kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2016年11月19日

「誤訳」は「意訳」「超訳」ではないし、「意訳」「超訳」は「誤訳」ではない。(実例つき)

学生さんが試験に通るための英語のお勉強を見るなどしていると、やたらと「フィーリング」、「意訳」という言葉で言い訳をするという例に遭遇することがある。特に英文和訳について生じることが多い。どうにもこうにも点数をあげることができない答案を書いている学生さんになぜこんな日本語訳になるのかと問うと、「フィーリングで何となく」とか「意訳しました」と弁解するのだが、実は「フィーリング」とか「意訳」とかいうレベルには到底達していない(全然グダグダである)ことが多い。(英語が得点源になるような人は「フィーリング」とか「意訳」とかはあんまり自分からは言わないというのが、個人的観測結果としてあるのだが。)

英文和訳では、元の英文の構造が取れているかどうか、その文の内容(言わんとしていること)が正確に解釈できているかどうかを確認する。それぞれ「1か、0か」の白黒くっきりではなく段階的なトーンがあるが、どちらも完璧にできている答案もあれば、どちらもまるでダメという答案もある。そして、英文の構造は取れていなければ話にならないのだが、文の内容が正確に解釈できているかどうかは多少は幅がある。「フィーリング」とかいう話になるのは後者のほうで、前者についてはそんな甘いものが入る余地はほぼない。

単語単位の誤訳は、基本的に後者の範疇に入り、多くの場合はさほど大きな問題にはならないが、その文の中で中心的な単語を誤訳すれば、意味そのものが取れていないことになり、大きく減点される。He bought an apple. を「彼はパイナップルを買った」としている例は1点減点で済むだろうが、「彼はリンゴを食べた」としていたら文意がまるで違うレベルなので0点になるかもしれない。一方で、He bought a lot of apples. を「彼はいくつかのリンゴを買った」としていようが、「彼はたくさんのパイナップルを買った」としていようが、それぞれ1点減点で済むだろう。

Love Trumps Hate by Diana Robinson, CC BY-NC-ND 2.0さて、あるテレビ番組が、"Love trumps hate." を「トランプは嫌い」としたことが話題になったが、これは文の構造(Loveが主語、trumpsが述語、hateが目的語)が取れていないので、0点。これが試験の答案だったら、何をどうひっくり返しても点数を与えることができない。「試験の答案」ではなく実社会での訳例なのだから、この場合は「0点」ではなく「誤訳」と言う。そして「誤訳」は「意訳」ではない。ましてや「超訳」ではない。原文はそんなこと言ってないというものを、本質的にはまともな「翻訳」の一種である「超訳」として扱うことなど、絶対にできない。2+2=5とすればそれは「計算間違い」であって、「誤差」ではないのと同じだ。

「意訳」においても「超訳」においても、文意そのものは正確に把握されていなければならない。例えば、He bought an apple. を「わざわざ金出して、リンゴをねぇ」とか「あいつ、たかがリンゴに金払ったんだぜ」と訳出することは文脈によっては可能だろう。これが「意訳」、「超訳」の類だ。しかし、「彼のリンゴは買い物に行く」、「リンゴは彼にとっては高いが買いだ」などとしていたら、それは単なる「誤訳」である。その文は、そんなことは言っていない。

Love trumps hate. を「トランプは嫌い(トランプのことが嫌い)」とするのは、He bought an apple. を「彼のリンゴは買い物に行く」とするのと同じく、単なる「誤訳」である。

実際には、これを「誤訳」と扱うことすらできるかどうか、微妙なのだが……trumpという単語に動詞の用法があることを知らず、したがって「3単現のs」にも気がつかない人が、単に字面だけ見て訳語を並べて、日本語が意味が通るように調整したのでなければ、このような日本語が出てくるはずはないからだ。しかも主語のloveがどこかに消えてしまっている。それは「翻訳」ですらない。「作文」だ。だから「誤訳」とも呼べないかもしれない。

