kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=


2008年05月02日

イングランド&ウェールズ地方議会選、ロンドン市長選、および投票所の混乱

■開票速報:
ロンドン市長:
http://news.bbc.co.uk/nol/shared/bsp/hi/elections/london/08/html/mayor.stm
ロンドン議会:
http://news.bbc.co.uk/2/shared/bsp/hi/elections/london/08/html/assembly.stm
その他の地方議会:
http://news.bbc.co.uk/2/shared/bsp/hi/elections/local_council/08/html/region_99999.stm
※地方議会の議席、現時点(日本時間2日午前9時半)で、Labが前回比-59、Conが前回比+71、LibDemが-4。議会のcontrolはNo changeが多いけれども、changeがあったところはCON gainが多い。あくまでもごく一部の結果が出た段階で、だけど。



イングランドとウェールズの各地の地方議会選挙、日本時間で2日の午前5時に締め切られて開票は始まっているのだけど、ロンドン市長選挙の結果が完全にわかるのは日本時間で土曜日になりそうなので、結果が出るのを待ちながら、お茶ふきタイムティータイムとしましょう。BBC記事:
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/politics/7375892.stm

一番下のところに、次のように書かれています。Meanwhileつきで。
Meanwhile about 10 polling stations in the north London borough of Barnet did not receive ballot papers until "some minutes" after the election began at 0700 BST.

In a statement, Barnet Council said it "sincerely apologised" to those voters affected but stressed all of the polling stations had opened on time.

(大勢が判明するのはいつになりそうだとか、三大政党の党首が投票を済ませたとかいったレポートのあとで、)一方、ロンドン北部のバーネット区の10箇所の投票所では、午前7時の投票開始から「数分」経過するまで投票用紙が到着していないというトラブルがあった。バーネット区では声明を出し、影響を受けた有権者に「心からお詫びします」としたうえで、すべての投票所が定刻にオープンしたと強調している。


つまり、おそらくは、「バーネットではいくつかの投票所が定刻の午前7時を過ぎてから開いた」ということでしょう(遠回しに)。あるいは、額面どおりに受け取っても、定刻に投票所内に入ったはいいが、用紙がないのでしばらく待たされた人たちがいる、ということになり、つまり「開いていない」も同様。

で、BBCのこの記事には、「ご意見をお寄せください」というフォームがついているのだが、この文面が:
Are you voting in the local elections? Send us your polling booth experiences using the form below. We will print a selection of your comments.

地方選挙の投票について、投票所での体験をご投稿ください。

your polling booth experiencesって……選挙が珍しいとか、何か特別な選挙であるとかいうんならわかりますが(2005年のイラクとか、2008年のジンバブエとか)、イングランド&ウェールズでなぜそんな体験談を募集しなきゃならんのだ。

と思いつつ、すでに掲載されている読者投稿を見ると、これはかなりひどい。(笑)

掲載されている投稿は、ページ下部にあるものが一番先に投稿・掲載されたもので、1件目、Davinaさん@ウォルサムストウ区は、「朝の7:25に自分の投票所に行ったのだが、投票所に入る道の門が開いていなかったので、門をよじ登って中に入らなければならなかった」。……それはたぶん、エクササイズをさせてくれてるんでしょう。住民の健康のために。

2件目、ジェイムズさん@サザーク区は「投票用紙に記入するのにペンを使おうとしたらダメだといわれ、鉛筆を使った。この9年間ずっとそうなのだが、ひょっとしたらジンバブエ並の不正が行なわれていやしないかと不安である」。……ジンバブエ並なら国連の監視とかが必要ではないかと。

鉛筆を使うのは日本でも同じですが、日本では用紙に候補者の名前を自筆し、英国では候補者名が印刷されている紙のチェックボックスに印をつける(日本での最高裁判所判事の国民審査の用紙と同様)、という違いはありますね……。

アマンダさん@サリー州は、「ニュースで聞いたのだが、投票用紙に有権者番号が書きこまれているとか。うちの投票所ではいつもそういうことになっていて、夫が質問したらそういうことになっていますのでという答えが返ってきた」。うは、投票の秘密が……。

アマンダさんは「今日の投票でもそういうことになっているのなら質問してみる」と書いているが、いずれにせよ、ほんとに有権者番号が用紙に記されるなんてことが行なわれているとしたら、制度の何かが根本的におかしい。投票率の集計のため、登録している有権者が投票したかしなかったかをみるためなら、名簿でやればよろしい。そもそも余計なことを書いた投票用紙は無効じゃないのか、と思ったらやっぱり、チェックボックスに印をつける以外の書き込みがあると投票が無効になるとのこと。最悪。

