kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2008年06月04日

英国での珍判決で、ドイツと英国が火花(笑)、あるいは言語帝国主義

ドイツの『ビルト Bild』というタブロイド(Wikipediaでは「英国でいえばthe Sun」というようなことが解説されている)が、ゲルマン・ユーモアで英国をおちょくっているらしい。BBCの記事。

German tabloid mocks UK tourists
Page last updated at 15:40 GMT, Tuesday, 3 June 2008 16:40 UK
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/7433905.stm

全体的に、いろいろな方向であまりにひどくてついつい笑ってしまうのだが、最後でお茶ふいた。

まず、『ビルト』の記事の内容――「(ドイツ人が)行くべきでないリゾート地」と銘打って、英国人ばっかりのリゾート地を列挙。

それだけなら、「またやってますわね」な気分で優雅にお茶飲んでいられるのだが、「イングランド(およびスコットランド、ウェールズ、北アイルランド)がEURO2008に出るわけでもないのに、なぜ今、これなのか」と先に進むと、お茶飲み込んであんぐり口をあけてしまう展開。

いわく、『ビルト』のこの記事は、ある英国人が起こした裁判で訴えが認められ、£750(953ユーロ)の賠償金を手にした、というニュースを受けて書かれたものだとのこと。

その英国人、デイヴィッド・バーニッシュさん David Barnish(47歳)は、ギリシアのリゾート地で休暇を過ごしたときに「ドイツ人観光客が多すぎて楽しめなかった」こと、「旅行のイベントがすべてドイツ語だった」ことを主張し、旅行会社を相手に損害賠償 (compensation) を請求した。

……あー。(^^;)

BBCのこの記事では詳細がわからないので、原告の名前で検索してみると……あったあった。

Briton wins compensation after holiday 'surrounded by Germans'
By Patrick Sawer
Last Updated: 10:16AM BST 31/05/2008
http://www.telegraph.co.uk/news/uknews/2057163/Briton-wins-compensation-after-holiday-'surrounded-by-Germans'.html

テレグラフ記事によると、バーニッシュさんは妻と3人の娘と一緒に、ギリシアのコス島に行ったが(総額£4,000)、現地の高級ホテルに到着してみると、サンベッドはすべて予約済み、ウィンドサーフィンやヨガの講習会も全部ドイツ語、12歳の娘はキッズクラブに行ってみたがそれも全部ドイツ語、テレビまで基本的にドイツ語。という事情で、ホテルのサービスも利用できず、旅行会社を訴えたところ、法廷は旅行会社の契約違反を認定し、£750をバーニッシュさんに支払うよう命じた。判事は、「パンフレットが英語で書かれているときに、利用者は現地で英語が通じないとは想定しない。同社のパンフレットは極めてミスリーディングである」と述べた。勝訴したバーニッシュさんは「私はレイシストではないし、英国人(English)ばかりのホテルで家族と一緒に休暇を過ごしたいとも思わない」とコメント、旅行会社は「お客様のご期待通りの旅行にならなかったことを申し訳なく思っております。結果(=£750という法廷の判断)には満足しています」とコメント。

……どこからどうツッコミを入れたらよいのかわからないので、お茶飲んで「言語帝国主義!」と嘆いておいて、それから考えることにするか。

(考え中)

たぶん、バーニッシュさん一家は「家族で海外旅行」を考えたときに、「でも周りが英国人ばかりでは『海外』って感じがしない」とかいうことを考えて、行き先を選んだのだろう。で、「英語が通じない」と愕然とする、って意味わかんない……。レイシズムとかそういう話じゃなくて、「ギリシアに行ったのにギリシア語が通じない」というのならわかるんだけど、そもそも英語が通じないのは言うまでもないほどに当たり前なのでは……(確かにギリシアは英国との歴史的なつながりがあるのだけど)。

判事の「パンフレットが英語なのに現地で英語が通じないとは」という指摘は、おそらく、この旅行会社が英国人向けに商売をしているのに説明が足らない、という指摘で、元々いくらを請求したのかは記事にないからわからないけど、旅行会社のコメントから判断すれば、ほんの一部だけ認められた、ということだろう。

(なお、BBC記事、テレグラフ記事にはcompensationとあるのだけれど、これは「損害賠償」というより「旅行代金の返金」かもしれない。)

