kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2017年01月14日

BBCも「偽ニュース(デマ)」の検証に本気出していくとの由。でもそもそも「偽ニュース」って何だろね

前項は、本当はトリストラム・ハントの話は導入部にして、これからここに書くことを本題にしようとしていたのだが、書いている途中でだるくなってきたので切り上げて、ハントの辞職だけで読めるようにまとめたものだ。

というわけで本題。

10年ほど前に「ポスト・ロック post rock」という「音楽のジャンル」の命名によって新たなマーケットが開けたように、「ポスト事実(脱事実、事実以後) post-truth」という概念が広く共有されることで、この「恐ろしい美」(イエイツ)の時代に、新たな共有スペースができるかもしれない。「かもしれない」と書いたが、それはmayよりももっと薄く遠い可能性だ。それを濃い可能性にするために、やっていかねばならないこと(英語でいうjob)が山ほどあるというのが現状だろう。

6月の英国でのEUレファレンダム(Brexit)も、11月の米大統領選も、民主的手続きにのっとった投票によって勝った側は、デマや陰謀論をばらまきまくって感情を煽るという手法をとっていた。それも「裏でコソコソ小細工」とかいうレベルではなく、正面から堂々とやった。Brexitに至ってはありえないほどめちゃくちゃな嘘まで使われた(「EUに流れている巨額の金をNHSに回そう」論など。今思うと、日本での「霞ヶ関埋蔵金」とちょっと似てたかも)。「文明化された社会の理性ある人々(国民)」なら信用できると判断せず、投票先から外すはずのデマゴーグは、しかし、最終的に勝利を収めた。「文明化された」云々ってのは、たぶん想像の産物でしかなかったのだろう(2016年に関するベネディクト・アンダーソンの分析を読みたかった)。というか私の目には、「イラク戦争という大嘘を推進したエスタブリッシュメント(政治家であれメディアであれ)」に対する不信が大爆発して、ストーンズのPaint It Blackばりに「全部嘘で塗り尽くしてしまえ!」という感情的ムーヴメントが起きているように見える「どうせ全部嘘だったのだから」と。(イラク戦争は、そのくらい、深い傷となっている。そのことを誰がどのように認めるか……11月の米大統領選前の共和党の「重鎮たち」に関する報道を見て、めったなことでは死なないはずの希望が死んでいくのを私は感じたけどね。)

I look inside myself and see my heart is black
I see my red door, I must have it painted black

Maybe then I'll fade away and not have to face the facts
It's not easy facing up when your whole world is black


かくして、デマや陰謀論、裏づけのないただの印象論の類を「とりあうべきではない(とりあう必要はない)」と扱ってきた文明社会のエスタブリッシュメント(彼らは常に「歴史の正しい側」にいた。「過ち」をおかすのは、ナチス・ドイツであれソ連であれ、彼ら以外の誰かだった)が、その「フフン」という態度を一変させ、「デマ検証」のような(彼らにとっては)ハンパな仕事に乗り出している。1月12日にはついにBBCが本気出すってよということが伝えられた(詳細後述)。

factcheck-ggl.png元々、「デマ検証」というか「ファクトチェック」は、記事を人目にさらす前に内部で行なう工程のひとつであり、それ単体で表に出すようなものではなかったのだが(だから「ハンパな仕事」なのである)、ソーシャル・ネットというインフラが整備され定着して、「個人の日記」のようなものであっても大手新聞と変わらないように機能することがあるというのが日常的になったあとでは、「うちがうちの名前で出すものには、うちが責任を持つので、うちの内部でしっかりチェックする」的な「内部」は、解体されずにはいられない。「内部」だけ守っていても、それが立っているプラットフォームが侵食されてしまえば元も子もない。足元のプラットフォームを守るために、「内部」が外に出てくるのだ。今、Googleを fact check で検索すると、右の図のような結果が表示される。このフレーズで検索することはあまりないのではっきりとしたイメージがあるわけではないが、1年前なら、このように「ファクトチェッカーが乱立している」ような状況は見られなかっただろう(「デマ検証」は、Snopes.comやMuseum of Hoaxesのような「都市伝説や陰謀論、詐欺対策専門の情報サイト」がやってることで、一般的な報道機関が扱う場合は個別の記事でやっていたと思う)。