アマンダさんがご覧になったというニュースで報告されているのは、ランベス区で10人の投票用紙に有権者番号が記入されていたという問題で、London Elects(ロンドン選管)では「これはひとつの単発的な事態(an isolated incident)であると把握している」と述べているのだけれど、BBCではクロイドンでも同じ問題が発生していることを確認しているというし、アマンダさんの投稿のとおり、サリー州でずっと前からあったのなら、「ひとつの単発的な事態」ではない。っていうか、このisolatedという語の使われ方は、アブ・グレイブ刑務所での米軍による拷問/虐待の件を思い出させます。(あれもアフガニスタンのバグラム空軍基地から受け継がれた「伝統」を無視して「単発的事態」と言っていたのだけど。)

ビリーさんは、「単に用紙に印をつけるだけなのに、用紙を折らないでくださいとかいろいろ、大混乱だ」と報告。この人、血圧がかなり上がっていそう。日本の投票用紙の技術と読み取りの技術を輸出したら喜ばれるに違いない。

フェルタムのアンさんは、「6:45に投票所に行き、7:00に投票したが、自分ひとりきりだった。投票箱が金属の、鍵で固定されているものではなく、段ボール箱で、紐でつながれていただけで、うーむと思った」との投稿。

こんな話ばかり聞かされていると陰謀論がわらわらと涌いてきそうな気がします。

ウスターシャーの方の投稿もスゴい。「うちの息子、軍人で北アイルランドにいるんですが、郵便で投票を済ませているというのに、まだうちに投票用紙が送られてきてるんです」。つまりやろうと思えば二度投票できてしまう。郵便投票には正確な事務処理が必須だというのに、英国の行政等の事務処理能力が必要な水準に達していないのが根本的な問題かもしれない。(郵便投票は、選挙のたびに何かしらトラブルが報じられているような気が。)

スージーさん@問題のバーネット区の投稿が現時点で最新で、これがまたすばらしいツッコミ具合。「投票所で、投票用紙が時間通りに来ていないと言われた。理由は『印刷所でトラブルがあったので』。選挙が行なわれることはつい数日前までわからなかったってわけじゃあるまいし、郵便投票をする人たちに郵送するために用紙の印刷はとっくの昔に済んでるはず。で、用紙が到着したらしたで、投票所の係員は、別々の用紙(たぶん議会選と市長選の用紙)の区分けにえらく手間取っていて、これは何ら研修がなかったとしか思えない」。

「研修がなかった」というと……つまり、「ヒースローのターミナル5」の状態?
http://nofrills.seesaa.net/article/91976215.html
http://nofrills.seesaa.net/article/92595041.html

こんなのが当たり前のように出てくるロンドンで、「市長はボリス・ジョンソン」なんてことになったら、フォルティ・タワーズ化する。しかも2012年のオリンピック前のインフラ整備事業が次の市長にかかっているわけで、そうなると、すべては「実録、バジル・フォルティ」を制作するためのBBCの極秘プロジェクトだった!とかいった陰謀論が出てきかねない。やめてほしいなあ。

最後の最後、投票日当日にガーディアンが出した、「ボリスを当選させてはならない理由」の記事:
Be afraid. Be very afraid
http://www.guardian.co.uk/politics/2008/may/01/boris.livingstone

本文は読み飽きたようなことばかりともいえるけれど、本文のすぐ下に、Londoners - some famous, some not - imagine their city under Boris (有名な人もそうでない人も含め、ロンドナーが「ボリス・ジョンソン市長のロンドン」について一言) というのがあって、ここがなかなかおもしろい。有名人としては、アラン・リックマン(俳優)、ヴィヴィアン・ウエストウッド(デザイナー:「ウエストウッド節」は健在だけど、こういうのを聞き飽きた人たちが「ボリスでもいいか」ってなってるんだけどね、実際)、ウィル・セルフ(作家)、ビアンカ・ジャガー(環境活動家)、デイヴ・ローントゥリー(労働党候補者、Blurのドラム)といった人のコメントがあるのだが、むしろ一般人のコメントがおもしろい。「とりあえず、普通に仕事してる人が高くて住めないようなロンドンはいかがなものかと思うが、彼が市長なんかになったらますます高くなる」など。

