kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=


2018年11月05日

米中間選挙直前、仕事の雑な詐欺師が跋扈し、ネットでは「デマ」がばら撒かれている。

11月6日の米国の中間選挙の投票を前に、ヘイト・クライムが立て続けに発生したのと同時に、ネット上の英語圏は「デタラメ」が横行し、その「デタラメ」を暴くとか潰すとかいったことが次々と行なわれて、かなりにぎやかだった(その時期、日本語圏は「渋谷のハロウィーン」とか「英雄扱い」とか「フェミがぁぁぁ」とか「移民がぁぁぁ」で盛り上がってただけかもしれないが)。

中でも「すごいな……」と唖然としたのがこれ。

MeToo便乗デマ: トランプ支持者がでっち上げた「特別検察官の疑惑」が、あまりにも雑すぎて唖然。
https://matome.naver.jp/odai/2154101196908466101

「元モサド職員が設立した調査会社」を名乗る会社(?)が、ドナルド・トランプのロシアとの関係の真相を明らかにしようとしているロバート・ムラー特別検察官(「ムラー」は日本語圏では「モラー」「マラー」などとも表記される)にセクハラ疑惑が! と言い出し、極右陰謀論者や極右の情報サイト(ヲチャは知ってると思うけど、例の「パンディット」のところね)がそれに乗っかって、ネット上でやんややんやと騒ぎ始めたが、そっこうでその「元モサド職員が設立した調査会社」に実態がないことが暴かれた、という顛末。「笑い話」としてまとめておいた。

「実態がない」ってほんとに実態がない。携帯電話のワン切りやスパムメールで行なわれる「あなたのアダルト番組の使用料金が未納になってますよ」詐欺で使われる「○○省何とかかんとか部」みたいな架空のお役所と同じくらい、実態がない。何しろ、本当にネット上にしか存在しない。サイトで「調査会社の職員」として並んでいる人々の写真は、ネット上から拾い集めたものだ。それも写真の見栄えがよい人を選んでいるのか、モデルとか俳優とかが入っている。Google画像検索ではひっかからなかったらしいが、Yandexを使えば一発でバレる嘘だったようで、間抜けすぎて実話とは思えない。昔よくあった「3バカの珍騒動」の映画みたいだ(身内で「博士」とか呼ばれて「あったまいーな、お前!」と褒められる奴がやってそう)。

「笑い話」ではあるのだが、「アミナ」こと「ダマスカスのゲイ・ガール」や、ブラジルの非実在「イケメン戦場カメラマン」や、議員をひっかけるためにネット上の美女の写真を使って「ネカマ」戦術を用いた記者のことなどを思うと、笑えない。

でもやっぱり、雑すぎて笑える。

そして、CNNなどに対し「フェイクニュース!」と叫んでいる側の連中がこういうことをやっているという事実には、やはり、笑えない。




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2018年10月30日

72時間で3件……10月の終わり、中間選挙直前の米国でばらばらに起きた憎悪犯罪

先週後半のアメリカからのニュースはめまぐるしかった。72時間の間に3件のテロ/ヘイト・クライムが、それぞれ別々に、立て続けに起きた。3件のいずれもが、ざっくり言えば「右」の側からの政治的暴力で、「同時多発」という用語は用いられていないが同時多発の状態。たぶんどれかが別のどれかを触発したとかいう関係にさえないのだろうが、ひとつのムードを共有している。

大きく取り上げられているのは3件のうち2件だ。残る1件は、タイミングのせいもあるだろうが、私も記事は1本しか見ていない(英国のメディアをチェックしているからそうなのであり、米国の報道を見てればここまで少ないということはないかもしれない)。ケンタッキー州の食料品店で51歳の白人の男が銃を乱射し、60代のアフリカ系アメリカ人男性2人が殺されたという事件で、警察が「人種が動機となった可能性がある」と見ている、という報道だった。BBC記事のタイムスタンプは27日(土)で、私がメモっているのが28日(日)夜、それっきりこの事件についての報道は目にしていない。容疑者の名前などで検索すれば続報があるだろうが、ほかの2件が大きすぎてそこまで手が回らない状態である。

「ほかの2件」のうち1件は、先週米東海岸と西海岸で相次いで爆発物(パイプボム)が送りつけられた件での容疑者の逮捕・起訴である。ボムが送りつけられたのは、昨今の「陰謀論」では主役を張っているジョージ・ソロス、「陰謀論」の世界では人を殺しまくっているということになっているクリントン夫妻、「陰謀論」の世界では「アメリカ生まれではない隠れムスリム」だったりするオバマ前大統領をはじめとする民主党の要人たちと、映画賞という場でめっちゃストレートなトランプ批判を繰り広げたロバート・デニーロが経営するレストラン、そしてCNN。最初にソロスのところの件が報じられたときには「ユナ・ボマー」とかを連想して長期化するかもと思っていたのだが、1週間もせずに容疑者は特定され逮捕された。爆発物にはイスイス団の旗をデザインしたステッカーに見えるものが貼り付けられるなど小細工がなされていたが、そんなことより指紋か何かが残っていたようで、それが手がかりになったらしい。そして逮捕された容疑者は、筋骨隆々たる50代の元ストリッパーで、数年前に破産して母親と同居しているという人物。所有する白いヴァンの窓に、ネットでしか見ないようなおどろおどろしい「トランプ支持」の図像を印刷したものをべったりと貼っていて、近所の人がいやがっている。SNS使用歴があり、アカウント閉鎖前にサルベージに成功したジャーナリストが分析したところ、ある特定の日を境に、「酒と料理と美女が好きなお気楽マッチョマン」的な投稿ばかりの状態から、急に「イスイス団をぶっ潰せ」みたいな投稿ばかりの状態に変わっているという。その変化に影響していると思われるのは……おっと、ここまでだ。

続きは下記にて。同じことをあちこちに書くのはいやなので。

中間選挙前、米国で連続テロ(爆発物送付、シナゴーグ銃撃など)。トランプは「メディアが悪い!」
https://matome.naver.jp/odai/2154083007447928801

先週立て続けに起きた3件目のテロ/ヘイト・クライムは、1つ前のエントリで書いたGabの件を引き起こした、土曜日のピッツバーグのシナゴーグ銃撃テロである。これは、日本ではどうも「過激な個人のやったこと」扱いがされているようだが(ディラン・ルーフの黒人教会襲撃のような)、より大きな《物語》の中にあることは疑いようがない。つまり「反ユダヤ主義」という《物語》だ。容疑者は「1488」という記号を、SNSの自分のページに掲げるような人物である。

ボム送付、シナゴーグ銃撃、どちらについても、トランプ本人とその政権の反応は、「陰謀論」臭がすさまじい。そしてそれが今のnormである。

その件も、上記の「まとめ」にて。


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「オルタナティヴなTwitter」として知られるGabが居場所を失った件

10月27日(土)、米ペンシルヴァニア州ピッツバーグで、安息日のシナゴーグが攻撃されるという卑劣なテロがあった。トランプ政権はこのテロについて「頭のおかしな個人がやったこと」的な誘導(ざっくり言えば)を行なっているし、今もケリーアン・「オルタナティヴなファクト」・コンウェイが「反宗教」という枠組で片付けようとしているというフィードを見たばかりだが、銃撃を行なった人物は「反ユダヤ主義」に染まり、「陰謀論」を信じ込んで、政治的な目的を持ったテロリストとして指弾すべき人物だ(順番が前後するがこの事件そのものについて詳細はこのあとで書く)。MSNBCのベン・コリンズ記者が掲示している、容疑者が投稿したミーム画像を見れば、どういう方向の「陰謀論」に染まっていたかがわかるだろう。

gaboffline4.png

11人を撃ち殺したこのテロ容疑者が公然と発言するのに使っていたSNSが、GabというSNSである。「オルタナティヴなTwitter」という位置づけのこのSNSは、2016年夏にベータ版がスタートし、2017年5月に本格サービスを開始した。「オルタナティヴなTwitter」というのは、Twitterが(不十分でかなりでたらめな面もあるとはいえ)発言の内容によってはユーザーの活動・サービスの利用を制限・停止することもあるという一方で、Gabは「言いたいことは何でも言える」状態にあるということだ。
https://en.wikipedia.org/wiki/Gab_(social_network)

Gabを設立したアンドルー(アンドリュー)・トーバは、「オルタナティヴ」とか「言論の自由」といった概念を、まったくの中立の観点から使っている人物ではない。「世間は左傾した大企業が牛耳っている」的な世界観の持ち主である。その「言論の自由」は(「政府による検閲が行なわれないこと」などではなく)、はっきり言えば、「陰謀論を主張する自由」であり「人種差別をする自由」である。