ソーシャル・ネット上では何年も前から「ファクトチェック」系のアカウントは存在していた。アイルランド共和国(まさかと思うような誤解が日本語圏でちょっと流行っているようなので一応書いておくが、アイルランド共和国はナショナリズムゆえにアイルランド語を掲げてはいるが、実際に日常の生活や政治の場で使われている言語は英語であり、アイルランドは英語圏である)の首都ダブリンで立ち上げられたベンチャーのStoryful(2013年12月によりによってNews Corpに買収されたが)は、特にTwitter上に流れている情報が事実であるかガセかについてのチェックを行なうなどするファクトチェック専門の会社で、「中の人」たちは(2000年代のアイルランドの不況で縮小された大手メディアを去った)ジャーナリストなど経験豊富な「裏取りの専門家」たちだ。クライアントは基本的に大手メディアで、Storyfulのおかげで「釣られずに済んだ」メディアも多くあるだろう(以前、何のときだったか、BBC NewsがStoryfulのチェックについて大きく書いてたことがあった……あれかな、欧州の活動家気取りのアーティストが「シリア内戦についてのニセ映像」を「意識啓発のため」とかいって流したときかな)。今はTwitterでは「今日のニュース」のフィードと、ほのぼの系動物映像などを流しているが(Storyfulはソーシャル・メディア・ユーザーの映像のライセンシングも行なっている)、以前はTwitterで直接debunkingを行なっていた時期もある。

Storyfulについては、以前書いたものがある(2015年6月)。

「ソーシャルメディアによる新しいニュース」のひとつの到達点、YTNewswireとStoryful
https://matome.naver.jp/odai/2143473987594182801


創業メンバーのマーク・リトルさん(元RTE)は次のように語っている。

When I became a reporter, almost 20 years ago, my job was to dig up scarce, precious facts and deliver them to a passive audience. Today, scarcity has been replaced by an unimaginable surplus and that audience is actively building its own newsroom. That’s the insight that drove me to create Storyful, the first news agency for the social media age.

「ほぼ20年前、私が記者になったころのジャーナリストの仕事といえば、数少なく貴重なファクトを掘り出し、それをただ待っているだけの視聴者に届けることだった。こんにちでは、そのころの数の少なさは想像がつかないくらいの数量にとって代わられ、視聴者は積極的に、自分自身のニュースルームを構築している。そのことから、Storyfulという取り組みを始めてみようと動き出した。つまり、ソーシャルメディア時代のための最初のニュース・エージェンシー(通信社)を」

https://matome.naver.jp/odai/2143473987594182801/2143475586200000003


上記NAVERまとめのページ(他人の書いたものの抜粋&寄せ集めではなく、半分以上は私が書いてる)の2ページ目以降は、2015年6月(そのころ、まだpost-truthなどという言葉は目にしなかった)にGoogle/YouTubeが積極的に関わって始められた「ユーザーがネットにアップするコンテンツをめぐるファクトチェック」の取り組みについて、記録している。

あのころ想定もしていなかったであろう「ニセ情報、ニセのニュース」が、しかし、2016年にはネットに氾濫し(マケドニアのティーンエイジャーが広告収入目当てででっち上げのニュースサイトを英語で運用するようになるなどという、いわば「ノー・ボーダーのデマ」を、誰が想像していただろう)、「ファクトチェック」も守備範囲を変更し、「裏方」の立場でいることをやめて表に出てくるようになっている。

Storyful自身、また新たな取り組みを開始していることが、12日付のBloombergで報じられているが(これ、とてもよい記事なのでご一読を):



ここで報じられているVerifyのような、偽ニュースを偽ニュースと指摘するアシスタントとして動作してくれるブラウザの拡張機能(アドオン、エクステンション)は、他にもある。米大手新聞、ワシントン・ポストが提供している「トランプのツイートにツッコミ入れるよ」という拡張、RealDonaldContext (Chrome, Firefoxに対応) はその一例だ。

realdonaldcontext-wapo.png
※画像 via Mashableの解説記事(ほかにもWaPo提供の拡張の実例たくさん紹介されてて、コンパクトでわかりやすいので読んでみてください)

私もこの拡張はFirefoxに入れているが、そもそもドナルド・トランプのTwitterアカウントは表示させるどころか視界に入れないようにしているので、威力・効果のほどを実感する機会もない。

まあ、これでも日本語圏では「イバンカさん、かわいい💓」とか言ってるのが持て囃されるのだろうけれども。

さて、というわけで12日のBBCに関する報道である。

BBC sets up team to debunk fake news
Thursday 12 January 2017 19.12 GMT
https://www.theguardian.com/media/2017/jan/12/bbc-sets-up-team-to-debunk-fake-news

The BBC is to assemble a team to fact check and debunk deliberately misleading and false stories masquerading as real news.

Amid growing concern among politicians and news organisations about the impact of false information online, news chief James Harding told staff on Thursday that the BBC would be “weighing in on the battle over lies, distortions and exaggerations”.

The plans will see the corporation’s Reality Check series become permanent, backed by a dedicated team targeting false stories or facts being shared widely on social media.

“The BBC can’t edit the internet, but we won’t stand aside either,” Harding said. “We will fact check the most popular outliers on Facebook, Instagram and other social media.

“We are working with Facebook, in particular, to see how we can be most effective. Where we see deliberately misleading stories masquerading as news, we’ll publish a Reality Check that says so.

“And we want Reality Check to be more than a public service, we want it to be hugely popular. We will aim to use styles and formats – online, on TV and on radio – that ensure the facts are more fascinating and grabby than the falsehoods.”

...