で、ガーディアンのこの記事の末尾に、「ボリス・ジョンソン失言録」があるのだけど、ガーディアンを読んでる人だからこそこれが「失言」だと思うのだろうなあというものもあり、「ガーディアンなんか読んでるリベラルがいるからこの国はダメになったんだ」というようなのが基本の人たちには、この「失言録」は逆の方向に作用するかもしれない。こういうときに、「政策が根本的にダメ」ってことに焦点を絞らない(のか「絞れない」のかわかんないけど)あたり、ガーディアン的にもかなり切羽詰ってるんだな、とは思うけど、東京都民としては、非常に複雑な気持ちになる。今回の市長選は「多少いいかげんだって、差別主義者だっていいじゃない、とりあえずやらせてみても。現職はもう8年もやってるんだし、もう見飽きたよ」というのがあるのだから。

「ボリス・ジョンソンの当選を阻止する会」というか、Stop Borisのサイト:
http://www.stopboris.org/

懇切丁寧に「ボリスを当選させないための投票方法」を解説していたり、「当選させてはならない3つの理由」を説明していたり、「ついでにstop BNP!」を訴えていたりとなかなかカラフルなサイトさんだが、盛大にお茶をふきたい人は、「当選させてはならない3つの理由」のページの最後の項目、"He really can win" (ほんとに当選しちゃうかもしれない)のところの3つのポイントの3つ目を参照:
There are three sets of people (perhaps with some overlaps) who will vote for him:

1. Conservatives: actually, this is only the Conservatives who are prepared to overlook what a disaster Boris would be for their party's reputation.

2. People who want Ken out: this has a number of sub-groups, but is fairly large in number overall.

3. People of the sort who elected H'Angus the Monkey to be Mayor of Hartlepool in 2002.

ハートルプールで「おさるのアンガス」が市長に当選した件については:
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/politics/1965569.stm

2002年に市長選挙の制度が始まったときに、サッカークラブのマスコット「おさるのアンガス」の中の人が、「全児童に無料でバナナを支給」などふざけた公約を掲げて冗談で立候補してみたら、労働党の本命候補を破って当選してしまった、というお話。ハートルプールは労働党の地盤で、当時の国会議員はピーター・マンデルソンで、その悪辣なスピンドクターっぷりが全国メディアで注目されていて、そのせいで「政党離れ」が引き起こされたからだという分析が当時あった。

で、今ウィキペディアを見てみたら、この市長さん、2005年に再選されてる。ということは、最初は冗談で立候補して冗談で当選したが、いったん市長になったあとは、仕事はしてるということでしょう。
http://en.wikipedia.org/wiki/Stuart_Drummond

この人の場合は、「おもしろいから」というのと有権者の間の「政党不信」のほかに、「本人が地元っ子だから」が重なって当選していると思うのだけど、ボリス・ジョンソンは根本的にロンドナーじゃないから、そこはまだ余地があるのかもしれない。でも「テレビによく出てる面白い人」で「なんだかよくわかんないけど、現職は見飽きたし、いいんじゃないの」程度の軽い気持ちで投票しちゃう人もいるかもしれない、というのがキャンペーンの主張。東京都でも類似の例がありましたが。(青島だぁ。)

最終的には、世論調査ではジョンソンが6ポイント、リヴィングストンをリードしていたとのこと(差は縮まっていた)。
http://www.guardian.co.uk/politics/2008/may/02/london08.localgovernment

しかし、ここに引用されているジョンソン支持の新聞が、どれもこれもいいかげんだなぁ。
The Sun April 22
"Boris Johnson has the energy and imagination to give this great city what it needs. A new and fresh champion for London."
→エナジードリンクの宣伝文句か何かですか。

Daily Mail April 26
"Eight years of Ken Livingstone haven't solved London's problems. A new, serious Johnson should be given a chance."
→「新しいジョンソン、真面目なジョンソン」の部分は仮定法にすべき。(笑)で、「ロンドンの問題」というのは何のことなのだろう。右翼のアジェンダで言う「問題」を、左翼のリヴィングストンが「解決」するわけないじゃん。

The Times April 26
The Conservative candidate is an enormously intelligent man. His eccentricities are, it should be remembered, basically harmless and inoffensive ...
→何がharmlessでinoffensiveですって? 「男2人がパートナーになれるのなら3人でもいいだろうし、男2人と犬1匹でもいいだろう」とかいうのは、「ユーモアのセンス」では済まされないんですけど。