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2018年10月28日

「本物は言うことが違うよね」って、「本物」が「戦場が流動的」とか「最強のなんとか」とか言うか、タコ。(ある「デマ」の記録)

安田純平さん解放・帰国のニュースがあって、「ああ、よかった」と胸をなでおろしているときに、またぞろ、ネット上で拡散されているとてつもなく雑な「デマ」のことを知った。

その「デマ」をぱっと見て、「出典を確認するような検証ならネットロアさんが腕をふるってくれそうだが、これはid:hagexさんがこんなふうにつっこみながらまとめてくれるんじゃないかな」と思って、1秒もしないうちにああそうだ、あの人もういないんだ、あの人、私たちから奪われたんだということに思い至った。殺害されるっていうのはこういうことなんだよね。理不尽な暴力が原因で、あの人が新たにものを書くことは二度とないし、あの人が「ネット上のデマ」を見て分析し、ツッコミを入れることも二度とない。

その「デマ」は、安田さんの解放というタイミングで広めている連中には明らかに政治的な思惑があると思われ、つまり英語のrumourを含め「不確か・不正確な情報」を何でもかんでも「デマ」と呼ぶ日常の日本語のおかしな用語法による「デマ」ではなく、定義どおりの「デマ(デマゴギー)」だ。(関係ないけど、かっこつけて「デマ」を「デマ」という省略形を使わずに言おうとして「デマゴーグ」と言ってる人に案外よく遭遇する。著書のあるような人でも混同しているようだが、「デマゴギー」と「デマゴーグ」は、「プロパガンダ」と「プロパガンディスト」くらい、「ギター」と「ギタリスト」くらい、「キャベツ」と「キャベツ農家」くらい意味が違うので注意されたい。)

この「デマ」は、わりと早い段階で「デマである(根拠がない)」と指摘され、報道機関でもその旨報道されているが(HuffPo, 共同通信東スポなど)、2万数千回もリツイートされているそうだし、ネット上にウヨウヨしている「話題になったことをまとめるサイト」や個人ブログ、個人のFacebookなどの投稿を含めれば、「デマ」を「デマ」と指摘する報道が追いつかないくらいに広まっているだろうし、それに、それこそid:hagexさんがずっと問題視していたような、「これはデマかもしれないけど、でも、言ってることは結局は正論/いい話だからいいじゃん?」的なヌルい受容のされ方もしているだろう。そういう場合、「発言主とされている人がこんな発言はしていないにしても、言ってることは妥当」などとして、根拠のない発言が一人歩きする可能性も低くない。つまり私は頭痛がして頭が痛い。特に「反日」「国に迷惑をかけるな」とカキコしたくてウズウズしている人々(いわゆる「ネトウヨ」)の間では、これが「戦場取材の鉄則」として既成事実化されるに違いない。私はやたらと「この道はいつか来た道」と言ってみせるというパターンには鼻白む思いをしている系だが、それでもこれは明確に「この道はいつか来た道」だ(あの四字熟語の大合唱が起きたのは14年半前のことだから、知らない人、忘れている人もいるかもしれないが)。実際、東スポの記事でスマイリーキクチさんが「渡部さんご本人も否定しているし、フェイクニュースだと伝えられているのに、今もこのデマを事実と捉えて拡散している人達がいる。感情に流されて自身の非を受容しない。デマを見抜けない人より、デマを認めない人が危険なんだ」と述べていることが紹介されている。

その「デマ」は「○○氏が語った戦場取材の掟」というものだ。実在するフォトジャーナリスト(ユニークな話し方と温厚な人柄が受け、一時テレビにひっぱりだこで、しかも一般的にかなり好かれていた)の名を挙げたうえで、全8か条が箇条書きにされているのだが、そのいずれもが雑としか言いようがない。「何ですか、これは」と反応するよりないというか、「戦場が流動的なところには行かない」というのは、ええと、そこは岸田今日子が住んでる砂丘か何かなんですか。「国外の難民キャンプとかを中心に取材する」の「とか」って何ですか。あたしの素の文じゃあるまいし。だれか文章校正しろよ。

だから、これはおそらく「ネタ」なのだろうと思うし、そうである場合「ネタにマジレス」の状態になると思うが、それでも、こんなん、ほっといちゃいかんのだろうなと思うし、同時にとてつもなく頭に来るじゃん。

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2018年10月23日

「反・西洋」という密かな熱狂が、邪悪な殺人を正当化するために利用されているかもしれない。

いわゆる「欧米」圏の外での出来事について、「欧米」が批判するなり非難するなりする場合、「欧米が欧米の価値観を押し付けようとして騒いでいるだけだ」ということにしてしまえば、静かであってほしい界隈は静かになる、というのがある。(ここで私が曖昧にぼやーっと書いている理由は察していただきたい。)

私が鮮明に記憶している例は、ずーっと前、10年以上前ではないかと思うが、中央アジアやイエメンでの若年女子と、中年・老年男性の強制結婚という「習慣」について、「人権上の問題であると言う者は、『普遍的人権』という『欧米』の価値観を押し付けようとしているだけだ」という反発があったこと。あと、インドの「ブライド・バーニング」についても、パキスタンの「名誉殺人」についても、スーダンやコンゴでの「性奴隷」についても、そのような「これはこの土地の習慣だ」論を見たことがある。(それらはたまたま被害者と位置づけられる側が女性で、フェミニズム方面での指摘が盛んだったのだが、被害者は女性とは限らない。例えば性暴力は男性にも向けられている。)

実際、イスイス団が特にヤジディの女性たちにめちゃくちゃひどいことをしまくりながら世界的規模で蛮行を先導/煽動したことで、全世界が「暴力反対」みたいなムードに傾いていなかったら、たぶん今でもこのような人権侵害について「この土地のやり方」云々が主張され、それが受け入れられていたのではないかと思う。その意味でも、今年のノーベル平和賞で性暴力に対する活動をしてきたヤジディの活動家、ナディア・ムラドさんと、とコンゴ(DRC)の医師、ドニ・ムクウェゲさんが受賞者となったことには大きな意義があると思うが、それですら、「ノーベル賞なんて欧米の云々」という発言を生じさせるだけの界隈もあるだろう。

そもそもその「欧米」とは厳密に何なのか、ということはひとまず措いておこう。通例、日本語で「欧米」といえば英語のthe Westのことなので、そう考えておく。

そのthe Westに対する反感、というかthe Westを敵視する主義主張のことを、Occidentalism(オクシデンタリズム)という。下記引用の (i) の意味。

Occidentalism refers to and identifies representations of the Western world (the Occident) in two ways:
(i) as dehumanizing stereotypes of the Western world ...
(ii) as ideological representations of the West ...

https://en.wikipedia.org/wiki/Occidentalism
※引用に際して読みやすくなるよう書式に手を加えた。


2006年と少し前の本だが、イアン・ブルマの本が新書になっている(アヴィシャイ・マルガリートとの共著)。

反西洋思想 (新潮新書)
反西洋思想 (新潮新書)


オクシデンタリズムは「欧米」の中に生じることもある。例えば、昨今の新自由主義社会での格差拡大などを身近に見て「西洋的な価値基準が絶対的に善というわけではない」と考えるところから、自分が属し、根ざしている社会そのものに疑問を抱くということがある。非常に大雑把にいえば、そういったベースの上では、「西洋でないもの」は「とりあえず無条件で受け入れるべきもの」となるし、「西洋的なもの」は「とりあえず否定すべきもの」となる。G7のような場についての報道で、日本の首相は(西洋の首相ではないということだけで)とりあえず無条件で肯定的な光のもとに置かれる、という状況は確実に存在する。たとえトランプとマブダチであることをアピールしまくっているような人物であっても、トランプが厳しく批判されている場面で「中立の人物」として解説される、といったことが実際にある(今年のG7サミットでのメルケルとトランプの写真についてるキャプションで見た。どのメディアで見たのかを忘れてしまったので、ソースが今探し出せないのだが……)。

マーティン・スコセッシの映画『沈黙』は、私が見た限り英語圏の一般メディアでは「よくわからないけど仏教を貶めてない?」という方向で不評だったのだが、それは「日本」という「非西洋」の残虐性がそのままむき出しに描かれていたためだったようだ。英語圏の人たちは、研究者やよほどのオタクでもない限り、日本にキリスト教徒迫害の史実があることなど知らないから、あの映画が「仏教批判」に見えるのだろう。そしてもちろん、「スコセッシの宗教臭い映画」を「見る価値なし」と一蹴する彼ら・彼女らは、あの映画が日本人作家である遠藤周作の小説をほとんどそのまんま映像化したものであることを知らない。