ともあれ、こういう珍裁判が英国であったことを受けて、早速ドイツのタブロイドが反応した、というのがBBCの記事。

「お国柄ジョーク」では「冗談が通じない」とか「ユーモアのセンスがない」というステレオタイプがあるドイツは、実は相当辛辣なユーモアがあるという話をずーっと前に読んだことがあるのだけど、これはその好例だ。というか、「攻撃に回ったときのドイツは怖い」っていうステレオタイプそのものかも。(笑)

BBCによると、『ビルト』の記事は「こんな判決、ドイツでは考えられない」というのがベースで、「だからドイツ人のみなさんは訴えても無駄ですよ」というところで止まらず、「英国人ばっかりのリゾート地は避けましょう」というふうに書いているらしい。ははは、冗談きついな。

Bild points out that Germans will find it hard to get their money back if they find their hotel overrun with Britons.

"Even if the travel company announces in the brochure that the resort is 'favoured by Germans', the tourist has to accept the possibility that he will spend his holidays with up to 90% foreigners - above all with the English," Uta Stenzel, a legal expert, told the paper.

『ビルト』は、ドイツ人がホテルに行ってみたら英国人だらけだったとしても、返金は難しいだろうと指摘する。

「旅行会社がパンフレットで『ドイツ人に好まれている』リゾート地だと書いていても、行ってみたら9割は外国人だった――特に英国人だった、という結果になる可能性を受け入れなければなりません」と、法律専門家のUta Stenzel氏は『ビルト』に語っている。


言ってることは正しいんだけど、なんか味付けが微妙な気がしたり。ドイツ語から英語への翻訳の問題かなあ。世界のどこでもマスターカードとEnglishという言語は使えるのが当たり前って思ってる英語話者は "English"、または「英国人」だけではないし。

さらに『ビルト』の悪乗りは続いて、
Just in case the Germans have a problem identifying British tourists abroad, Bild has a guide on its online version, illustrated with an unappealing photo of two sunburnt women on sun chairs.

ドイツ人には海外旅行中の英国人を特定できないという事態に備えて、『ビルト』はオンライン版にガイド記事を掲載しているが、そこには具体例としてサンチェアに横たわる女性2人の魅力的でない写真がついている。

ってこのBBCの記述も悪乗りだろう。

さらにさらに、今ならどーんと悪乗りを増量サービス中で:
It also ridicules British cuisine, binge-drinking, fashion and sport, says that "athletically they are not up to much, they can't even take penalties" and points out that Austria and Switzerland - the hosts of this summer's Euro 2008 football championships - will be largely British-free zones this year as no British teams have qualified.

『ビルト』の記事は、英国の料理、ビンジ・ドリンキング(正体をなくすまで酒を飲んで騒いだりすること)、ファッションやスポーツをおちょくって、「スポーツでも大したことない。PKさえグダグダ」と書き、Euro 2008のホスト国であるオーストリアとスイスは概ね英国人ゼロ地域になるだろう、と指摘している。


ええ、お茶ふいたのは "they can't even take penalties" のところですよ。イングランドの「伝統芸」たる「PK外し」。

EURO 1996(イングランド大会)でドイツとイングランドは準決勝で当たって、PKでドイツが勝って、決勝でチェコに対して2-1でドイツ優勝、というドイツ的にはスウィートなメモリーがあるのね。だから悪乗りが止まらないんだと思う。

ちなみに、『ビルト』に掲載された「英国人だらけのリゾート地」は:
- the Bay of Palma in Majorca
- San Antonio in Ibiza
- Playa de las Americas in Tenerife
- Ayia Napa in Cyprus
- Faliraki on the Greek island of Rhodes
- Malia in Crete

さて、ふいたお茶の賠償請求でもしますか、BBCに対して……。



『ビルト』の記事、見つけた。ドイツ語だから私にはそのままじゃ読めないけど。
http://www.bild.de/BILD/lifestyle/reise/2008/05/brite-bekommt-schadenersatz/wegen-deutscher-im-hotel,geo=4701818.html
※ドイツ語から英語へのオンライン翻訳なら、http://www.freetranslation.com/web.aspとかで。

で、この新聞、the Sunといちゃいちゃしてんのね。記事内にSへのリンクがある。
http://www.thesun.co.uk/sol/homepage/news/article1231344.ece