The Daily Telegraph April 26
"Mr Livingstone is out of touch with most of the city. It is time for the whole of London's great metropolis to have its say. On Thursday, it should elect Boris as mayor."
→「自分たちこそ多数派」という主張、お疲れ様だなあ。こういう主張が「多数派」を作るんだけど。

London Evening Standard April 30
"Democracy cannot properly function if our elected representatives have not proved themselves to be the guardians of integrity ... Londoners should vote for change and make Boris Johnson mayor."
→integrityを「整合性」と読んでしまったので、この文はPrivate Eyeでおちょくられる「変な文」に読めてしまう。いずれにしても意味のわからない文だけど、引用の仕方の問題かなあ。(例の「強制収容所の看守か」っていう罵倒の件などでESとの冷戦が続いている以外に何かあったっけ。まあ、ESは単にリヴィングストンが嫌いなだけで、それも80年代からの遺恨だから。)


で、反ジョンソンの新聞は、ガーディアン(労働党)、インディペンデント(LibDem)、ミラー(労働党)の3紙のみ。

そういう状態に加えて、ゴードン・ブラウンがへまばかりで(特に所得税の最低税率の10パーセント枠撤廃問題、いわゆる "10p tax" の件)、労働党にはうんざり、というムードがあふれているのが現状。

さて、開票速報をもっかい見ようかな。

※この記事は

2008年05月02日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


posted by nofrills at 09:46 | Comment(11) | TrackBack(0) | todays news from uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Slugger O'TooleのMick Fealty(NI出身、イングランド在住で、UKの政治分野についてのライターとしてガーディアン、テレグラフのサイトなどで活躍中)が、Twitterで情勢を中継してくれるそうです。今(日本時間2日11:45ごろ)は現地では午前3時とかで、ちょっとお休みかもしれないけれど。Twitterやってる人で関心がある人はfollowしておくといいかも。
http://twitter.com/MickFealty/

現時点では、「ブレアのあとのブラウン」は「サッチャーのあとのメイジャー」のようだ、ということが報告されています。現象としては、サッチャーの「ポールタックス」に相当するものがブラウンの「10p tax問題」だと思っていたのですが、支持者の言葉を見ると、労働党ブラウン派はかつての保守党メイジャー派のようなのだそうです。興味深い。
Posted by nofrills at 2008年05月02日 11:52
地方議会開票速報より:
http://news.bbc.co.uk/2/shared/bsp/hi/elections/local_council/08/html/region_99999.stm
議員数:
CON: +128で合計1868
LAB: -129で合計1516
LibDem: +8で合計1050
……というわけで、現状、議員数では保守党圧勝です。
また、
BNP: +8で合計11 (悪夢)
UKIP: +2で合計4

議会のコントロール(過半数議席)では
CON: +6で計41地方議会
LAB: -5で計14地方議会
LibDem: -1で計6地方議会
No Overall Control: 増減なし
こちらでみても保守党圧勝ですね。

イングランド&ウェールズなので、スコットランドとは違い、元々保守党が勝っても特に不思議ではなかったのですが、これはすごい。

なお、三大政党の党首の「党首としての能力」の支持率は、BBC調査(サンプル数1005)によると、
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/politics/7372860.stm
Mr Cameron (Con): 68%
Mr Clegg (LibDem): 43%
Mr Brown (Lab): 42%

ブラウンは、この数ヶ月あのありさまなので、「財務大臣としての経歴」ゆえに評価が低くなっているようです。それだけでなく、所得税の最低税率引き上げで労働党支持者からも愛想をつかされたらしい。
Posted by nofrills at 2008年05月02日 12:04
さっき書き忘れていたのだけど、これはすごいことになっているという点をBBCの開票状況を伝える記事から:
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/politics/7372860.stm
BBC research suggests the party has fallen into third place nationally with 24% of the vote, beaten by the Tories on 44% and Lib Dems on 25%.