沈黙 -サイレンス-(字幕版)
沈黙 -サイレンス-(字幕版)

『沈黙』を「仏教批判映画」と位置づけた彼ら・彼女らの中にあるのは、「自分がよく知らないもの」に対する遠慮というか、ある意味での思慮深さと寛容だろう。そしてそういう思慮深さと寛容は、「僕は関係ないけど、あの人たちにも思想の自由・発言の権利はあると思うよ」「その発言の内容が変ならそれに対する批判が出てくるし、その発言はまともに受け取られることはないはずだ」といった形で、所謂「イスラム過激派」に場を与えたことは事実だ。少なくとも、(アメリカではどうか知らないが)イギリスではそうだった。

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2018年10月21日

10年以上前に書いた文と、トラックバックと、はてなダイアリーについて: 「検証可能」ではなくなるということ

『新潮45』の廃刊を受けて、高橋源一郎さんが書いた文章が、先日、はてなブックマークでおおいに話題になっていた。現時点(10月21日夜)でブクマ数1200件を超えている。

その文章は、どうか各自ご自身で読んで、感想があれば(私にぶつけずに)ご自身でアウトプットして消化していただきたいのだが、私自身は非常にひっかかるものを感じながら読んだし、一読して違和感以外の何ものでもないもの(なのに、別の何かに偽装されているもの)を喉元に詰まらされた感じがした。口に入れれば口の中の水分を全部持っていくカステラ的なおやつを、お茶も水もなく出されて、「どう、美味しいでしょう」という圧力を感じているという感覚だ。これは「志の高い若者が挫折し、ダークサイドに落ちた」という《物語》なのか? Facebookに就職したニック・クレッグのように? (クレッグのことはまた改めて書く)

中でも、最も大きな「?」が頭の上に浮かんだ箇所がここだ。

「LGBTという概念について私は詳細を知らないし、馬鹿らしくて詳細など知るつもりもないが、性の平等化を盾にとったポストマルクス主義の変種に違いあるまい」というのも類を見ない発想だ。他の雑誌でも「詳細を知らないが」と前置きして書いているのを見かけるので、あえて「知らない」ままで書くのがお好きな方のようだ。おそらく、その方がフレッシュな気持ちで書けるからだろう。とにかく、小川さんに「事実と違う」と指摘するのは意味がないのではあるまいか。だって「知らない」っていってるんだから。しかし、これ、いい作戦かもしれない。おれも、「詳細を知らないし、馬鹿らしくて詳細を知るつもりもない」と前置きして書くことにしようかな。それで文句をつけられたら、「おれの文章をきちんと読め! 知らないっていってるだろ」といえばいいわけだ。でも、それでは、「新潮45」を読むような善男善女の読者はびっくりしたと思う。ふつうは、ある程度、意味を知って書いているはず、と思いこんでいるからね。

--- 高橋源一郎、『「文藝評論家」小川榮太郎氏の全著作を読んでおれは泣いた』
http://kangaeruhito.jp/articles/-/2641


ブコメに書いたんだけど、「『……性の平等化を盾にとったポストマルクス主義の変種に違いあるまい』というのも類を見ない発想だ」というところで「?」となった。その「類」、けっこうよく見るんですけど……っていう感じ。それもネット上の特殊なところで見るわけではなく、書店の書棚なんかで。

高橋さんのこの記述自体が、この記述において述べられている「詳細を知らないし、馬鹿らしくて詳細を知るつもりもない」的な開き直りの構造になっているから、意図的なことなのかもしれないなと思うけれども、ともあれ、問題はLGBTQなどの用語で表されている「性的アイデンティティの多様化」(というか「男か女かの二分法を超えたアイデンティティ」)について、「マルクス主義がぁぁぁ」「サヨクがぁぁぁ」と叫んで「伝統の解体」だの「社会の破壊」だのをもくろむ陰謀だと主張する向きは、かなり前から、けっこうそこらへんにごろごろしているということだ(私個人が直接観測できる範囲では、LGBTQについて「伝統の解体」だの「社会の破壊」だのという結論を自分の中で導き出し終わっている人が、「では、それはなぜなのか」という理由を求めていった先が「サヨクがぁぁ」言説だった、ということがある。そういう場合は左翼でない/右翼の/マルクス主義の影響を受けていないゲイライツ活動家の実例をひとつふたつ示せば話は終わると思うが)。

そういうトンデモな主張について、私は以前このブログで書いている。私のそのブログ記事の前段階にあったのは、荻上チキさんの「トラカレ」の記事で、今回、高橋さんの文章に対するはてブのコメント欄には、それが読めるURLを貼っておいた。

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2018年09月26日

"dehumanize", "less than human" と「人間以下」: Twitter社のブログと翻訳ギャップ

「なぜそういう反応が?」――26日午後、「人間以下」というフレーズがTwitter上ので話題になっているのを見てみたら、私にはイマイチわからない光景が展開されていた。どうやらTwitter社が規約を改定する方針を示したようだが、日本語圏で起きていることは意味が取れない。ギャグというかボケているのかもしれないが、おもしろくないし笑えない(重複表現)。こういう場合、疑うべきは「文化の違い」で、このケースもまたそのようだった。私は生まれも育ちも日本で母語は日本語で日本のパスポートを持っているのであらゆる点で日本人だし日本の文化にどっぷりつかっているはずだが、ネット上の日本語圏とはいろいろと分かち合えていないのだから(例えば漫画には興味がないのでその話題はわからないし、90年代からネットを使っているが「テキストサイト」とかはほとんど知らない。ちなみに生魚が嫌いで寿司は食べられず、村上春樹も読んでいなくてジャパニメーションとかちょっとかんべんしてくださいっていう感じで、つまり西洋のインテリや日本通が「日本人」と聞いて思い浮かべる人物像ともかけ離れているので、挨拶後のスモールトークの段階での「気まずい沈黙」の経験は多い)。

そういう場合、私は私にわかる圏で、その言葉をめぐって何が起きているのかを把握すればよいだけだ。そのときのメモが私にしては多くのretweetsをいただいていたので、こちらにも投稿しておこうと思う。

そもそもその話題のフレーズ「人間以下」とは何なのか。いや、「以下」だとか「未満」だとかじゃなく(それ、この文脈ではかなりどうでもいいことです。揚げ足取り)、社会科学系としてはUntermenschを連想せざるを得ないじゃないっすか。Twitterがついにネオナチ(ヒトラーとナチズムの信奉者)を直接標的にしたのか?
Untermensch (... underman, sub-man, subhuman; plural: Untermenschen) is a term that became infamous when the Nazis used it to describe non-Aryan "inferior people" often referred to as "the masses from the East", that is Jews, Roma, and Slavs – mainly ethnic Poles, Serbs, and later also Russians. The term was also applied to most Blacks, and persons of color, with some particular exceptions, such as the Japanese. Jewish people were to be exterminated in the Holocaust, along with Romani people, and the physically and mentally disabled. ...These concepts were an important part of the Nazi racial policy.

Etymology
Although usually incorrectly considered to have been coined by the Nazis, the term "under man" was first used by American author and Klansman Lothrop Stoddard in the title of his 1922 book The Revolt Against Civilization: The Menace of the Under-man. It was later adopted by the Nazis from that book's German version Der Kulturumsturz: Die Drohung des Untermenschen (1925).