そういうものを、擁護のつもりなのか何のつもりなのかわからないが、「意訳」だとか「超訳」だとかいう扱いをして差し上げたがる人々がいるようだ。

日テレ炎上!レディー・ガガ発言を「超訳」してしまう業界構造|情報戦の裏側|ダイヤモンド・オンライン
http://diamond.jp/articles/-/108293

via http://b.hatena.ne.jp/entry/diamond.jp/articles/-/108293

当方のブコメ:
「誤訳」を「超訳」としてかばってさしあげる必要が? 「数字がほしいので過激に」云々以前の問題。あれは掛詞を理解していない(trumpの動詞を知らない)人による中学生レベルの「誤訳」。翻訳をバカにするな。

http://b.hatena.ne.jp/entry/308478746/comment/nofrills


「誤訳」と「意訳」の違いもわからない人が、"Love trumps hate." を「トランプは嫌い」とした例を「意訳だ」と主張することは、野球のストライクとボールもわからない人が「だってピッチャー3球投げたよ?なのにまだバッターが交替しないのはおかしい。審判の誤審だ」などと騒いでいるようなものだ。

ましてや「意訳」、「超訳」をする人として有名だからという理由だけで、著名な字幕翻訳者の名前を? お前らは自分が何をしているのかわかっていないかもだ。(あの方の字幕は単語単位の誤訳があまりにすさまじいことがあったり、出来上がった日本語がはしょりすぎてたり古臭すぎたり、原文のスピーチレベルと合ってなかったりして奇妙になっていることがあったりすることは確かにある。私は別にあの方の擁護者ではない。遠慮もしてない。)

というわけで、「直訳」、「意訳」、「超訳」、「誤訳」について、私が高校生に説教を食らわすときの例(に少し肉付けしたもの)をここに書いておこう。

例文 1:
Jeff reminds me of his father.

直訳:
ジェフは私に、彼の父親を思い出させる。
(↓これでは日本語としてあまりに不自然なので、「意訳」をする↓)

意訳:
ジェフを見ると、私は彼の父親を思い出す。
(↑高校生の答案としてはここまで↑ こんな例は、参考書にもよく出てるでしょ)
ジェフには、父親を思わせるところがある。
ジェフには、父親の面影がある。

超訳:
やはりあいつの息子だなあと思う。
蛙の子は蛙、血は争えんね。
よく似ている。

誤訳:
ジェフは父親のことを思い出している。
(※動詞remindの誤訳)
ジェフは私に、父によろしく伝えてくださいと言った。
(※動詞remindの誤訳)
ジェフの父親は思い出話をしてくる。
(※どうしてこうなった、的な誤訳)

例文 2:
What makes you so beautiful?

直訳:
何があなたをそんなに美しくする(美しくしている)のか?

意訳:
あなたはなぜそんなに美しいのか?
あなたは本当に美しいですね。

超訳:
君は美しすぎる。
君に胸キュン。
あなたの美の秘訣を教えてください。
(※……などなど、文脈により、いろいろバリエーションがありうる)

誤訳:
美しいあなたは手作りが得意だ。
君の美には何もかなわない。

例文3:
We placed an advertisement in the newspaper.

直訳:
私たちは新聞に広告を掲載した。

意訳(※文脈により):
弊社は新聞に広告を出しました。

超訳:
確かに、その新聞広告は弊社のものです。

誤訳:
私たちの居場所は新聞の広告欄だ。

……それぞれの「誤訳」が「意訳」とは異なるということがわからない人、英文と照らし合わせて何がどう「誤訳」なのかがわからない人は、軽々しく「意訳」だの「超訳」だのという概念を振り回す前にまず、江川の英文法でも読んでください。

4760820094英文法解説
江川 泰一郎
金子書房 1991-06

by G-Tools


Picture taken in NYC on June 26, 2016 by Diane Robinson (CC BY-NC-ND 2.0)
https://www.flickr.com/photos/dianasch/27644178030/

※この記事は

2016年11月19日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 02:03 | TrackBack(0) | 英語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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