つまり、保守党が44パーセント、LibDemが25パーセントで労働党は24パーセントと、一気に第三党に転落。(国政選挙ではまた違うのかもしれませんが。)
Posted by nofrills at 2008年05月02日 13:49
ども。というわけで、「いよいよ市長選」とこのコメント欄にちょこっと書いたJMMへの「ご意見」を持ってきました。元になったテキストはシティワーカーであるらしい丸國葉さんの連載『ロンドン〜スクエア・マイルから』の第103回「Get us a decent London Mayor!」なんですが、でも、ほんと、ケンには飽きたからっていう理由と、よくあるエリートコンプレックスでボリスに投票する人もいっぱいいるだろうな。彼女の意見がイブニングスタンダードと無料新聞を元に形作られているらしいことが容易に想像できるだけに、心配だあ。

(たぶんまだここには載ってないと思いますが)
http://ryumurakami.jmm.co.jp/dynamic/report/title8_1.html

(以下送信した「ご意見」)
ロンドン居住も13年を超えましたが、西と南をうろうろしているばかりでシティにはほとんど足を踏み入れたこともなく、行動範囲のまったく異なる丸國葉さんの『ロンドン〜スクエア・マイルから』をいつも興味深く拝読しています。が、本日配信されました第103回「Get us a decent London Mayor!」は、いつものように自分とは異なるこのような考え方もあるのかと感心したり寛容に構えて読み過ごしたりするにはあまりにも恐ろしい内容で、思わずご意見さしあげるしだいです。

ボリスの人気がケンを上回っているらしいことは毎日のニュースを見聞きしたり新聞を読んでいればだれにでもわかることですが、とりあえずこれは投票日までのロンドンナーらしいジョークで、投票日には冷静な審判がくだされると信じていました。しかし、ボリスを支持する人々がみな丸國さんのようなお考えである場合、冗談ではなくほんとうにボリスが市長になってしまいます。想像するだに恐ろしい。ケンではないだれか、という理由以外にボリスのメリットは何もありません。

ケンが完璧でないことはもちろん誰もが知っていますし、いまだにサッチャー時代のトーリーと戦っているようなポーズもいかにも古くさい。とは言え、マイノリティに対する異常なまでの擁護と、権力に対するほとんど子供っぽいとさえ言える反抗的態度は、ロンドンのような巨大な経済都市のトップとしては得難いものです。これは彼自身をほめているのではなく、そういう人物を選んできたロンドナーの見識に対する賞賛です。

また、丸國さんの今日の原稿に「ケンの人種差別発言」とありましたが、これは大きな間違いです。ことごとくケンと対立してきた右派のイブニングスタンダード紙から派遣されてケンに張り付いていたユダヤ人の記者に対し、「強制収容所の監視人(ユダヤ人を見張っていたユダヤ人)のような仕事だな」と毒づいた件をさすのではないかと想像されますが、これは個人攻撃であっても人種差別ではありません。もちろん、ほめられた態度ではないことは明らかですが、ユダヤ人一般を差別したのでも馬鹿にしたのでもありません。ボリスがリバプールの人々に対してしたようには。

Better Devils who knows(正確にこういう言い方だったか記憶が曖昧ですが)という英国で選挙があるときにしばしば使われる格言(?)をご存知かどうか知りませんが、ケンがもう一期市長を続けることは小さな災害ではありましょうが何が起きるかある程度見通しが立ちます。また、歩くディザスターであり石原慎太郎ばりの失言王者であるボリスが市長になることの災厄に比べれば、はるかに許容できるものです。

ともかく、ジョンソン市長という悪夢が実現しないことを祈りながら、本日の投票を見守ることにします。
Posted by 在英のチコ at 2008年05月02日 16:41
>チコさん
どうもです。リヴィングストン陣営にとっては、「飽きた」とか「労働党を見限った」ってののほかに、単純に「長期政権は腐敗する」という点で「前回まではリヴィングストンに入れていたが、今回は……」という層がいることを把握しておくことが必要だったのに、それをしてなかったように見受けられます。それが「ジョンソンに対する上流コンプレックス」より大きいと思う。

対立候補があのバフーン、しかもロンドナーでもなんでもない上流の御仁では、シリアスに受け止めろというのが無理だったのかもしれないけど、情報戦ではジョンソン陣営の圧勝でした。人々が「イラク戦争の愚」にそろそろ飽き飽きして――それが「愚」であったことは確かであるが、それについて書かれたものを読むのも、それについて語るのも、ブレアの退陣でもういいという感じになっている――、労働党にうんざりしてしまったアンドリュー・ギリガン(@私憤)を抱えたESがまたぞろ「収容所」発言(確かに、あれは「人種差別」ではないっすよね)を蒸し返し、市長として執務停止処分になったことを蒸し返し、という中で、いろいろ難しかったのだろうと思いますが。