ナチスがその政策において用いたこの "Untermensch" という用語は、上述の通り、英語では "subhuman", "under-man" と表される。その英語の用語の意味を英語で解説すると、 "less than human" となる。今回「人間以下」(少し後に「人間未満」に改訳されたらしい)として日本語圏でぶんぶん飛び交っているのは、この "less than human" を直訳したフレーズであるようだ。

……と、話はここでは終わらない。どうやら今話題の "less than human" は、ナチスも採用した人種主義思想の用語という文脈にあるものではないらしい、ということに気付くまでには、ほんの2秒程度しかかからなかった。「人間以下」というフレーズだけでおちゃらけている(&自分たちがそもそもTwitterが何を言っているのかを理解していないということを把握せずに、何かを生産的な形で考察しているつもりになっている)日本語圏を一歩出てみたら、それは明白なことだった。

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2018年05月09日

「ずっと一緒にいようねと言ったのに」という歌で、アイルランドがユーロヴィジョンに勝ち残る。

何年ぶりだろうか。毎年恒例、広域欧州+αの国別対抗歌合戦ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト (#Eurovison) のセミ・ファイナル(と呼ばれる予選ラウンド)を、アイルランド(以下「あたしのアイルランド」)が勝ち抜けて、5月12日(日本時間では13日未明あたり)に行われるグランド・ファイナルにコマを進めた。

今年のあたしのアイルランドの代表はRyan O'Shaughnessyというアコギ1本持って歌うシンガー・ソングライターで、曲はTogether. 歌詞はこちら(折りたたまれているのをクリックで表示させてください)。



※なお、Ryan O'Shaughnessyには「ライアン・オショーネシー」というカタカナが当てられているし、そう聞こえる場合もあるのだが、本人の発音(リンク先冒頭)ではghを発音していて「オショーフネシー」というように聞こえる。この辺はアイルランド島の中でも地域差などがあるのかもしれない。

「何年ぶりだろうか」と思って検索すると、すぐにIreland in the Eurovision Song Contestというページが見つかるのが、英語圏の情報の分厚さである。前回、あたしのアイルランドがグランド・ファイナルに進んだのは2013年、Ryan Dolanという歌手の "Only Love Survives" という曲だ(曲名自体がものすごいユーロヴィジョン的)。



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2018年05月05日

バスク武装組織ETAの解体(北アイルランド和平関係者が式典に出席)

バスクのETAが解体したということを、5月4日に日本語圏のニュースで知った。英語圏では月初には既に伝えられていたようだが、私は気づかなかった。英語圏の報道は相変わらずトランプがどうのこうのというゴシップめいた記事満載で(今月に入ってからは、大統領選前に「トランプはすっごい最高に健康、めっちゃ健康すげぇ」みたいな医師の診断書が出ていたが、それはトランプ自身が口述筆記させたものだった、新たに弁護士になったルディ・ジュリアーニが、ストーミー・ダニエルズへの口止め料についてトランプの説明と矛盾することを言っているとかいうので大騒ぎ。今日もまたNRAの集まりで「ロンドンはナイフ殺人がすごいですよ、まるで戦場」とか言ってるっていうのでトップニュース。ばかばかしい)、いきおい、ニュースチェックが雑になってしまう。さらに、こういうどうでもいいゴシップ(に見えるけど、トランプの方針の一部……「常にニュースになっていること」自体が目的だから)に、天変地異系ニュースなどに比べれば緊急性は劣るがニュースとしては比較的重要なトピックが、埋もれるか流されるかしているので、「報道機関のサイトのトップページを見て、その日のニュースをチェックする」というやり方では見落としが多くなってしまって困る。かといってTwitterではどうしてもアメリカのユーザーが多いから話題も「アメリカ」寄りになりすぎて、実際には「米国内では重大なニュースなのかもしれないけど、うーん……」というものを「普遍的重大ニュース」と誤認してしまうこともあり、いろいろと悩ましい。

ともあれ、ETAである。

テロ組織「バスク祖国と自由」解体宣言 800人超殺害
パリ=疋田多揚2018年5月4日21時25分
https://www.asahi.com/articles/ASL545GVQL54UHBI01M.html
 半世紀にわたりスペイン・バスク地方の分離独立を主張してテロを重ねてきた武装組織「バスク祖国と自由」(ETA)が3日、組織を完全に解体したという「最終声明」を出した。

 ……

 ETAは、スペイン北部からフランス南部に広がるバスク地方の独立を求める組織。1959年に結成され、68年からテロを始めた。政治家や警官、市民ら800人超の命を奪ったテロ組織だが、近年は当局による摘発強化で弱体化が進み、11年には武装闘争の最終的な停止を宣言。先月には地元紙に、これまでのテロの犠牲者に謝罪する声明を寄せ、解体は間近とみられていた。


50年も武装活動を行ってきたETAによる死者数が「800人超」というのを「案外少ない」と感じてしまうのは、昨今の所謂イスラム過激派の異様な殺戮が当たり前になってしまったせいではなく、北アイルランド紛争の約30年間にIRA (PIRA) が1705人も殺害していることと、無意識に比較してしまうからだ(ちなみにロイヤリスト側は諸組織合計して1027人を殺している。英当局と警察は、UDRも入れて361人)。当事者にとっては、そんなことはどうでもいいことで、私のような完全な部外者が「少ない」という馬鹿げた感想を漏らすことも、耐え難いことだろう。

だが、バスクの和平プロセスには、一足先に和平プロセスを開始した北アイルランドの当事者たちが深く関わってきたのであり、ここで北アイルランドと比較してしまうことは「無関係なものを持ち込んでいる」と非難されるべきことでもない。というか、和平プロセス以前にいわゆる「武装闘争」の時代から、IRAとETA(およびそれぞれの政治組織)は強く結びついてきた(「共闘」の関係にあった)。

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2018年02月17日

フロリダ州の高校銃撃事件容疑者が白人至上主義団体に所属していたという事実は、確認できていない(活動家のホラにAPが釣られた模様)

APが釣られるとさすがに影響がものすごく大きいようなので、取り急ぎ、メモ程度のことを書いておく。結論だけ先に書くと、「フロリダの高校銃撃犯が、現地の極右団体に所属していたという話は、団体を率いる活動家のフカシで、でたらめ」ということだ。ニコラス・クルスが白人至上主義団体にいたという事実は確認されていない。(そういう思想を持っていたことは否定されていない。ただ、団体への所属という事実はないと思われる。)

以下、詳細。

2月14日、バレンタインデーの米国からのニュースは、米国らしく血まみれだった。メリーランド州フォート・ミードにあるNSA本部ではゲートのところで銃撃・発砲があったと伝えられた。3人が負傷しており1人が逮捕されたという話で、ゲートの脇の不思議な位置に、フロントグラスに銃弾の痕が見て取れる車があって、捜査当局者がお仕事中という空からの写真・映像が配信されてきたが、それはそれっきり沙汰止みとなっていた(たぶん、何があったか明らかにされることなく、忘却されるだけだろう)。死者が出たというニュースは見ていない。

そのNSAのニュースの続報に何となく注意を向けていたときに流れてきたのが、「米フロリダ州の学校で銃撃事件が発生」というヘッドラインだった。

アメリカの学校で銃撃事件が発生したというヘッドラインを見ても、私はいちいち反応しない――そのくらいしょっちゅう起きているし、サンディフック小学校でのあのめちゃくちゃな銃撃事件のあとでも特に何も変わらなかったんだから、アメリカ合衆国はあの問題に対処できない(対処できるシステムを備えていない)としか考えられないし、そう結論してしまっているからだ(服部君、ごめんなさい)。BBC Newsのトップでも発生を報じていたが、「またか」的なことでもニュースバリューはあるしね……。

しかし、今回フロリダ州のパークランドという名の町で起きた学校銃撃事件の詳細が流れてきたときには、さすがに目がさめた。「死者少なくとも15人」という速報(元のTweetの時刻は日本時間で15日の朝7時50分、R/Tの時刻は朝8時過ぎ)などだ。そのときにはもう初報から何時間も経過していて、Twitterはすでに人々の「声」で埋まっていた。そのいくつかはR/Tしたし、Twilogで(元のツイートが削除などされない限りは)いつでも閲覧できるのでそちらをご確認いただきたい(中には、「バレンタインデーですね。大切なあの人に銃を贈りましょう」という販売店の宣伝ツイートをNRAがR/Tしていたが、高校銃撃事件発生でR/Tを取り消した」という報告などもある)。ここではこの事件そのものについて書くことは目的ではない。

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2017年12月17日

《記憶》と《記録》。反共作戦のためラオスに介入したCIAの一員だった父親の真実を、ジャーナリストとなった息子が知るとき

BBC Newsのサイトでこんな記事を読んだ。

大学に進む前の夏のことだ。古いボルボに乗って、父と私はドライブに出かけた。父と私だけというのは、それまでなかったことだ。シートベルトを着用し、車を発進させた。砂利道には砂埃が舞った。

信号待ちで停車中、「ピーター、そろそろお父さんたちの仕事のことを伝えておこうと思う」と父はハンドルを指でこつこつと叩きながら言った。信号が青になり、車は大通りに出た。

「スパイなんだ」

父は真顔で冗談を言う人だった。しかし、いつもの冗談にしては非常にわざとらしいし、それに面白くも何ともない。日常の買い物をするショッピングセンターと電柱がひしめき合っているような郊外地の街を抜けながら、父は私に、もう40年近く、密かにCIAの仕事をしてきたのだと語った。