Bild.deの記事をオンライン翻訳で英語にしたら、ロシア的倒置法になっていたので、またお茶をふいただけでなく、麻痺させられました。私は資本主義思想の犬なので

bild.png

※この記事は

2008年06月04日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 12:09 | Comment(4) | TrackBack(0) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ども、久しぶりです。ティーカップがすでに空だったので幸い吹きませんでしたが、あったら吹きました。というか、なんかイギリスらしくない話だなあ、と。いつもアメリカ人観光客の我が物顔ぶりをくさしてるわりに、これじゃなんにも変わらないんじゃん。

ところで、ご存知のようにヨーロッパのホリデイ産業はドイツ人とイギリス人によって支えられているわけで、ヨーロッパ内どこに行っても主立ったリゾートはイギリス人とドイツ人だらけです。パリとかロンドンとかプラハとかいった有名観光都市のことではありません、そういうところには中国人も韓国人もロシア人も日本人もいます。

で、リゾートのホテルはそれぞれドイツ人かイギリス人かどちらかを得意として住み分けているように見えます。バーニッシュさん一家(最初、わたしはパースニップと誤読して最初のお茶を吹いた)がそうだったのかどうかわかりませんが、イギリス国内で予約していくと、ほぼ確実にイギリスに強いホテルになります。レストランのメニューにフィッシュ&チップスとソーセージ&マッシュがあるような。しかし、国外の旅行会社、あるいは現地で予約するとどっちになるかわかりません。

以前、マヨルカに予約なしに行って現地の知人に教えてもらって宿泊したホテルはドイツ人仕様でした。宿泊客のほとんどが白人でイギリス人より一回り大きく(横にではなく上に)、マナーもとても良かったです。それに、ドイツ人はたいがいみな上手な英語を話すので何も困りませんでした。この逆はたぶん無理でしょう。

去年、マルタ島の隣のゴゾ島で1週間ホリデイフラット(自炊)を借りましたが、ここはイギリスとドイツの客が半々。小学校で4年間も習った息子のドイツ語がほとんど使い物にならないことを発見してがっかりしましたが、同い年ぐらいのドイツ人の子供たちはへたくそでも英語を話そうとするので好感が持てました。親はみな上手な英語を話しました。

ヨーロッパのどこに行っても日本語が通じたことなどほとんどないですが、言葉が通じない不便はあっても不愉快にはならないです。イギリス人がアメリカ人化しているのかなあと思うと、ちょっといやかも。
Posted by 在英のチコ at 2008年06月06日 00:47
>チコさん
コメントどうもです。「ドイツ人仕様かイギリス人仕様か」など、ディテールが興味深いです。

ところで、私自身が「英語帝国主義」に毒されまくっていることをわかりづらく示したくてわざとエントリ本文で「ビルド」と表記しておいたのですが、あまりにアホだと思われたのか、あまりにわかりづらかったのか、誰もツッコミを入れてくれないので、そろそろ直します。さすがに恥ずかしいので。(^^;)

で、「訴訟を起こした」ことは「アメリカ化(ステレオタイプのアメリカっぽいこと)」かもしれないけど、言語についての感覚は「アメリカ化」するまでもなく最初っからだと私は思っていたり……。程度の差や表現の仕方の違いはあるかもしれないけれど、「英語は世界の言語」という態度そのものは共通してるんじゃないかなあ、と。このあとでもうちょっと丁寧に書きます。
Posted by nofrills at 2008年06月08日 07:22
というわけで続き。

まず、いかなる場合にもたった一つの事例だけを見て全体を断じることはできないんですが、特にこのケースは「珍判決」だったから英国でもニュースになっているわけで(Bildが反応する前に、テレグラフなどが記事にしていた)、それゆえにますます、この例を見て「英国人一般」を言うのは変だろう、と思います。それが前提なのですが、そして、「英国人向け」のサービスはすべて英語で運営されているというのは、企業の経営の話であって(狭義の)政治の話ではないのですが、この「珍判決」にはどうしても言語帝国主義的な何かを見てしまう。私の頭が腐ってるのかもしれないけど。

根本的には、報道には詳細はないんだけど、「ホテルのサンベッドに空きがなかった」ということから、業者がこの顧客の旅行の予約を受けておいてホテルとかを手配できず、無理やりねじ込んだのかなあと思うんですよね(しかもねじ込んだホテルが英国人向けではなくドイツ人向けだったという、コメディの台本のようなことになったのではないかと)。そのことを考慮しての「業者に落ち度あり」という判決かなあ、と思います。で、メディアが注目したのが「おもしろい部分」で、それが「英語」。そういうことじゃないかなという推測はしてました。