そもそも、リヴィングストンはなぜ労働党に復党したのか、って疑問もけっこうあるのではないかとも思います。ま、今はとにかく結果待ちで。

それはさておき、BBCの開票速報(@ 143 of 159 councils have officially declared) を見てショックを受けたのは:
BNP: +12 (total 31)
UKIP: +4 (total 8)
http://news.bbc.co.uk/2/shared/bsp/hi/elections/local_council/08/html/region_99999.stm

あと、上記ページで唯一のLabour gainが、ダーラム(トニー・ブレアの選挙区)のLAB gain from NCなのが、ちょっと笑えます。

CON gain from LABも、今のところ1箇所だけなんですよね (Nuneaton & Bedworth, ってどこ?)。でもここ、1973年からずーっとLabour。
http://news.bbc.co.uk/2/shared/bsp/hi/elections/local_council/08/html/44uc.stm
っていうかここ、保守党、労働党のほかはBNPって、どんな議会だ。おそろしい。

LAB lose to NOCが、現時点で8議会。CON gain from NOCが、同じく12議会。
Posted by nofrills at 2008年05月02日 22:35
BNP、ストーク・オン・トレントで3議席増、計9議席(/総議席数60)獲得。同議会のLabourの党議連会長は落選。議会自体はNOCで最大勢力は無所属、ひどく混沌としている。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/england/staffordshire/7378939.stm
http://news.bbc.co.uk/2/shared/bsp/hi/elections/local_council/08/html/gl.stm

で、落選したLabourの議連会長も「妙なことに、労働党が保守党にではなく無所属とBNPに負けた」とコメントしていて、労働党が無所属に負けるのは特に不思議ではないとして(ただしその「無所属」がどういうバックグラウンドなのか一切調べずに書いていますが)、BNPってのがシャレになってない。「本物の『労働者階級の政党』はBNPだ」というキャンペーンを、今後予想しておいたほうがいいのかもしれない。

一方、ロンドン市長選は結果が出るのは日本時間で午前4時半ごろの見込み。 (London Elects, which organises the elections, says it expects the results at 2030 BST, but that could change.) 現状、どんなふうかはBBC記事をご参照ください。(今のところわかっている数字は時間が経過するにつれてアップデートされると思うので、具体的な数値をここに書くことは差し控えます。が、記録のために一言だけ書いておくと、開票率20パーセントの段階で、バフーンがリードしています。)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/politics/7378792.stm
Posted by nofrills at 2008年05月02日 22:46
@22:35の私のコメント:
> (Nuneaton & Bedworth, ってどこ?)
in Midlands:
http://www.guardian.co.uk/politics/2008/may/02/localelections.localgovernment1
↑このページ、各地方議会のcontrolを淡々とリストにしてあるだけですが、おおよその地域別になっていて見やすいです。(一覧性が高い。)

もう1点。これは今朝(日本時間)から伝えられてたのですが、NorwichでGreensが第二党 (official Opposition) になりました。ただし全国で見ると、Greensは前回の地方選ほどよい結果を出していないとのこと。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/politics/7379147.stm

それと、Mick FealtyのTwitter経由で、CrawleyがNOC→CONになったことについて:
http://tonysharp.blogspot.com/2008/05/labour-implodes-in-crawley.html
Wellingboroughというところで保守党所属のカウンシラーをしているトニー・シャープさんのブログですが、トニーさんのご両親は筋金入りの労働党で(お父さんは組合、お母さんは議員)70年代、80年代と労働党一筋だったのが、97年に変わったということが綴られています。

[quote]
... But in 1997 with the boundary having been reset to mirror the urban district council catchment and exclude the rural areas, Labour's Laura Moffatt turned that seat red too. By that time my Mum had passed away. Prior to that she had left Labour in dismay at what it had become. She disagreed with seeking power for power's sake. She agreed with a hand up rather than a hand out. She saw the early signs that Labour no longer helped people but held them back. For his part, Dad became the first union official I knew of who started voting Conservative.

...