父はなーんちゃってと言うわけでもなく、沈黙が重苦しくなってきて、ああ、これは冗談じゃないんだ、と私は思った。

「母さんは知ってるの」と私は尋ねた。

「ああ、母さんか。母さんも、同じ仕事だ」と父は言った。

(親がCIAの秘密工作員だったというと)人からよく「おかしいなと思ったことは何もなかったんですか」と訊かれる。なかったですね。兄弟たちも私も、何も疑わしいと思わなかった。

両親は国務省で書類仕事にいそしむ役人なのだと思っていたが、実際のところ、仕事の内容がどういうものかはよく知らなかった。だいたい、成長過程にある子供にとって親がやってることといえば、耐え難いほど凡庸なことに決まっている。実はそうではないのだということに気づくには、もう少し大人になる必要がある。

1960年代、米軍兵士たちがC-130からベトナムの地に降り立っていたころ、CIAはラオスで極秘戦争を戦っていた。冷戦の最盛期で、CIAは私の父と工作員の一団を、ラオスの高地に住むモン族 (Hmong) に武器を与え訓練を施すために、送り込んだ。その目的は共産主義勢力パテート・ラーオと北ベトナムとの戦いだ。

CIAがモン族を強化していたのか、それともモン族を雇用していたのかははっきりとは判断しがたい。事態が過去となった今では、双方ともが、彼らのためになるよう協力していたのだと考えているようだ。

しかし、CIAの人々の多くは、モン族のレジスタンスは敗北するに決まっていると認識していた。ウシアブの群れが水牛を倒そうとするようなものだと。ベトナム戦争が終わったあと、CIAは突然ラオスから撤退し、それによりモン族の人々は、数千人単位で、ひょっとしたら数万人単位で脱出せざるを得なくなった。

これが、父にとって、中央情報局(CIA)での最初のミッションだった。

My father fought the CIA's secret war in Laos
http://www.bbc.com/news/world-us-canada-42314701
(英→日、拙訳)


2人きりのドライブで息子のピーターに事実を告げた数年後、父親のアランは他界した。死の床で彼は息子に向かい、ラオスでやったことを誇りに思っていると告げた。

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2017年12月16日

「はいはい陰謀論陰謀論」では終わらなくなったこの世界に――映画『 #否定と肯定 (Denial)』

ほぼ満席の映画館。大きなスクリーンに靴の山が映し出される。展示室の、ガラスの向こうの、くちゃくちゃになった古い汚い靴の山。この靴を履いていた人たちは、ほとんど口にすることもできないようなむごたらしい殺され方をした。アウシュヴィッツ・ビルケナウ収容所。スクリーンの中でその「聖地」を訪れている人々の目的は「巡礼」ではない。「実証」だ。しかしそれは否応なしに感情を揺さぶる。祈りの歌が口をついて出る。雪が舞い落ちるなか、デボラ・リップシュタットは祈りを声に出している。学者が、歴史学者が祈っている。

映画Denialを見てきた。邦題は『否定と肯定』。映画を見る前は、原題にない「と肯定」に「正直、それどうなの」と思っていた。議論にならないことを議論にする(何かを「否定」してみせることで、「何かを『肯定』している人々」を現前させ、それを「論敵」とする)のが連中の手口。Denialという原題の映画に、「否定論」の隆盛っぷりが、それこそ議論の余地もないほどになっている日本語圏で、原題にはない「と肯定」を付け加えて公開することで、連中の手口に乗ってしまっている(もっとはっきり言えば加担している)のではないか、と思ったのだ。が、映画を見て私は納得した(納得しない人もいると思う)。とても密度の高い、テンポの速いシーンで、セリフを聞くことでいっぱいいっぱいになってしまったのだが(字幕を追ってもいっぱいいっぱいになっていたと思う)、「と肯定」については、映画の中でリップシュタットと弁護団との議論のシーンで語られていた。確かにそれは、リップシュタットと彼女の弁護団があのばかばかしい、なおかつ戦いづらい裁判を、英国の法廷という戦いづらい場で戦う上で、必要とされた議論だった(何よりこの映画は「法廷ドラマ」だ)。

そしてそれは、映画館入り口脇に貼られていたポスターが言うような「ナチスによる大量虐殺は、真実か虚構か」という議論ではなかった。話をそこに持っていくこと――話をすりかえることが、否定論者(歴史修正主義者)の目的だ。

denial-poster.jpg

「大量虐殺(ホロコースト)は真実か、それとも虚構か」という《ことば》を現実世界に持ち込んでリアルなものにしようとするということを、彼らdenialists(否定論者たち)はやってきたし(映画冒頭で示されている通り)、今でもやっている。その二項対立自体が「虚構」である、というのがまっとうな態度だし、リップシュタットのような学者はそういう態度を当然取っているのだが(つまり否定論者のことは最初から相手にしていない。完全に無視する)、否定論者たちは、無視されること自体を「私たちは正しいということを示すもの」として喧伝し、そして多くの賛同者・支持者を獲得する。このあたりは、各種陰謀論やホメオパシーを含む疑似科学の論者がとる論法と同じパターンだ。

彼ら(映画の中では「ダヴィデとゴリアテ」の「ダヴィデ」に自分をなぞらえているデイヴィッド・アーヴィングひとりだけだが、アーヴィングの発言はツンデル、ロイヒターという否定論者の発言とつながっている。詳細はウィキペディア日本語版の「ロイヒター・レポート」の項を参照。何を見ても「日本は、日本は」と言わなければ気がすまない人はホロコースト否定論の原稿が掲載されたあとで廃刊された「マルコポーロ」に絡んで石田勇治先生が述べていることがウィキペディア日本語版に引用されているのでそれを参照すれば、ある程度気が済むと思う)が、なぜ「ガス室」に異様なこだわりを見せるのか、私は正確には知らない。ガス室があろうとなかろうと(←「なかった」と言っているわけでも、「なかった」という言い分をまっとうなものとして受け取っているわけでもない。念のため)、食事も乏しく伝染病が蔓延する劣悪な環境の中、強制労働に従事させられた人々が――それも当時の概念での「人種」や「思想信条」によりゲシュタポに逮捕されて連行されてきた人々が――何百万人という単位で命を奪われ、焼かれてきたのだ。「ガス室」だけを問題とするのは、ちょっと不適切なアナロジーかもしれないが、シリア内戦において政権側が自国民の上に使ったクラスター爆弾や樽爆弾のことを問わずに化学兵器だけ問題にするようなこと、広島・長崎に投下された原爆だけを問題とし、東京・大阪・名古屋はもちろん日本各地の大都市・都市に雨あられと投下された焼夷弾はスルーするようなことだ。つまり、お笑いのツッコミ的に言えば「そこかい!」、「否定するのなら、否定すべきはそれだけじゃないだろ」ということ。しかし、どうやら彼らにとって「ガス室」の《物語性》は、何か特別なものだ。彼らの考え方では、世界を思うがままにしようとする闇の勢力は、「ガス室などというとんでもない物語(フィクション、神話)」を真実として人々に信じさせることによって、人々を「思考停止」に追いやり、自身の支配を確実にしようとしている、ということになっているようだ。(そしてそのような情報操作にやられず、真相に気づいている自分たちはすごい、という《信念》もそういうところから生まれる。)

いや、そればかりではない。その「ガス室神話」を打ち砕くことによって、より大きな何かを成し遂げることができるという突破口的な存在なのだ。そこが崩せれば、すべてが崩せる、というようなシンボル。

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2017年10月29日

英国からシリアに行ってイスイス団に加わったと思われる白人青年がクルド人地域で起訴されたが、英国政府は本音としては「殺害」方針支持に傾いていることだろう

「ジハーディ・ジャック」が起訴されたという報道が、10月28日、メディアに出ている

「ジハーディ・ジャック」と呼ばれているのはジャック・レッツという名の英国人の青年だ。現在21歳の彼は、まだティーンエイジャーだったころ、2014年にヨルダン経由でシリアのイスイス団支配地域に入った。「Aレベル」取得を断念して(「Aレベル」は日本の制度でいうとおおむね「高卒の資格」と「センター試験」を兼ね備えたものなので、「高校を中退」のような感じ)英国を発った彼は、「何が起きているのか、この目で見たかったからシリアに行った」ということを述べているようだが、実際のところはそうではなくイスイス団に加わるためにシリアに行ったのだろうという疑いがある。彼の「起訴」はその疑いについてのものである。

さて、その裁判だが、彼の出身地である英国で行われるわけではない。シリアで行われる。しかし「シリア」といってもダマスカスの中央政府の統治下ではない。北部のクルド人支配域だ。

