピールしまくっている大衆紙の報道には基本的に接していなくても、正直、うんざりするレベルで騒ぎが展開されていた。きっとネット時代、英国のメディアにとっては、(国外からも)大変に多くのクリック数、view数が見込める貴重な「コンテンツ」なのだろう。どのくらいの大騒ぎだったかというと、伝統的に共和主義(王政廃止論)の新聞であるガーディアンが、特設コーナーを作っていたほど……というか、ガーディアンはウィル&ケイトのときに共和主義の魂を売り渡して熱狂して旗をぱたつかせるようになったので、今さら驚きもしないか。

しかし今回のガーディアンはウィル&ケイトのとき(+その翌年の女王のダイヤモンド・ジュビリーのとき)より、さらにひどかった。申し訳程度に共和主義者/王政廃止論者(Republicという団体)の記事は出ていたが、ほぼずっと熱狂しっぱなしだった。式が終わった翌日になってもまだ熱狂しっぱなしで、トップページの特設コーナーには「こんなに記事いらんだろ」というくらいたくさんの記事が並んでいる……どころか、クリックしようと思ってポインターを合わせると、新婚カップルの上にガーディアンのロゴの入った紙吹雪が舞うようになっている! (・_・)



と、まあそんな感じで私は東京で呆れて、こんな顔→ (^^;) をしているのだが、今回の式が予想に違わず、というより予想をはるかに凌いでぶっとばすレベルで、すごくおもしろかったことは事実である。英王室があれをやったというインパクトは、でかい。マーティン・マクギネスと女王が握手したとか、女王のウィンザー城での宴にマーティン・マクギネスが招待されたとか、チャールズ皇太子がジェリー・アダムズと握手したとかいったことに匹敵しそうなくらいのインパクトを、私の中に残した。「それ、やっちゃうんだ……王室が!」的な。

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2018年05月09日

「ずっと一緒にいようねと言ったのに」という歌で、アイルランドがユーロヴィジョンに勝ち残る。

何年ぶりだろうか。毎年恒例、広域欧州+αの国別対抗歌合戦ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト (#Eurovison) のセミ・ファイナル(と呼ばれる予選ラウンド)を、アイルランド(以下「あたしのアイルランド」)が勝ち抜けて、5月12日(日本時間では13日未明あたり)に行われるグランド・ファイナルにコマを進めた。

今年のあたしのアイルランドの代表はRyan O'Shaughnessyというアコギ1本持って歌うシンガー・ソングライターで、曲はTogether. 歌詞はこちら(折りたたまれているのをクリックで表示させてください)。



※なお、Ryan O'Shaughnessyには「ライアン・オショーネシー」というカタカナが当てられているし、そう聞こえる場合もあるのだが、本人の発音(リンク先冒頭)ではghを発音していて「オショーフネシー」というように聞こえる。この辺はアイルランド島の中でも地域差などがあるのかもしれない。

「何年ぶりだろうか」と思って検索すると、すぐにIreland in the Eurovision Song Contestというページが見つかるのが、英語圏の情報の分厚さである。前回、あたしのアイルランドがグランド・ファイナルに進んだのは2013年、Ryan Dolanという歌手の "Only Love Survives" という曲だ(曲名自体がものすごいユーロヴィジョン的)。



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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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