The new emphasis on tackling false information is part of the BBC’s attempt to do more “slow news”, using in-depth analysis and expertise in a bid to help the public understand an especially tumultuous period in the UK’s history.

The plans also include establishing an expertise network drawing on staff across the BBC, creating an “intelligence unit” within the World Service, which has received £290m to expand its reach into new languages, and putting more resources into data journalism. ...


先述のStoryfulのVerifyはイスイス団のプロパガンダの手法をみて開発されたようだが、BBCのこれは明らかに、米大統領選挙に際してFacebookでアホみたいに拡散されていたらしい偽ニュース(見出しだけ見て「な、なんだってーっ!」と思う人がうんざりするほど出現するような)が直接的きっかけとなった動きである。私はFacebookは使っていないので、あの空間でどういうことが起きうるのか「実感」はできないのだが、特に「偽ニュース」に関しては大統領選挙後になって(ようやく……too lateですけどね)報道が為されるようになったので、どういうことが起きているか、だいたい把握はしている。

そして、そういうことが起きている背景というか土壌にあるのが、「大手メディアへの不信」だということも知っている。

特にBBCは難しい立場にあるメディアだ。12月下旬に「日本の首相が現職として初めてパールハーバーを訪問する」という誤情報(「現職として初めて」の部分が事実に照らして不正確)が日本語圏でも英語圏でも流れたが、BBCは訪問当日にどかーんと、米政権側のプロパガンダをそのまま流していた。それだって「偽ニュース」だ。そうでしょ?

lndmk-28dec2016.png
lndmk-28dec2016-2.png
lndmk-28dec2016-3.png


それに、英語圏の大手メディアでは、こんなのもあったばかりだ。(これについては別途書きたいとは思っているのだが……)

※以下、埋め込むツイートは全部でひとつのまとまりとしてごらんいただきたい。日付も見ながら。











この件でWaPoがやったことは、明らかに「ホンモノ」系の情報操作で、それはおそろしいほどいろんな形をとってうちら一般人にダイレクトに働きかけるようになっていて、今日もまた私の見る画面内で炸裂している。













そして、来週の今頃にはもう「大統領」と呼ばれるようになっているドナルド・トランプは、「大手報道機関は本当のことは伝えない」と叫び続けてきた人物だ。そしてトランプは、就任前の次期大統領としての大きな記者会見で、日本語圏でいうところの「マスゴミ」への攻撃を熱心に行なった。痛いところをついてきた(らしい)BuzzFeedも「ゴミカス」呼ばわりに等しい扱いをしたが、何より目立つのがCNNだ。

The decision to combat what has come to be called fake news comes at an especially sensitive time in the debate over the veracity of information online. Following reports concerning a document containing a number of serious and salacious allegations against Donald Trump, the US president-elect held a press conference in which he told a reporter from CNN “you are fake news”.

https://www.theguardian.com/media/2017/jan/12/bbc-sets-up-team-to-debunk-fake-news


(私もよく怒鳴り込まれるのだが、"あっち" 系の活動家やシンパってなぜか、CNNを目のかたきにして叫びまわるんだよね。私、CNNのフィードなんてほとんど見てないんだけど、なぜか「CNNを真に受けるバカ」呼ばわりされたりしてね……)

トランプはこれからもこういう態度を取り続けるだろうし、こういう発言をやめないだろう。何度も繰り返し、繰り返し、それは口にされるだろう。しばらくしたら、日本語圏でいう「国際テロ組織アルカイダ」、「イスラム原理主義組織ハマス」、「内部告発サイト、ウィキリークス」のようなセットフレーズ的なものに聞こえてくるかもしれない。そうなると、それを見ている(見ざるを得ない)側としては、大手報道機関の報道を見るときに「私が見ているこれは、果たして『本当(事実、真実)』なのだろうか」という不確かさに常に付きまとわれることになる。いわゆる「陰謀論厨」の人たちが体験している世界の感じが、もれなくみなさんにプレゼントされるわけだ。

こういうふうに不確かさに包まれるときに、黒く塗ってしまうとか、不確かさの余地のないこと(例えば「イヴァンカさん、かわいい」)だけを考えるとかいった方向に、多くの人が流れるだろう。たぶん私もそのひとりだ。

流れつつ、流されつつ、それでも少しは抵抗するだろう。



BBCといえば、年末にこんなことがあった。







これ、少し見てみたら、下記のようなことだった。






つまり、BBC News (UK) という真正な情報源を名乗って作られた偽アカウント(正しい情報源のアカウント名は@BBCNews)が、根拠のない話をSNSに投稿した、というわけだ。それがTwitterでTrendsのトップに来るくらいにバイラルした。

偽アカウントだということは、見れば1秒もかからずにわかるくらい明白なのに。

でもそこから(偽であることが一目でわかるアカウント名抜きで)広まった情報そのものは、爆発的に広まったのだ。What ifと言いながら。

whatif-tw.png


whatif-tw2.png











※この記事は

2017年01月14日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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