シリア北部のクルド人支配域は、今もなお公式にはシリアの一部(つまりダマスカスの統治下)であるのかもしれないが、実態としては「自治区・自治領」になっている(英語では "de facto autonomous region" ということになる)。なぜそうなったかを簡単に振り返っておくと、だいたいこういう感じ――2011年2月から3月にかけてシリアで民主化要求運動(拷問の廃止など人権運動を中心としていた点では、エジプトの「革命」の過程とよく似ていた)が起こり、政権側がそれを武力で鎮圧したことで「平和的な改革要求」という道が閉ざされ、シリアは「内戦」の状況に陥った。アサド政権の軍や民兵と、反政権の諸勢力(民主化要求運動からイスラム主義まで幅広い政治・思想的バックグラウンドを有していたが「アサド政権反対」という点で英語圏報道では一様に "rebels" と称されていた諸勢力)が戦闘を重ね、非戦闘員が暮らす市街地に政権側が空から攻撃を行なってクラスター爆弾や即製の「たる爆弾」を投下して多大な犠牲者を出し、さらにはいわゆる「アルカイダ系」のサラフィー・ジハード主義の集団が「シリアの政治」という枠組みを超えた「イスラムの国を作る」とかいう主張を掲げて民主化要求運動が主導した「革命」に便乗し、さらにそれを乗っ取る形で我が物顔をするようになるという、シリアの内戦化・内戦の激化の過程で、アサド政権があまり注意を払っていそうになかったのが北部のクルド人の多い地域だった。比較的早い段階からこの地域の動向に注目していた英語圏のジャーナリストを私はTwitterでフォローしていたのだが、そういう人でもない限りは、大手メディアや国連のような機関の中の人たちを含めて大半は、「シリア情勢」といえば「アサド政権は(も、エジプトのムバラク政権やリビアのカダフィ政権のように)崩壊するのか」ということ、および「アルカイダ(後にイスイス団となった集団も含む)にどう対処すべきか」と「アサド政権の非人道行為・戦争犯罪行為にどう対処すべきか」ということに意識が向いていた。BBCのような国際メディアの人も、ワシントンDCのシンクタンクの人も、北部のクルド情勢についてはあまり注目していなかったのだ。そういう状況下、2013年11月に「シリア北部民主連邦 (the Democratic Federation of Northern Syria: DFNS)」(通称Rojava)の設立が宣言された。英語版ウィキペディアにマップがあるのだが、DRNSは、シリアとトルコの国境線に沿った地域を、地中海に面した西部のごくわずかな部分を除いてだーーっと支配下に置いている(マップでオレンジ色になっているアレッポ県北部はどうなんすかね)。このRojavaについて説明することはここでの本題ではない。詳細は2017年7月に勝又郁子さんが書かれた詳しい記事が、シノドスに出ているのでそれをご参照いただきたい(が、「バランス」という点では別の視点からの記事も参照する必要があると思う。例えば「アラブ人への差別」についてなど、一方のスポークスマンの発言だけで事実を決め込まない程度に慎重を期す必要があることは多い)。

さて、2014年に英国からヨルダン経由でシリアに入った英国人青年、「ジハーディ・ジャック」ことジャック・レッツが2017年10月に起訴されたのは、このRojava (DFNS) でのことだ。そのことを報じるBBC記事には次のようにある。

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2017年10月18日

イスイス団が、勝手に「首都」としていた都市ラッカから、放逐された。

湯川さん、後藤さん、終わりましたよ。おふたりが他の人質と一緒に拘束されていた都市、イスイス団が勝手に「首都」としてきたラッカから、イスイス団がほぼ放逐されました。米軍の作戦担当スポークスマンによると、まだ完全に一掃されたわけではなく、残党がまだ少し市内に残っているようですが(完全にいなくなったという確認が取れていない)、米国が支援するクルド人などによる部隊、SDFがラッカでの戦闘の終了を宣言しました。正式な制圧宣言もほどなく出されるようです。

Raqqa: IS 'capital' falls to US-backed Syrian forces
http://www.bbc.com/news/world-middle-east-41646802

A US-backed alliance of Syrian Kurdish and Arab fighters says it has taken full control of so-called Islamic State's one-time "capital" of Raqqa.

Syrian Democratic Forces (SDF) spokesman Talal Sello said the fighting was over after a five-month assault.

Clearing operations were now under way to uncover any jihadist sleeper cells and remove landmines, he added.

An official statement declaring victory in the city and the end of three years of IS rule is expected to be made soon.


bbcnews17oct2017-min.png

以下、Twitterのログの貼り付け。Seesaaで提供されている簡易的な埋め込み機能を使うので、ちょっと読みづらい部分もあると思うが、ご容赦いただきたい。
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2017年10月14日

Twitter、暴言・嫌がらせ対策強化&サスペンド(凍結)についてより透明性が確保されていく方向で動くかも?

DL_VeDEV4AAc_5x.jpg13日、「今日はTwitterボイコットだ」というハッシュタグが流行り、14日、TwitterのCEOであるジャック・ドーシーが反応したということが、早くもIT Mediaの記事になっている。13日のボイコットは女性たちが主導したもので(賛同した男性たちも多い)、長い話を短くすれば、Twitterのダブル・スタンダード(だとユーザーには見えるもの)についての抗議行動。14日のジャックの反応は、その点についての取り組みを行っていくとする見解の表明。

こういう流れを短期間でオープンな場に生じさせた #WomenBoycottTwitter のハッシュタグについて、少し見てみたので、以下はその記録。ベースにあるのは今月に入ってから米芸能界(映画界)をがんがん揺さぶっているあの「大物のセクハラ・強要」のニュースだ。

10月上旬、米映画界の大物が、自分が大物であることを利用して、映画界を職場とする女性たちに「ひとりの男」というか「一匹のオス」として迫りまくっていたということが暴露された。すぐに、その大物が仕事をクビになったことがニュースになった。それから1週間の間に、何が起きたのかに関して非常に下品で下世話なディテール(日本語圏でニュース的な要素のある記事になっているものには含まれていないような下品で下世話なディテール)に、ネット上を歩いていれば犬が棒に当たるレベルで遭遇してしまうような状況になっている。

何があったのかというとこういうことだ。
「英国王のスピーチ」や「恋に落ちたシェイクスピア」など数々のヒット映画を手がけてきたハリウッドの超有名プロデューサーが、何十年にもわたって女優やスタッフに性的嫌がらせをしてきたことが明らかになり、大きな波紋を呼んでいる。

問題になっているのは、映画会社「ミラマックス」を設立したプロデューサーのハーヴェイ・ワインスタイン。

……

ワインスタインのターゲットになった人たちのほとんどは、若い女優や映画業界で仕事が欲しい人など、弱い立場にある人たちだった。

被害にあった女性のひとりは「私は28歳。生活費をかせぎ、キャリアを築こうとしていた。ハーヴィー・ワインスタインは(当時)64歳。世界的に有名な男であり、私は彼の会社で働いていた。パワーバランスは私が0、ハーヴィー・ワインスタインは10だった」と綴っている

--- 全米が怒っている。ハリウッド大物プロデューサーが女優たちにセクハラをしていた。アンジェリーナ・ジョリーも被害に。
2017年10月11日
http://www.huffingtonpost.jp/2017/10/11/harvey-weinstein_a_23239499/


この「大物プロデューサーのセクハラ」が世界的なニュースになっているのは、上に引用したハフポJPの記事見出しにあるとおり、最初にメディア(NYT)が報じて数日後には世界的な大スターたちが被害を告白するようになっていたからだが、最初期に被害にあったことが明らかになっていたのはアンジェリーナ・ジョリーやグウィネス・パルトロウのような大スターたちではなかった。

10月5日付のNYT記事には何人かの被害者の実名が出ているが、その中で、今からさかのぼること20年前の1997年にワインスタインの性犯罪行為の被害者となり、和解に応じた女優として名前が挙がっているのが、当時23歳だったRose McGowan(ローズ・マッゴーワン、ローズ・マクガワンなどカナ表記は複数ある)だ。

彼女は米国では『スクリーム』など数多くの映画・テレビ作品に出演しており、決して「無名女優」ではないが、アンジーのような、世界的にだれもが顔と名前が一致するような大スターではない。個人的にホラー映画見ないし、アメリカの映画・テレビドラマには疎いので私の感覚は当てにならないのだが、この人どんな女優だっけとウィキペディアを確認して、ああ、あの人かとわかったのは、Fifty Dead Men Walking(邦題は『インファナル・ミッション』)という実在のIRA潜入スパイの手記をかなりがっさりと映画化した作品に出演したときに「もし自分がベルファストで育っていたら、確実にIRAに入ってたと思う」と発言して物議をかもしたということを読んだときだ(その発言自体、何も物議をかもすようなものではないと個人的には思う。そのくらい北アイルランドの状況はひどく、IRAのプロパガンダは強力だったのだし)。あと、昔マリリン・マンソンと婚約してたことがあるとかいうのも聞いたことがあるような気はする。