Only eight years ago, long after I had left the town, it was still unthinkable that Crawley Borough Council would have anything other than a Labour administration. But two years ago the Conservatives took control ...
[/quote]

トニーさんは保守党の人で、次の総選挙ではCrawleyの現職のMP(労働党)はもうダメだろう(2005年の選挙でわずか60票足らずで辛勝)と述べ、コンサーヴァティズムの可能性について語っています。

「保守党と労働党」についての文章として、デイリー・メイルとかイヴニング・スタンダードとかの「俺らすげぇ」調の高笑いの文章を読むより、ずっといいと思います。
Posted by nofrills at 2008年05月02日 23:30
UPDATE (Re: BNP)

154 of 159 councils have officially declared, and it's...
BNP: +10 (total 37)
UKIP: +3 (total 8)
http://news.bbc.co.uk/2/shared/bsp/hi/elections/local_council/08/html/region_99999.stm

というわけで、@22:35の
> BNP: +12 (total 31)
> UKIP: +4 (total 8)
の段階から開票がぐっと進んで、BNPもUKIPも何人かは落選しているようですが全体的には議席増、特にBNPはこの時点で10議席増とのこと。ロンドン市長選結果が公的に発表され、「労働党の大敗」の報道が落ち着いたあとで、「BNPの躍進」についての記事がBBCなどで出ると思われます。この件はそのときにまた改めて。
Posted by nofrills at 2008年05月03日 00:37
トニーさんのおかあさまのShe saw the early signs that Labour no longer helped people が痛い。やっと保守党の支配が終わったとレイバー支持者が沸き立っていたときに、すでに先まで見通してたってことですね。

ケンが労働党に復党したのは、オリンピックの誘致(イーストエンドの再開発)と理由の根っこは同じでしょう。復党でブレアに恩を売って政府から何か(混雑税導入に目をつぶらせるとか? 時期あってる?)を引き出そうとしたんでしょう、たぶん。良きにしつけ悪しきにつけ、しょせん政治家ですから。とは言え、今回はほんと、インディペンデントのままのほうがなんぼか良かった。

宣伝合戦に負けたというのは事実だと思いますが、ジョンソン陣営の宣伝というよりES。忙しくて実はあまりウォッチングしてないのでもしかして違うかもしれないんですけど、派手なパフォーマンスを繰り出すボリスに対してそろそろ何か反撃を、というタイミングを狙いすまして「腐敗」が代わる代わるESに暴かれるといったことが続いてた気がするんですけど。毎日のようにニュースになってた。中にはとてもコラプションとは言えないほどみみっちい話も混じってたし。ともかく脇が甘かった。

ところで、今日のケンは昨日よりずっとすっきりした顔をしていました。落選したらMPに立候補するのかねえ。引退するにはまだ若いし。

今週に入ってからのBBCは、ケンびいき、と言うより、ほとんど、「ケン、いままでありがとう」ムードでノスタルジック全開。ケン抜きのロンドンなんて考えられないとこちらで誰かが言うかと思えば、別の番組では懐かしき80年代の映像(やせたヒッピー風のケン)を持ち出してのケンの歩み特集とかやってて、なんだかなあなんですけど。

今日は学校で先生たちが元気なかったし、わたしもそろそろ心の準備を。
Posted by 在英のチコ at 2008年05月03日 00:55
>チコさん
現地からのレポート、ありがとうございます。BBCのお葬式ムード、想像するだに脱力します。

少し見返してみたのですが、2004年の復党は、実際のところ、2004年市長選で労働党候補と対決すると票を食い合うから、ってのが一番大きかったのではと思います。確かリヴィングストンがブレアを揺さぶったんですよ、「イラク戦争だ何だで私への支持はしっかりしてるから、労働党で候補立てるとボロ負けして政権ゆらぎますよ」みたいに。(ところが実際には簡単には50パーセントに持っていけなかったのですが。)

> 復党でブレアに恩を売って政府から何か(混雑税導入に目をつぶらせるとか? 時期あってる?)

いや、congestion chargeは2003年2月で、復党は2003年11月か12月に決まった話だから、「C」は明らかに関係ないです。

となるとオリンピックか……いやぁ、でも違うような気がします。IOC総会でロンドンに決まったのが2005年7月6日なので(その翌日にリーズの4人組の地下鉄・バス爆破テロがあった)、リヴィングストンの復党の1年半後なのですが、オリンピック開催地立候補はもっと前から、少なくともIOC総会の2〜3年前からのはずで、今回ロンドンが立候補したのは、マンチェスターやら、あとどこだっけ、リヴァプールかバーミンガムではIOCで通らないから、というUKのオリンピック委員会の意向でしたよね。