それでも、旅行代金の返還を請求する裁判のその訴えに「英語が通じなかった」というのが含まれているのは、英語話者の無意識のうちにある「言語帝国主義」的な何か(「英国で扱っているパック旅行は英語は通じるのが当たり前、通じないときは注意書きをつけろ」みたいな意識)だろうと思う。今回の裁判では、「英語は通じません」という注意書きがなければ外国のリゾートでも英語がデフォルト、というのが示されたわけで、まあ実際にそうなのだろうけれども、それゆえに――商業がそれを前提としているがゆえに――なんか脱力しちゃうんですよ。

で、こういう「英語は通じて当たり前」という意識では、英米差はほとんどないと思います。英国人は「違いはある、私たちはアメリカ人とは違う」と思ってるかもしれないけど、一般的に態度がでかいとか声がでかいとか、どこでもTシャツ・短パンだとか、sorryやpleaseを言わないとか、どこにいっても「アメリカでは…」を語りたがるとか、やたらとコーラを飲みたがるとかいったことは別として、「英語」が世界共通語だという点に関しては本質的な違いはないんじゃないかな……それを「前提」としているにしてもその態度が控えめだとか、社交辞令的な態度の示し方(マナー)が違っているとかいったことはあるかもしれないけど(「外国語を習得するなんて私にはできないことです」みたいなことを言うのが大人としてのマナーで、それさえ言わない/言えないアメリカ人は子供だ、みたいな見方はあるかも)。あ、あとイギリス人が一般的に「アメリカ英語」を嫌っている(または見下している)件は、言語帝国主義とは別。

※いい口実を見つけたとばかりにステレオタイプなアメリカ人の「悪口」を羅列したいわけではありません。一応言い訳しておきます。(笑)
Posted by nofrills at 2008年06月08日 09:35
上記の件とは直接は関係ないのですが、少しつながってる話。イングランドが予選で敗退した今年のEUROで「英メディアの態度」について、「いかに自分たちのことしか見ようとしないか」、「自分たちを基準に語りたがるか」という点についてのもので、笑いの余地がある記述。(しかも「英国のメディア British national newspapers etc」は事実上「イングランドの」である、ということも含まれていますが。)

http://blogs.guardian.co.uk/sport/2008/06/20/his_name_is_luca_he_has_a_vagu.html
[quote]
There has also been a barrage of "they-call-hims". Valon Behrami - "They call him the Swiss David Beckham". Dimitri Sychev - "They call him the Russian Michael Owen". Andreas Ivanschitz - "They call him the Austrian David Beckham". All we really needed was for the mysterious "they" to offer up a Greek Frank Lampard and a Swedish Paul Robinson and we would have been well on our way to a lurching feeling of impending disappointment.

Do they do this in other countries? In Germany two years ago, did Polish pundits inform viewers that "They call Wayne Rooney 'The English Ebi Smolarek' "? Do the citizens of Tokyo think that the British regard Steven Gerrard as a slightly inferior, home-grown version of Hidetoshi Nakata?

The cranking up of British interest has been so intense I am surprised BBC and ITV have not taken to flashing British interest fact-nuggets on the screen. "Andrei Arshavin - Owns a West Highland Terrier"; "Raymond Domenech - Believes Millets is très chic". That type of thing.
[/quote]

ははは、「ギリシアのランパード」はまだしも、「スウェーデンのロビンソン」はいかがなものかと。

で、「中田>ジェラード」ってのは私は聞いたことないのだけど……仮にあるとしたら、評価高すぎないだろうかと。というか、「日本のスター」はまだ「中田」なのか。2年前に引退したのに。

もちろんこういう「自分たちの国でいうと誰」みたいなのは、サッカーに限らずどの国でもあって(ありえて)、英国/イングランドだけに特有、というわけではないのですが、BBCだったか何だったか、イングランドのメディアの別の記事でも「大会に出てもいないイングランドの話をしたがる」とか、「イングランドのプレミアリーグにいるプレイヤーの話ばかり」とかいうのを何度か読んだので。(Google News経由で「コラム記事」みたいなのをたまたま見ると、けっこうそういう愚痴みたいなのがあったり。ライター本人は特にそう書きたいわけではないけれど上からの指示で、という空気が漂っていたりも。)
Posted by nofrills at 2008年06月20日 14:24

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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