そのくらいうっすらとしか知らなくても、23歳という若さで力関係を前提にした性暴力の被害にあい、法的には和解という道をとった(というより、とるよりなかったのだろう)ということだけ把握できれば、ワインスタインの件についての記事は読める。

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2017年10月02日

警棒が振り下ろされる、投票しにきた人々の上に。

日本語圏では「暴徒鎮圧」という四字熟語や、「暴徒化したデモを警察が鎮圧」というフレーズがあらかじめセットしてしまうナラティヴが支配的になっていてもおかしくないので、がっつり防具で身を固めた警察官が人々の上に警棒を打ち下ろしているところやそのあとの状況をとらえた写真(静止した写真)が流れると、それを見た人の頭に真っ先に浮かぶのが「暴徒」なる熟語で、その連想が根拠のない思い込みにつながり、そのあとは何を見ても「これは暴徒である」という決め付けに基づいて判断されていくかもしれないと、私自身特にこの事例について明確な根拠を持っているわけでもないのに何となく思っているのだが、その点、映像は強いと思わされる映像が、カタルーニャ独立可否レファレンダム投票日の今日(10月1日)のTwitterには何本も流れてきている。

映像は、何か板状のものにあけられた四角い穴から撮影されている。最初はその穴がふさがれている。

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穴をふさいでいるものがすっと取り去られると、四角い穴の向こうに人々が立っているのが見える。

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20歳くらいの女性や白髪の男性など、多種多様な人々が立っているが、「暴徒化」でおなじみのブラック・ブロックのような黒ずくめは見当たらないし、覆面をしている人もいないし、手には何も持っていない。

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最前列の人たちが画面の右に向かって何かを言い、群集の3列目くらいから後ろのあたりで次々と何も持っていない手のひらが上がる。

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次の瞬間、四角い穴が左方向にパンして、群衆の3列目、4列目あたりの様子を映し出す。

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四角い穴が元の位置に戻ると、群集の中から「せーの」という掛け声のような雰囲気の声があがり、最前列の人々も何も持っていない手のひらを画面右に向かってかかげる。

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そしてさらに多くの手のひらがかかげられ、歌が始まる。

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次の瞬間(歌はまだ2小節も歌われていないくらい)、画面の右からライオット・ギアの警察官が助走をつけて踏み込んでくる。

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画面手前の人々の影になっているが、踏み込んできた警官は群集の最前列の人に警棒を振り下ろしている。

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そして次の瞬間には、画面手前でも右側から警官が突撃してくる。最前列に立っている女性が思わず手を下げて防御の体制をとる。

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勢いをつけて踏み込んできた警官は、思い切り突撃する。その盾でぶつかられているのは、最前列にいる若い女性だ。

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女の人の悲鳴と思われる声が手前でして、潰されそうになった女性は両手で盾を押し返す。

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そしてその一瞬後にはますます多くの警官が画面の中に、つまり群集の最前列に向かって雪崩れ込む。

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群集を散らすことを目的としたノン・リーサルの武器を持って雪崩れ込んできた警官が「バン」と何かを発射する。画面の中ほどでは別の警官が警棒を何かに打ち付けている。

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2017年09月09日

非実在「イケメン戦場フォトグラファー」の件、あれこれ記事を読んでわかったことのメモ(&「アミナ」の連想)

「アミナ・アラフ」のことを思い出すが、「アミナ」を軽く超える詐欺だ。アミナは、プロフィール写真などは全然関係のない人がFacebookにアップしていた写真をパクってはいたが、基本的に、テキストベースで、「創作」を「事実」として、個人ブログやネット上の掲示板、Facebookのような場で語っているだけだった。しかし今回発覚したのは、架空の「戦争写真家」が、どこかからパクってきた写真を左右反転するなど加工して自分の写真として大手に売り込み、採用されていたという事案である。「アミナ」の実在を疑わなかった大手メディアも問題だが、実在しない「戦争写真家」の写真を配信・掲載した大手メディアはもっと問題だ。

他人の写真をパクって加工して自分の写真と偽っていただけではない。その架空の「戦争写真家」は、自分の顔(&ボディ)写真として、全然関係のないイケメンの写真をパクってきて、それを別のところからパクってきた戦地の写真と合成して「取材中の僕」を捏造してさえいた。それだけでも呆れて物も言えなくなる話だが、「若い頃に白血病にかかって生還した」とか、「フォトグラファーであると同時にサーファーで、世界を回っている」とか、「国連機関で人道支援をしている」とか、全てが嘘。バファリンの半分はやさしさでできているかもしれないが、このオンラインの人格の半分は虚偽、半分は捏造だ。そしてその「自分自身の悲劇を乗り越え、他者の悲劇を記録し、人々に伝えているヒロイックな人道主義者♂(しかもイケメン)」というペルソナで、オンラインで女性をたらしこんで、自分に都合のよい環境づくりをしていたらしい。それも複数。

「アミナ」は正体がばれてさらし者になったが、この「戦争写真家」は詐欺がばれれば話は終わりで、「中の人」は名乗り出ることもなく、Instagramの彼のアカウントが消えたように、ただ消えてしまうだけだろう。

instagram-edu-martinsp.png

この話を知ったのは、いつも巡回しているガーディアンで見た記事だった。

War photographer who survived leukaemia exposed as a fake
Dom Phillips in Rio de Janeiro
Tuesday 5 September 2017 19.04 BST
https://www.theguardian.com/world/2017/sep/05/war-photographer-eduardo-martins-survived-leukaemia-exposed-fake?CMP=share_btn_tw

問題の人物は「Eduardo Martinsという32歳のブラジル人フォトグラファー」を名乗っており、シリアのアレッポやイラクのモスル、ソマリアのモガディシオに取材に入っていると語って/騙っていた。

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2017年08月28日

「立て続けのテロ」と「過剰反応」が乱れ飛び、「情報操作」も加わって、何が何やら……という日々

欧州では夏も終わりつつある8月第3週、理不尽な暴力が多くの命を奪い、地域社会に傷を負わせた。8月17日にスペイン、カタルーニャのバルセロナとカンブリス(カンブリルス)で車を使った攻撃があり(この事件に関わったテロリストのグループは、現時点で全員死亡もしくは逮捕・起訴されている。バルセロナの事件の前日にアルカナーという町にあるガスボンベ・ボム工場が誤って爆発したため、ボムを使った大規模な攻撃計画が頓挫し、代わりに車突入という手段がとられたと思われる)、その詳細な状況もまだわかっていないうちに18日にはフィンランドのトゥルクで刃物を使った攻撃がなされた(殺傷の容疑者は1人で起訴済みのほか、現時点で逮捕されていない国際手配者あり)。カタルーニャのテロで尊い命を奪われた被害者は、現時点で16人(事件後ずっと入院していたドイツ人女性が亡くなって1人増えた)、フィンランドでは2人。

続く8月第4週は、犠牲者が出たという話は聞かなかったものの、やはり「テロ」やそれに類する事件が、立て続けに複数個所で起きた。23日(水)の夜にオランダのロッテルダムで行なわれる予定の米バンドAllah-Lasのライヴに対して何かが行なわれるいう情報をつかんだスペイン当局からオランダ当局に連絡があり、結果、ライヴは中止となった(このときに、たまたまそのライヴハウスの近くを「ガスボンベを積んだ車」がふらふらと走っていたため、運転手のスペイン人が逮捕されたので情報が混乱し、Twitterなどでは「欧州のシェンゲン・エリアをdisる会」みたいなBrexit支持のアカウントなどが根拠も示さず自分たちの主張をわめきたてていたが、その車はライヴの中止とは無関係であることが判明している)。この事件では翌24日にはロッテルダムからあまり離れていないブラバント州の町で、22歳の容疑者が逮捕され、さらに2人目の容疑者も逮捕されたが、その後起訴されたとかそういう報道は私は見ていない。そもそも「Allah-Lasという名前のバンドに脅迫」などという事実があったのかどうかも判然としない。スペイン当局がオランダ側に緊急事態を告げるきっかけとなったのはチャットアプリTelegramの投稿で、Telegramはイスイス団メンバーやその支持者が使っていることで有名ではあるが、イスイス団以外の一般の人々も普通に使っている。