で、「オリンピック誘致はイーストエンドの再開発の資金を政府から出させるためだ」ってのは、今回の選挙に入ってからいきなり持ち出した「後付け」だと思いました(本気でインフラ整備したいんならチェルシー・ハックニー線が先、ストラトフォードよりも!)。まあ、本当にそういう考えで動いていたとしても、それはそれでどうよ、ってのは強く思います。競技場なんか作ったって、交通網を整備したって、affordable housingが増えないことにはどうしようもない。

そういうことで、「結局何もプランしてないんじゃないの? ならジョンソンでも同じじゃないの? そもそも今の労働党は保守党とどう違うの? ジョンソンなら少なくとも人が変わる分だけ新しいし、それに言うことはおもしろいよね」という方向に有権者が流れたということじゃないなあと思います。漠然と「変化」を望んだ人たちのなかには、それ以前に、「C」とか「ベンディバス」とか「居住費高騰」とかで、「ロンドンは前より住みづらくなった」と感じていた人もいるでしょうし。

あと、本人的にはESとの小競り合いは20年も25年も続けてきたもので、特に意味を持たなかったのかもしれないのですが、ESは(というかあのメディアグループは)その「いつもの小競り合い」を「政治的問題」に書き換えることに成功した。ESの今の編集長は元デイリー・テレグラフで元デイリー・メイルですよね。ど真ん中でトーリーじゃないっすか。しかもMetroの契約を取るために、トーリーの市長が欲しいって?
http://en.wikipedia.org/wiki/Veronica_Wadley

そのくらい織り込み済みで労働党が対抗してくるかと思ってたら、なんすか、「サッチャリズムか私かだ」って。「サッチャリズム」て、leftの間では今でも現役の用語かもしれないけど、冷静に見れば20年前の用語でしょう。さおだけ屋(@「20年前のお値段です」)じゃあるまいし。

前にこのことについて投稿したときは投票日前だったのでちょっと控えめにしましたが、ことばによって「未来」を感じさせることができない時点で、勝つ気を見て取れませんでした。いくらガーディアン読者だってあれには「古!」と思ったに違いないし、それにほんとにサッチャリズムに辟易としている人たちは、GreensとかLeft Listに投票することで、今の大政党にNOと言いたいでしょう。

ボリス・ジョンソンは、なんだかとても漠然としているし、計算もひどくめちゃくちゃみたいだけど、「未来」、「夢」は感じさせることを言っている。そして、ウケ狙いでアホなことばかりというイメージはあるけれど、何だかんだ言って頭はいい(それは「エリート」という意味に限らず)。だから一度任せてみてもいいんじゃないか、というふうになったのは、無理のないことじゃないかと、傍から各メディアのヘッドラインとリード文とBBCとガーディアンだけ見てて思いました。

いずれにせよ、それではフォルティ・タワーズ化するのは目に見えているんですが。
Posted by nofrills at 2008年05月03日 02:11
地方選、全部出ました。
159 of 159 councils have officially declared
http://news.bbc.co.uk/2/shared/bsp/hi/elections/local_council/08/html/region_99999.stm

以下、自分でメモっておきたいものだけ抜粋。

主要三政党:
Conservative
議会コントロール: +12 (total 65)
議員数: +256 (total 3154)

Labour
議会コントロール: -9 (total 18)
議員数: -331 (total 2368)

Liberal Democrat
議会コントロール: +1 (total 12)
議員数: +34 (total 1805)

極右:
British National Party
議会コントロール: 0 (total 0)
議員数: +10 (total 37)

UK Independence Party
議会コントロール: 0 (total 0)
議員数: +3 (total 8)

そのほか:
Plaid Cymru ※ウェールズのみ
議会コントロール: -1 (total 0)
議員数: +33 (total 207)
※PCの議会コントロールの件は、これはこれでBBCあたりでも記事になると思います。

Green
議会コントロール: 0 (total 0)
議員数: +5 (total 47)

Respect
議会コントロール: 0 (total 0)
議員数: +1 (total 4)

Socialist Alternative
議会コントロール: 0 (total 0)
議員数: 0 (total 2)

これでここのコメント欄は閉じます。ロンドン市長については下記で。
http://nofrills.seesaa.net/article/95454904.html
Posted by nofrills at 2008年05月03日 02:14

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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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▼当ブログで参照・言及するなどした書籍・映画などから▼