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2017年08月13日

米シャーロッツヴィルでのネオナチのデモについて

ネオナチのすることは、基本的にちょっと書き留めるくらいでスルーするようにしているのだが、今回のこれはちょっとスルーできないような気がするのでブログに記録しておく。といっても、ブログの文を書こうとするとまた時間がかかってしまって結果的に塩漬けにしてしまうので、基本的にTwitterのログの貼り付け。

昨年の英国でのEUレファレンダム(6月)、米国での大統領選挙(11月)のあと、「反グローバリズムで移民排斥主義のアンチ・オーソリティーの勢力(極右勢力)が投票で勝つ」ということが、英米だけでなく欧州各国で起きるのではないかと予想され、英語圏メディアが「パニック報道」的なものを展開していたことをご記憶だろうか(英語圏メディアの日本版の一部でも見られたが)。米大統領選のあと、オーストリア大統領選挙(前回の結果が僅差だったため、再投票という判断が法的に下された)、オランダ総選挙、フランス大統領選挙……という具合に欧州各地で大きな選挙が行なわれ、そこで英国のUKIPや米国のトランプ支持者的な「アンチ・オーソリティの勢力」が、ある意味「ドミノ現象」的に勝利をおさめるのではないか、という予想がなされ、オーストリアの自由党(故ヨルグ・ハイダーの党、というと前回のパニック報道を思い出す方も多いだろう)、オランダのヘルト・ウィルダース(PVV)、フランスのマリーヌ・ルペン(FN)といった政党・政治家や、その側近(キングメイカー)たちが「次はこの人だ!」的に、BBCなど大手メディアで注目された。しかし結果は、誰も勝たなかった。「アンチ・オーソリティ」が勝利を収めたのは英米だけだ。

上に述べた国々のほか、今年総選挙が行なわれる欧州の大国で昨年から注目されていたのがドイツだが、選挙は9月に迫っているというのに、今、「国際報道」と呼ばれる報道機関はめっちゃ静かだ。というのも、「極右」ブームでパニック報道が繰り広げられていたときに「英米の次はオランダか、フランスか、ドイツか〜〜〜〜っ!」ときぃきぃ声で騒がれていた「アンチ・オーソリティ」の政党、AfDが、現実的に勝つ見込みがなくなったからだ。フランスのマリーヌ・ルペンと同様に若くて(40代)「いかつくて暴力的な極右勢力」のイメージとは遠い女性党首がこの4月に選挙戦出馬を見合わせると決断し、それによってAfDは「今までも常にどこかにいたような極右政党」的な存在になりそうだと報じられている。つまり、もう全然注目されていない。「欧州難民危機」と騒がれたころに英語圏でパニック報道を引き起こしていたPegidaなど、今は英語圏では名前を見かけることもない。あれらのパニック報道は組織の宣伝の役割を果たし、英国ではEDL創設者の通称「トミー・ロビンソン」や、EDL以上に過激な反イスラム団体「シャリーア・ウォッチ」を立ち上げたアン・マリー・ウォーターズ(この人、アイルランド人なんだよね。ブロガーで煽動家の「グイド・フォークス」もアイルランド人だけど)などがPegida UKなる団体を立ち上げたが、ニュースで名前を見ることはない。

だがそういったことだけで「よかった、極右はメディアの注目を失い、おとなしく、元いた巣窟に戻ったんだ」と短絡することもできない。英国でいえば、UKIPは政党としては溶け去ったが、UKIPが撒いた種は枯れずに「草の根」を構成しているし、フランスでは、中央は確かにエマニュエル・マクロンのEMが席捲しているかもしれないが地方議会などFNが一定の勢力を有しているといった具合だ。

というわけで、極右勢力にとっては、思い描いていたシナリオ(極右版の「世界同時なんちゃら」を描いていたと思われる)通りには行っていないかもしれないが、ガッカリするような結果を得ているわけでもない。何しろ、世界一の超大国アメリカが彼らの手中にあるのだ(と彼らは思っている)。

だから、オーストリアで負け(もしここで極右が勝ってたらえらいことになってたと思う……他の国とはシンボリズムが違う)、オランダで負け、フランスで負け、ドイツで戦う前から負けるなど、欧州でシケった結果しか出せていなくても、アメリカでは極右は元気だ。これまで社会の片隅で細々と「言論の自由がある!」ということを根拠に発言をしては無視され、「われわれを無視するのは、奴らにとってわれわれの言う真実が都合が悪いからだ」などと強がって支持者の間だけで盛り上がっていた地下組織が、政権の中枢に代弁者を持っている。そのことは、私は2016年11月までは想像してもいなかったが、彼らを非常に強くエンパワーしたのだと思う。メディアだってもう彼らのことを無視できないのだ。普通の大統領なら、ネオナチのスローガンを唱えるような連中のことはばっさりと非難する発言をするし、そんなことはほとんどニュースにもならない(なるとしてもベタ記事だ)。しかしトランプは「普通の大統領」では全然なく、ネオナチのスローガンを唱えるような連中をばっさり非難することはしない。そして、そのこと自体がニュースになり、それがまたネオナチを勇気付ける。「俺たちの大統領だ」、「アメリカは、自分たちが望む方向に変わりつつある」と。

bbcnews13aug2017.png

US President Donald Trump is facing criticism for his response to the violence at a white supremacist rally.

A woman was killed and 19 people injured when a car ploughed into a crowd of counter-protesters in Charlottesville, Virginia.

Mr Trump condemned violence by "many sides" - but stopped short of explicitly condemning the far-right.

http://www.bbc.com/news/world-us-canada-40915569


以下、シャーロッツヴィルで何があったかの経緯を含め、Twitterのログ。

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人を助ける人たちの事務所が何者かに襲撃され、7人もが銃殺された。 #WhiteHelmets

市民によるボランティアの救援隊、シリア・シヴィル・ディフェンス (Syria Civil Defence)、通称「ホワイト・ヘルメッツ」。政府による武力弾圧・武力行使やら、各種武装組織の軍事的行動やらで機能しなくなった救急・消防分野を担っている彼らの活動を追ったNetflixでの短編ドキュメンタリーが、米アカデミー賞を受賞したことでも知られているが、ネットでは何より、YouTubeなどにアップされる現場映像を通じて彼らの活動に接している人が多いだろう。

Netflixのドキュメンタリー・予告編:


※ネット上の日本語圏では彼らについて書くと陰謀論者の皆さんをお騒がせするなどすることになるが、その背景についてはウィキペディアにまとめられているものを参照(「アポロは月に行っていない」とかいうのと同種の陰謀論者の《物語》においては、彼らは「闇の勢力による世界統一の野望の情報工作員」であるようです)。もっと詳しいことを知りたい人はこれな。陰謀論の信奉者は、こんなんがまともに相手にされると思わないように。

彼らの映像で最も広く閲覧されたもののひとつが、アレッポでのこの映像だ。上記のNetflixドキュメンタリーの予告編の最後のほうにも使われているが、2014年6月、シリア政府による住宅街への「たる爆弾」投下(と書くと「証拠もないのに決め付けている」と絡まれるので一応書いておくけど、2014年8月にジェイムズ・フォーリーが殺害されてアメリカが「自衛」云々で動き出す前のシリア内戦において、空からたる爆弾であれクラスター爆弾であれ何であれ爆弾を投下できる能力、つまり空軍力を持っていたのは、政府軍だけだった)によって建物が瓦礫の山にされたあと、その瓦礫の中に埋まっていた生後2週間足らずの赤ん坊を救助隊が救出した。何時間も何時間も、瓦礫を素手で掘り続けても見つからず、諦めようとした矢先に、泣き声が聞こえてきた。さらに掘り進めた先の壁か崩れ落ちた天井板の穴の向こうに、赤ちゃんはいた。



赤ん坊を引っ張り出し、腕に抱きかかえたのは、ビデオで状況を語っている若者、ハレド・ファラさんの同僚のハレド・オマールさん。彼は今からちょうど1年前の2016年8月、アレッポの反政府勢力支配地域での空爆で、死亡した。31歳だった。CNNの記事が、情報がよくまとまっている。

Syrian White Helmet rescuer killed in Aleppo
Updated 2324 GMT August 12, 2016
http://edition.cnn.com/2016/08/11/middleeast/syria-white-helmet-hero-killed-aleppo/index.html

そして1年後、2017年8月12日にまた、今度はイドリブ県で、「赤ん坊を救出したホワイト・ヘルメッツのメンバーが殺された」ことが伝えられた。それも1人ではない。7人もまとめて殺された。今回は政府軍の空爆ではない。ロシア軍の空爆でもないし、米軍の攻撃でもない。銃撃だ。それもどこかに出かけていて襲われたのではなく、ホワイト・ヘルメッツの拠点(詰め所)の中で。

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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